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それでも日本に原発は必要なのか?

カテゴリー:社会

(霧山昴)

著者 青木美希 、 出版 文春文庫

原発は核抑止力にはならない。その証拠がウクライナ。

ウクライナはヨーロッパ最大の(超)大規模原発をもっているが、それによってロシアが戦争を思いとどまることはなく、逆に真っ先に原発は攻撃のターゲットにされた。チェルノブイリ原発そしてザボリージャ原発をロシアは占拠した。また、イランの核施設をアメリカとイスラエルが攻撃した。

ロシアは日本の核施設(原発)を攻撃目標リストに載せている。原発は空からの武力攻撃に無防備。ドローン攻撃にも打つ手はない。

玄海原発に2025年7月26日夜、ドローン3機が飛来したとされている。何事も起きなかったのが幸いだった。

3.11事故のあと、事故の収束のために原発で働いている労働者に呼び出しがかかった。しかし、「絶対に行きたくない。あんな恐ろしいところ」と言って拒絶する人がいる。原発で働いていて、呼び出しに応じて働いていたエンドウ氏(50歳、2016年5月)は脳出血のため死亡した。50歳だった。

地震は現在を破壊し、津波は過去を破壊し、原発は未来を破壊した。これはエンドウ氏がスマホに書き遺していたコトバ。

太陽光パネルは、かつては日本が世界のシェア1位だった。それが今ではシェアは1%以下。なぜか……。それは、政府が住宅用太陽光発電における補助金を2005年度で打ち切ったことによる。そのため日本企業の多くはこの事業から撤退した。なぜ政府は補助金を打ち切ったのか……。政府が原子力事業の育成に力を入れることにしたから、競合する再生エネルギーの予算は削減された。つまり、原子力に偏重するのが日本の政策。核融合・分離、核燃料サイクル開発には、それぞれ1000億円以上を投下しても、太陽光エネルギー研究開発のほうは80億円しか出さない。風力にいたっては、5億円余でしかない。原子力(関連の)予算とは1桁も2桁も違っている。

諸外国に比べて、日本は極端に原子力偏重。原発にばかり予算が振り向けられている。世界全体でみると、2050年には、電力の半分以上が太陽光と風力になるとみられている。日本は、この分野での取り組みは、明らかに遅れている。日本は相変わらず核融合にお金をかけているが、それは実用化のはるか手前の段階であり、実現可能性は疑問視されている。

日本は原発最優先なので、再エネの比率は低下するばかり。原発は、テロ組織の標的となっているし、戦争の道具にもなる。

韓国で脱原発が進まないのは、韓国電力(韓電)と韓国水力原子力の持っているロビー・ネットワークがきわめて強力だから。まあ、これは日本も同じことです。日本は電力労連も強力な原発推進派ですから。中道改革連合が原発に弱腰なのは、そのためです。

ドイツとイタリアは、日本よりはるかに再エネ率が高い。そうなんです、日本が遅れているのです。高市政権は、再エネはほとんど眼中にはありません。

原発なんて人間が扱えないものなんです。ぜひとも一刻も早く脱原発を実現しましょう。

(2026年2月刊。1100円)

冬眠の生命科学

カテゴリー:生物

(霧山昴)

著者 山口 良文 、 出版 エクスナレッジ

冬眠をする動物は珍しくない。哺乳類の100種以上、全体の 5〜20%が冬眠する。

クマは冬眠するとされていたのに「冬ごもり」と呼ぶべきだとされていた時期がある。でも、 今では、やはりクマは冬眠すると再定義されている。

冬眠と呼ぶための最小限の特徴は、「低代謝」がコントロールされた形で長時間続くこと。

ヨーロッパの寒い地域に生息するオオヤマネは、なんと 1年のうち11ヶ月も冬眠する。1ヶ月しか活動しない。ええーっ、いったい寿命は長いのでしょうか…。

冬眠と睡眠は似て非なるもの。

恒温動物は、代謝を自ら落とすことで体温が下がる。 地球上のほとんどの動物は変温動物。脊骨をもたない無脊椎動物はすべて変温動物。脊椎(背骨)をもつ脊椎動物のうち、哺乳類と鳥類を除いたものはすべて変温動物に分類される。

