(霧山昴)
著者 西谷文和 、 出版 かもがわ出版
ガザの悲惨な状況は活字でしか伝えられません。映像がまったく紹介されないのを不思議に思っていると、イスラエルが日本を含めて世界のジャーナリスト立入の取材を禁止しているからだということを知りました。著者もガザを遠くから眺めるだけの映像にとどまっています。本当に残念です。
イスラエルの多くの国民はガザの人々が水も食料もなく苦しんでいる様子を見て、笑いものにして喜んでいるというのです。これもまた残念な現実です。ガザに住むアラブ人をハマスと同視して、死んでしまえと叫んでいます。むごいことです。
この本には、ネタニヤフとハマスは、ずっと持ちつ持たれつの関係だとしています。むしろ、ネタニヤフがずっと首相であり続けたのはハマスのおかげ、そのためカタール政府と一緒になってハマスに資金を提供してきたというのです。恐るべきことです。でも、ありうる話です。単なるフェイクニュースとは片づけられません。
イスラエルは「ペガサス」という商品を開発販売して、各国に販売している。ペガサスは、ライバルのスマホに忍び込んで、会話や写真を盗み出すという、ハッキングツール。
イスラエルの諜報部隊モサドは、イランの防犯カメラや通信網を完全に把握していて、イランの要人の行動経路や生活スタイルをつかんでいた。イラン戦争初日に、ハメネイ師と革命防衛隊の幹部を一挙に殺害したのは、その「成果」。
しかし、ハメネイ氏らを抹殺すればイランの政治体制が変わるというアメリカの予想はまったく外れだ。イランには反体制派があってもリーダーはいない。労働組合も野党も大きなものはない。デモの核も母体もない。イランの宗教支配体制は複雑で頑強。
イスラエルはヨルダン西岸に住むパレスチナ人全員の情報を得ていて、誰が入り、誰が出ていくのか、リアルタイムで把握できている。
イスラエルはパレスチナ側にあえて危険な工場を立地させている。安全基準も環境基準も守らない。排煙に苦しむパレスチナ住民をあざ笑いながら操業し、利益はユダヤ社会に落ちる。
ネタニヤフは、アメリカのトランプと極右の国内世論に支えられている。
ハマスのテロ行為は絶対に許せません。でも、イスラエルのガザ攻撃はあまりに度を越しています。一刻も早く止め、ガザの人道的復興支援に日本は手を貸すべきです。
写真がたくさんあって、悲惨な現実の一端に触れることができました。
(2026年6月刊。1980円+税)


