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フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ヴァンソン藤井由美、宇部宮浄人 、 出版  学芸出版社
日本全国、どこに行っても中心街のさびれ方はすさまじいものがあります。どこもかしこもシャッター通り商店街になっています。残念です。ところが、フランスでは地方都市の中心部には人が集まっていて、シャッター通りにはなっていません。その理由を探った本です。写真もたくさんあって、納得できる理由が示されています。まずは、日本の現状です。
日本の商店数は半減し、年間販売額も3分の2以下となった。人口10万人未満の小都市だと、商店数で3分の1、年間販売額は半分以下。人口10万人から100万人未満の都市や100万人以上の大都市も、商店数は半減し、年間販売額は7割以下ないし6割まで低下している。
フランスの地方都市の中心市街地は、「歩いて楽しいまちづくり」が出来ているので、土曜日など、身動きできないほど混雑する。
フランス人は、日本人が定年してから故郷へUターンを考えるというのではなく、大学と最初の就職を終えて、30代半ばから地方都市での生活を考える。これは日本と違いますね・・・。
フランスの小都市でも、郊外には大型店舗がある。フランスでも、クルマは生活必需品だ。しかし、中心市街地にはクルマを乗り入れないように計画されている。市内電車だ。低床でカラフルな市内電車が市街地を走り、そこにはクルマの乗り入れを禁止している。
歩行者優先のまちづくりをすすめている。
自転車が大いに奨励されている。電動自動車の普及率も37%。自転車レンタルシステムもあるが、1年間、自転車を無料貸し出しする都市もある。
久留米市でも自転車のレンタルシステムが出来ていますが、実際の利用率はどうなのでしょうか・・・。
フランスでシャッター通りにさせない工夫の一つとして、「空き店舗税」があります。1年以上も空き家にしておくと、所有者には「空き家税」が課税されるのです。これによって、所有者の貸し渋りがなくなります。
にぎわう中心市街地に店をかまえている人々に、古くから住人でいるオーナー店主は少なくて、ほとんどがテナント店主。
そういうことなんですね。人々が集まることが先決なので、古くから、そこにいる人々のために何かがされているのではないようです。発想の転換が必要です。
フランス人は、食料品買い出しの72%を大型スーパーでし、残りをまちのパン屋、肉屋、惣菜屋で購入する。そして衣料品は、スーパーより個人店舗で購入している。DVDや本はインターネット購入する。
日本人も、こんな買い分け方をして、個人商店の利用をもっと考えたら、中心地の商店も生きていけるのですね・・・。
わずか200頁のブックレットですが、今後の日本の中小都市にとって役に立つ本だと思いました。
(2016年12月刊。2300円+税)

新たな魚類大系統

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 宮 正樹 、 出版  慶應義塾大学出版会
著者は小学生のころからヘラブナ釣りに凝っていて、高校のときには学校を休んでまでも釣りに出かけていたほど、魚が好きだったそうです。
私は小学生の低学年のころは、一人ででも遠くのレンコン堀へザリガニ釣りに出かけていました。高学年になると、大川の叔父の家の周囲のクリークでヘラブナ釣りをしていました。静かな水面を見つめていて、浮きがピクピクと沈む様子は、夜、布団に入ってからも脳裏から離れないものです。弁護士になってからも、しばらくはマイカーのトランクに釣り道具を入れておいて、柳川のクリークで釣りをしていたことがありました。それほど当時はヒマだったのです。
子どもたちが小学生のころには、自宅のすぐ近くの小川で釣りの手ほどきをしたのですが、教える師匠より教えられる子どものほうが何匹も釣り上げてしまい、面目を喪ったこともありました。まあ、子どもに自信をつけさせて良かったとは思いますが・・・。
この本には、魚のDNAを比較解析することによって、系統関係を解き明かす「分子系統学」の成果が紹介されています。
魚は3万種を優に超す。5億年もの太古の昔に存在した唯一の祖先種から、種分化と絶滅を繰り返して現在の3万種に進化したのだ。
たった一つの祖先種が5億年かけて今の3万種の魚になったとは、そしてそれが判明したとは、すごいことですよね。
一般に魚類(さかな)と呼ばれている生きものは、脊椎動物の初期進化で水中生活から脱することのなかった、由来が異なる4つのグループの寄り合い所帯にすぎない。
①顎をもたない無顎類(ヤツメウナギやヌタウナギの仲間)
②中軸骨格が軟骨からできている「軟骨魚類」(サメやエイ、ギンザメの仲間)
③各鰭の鰭条がよく発達した「条鰭類」(ほとんどすべての魚)
④肉鰭類(シーラカンス、ハイギョ)
これら4つのグループの進化的な由来は大きく異なっている。
ウナギの祖先は深海魚である。日本列島に分布するメダカにはキタノメダカとミナミメダカと二種いる。
おサカナくんではありませんが、魚好きの人には魚とは何かを考えさせてくれる、欠かせない本です。
(2016年10月刊。2400円+税)

