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「最高裁長官・石田和外」

(霧山昴)

著者 西川伸一 、 出版 岩波書店

私はみていませんが、NHKの朝ドラ『虎に翼』に登場した桂場等一郎のモデルとされる裁判官です。天皇主義者であり、続く矢口洪一とあわせて司法反動を推進していきました。

私にとって身近なのは、私たち26期司法修習生が司法研修所に入った1972年4月の1年前に起きた宮本康昭判事補(13期)の再任拒否、そして引き続き起きた23期司法修習生だった阪口徳雄さんの罷免です。

宮本康昭さんは熊本出身で、九大卒の真面目で有能な青法協会員裁判官でした。そんな宮本さんが再任拒否されたのは、思想・信条を理由とするものであることは明らかでした。

石田和外最高裁長官たちは裁判所を反共の砦とし、政府(権力)に盾つくような裁判官は根こそぎパージ(追放)しようとしたのです。もちろん、明らかに違憲、不当な拒否でしたから、全国の裁判官が宮本さんに連帯して再任を認めるよう要望しました。

結局、再任拒否は撤回されませんでしたが、宮本さんはなんと簡裁判事のほうはその後も任期満了まで勤めあげました。まことに胆のすわった人です。その後は、弁護士として弁護士会のなかで司法制度の改革に取り組みました。そこで私とも接点ができて、今90歳になる宮本さんと今日まで親しくつきあわせていただいています。

次の阪口修習生の罷免はひどいものです。阪口さんはクラス委員として壇上にあがって、司法研修所の守田所長に対して、任官拒否の不当性を質問しようとしたのでした。

ところが、研修所の中島事務局長が一方的に修了式の終了を宣言したのです。その間わずか1分15秒ほどでしかありません。なので阪口さんが終了式を騒然とさせて終了させたという罷免理由は、まったく事実に反します。

ところが、矢口洪一人事局長は、国会で阪口さんが「マイクをわしづかみにした」とか「マイクを無断で抜き取り、演説を開始した」とか、見てきたような嘘を平然と述べたのです。

そして、このとき阪口さんの罷免処分を決定したという最高裁判所の裁判官会議の議事録には何の記載もないのです。すべては石田長官の独裁専行ですすめられました。

なお、その前に司法研修所でも教官会議で無記名投票がおこなわれたのです。それによると、最多得票は、「罷免にはあたらない。しかし、何らかの処分はなさざるを得ない」というものでした。石田長官は現場の司研教官たちの評価をも簡単に蹴っているのです。

ブルーパージの悪影響は今に至るも尾を引いています。司法友動は許せないという思いを改めてさせられる本でもあります。

(2025年6月刊。 1900+税)

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