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大脱走

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 荒木 源 、 出版 小学館
就職に苦労した末に入社できた住宅リフォーム会社は典型的なブラック企業。
そんな会社に入ったとき、どうしたらよいか・・・。
とにかく契約をとること。新人がまずやらされるアポインターというのは、アポをとるのが、すべて。そのためには、まずたくさん「叩く」。
インターホンを押し続ける。200枚の名刺をわずか半月で使い切る。
アポインターは、あとを引き継ぐクローザーが、客と商談をすすめる材料を集めるお膳立ても整えておかなければいけない。
どんな仕事でも、仕事のない恐怖に比べれば、まだまし。
もちろん、サギまがいの住宅リフォーム会社に騙される客ばかりが世の中にいるわけではありません。逆に、騙したはずの客に会社が脅かされてしまうことだってありうるのです。そんなときには、会社は、それは現場の人間が社の方針とは違ってやったことで、社は責任がないと突き放してしまいます。怖い仕組みです。
そんなことを許していいのか・・・。社員が結束してブラック会社を変えよう。そう思っても、一緒に行動してくれる人はほとんどいない。みんな、自分の身が可愛い。じゃあ、どうする、どうなる・・・。
救いのあるような、ないような、身につまされるストーリー展開の本でした。
なかなか、こんなブラック企業って、なくなりませんよね。どうしたらいいんでしょうか・・・。
(2015年11月刊。1400円+税)

奪取、振り込め詐欺・10年史

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  鈴木 大介 、 出版  宝島スゴイ文庫
 この本は、一人でも多くの人に読まれるべきだと強く思いました。
 騙されないように気をつけましょう。銀行のATM操作でお金を受け取るつもりが送金させられてしまいかねません。郵パックで現金送れは詐欺です・・・
 そんな警告をいくらしても、詐欺被害は一向になくなりません。なぜなのか・・・。
 この本は加害者側の分業体制がすすんでいる内情を明らかにすると同時に、騙される側の情報がなぜ「犯人」たちに筒抜けになっているのか、名簿屋の最新の情報入手先を明らかにしています。そして、なぜ、被害者が被害を申告しないのか、多くの人が泣き寝入りしている、その理由も究明しています。
 私も、弁護士として何件もの被害者からの相談を受けましたが、大半は泣き寝入り状態で、被害回復はほとんど出来ていません。すぐに口座凍結はするのですが、すでに引き出されてしまっているものばかりですから、ほとんど実効性がありません。
 振り込め詐欺は何段階も進化をとげている。思いもよらないほど大きな組織と巧妙に仕組まれたネットワークがある。
 末端の集金役としての「ダシ子・ウケ子」。被害者に電話をかけるプレイヤー。それらを統括する番頭。組織の外部協力業者としての「名簿屋」と「道具屋」。天上人として現場に直接たずさわらず、組織に種銭(たねせん)を投げて収益を得る「金主」。犯罪である以前に、あくまで営利を追求する組織だ。
 何があっても頂上の金主だけは摘発されないという至上命題の下、組織は巧妙に合理化され、より多くの収益を上げるために詐欺のシナリオやターゲットの絞り込みを極め、現場要員の育成も徹底する。その企業活動としての振り込め詐欺組織の理念や組織論は、もはや一般の企業がぬるいと思えるほど卓抜したものとなっている。
 名簿屋の最新の入手先は二つ。一つは訪問介護事業者。介護事業の現場で働くホームヘルパーから、詐欺に適した高齢者の情報が商品として売られている。
 もう一つは、住宅のバリアフリーリフォームをした顧客リスト。バリアフリーが必要になる年齢で、リフォーム代金をポンと出せる人の名簿だ。
 そして、「下見屋」がこする。こするとは、情報を精査する作業のこと。
 かたり調査というのは、国勢調査とか市役所からの調査を装って電話をすること。高齢者は、暇で寂しいから、雑談をまじえると、どんどん必要ないことまで話してしまう傾向がある。
 つまり、名簿屋も親名簿をひっぱってくる収集班、下見班そしてパッケージの3段階に分かれている。
 最近すごく高値で取引されているのは「三度名簿」。詐欺で3回だまされたことのある人だけをのせた名簿。3度やられた人は、リスクも高いけれど、4度目も騙される可能性は高い。
 詐欺ではなく、恐喝まがいの脅し文句で迫るケースもある。声だけで怖い奴がいる。ターゲットの家の住所、携帯番号どころか、息子や孫の名前、勤め先を会話の端々に出す。もう逃げられない。報復が怖い。とりあえずお金さえ言われるまま支払っておけば、この問題から逃げられる。被害者が怯えてしまっているケースだ。
 いやはや本当に勉強になる本でした。ぜひ、みなさん、ご一読ください。
                   (2015年3月刊。720円+税)