凍った状態で冬眠するカエルがいる。凍るカエルは、細胞の中の水をうまく細胞の外に追い出すことで、氷点下でも細胞の中身自体は凍らないようにしている。心臓も止まっている。不凍タンパクは、水分子とうまい形で結合することで、水の 成長を抑えて凍結しないようにしている。

変温動物の中には、夏の暑さや乾燥などから身を守るため夏眠(かみん)するものもたくさんいる。えっ、冬眠ではなく、夏眠するのですか……。

鳥類は、基本的に冬眠しない。冬眠のときの体温は、外気温とほぼ同じ。兵庫県の六甲山で遭難した人が体温22度まで下がり、2週間も生きていて発見され助かったことがある。意識を失って、ほとんど何も食べなかった のだから、冬眠していたのと同じようなもの。いやはや、これはすごいことですね。

科学は誰も答えを知らない問題を自分で見つけて解かなければならないもの。新しい「問い」を立てて、それをいかにしたら解けるのか、解き方を自分で 考えるのが科学者で、それをプロとしてやっていくのが研究者の仕事。なるほど、ですね。

弁護士の仕事でも、正解はなく、絶えず次善の解決策を探っています。少しは似たところもあるように思いますが、いかがでしょうか。

(2026年3月刊。1980円)

法律のしごとはおもしろい!

カテゴリー:司法

(霧山昴)

著者 石田京子・濱中淳子 、 出版 岩波書店

弁護士になって50年以上たちました。私にとってまさに天職です。誰に気兼ねすることもなく、自由にモノが言え、そして工夫すると自由になる時間がそこそこ確保でき、豊かな大自然と少々まじわりながら、しかも大金持ちにはなれなくても、経済的にも早くから自立できています。

朝起きて雨戸を開けると、4月には庭のチューリップたちが迎えてくれます。今は黄ショウブとグラジオラスとアマリリスの花が庭を美しく飾っています。遠くには緑豊かな小山と丘が見えます。すぐ下には水田があり、蛙の鳴き声に悩まされていましたが、今は休耕田で、雑草が生い茂っているのが少々残念です。歩いて5分ほどの小川にはもうすぐホタルが飛びかうようになります。

空き家の目立つ古い住宅団地です。子ども会も老人会も消滅してしまいました。

法律家の仕事は単調ではありません。そのとおりです。法律もいろいろあるし、扱う人の意もさまざま。その人自分にあった面白さを発見でき、力を発揮できます。

勝負のかけひきに熱中できる人は、それを面白いと感じる。私は、かけひきは得意ではありませんし、勝負事にも関わりたくありません。負けるのが嫌だからです。なので、裁判で負けたら、落ち込んでしまいます。

他人に納得してもらえるよう、相手が理解できる言葉にして伝える。そのとき、裏づけとなる証拠や事実を並べて、筋道立てて文章で説明にいく。これは私の得意とするところです。そしてこれこそ法のしごとそのものです。

このとき、正解を探すという発想はありません。最善、次善、そしてよりましな選択肢を絶えず考えていきます。これもまた面白い、知的刺激のある作業です。

弁護士に向かない人がいます。対人間に関心が薄い人は、早く方向転換したほうがいいと思います。ビジネスでお金をたくさん稼ぎたい人は、さっさと起業したほうがいいです。人に興味、関心が薄いと弁護士の仕事は辛いばかりです。また、この本では長い文章を読むのが苦手な人は弁護士に向かないとしています。そのとおりです。大量の文書をさっと読んで、肝心な点をピックアップしていくのが求められます。AIにまかせることは出来ません。さらに暗記が好きな人も向いていないとしています。正解を求める発想も向きません。依頼者の立場に立って解決策を柔軟に考えていくことが求められます。

弁護士の仕事は面白いです。ぜひ、あなたも弁護士を目指してください。

(2026年4月刊。1450円+税)

