(霧山昴)
著者 加藤新太郎・中村直人 、 出版 商事法務
裁判所のなかに「残念な裁判官」が少なからずいるのが現実だと加藤新太郎元判事も認めています。
それは、判決が書けない人、審理が下手で知識が足りず、スキルも乏しく、記録をきちんと読めない(読まない)人。定型的な思い込みを持ち、先入観に由来する認識を先に置き、経験則も歪んでいて、その結論にあわせて証拠をつまみ食いし、形式的には一応それらしい判決を書く。だから、高裁の裁判官は、まず「誰が書いた判決か」を確認する。
実際いるんですよ、こんな裁判官が……。なので、私はいつも依頼者に向かって、裁判官を信用しちゃダメ、あてにしてはいけないんだと言っています。過度な期待をもっている世間知らずの依頼者が多いので、いつもいつも釘を刺しています。
高裁の裁判官にしてもそうです。裁判長になって半年間は、控訴棄却の判決が多い。理由は単純で、一審判決を利用して控訴棄却するほうが楽だから。原判決を破棄するには、改めて精密に検討し直さなければいけないのでエネルギーが要る。ところが高裁の裁判長になって1年たっても、控訴棄却を8割以上書く人がいる。
「油断すると、陪席はすぐに控訴棄却相当という合議メモを出してくる」と難波孝一元裁判官は嘆いた。
高裁は一回結審が多く、だいたい7割ほど。
裁判官の不祥事も起きていないとは言えません。神戸地裁の所長が電車内で痴漢したというのがありました。福岡高裁の裁判官が長距離バスで痴漢したこともありました。福岡高裁判事の妻の不倫に始まった福岡事件では、高裁長官、地裁所長まで事件隠しに動いていたように思います。やっぱり我が身が可愛いんでしょうね。
事件を溜めてしまう裁判体は証拠調べが多く、判決言渡しも多いので、とんとん控訴される。すると、記録整理に書記官が追われてハードワークになる。それで、証拠調べの前に進行協議をして、弁論を整理して和解をすすめると、案外、和解が成立する。今、多いのは、このパターンですよね。
まあ、一般民事事件は早く決着をつけたほうがよい事件がほとんどだと思うので、悪くはないのかもしれません……。
上巻に引き続き、大変面白く、勉強になりました。
(2026年8月刊。2860円)