カフェインの真実

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 マリー・カーペンター 、 出版  白揚社
コカ・コーラの成分は今も怪しいと私は疑っています。中毒性の原料が混じっているからこそ、そんなに美味しくもないのに、タバコのように、いつまでも止められずに飲み続ける人々がいるのです。
コカ・コーラの名前は、初期の製法に入っていた2種類の興奮剤に由来する。南米産のコカの葉と、カフェインをふくむアフリカ原産のコカ・ナッツだ。
20世紀初めのコカ・コーラ1杯(250ml)には81ミリグラムのカフェインが入っていた。これは現代のコカ・コーラ350ミリリットル缶に含まれているカフェイン量の倍以上だ。裁判のあと、コカ・コーラ社は、カフェイン量を減らした。
そして、粉末カフェインをつかっている。合成カフェインは、植物がつくり出したカフェインを横取りしたものではなく、カフェインの成分を池の物質から流用して組み上げたカフェインだ。
モンサント化学工業は合成カフェインを大々的に生産している。
あの悪名高きモンサントがここにも登場するのに驚きます。
カフェインは運動能力を高める薬物だ。しかし、たいていの競技で使用が認められている。カフェインの作用は、運動能力や認知力の向上、そして不眠や不安障害に至るまで、多岐にわたる。
カフェインには、うつ病を予防する効用があるかもしれない。コーヒーを飲む人のほうがうつ病になる人が少ない。そして、もっともコーヒーを飲む人は、もっともうつ病になりにくい。
カフェインの禁断症状は、実に不快なもので、頭痛や筋肉痛、疲労感、無気力、うつ状態をともなうことが多い。カフェインの摂取を急にやめると、多くのアメリカ人はひどい不快感に見舞われる危険性が高い。
カフェインは、神経細胞に対する作用の仕方がコカインやヘロインのような依存性薬物とは異なっている。とくに、脳内のドーパ濃度に及ぼす影響は少ないようだ。
私はコンビニにはあまり入りたくないのですが、街角にあるコーヒーショップでは、よくカフェラテを飲みます。さすがに、二杯目は抹茶ラテにすることも多いのですが・・・。
(2016年12刊。2500円+税)

お寺さん崩壊

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 水月 昭道 、 出版  新潮新書
坊主、丸もうけ・・・なんて、大ウソなんですよ。そう訴えている本です。
この本を読むと、なるほど、そうだろうなと納得します。だって、それほどお寺をみんな利用していないでしょ。
たとえば、お葬式にしてもそうですし、戒名にしても、私の身内が亡くなったとき、本人の遺思でつけませんでした。私も、そんなのいりません。
檀家が激減して、寺院経営は大ピンチ。そのとおりだと思います。
ところが、その一方で、怪しげな「寺院」のボッタクリ商法は昔も今も繁盛していますし、インチキ占いも相変わらずです。人間、困ったときには、どこかにすがりたいのですよね・・・。
いま、日本全国で、急激な勢いでお寺が崩壊している。いうまでもなく、経営難からだ。
清らかな精神的空間が日常から消えていくとき、荒れがちな「私」の心を鎮める装置を、いったいどこに求めたらいいのか・・・。
この10年間に、中国地方で宗教法人が減少した。広島で22法人、島根で24法人。とくに、浄土真宗系に多い。全国的には、6万法人(36%)が25年後には消滅していると推測されている。
代務住職とは、そのお寺本来の住職に代わって法事や葬式をつとめる近隣のお寺の住職のこと。
檀家の限界点は300軒。浄土真宗は葬儀のときお布施が他宗派より比較的安くて、100軒の檀家(門徒)がいるとして、年に300万円の収入となる。300軒だと900万円になる。年会費(護持費)は、1~2万円が普通なので、300軒の檀徒だと300~600万円。ところが、一般的なお寺では檀家は300軒にならないところが圧倒的。
したがって、お寺の住職は、年200万円ほどの給与となる。
宗教法人には、住職をふくめて3人以上の責任役員を置くことが法律で決まっている。
坊守(ぼうもり)は、住職の妻のこと。
寺族は、寺院に生まれた人間や住職の妻のこと。
ご院家(いんげ)さん。お坊さん同士の呼びかた。
住職の息子が跡取りを拒否することも珍しくない。
院号は、20万円以上の寄付があった人が対象。立派な布施行をしたことに対して授けられるのが院号。地方寺院が院号授与によって浄財をもらうことはない。ということは本山へ行く。ただし、後日、寺院に手数料として15%の「お返し」が本山からある。
浄土真宗本願寺派では、前年比で4億円のマイナスとなっている(H27)。
浄土真宗は、阿弥陀如来一仏が中心。
お布施は、本来なら、自分の手にあまるものを仏さまに差し出すことで、はじめて心に安らぎをいただけるという考えにもとづくもの。
他力本願を、努力しないで人頼みにするというのは、まったくの誤用。仏の本当の願い、それ(他力)に導かれることによって、煩悩の固まりである私たちであっても悟りの世界を垣間見られるようになるみたいだ。これが本願他力とされるもの。
水月とは、みづきと読むそうです。福岡のお寺の若き(若くもないのですが・・・)住職による本です。
(2017年1月刊。760円+税)