筋肉はすごい

カテゴリー:人間

 (霧山昴)

著者  青井渉、 出版 中公新書

 

小腸から肛門までは7メートルもあり、食物の消化、吸収、排出の過程を一日ほどですます。腸のぜん動運動を担うのが筋肉。体の動くところには必ず筋肉がある。

筋肉には収縮タンパク質があり、これが収縮しては緩み、また収縮しては緩むという繰り返して、体を動かすことができる。 このエネルギーは、細胞の中にあるミトコンドリアでつくられる。赤筋はミトコンドリアがたくさん含まれているので、エネルギーをつくるのが得意。赤筋は持久系スポーツに、白筋は瞬発系スポーツに向いている筋肉。

私は週に1回、プールに行き自己流のクロールで40分かけて1キロ(25メートルを20回往復)泳ぎます。まさに持久系です。速くは泳げません。

筋線維の比率は生まれながら決まっていて、後天的な要因によって容易に変わることはない。なのでスポーツ競技の得意、不得手、運動神経の良さは、ある程度、遺伝子によって決まっている。

ミトコンドリアは細胞内のエネルギー発電所と呼ばれ、酸素を使って大量の栄養素を燃やしてエネルギーを発生させる。筋肉は、このエネルギーを使って収縮する。

ミトコンドリアは赤筋に多く、長距離走のときにはエネルギー供給に貢献する。ミトコンドリア 遺伝子は母方のみから遺伝する。

筋肉はマイオカインという物質を分泌している。(ホルモン)血液中の乳酸は、ほぼ筋肉に由来する。

血糖は、脳が使う主要なエネルギー源。かつて疲労物質とされていた乳酸は、エネルギーとして利用できる有用な物質と認識が改められている。

ヒトの体の水分(体液)は弱アルカリ性に保たれている。これが少しでも酸性に傾くとエネルギーをだすシステムが働かなくなり、筋肉の収縮ができなくなってしまう。これが疲労の原因。

長期間同じ姿勢をすると、筋肉の血流の流れが悪くなり、酸素の供給が不十分となる。そうすると、ミトコンドリアでの代謝が十分にできないので、水素イオンが多くでている。

筋肉の主なエネルギー源は(血液中ブドウ糖)糖と筋肉内グリコーゲンと脂肪。逆に言うと、筋肉の中にグリコーゲンの量が多いほど、バテにくい。

筋肉のミトコンドリアは加齢とともに減少。運動を日常的に行うと、ミトコンドリアの数が増え、質も高まるので、安静にしていても脂肪を燃焼しやすい筋肉になる。

加齢による筋肉の減少をサルコペニアと呼ぶ。やせている高齢者より、少しぽっちゃりした高齢者のほうが元気で、要介護状態になりにくい。

フレイルとは、高齢期に生理的予備能力が低下すること。

腸内細菌は単に腸内にいるだけでなく、さまざまな物質を生み出し、ヒトの体のさまざまな部位にメッセージを送っている。

毎年、子どもの日には、近くの小山 (388メートル)に登ってきました。はかなり勾配のきつい坂道もありますが、頂上にある見晴らしの(下界を眺めながら)いい場所でお弁当開きをする気分は最高です。のぼっておりて自宅にたどり着くまで3時間です。まだ、なんとかのぼりおりできてほっとしました。万一、山の中で転落でもしたら、「老人が山で遭難」と報道されるのではないでしょうか。それを考え、ぜひ避けたいと慎重にのぼり、またおりるようにしています。おりるときのほうが、膝がガクガクします。

(2025年10月刊、1078円)

核戦争、世界滅亡までの72分間

カテゴリー:社会

(霧山昴)

著者 アニー・ジェイコブセン 、 出版 朝日新聞出版

日本も核武装して日本を守るべきだと主張する政治家がいて、少なくない日本人がそうなのかなと思い込まされています。でも、核兵器は一度でも使われたら、この地球が終ってしまうという恐ろしい兵器なのです。この本を読んで改めて実感しました。