これから戦場に向かいます

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  山本 美香 、 出版  ポプラ社
 4年前の夏(2012年8月)シリアで取材中に銃撃を受けて亡くなった女性カメラマンの文と写真です。その尊い犠牲を少しでも無駄にしてはいけないと思って写真集を買って眺めました。
 さすが戦場カメラマンです。緊迫した状況がひしひしと伝わってきます。
 でも、彼女の言葉が良いのです。まったくそのとおりです。平和のための戦争が大好きなアベ君に、よく言いきかせてやらなくてはいけません。
 一度動き出した戦争の歯車は簡単には止められない。
 だからこそ、戦争を始めてはいけない。
 ミサイルも爆弾も、まだ普通に生活していた人々の上に落ちた。そこで死ななければならなかった人たち。あまりにも無念だ。
 力でねじふせるやり方は、即効力があるから、表面的には効果があるように見える。しかし、人間の心に刻み込まれた憎しみは何かの拍子に爆発し、暴走するだろう。
 戦場で何が起きているのかを伝えることで、時間はかかるかもしれないが、いつの日か、何かが変わるかもしれない。そう信じて紛争地を歩いている。さあ、現地に到着だ。
 45歳という、油の乗り切った若さで、「戦死」してしまった彼女の無念さを私たちはきちんと受けとめなければいけないと思います。
 戦場でたくさんの人を殺した人ほど英雄視されるなんて、間違っています。
 自爆犯を志願する若者に、ほかにやるべき何かがあることをみんなで伝えたいものです。
 私は、戦場の無惨な写真を見るたびに中村哲さんのアフガニスタンでの、砂漠を緑の大地に変える壮大な取り組みを想起します。こんな取り組みこそ、日本が官民あげて協力すべきこと、もっと日本の若者を現地に送り出したいものだと思います。自衛隊員をアフリカに送るより、素手の日本人が砂漠の緑化工事に関与できる状況を一刻も早くつくり出したいものです。
 貴重な大判の写真集です。 ぜひ、あなたも手に取って眺めてみて下さい。
(2016年7月刊。1600円+税)

クリントン・キャッシュ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  ピーター・シュヴァイツァー 、 出版  メディア・コミュニケーション
 アメリカで民主党の大統領候補として、社会主義者を自称するサンダースが予想以上に健闘して、アメリカの民主主義もまだまだ捨てたものじゃないと思いました。
 大富豪のトランプに比べたらヒラリー・クリントンのほうがよほどましな候補だと私は考えています。ところが、この本は、ヒラリー・クリントンがオバマ政権の国務長官だったころ、夫のビルと組んで「違法」な荒稼ぎをしていたことを暴露しています。
 その手口は巧妙なので、「違法」とは言いにくいかもしれませんが、汚れた権力者たちと一緒になって汚い金もうけをしていた事実は隠せません。
 ヒラリーもビルも、やっぱりアメリカの大統領として金持ち本位の政治しかしていないんだな・・・、そう思うと、悲しい気持ちにもなりました。
 クリントン財団は、これまで外国の政府、企業、資産家から巨額の資金を受けとってきた。そして、それは「愛のしるし」だと説明されている。
 クリントン夫妻は、しばしば外国の団体からお金を受け取っている。
 その結果、クリントン夫妻は現在、異常なほど裕福になっている。
 2001年から2012年にかけてクリントン夫妻の総所得は少なくとも1億3650万ドル。
 ビル・クリントンの個人純資産は5500万ドルと推定されてる。
 つい先日の新聞では、クリントン夫妻の年収は10億円だと報道されていました。
 ビル・クリントンは、年平均で800万ドルを世界各地での講演料として受け取った。
 1回あたり50万ドル(5000万円)、75万ドルをこえることもある。
 なぜ、そんなに高額の講演料が支払われるのか、一体誰がそんな巨額のお金を支払うのか・・・。
 クリントン大統領は、任期最後の日に、マーク・リッチに対して恩赦を与えた。マーク・リッチは石油トレーダーであり、資産家であり、脱税犯であり、逃亡者だった。
 ヒラリーが上院議員であるあいだに、ビル・クリントンが得た巨額の講演料の3分の2は外国から入ってきた。ヒラリーが国務長官になってからは、さらに膨れあがり、数千万ドルがサウジアラビアやクウェート、アラブ首長国連邦といった外国政府や海外の資産家からクリントン財団に流れ込んだ。
 ビル・クリントンの講演料と国務長官時代のヒラリーの意思決定とのあいだには相関性が認められる。
 クリントンの講演料は大統領を退任したあと、減っていった。ところが、ヒラリーが2009年に国務長官になると、ビルの海外での高給の講演は劇的に増えた。ヒラリーが国務長官として外国に直接的な影響を与える問題について絶大な力をもっているときに、ビルの講演料は高額だった。
 クリントン夫妻は、クリントン財団への主要な寄付者の名前を公開していない。
 クリントン財団の評議員のうちの4人は、金融犯罪で告発され、有罪判決を受けている。独裁者や王族、法的な問題をかかえた海外投資家がクリントン財団への主要な寄付者にいるのは間違いない。
 こうなると、トランプにしろ、ヒラリーにしろ、「1%」のための大統領でしかないということになりますね。それをアベ首相が見習っているわけです。なんとかして早く変えたいものです。
(2016年2月刊。1800円+税)