キャスターという仕事

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 国谷 裕子 、 出版  岩波新書
インタビューする前には、徹底して調べておく。だけど、本番では、いったん白紙に戻して、目の前の人物の話によく耳を傾ける。そうすることで話についていけ、的確な質問が出来る。予定した筋書きばかりを追おうとしたらダメ。
これはキャスターとしての心構えですが、弁護士の反対尋問についても言えることです。
ともかく目の前の証人の言葉そして表情を、よく聞き、また見てから、その隠された弱点をあばき出すのです。下を向いて必死でメモをとっていたらいけません。
準備は徹底的にする。しかし、あらかじめ想定したシナリオ本番では捨ててのぞむ。言葉だけでなく、その人全体から発せられているメッセージをしっかりと受けとめる。そして大切なことは、きちんとした答えを求めて、しつこくこだわる。
良いインタビューは、次の質問を忘れて相手の話を聞けたときに初めて行えるもの。
キャスターは、はじめに抱いた疑問を最後まで持ち続けることが大切だ。
インタビューに必要なものは、その人を理解したいという情熱だ。
著者が高倉健をインタビューしたとき、答えがかえってくるまでに、なんと17秒もの空白が生じたそうです。沈黙の17秒って、すごく長いですよね。でも、著者はじっと耐えて待ちました。えらいですね。並みの人にはマネできませんよね。
「あいまいな言葉で質問すると、あいまいな答えしか返ってこない。正確な質問をすると、正確な答えが返ってくる。明確な定義をもつ言葉でコミュニケーションすれば、その人は自分の言葉に責任をもつようになる」
これは、カルロス・ゴーンから聞いた言葉だそうです。さすがにフランスで高等教育を受けた人の言葉だと思いました。
正確な答えを引き出すためには、インタビューは、まさに正確な質問をしなければならない。難しいのは、入念に準備をして、その準備のとおりインタビューしようとすると、大失敗につながりかねないこと。
想定問答を練って、そのとおりに質問すると、実際のインタビューでは絶対にうまくいかない。相手の話が全然聞こえてこなくなる。自分のシナリオばかりに気をとられ、頭の中は、「次に何を質問しようか」ということで一杯になってしまうので、目の前の人の話や身体全体から出ている言葉を聞くことができなくなってしまう。
これは、法廷における敵性証人の反対尋問と、まったく同じことです。
23年間もNKHの「クローズアップ現代」でキャスターをつとめた著者ならではの話が紹介されていて、なるほど、そうだったのかと思いました。といっても、私自身はテレビは見ませんので、「クロ現」をみたことは、ほとんどありません。
緊張感のある番組づくりに著者たちが精魂かたむけていたことが、ひしひしと伝わってくる本でもあります。
NHKには、このあいだまで史上最低といわれた籾井会長が君臨していましたが、新会長のもとでも、相変わらずアベ政治の片棒かつぎをしていくのでしょうか。やめてほしいです。
権力におもねることのない番組づくりを期待します。
(2017年1月刊。840円+税)

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