この本では、さまざまな状況を想定して、核戦争が起きたときの真実を恐ろしいほど写実的に描いています。

ワシントンにあるペンタゴンに1メガトンの核兵器が命中したら、たちまち周囲の空気は数百万度にまで熱せられ、巨大な火球が形成される。火球ははじめ時速数百万キロの速度で膨張し、数秒後には直径1.7キロの大きさに達する。その光と熱の威力は、コンクリートの表面を砕き壊し、金属は溶解・蒸発化し、石材は粉々に砕けて散り、人間は一瞬にして燃え尽き、炭となる。ペンタゴンの庁舎は一瞬のうちに粉塵と化す。すべての壁が木っ端みじんに砕け、2万7000人の職員は全員が即死する。火球の内側には何も残らない。

火球から放射される熱線は光速で広がり、中心から数キロ先まで、全方位見渡す限りの範囲にある可燃物を片端から発火させる。やがて、その猛火は、250平方キロをこえる範囲、600万人の住む地域を焼き尽くす。

ペンタゴンから東へ4キロ離れた野球場にいる3万5000人の観客の衣服が一斉に発火し、その場で焼け死ぬか、まもなく死に至る。

その後、さらに100万人が爆発から数秒のうちに深刻な熱傷(ヤケド)を負い、9割は死亡する。

人類が20世紀に核兵器を生み出したのは、世界を悪から救うためだった。そして21世紀の今、核兵器が世界を滅ぼそうとしている。焦土と化すまで徹底的に…。

アメリカ政府は「全面核戦争」に向けて態勢を整え、作戦を立て、シミュレーションを繰り返してきた。

全面核戦争とは、最短で20億人もの死者が出ることを前提とした、核使用をともなう第三次世界大戦である。

核兵器を持つことが、どうして核戦争から人を守ることになるのか? 抑止力が働かなくなったとき、いったい何が起きるのか?

 1985年、ロナルド・レーガン大統領とミハイル・ゴルバチョフ書記長は、共同声明でこう言った。核戦争に勝者はありえず、決して起こしてはならない。

アメリカは1770発の核兵器をもち、その大半が即発射可能な状態にある。現在、核兵器を保有しているのは9か国。アメリカ、ロシア、フランス、中国、イギリス、パキスタン、インド、イスラエルそして北朝鮮。

北朝鮮の核兵器は、おそらくソ連崩壊時に保管庫から盗み出され、売られたものだろう。核弾頭とデコイ(おとり弾頭)を見分けるためのレーダーシステムSBXには、数十億ドルの開発費と数億ドルの維持費がかかっている。

アメリカで核兵器の発射権限を持つのは大統領ただ一人。誰の許可も要しない。あの情緒不安定、言うことがくるくる変わり、大言壮語するトランプが地球の死活を左右するボタンを持つとは…、恐ろしすぎます。

核搭載ミサイルが原子炉を撃つというのは、想像を絶する最悪のシナリオだ。これ以上ひどい状況は考えられない。私は、通常ミサイルでも同じことだと思います。

原発防衛というが、核ミサイルの襲来を想定した訓練は一度も行われていない。なぜなら、その場合の防衛手段は存在しないから。

灼熱の球体が直径30メートルの大きさとなり、10分にわたって、どこまでも昇り続けるだろう。原子力発電所全体が海面に陥没し、クレーターとなる。火球の内側にあったものは、影形もなく一掃される。

核戦争が始まれば、開戦直後に5億人が命を落とし、生き残った人々も飢餓と死に追いやられる。北半球全体が放射性降下物により居住不能となる。

もはや清潔な水はどこにもない。あらゆる街灯も照明もない。あるのは、ろうそくの光だけ。電話もつながらない。15分もしないうちに、病気を媒介する虫がうようよと湧きはじめ、人間の排泄物を、ゴミを、そして死体をむさぼり食いはじめる…。

いやあ、核兵器の恐怖、また、そのむなしさの恐怖など、ひしひしと実感させられました。今夜はじっくり眠れそうもありません。

(2026年2月刊。3630円)

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