韓国軍と集団的自衛権

カテゴリー:朝鮮・韓国

(韓国)
著者 裵 淵弘 、 出版 旬 報社 
 日本でも安保法制が施行され、いつ日本の若者たちがアフリカの戦場で殺し殺されるか分からない事態が迫っています。戦後70年間、一人の戦死者も出さなかった日本ですが、戦死者続出という事態になれば日本社会の雰囲気が一変し、今より一層ギスギスした社会状況になるのではないかと本気で心配しています。もちろん、被害者になるだけではありません。加害者となり、「敵の一味」として、テロリストによる報復を恐れなくてはならなくなるでしょう。新幹線や地下鉄、飛行機に安心して乗れない、50ケ所以上もある原発が狙われてしまったら、狭い日本列島どこにも住めなくなってしまいます。
安倍首相のいう国際安保環境が激変してから、しまった、あのときアベに反対しておくんだったと後悔しても手遅れだった、、、。   
そんな日が来ないことを、私は心から願っています。
べトナム戦争のときの、日本アメリカからの参戦要求を断ることができました。安保法制がなかったからです。お隣の韓国は、アメリカの命じるまま大量の韓国軍をベトナムに派遣しました。その結果、韓国社会には経済的発展がもたらされた一方で、多くの韓国の若者たちが人知れず泣きました。その深刻な実情が明らかにされています。
1964年から1973年までの8年あまりの間にベトナムに派遣された韓国兵は25万3000人。今も生存しているのは19万人。うち14万人がベトナムで浴びた枯葉剤による後遺症に苦しんでいる。 除隊後に病死した6万人の死因も疑わしい。
ベトナム帰りの元韓国兵の平均年齢は70歳。韓国人の平均寿命は80歳なので、死亡率がとても高い。しかも、6万人近くの人が重篤な患者だ。
アメリカがベトナムでつかった枯葉剤の毒性は強く、イペリットやサリンよりも強力。10億分の1グラムでガンを引き起こす。
ベトナム戦争に従軍したアメリカ兵は259万人。その1割に枯葉剤の被害が認められる。
ところが、当時は誰もが害のない除草剤か殺虫剤だと思い込み、アメリカ軍隊から散布された霧状の薬品を、わざわざ服を脱いで浴びていた。そうすると気持ちがいいし、蚊にも刺されなかった。
朴正煕大統領は、在韓米軍の削減を恐れていた。そして、アメリカの要求にこたえることで、1億5000万ドルが韓国に提供されることになった。日本とアメリカの援助によって、朴大統領は「漢江の奇跡」を演出することができた。
国家存亡にかかわる安保危機が経済建設の利権に様変わりした。
アメリカの求めに応じて戦闘部隊を送り出したのは韓国だけだった。オーストラリア4533人、フィリピン2063人など、派遣はしたが戦闘部隊ではなかった。
しかし、現地で指揮をとった韓国軍司令長官は、誰より戦争に悲観的だった。
「ベトナムでのゲリラ戦に勝つ見込みはない」
行かないわけにもいかず、しかも勝つこともできない戦争だった。
韓国軍の戦費は、兵士の月給をふくめて、すべてアメリカ政府から支給された。兵士の給料の8割は本国に送検され、残り2割も現地で韓国産テレビを買わせるなどして、100%が韓国に流れ込んだ。それは総額2億ドルをこえ、高い失業率と外貨不足に悔やんでいた韓国経済を救った。
ベトナムに「現代建設」や「韓進高事」がアメリカ軍の下請として入って、事業規模を大きく拡大し、韓国の高度経済成長を牽引していった。ベトナム特需は10億ドルに以上のぼった。
 いま、韓国でも兵役を拒否する人がいる。10年間で5723人。毎年500人以上の若者が兵役に応じず、刑務所に入っている。
 大変勉強になりました。考えさせられます。憲法違反の安保法制を一刻も早く廃止しましょう。
(2016年 6月刊 1400円+税)

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