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胎児のはなし

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 最相 葉月、増﨑 英明 、 出版  ミシマ社
人間が生まれる前の胎児についての本です。赤ちゃん学には大いなる関心がありますが、胎児についてどれだけ科学的に判明しているのか知りたくて読みました。
産婦人科医との問答として書かれていますので、大変読みやすく、一気に読み終えました。
父親のDNAが胎児を介して母親に入っているなんて、ええっ、ホントですか・・・と叫びたくなりました。
女性の性染色体がXX、男性はXY。Xの大きさが手の小指とすると、Yって小指の爪くらいしかない。おまけだ。
女性にXが2つあるというのは、一つが壊れてもいいようにということ。
女性はXを二つもっているのに、男性は一つしかないので、男性は早く死んでしまう。
えっ、えっ、本当ですか・・・。
小さいころの胎児は、みんな女性の性器の形をしている。
やっぱり、人間は女性が原型なんですよね・・・。
2000年ころに3Dの器械がつくられて、立体表示ができるので、今では胎児が立体のまま動いているのが見える。
「十月十日」って嘘。実際には9ヶ月ちょっとで生まれる。胎児の大きさは妊娠20週くらいまで、個体差がほとんどない。
超音波が登場して、予定日は完璧にクリアした。今では、予定日は、プラスマイマス2日。
胎児はおしっこを出して、それを飲む。30ccたまると、おしっこを出す。これは60分の間隔。1日に700cc
初期のころの羊水は血清と一緒。母親の血液。それが生まれる頃には、おしっこと同じ。
胎児は便はしない。9ヶ月間、出さないでためておく。出産したあと、緑色の便を出す。ビリルビン(胆汁色素)のせいで緑色になっている。
出産と潮の満ち引きは関係ない。
胎児はずっと寝ている。レム睡眠が長い。だから、胎児は夢ばっかり見ている。
自然分娩だろうと、帝王切開だろうと、元気に生まれたら、それでいい。
1950年ころの母体死亡率は600分娩に1つ。今は3万分の1。今でも毎年50人ほどがお産で亡くなっている。1950年代には毎年3000人が亡くなっていた。
妊娠中にアルコールを飲んだら、アルコールは胎児にいく。胎児性アルコール症候群というものがある。
体外受精による出産は、世界で700万人、日本で50万人ほどいる。
人間とは何かを知ることができる本でもあります。
(2019年3月刊。1900円+税)

めんそーれ!化学

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 盛口 満 、 出版  岩波ジュニア新書
私の息子が埼玉にある自由の森学園にいたとき、教師の一人だったのが著者です。なかなか変わった元気のある教師がいるものだと思っていましたら、その後、著者は沖縄に移住し、沖縄では夜間中学で理科を教え、今は沖縄大学で理科教育を担当しています。
この本は、夜間中学で生徒たちに化学を教えている授業風景を活字にしたものです。
夜間中学の生徒は、60代、70代の人たち、圧倒的に女性です。彼女らは教師の話に自分の生活体験を踏まえて反応します。その変わったやりとりが、本書の魅力となっています。
夜間中学での授業は、国家検定の教科書とは無縁のようで、初日の化学講話は、なんと肉じゃがをつくることから始まります。そして、ロウソクづくりでロウソクの化学を学びます。
よく似た外観をしているけれど、ゼリーと寒天、ナタデココは原料も成分も異なっている。ゼリーは、動物のコラーゲンが原料で、タンパク質。寒天は、テングサなどの海藻がつくり出したアガロースと呼ばれる炭水化物の仲間。ナタデココは、ココヤシのジュースを微生物を発酵させることによってつくられる。その成分はセルロースだ。セルロースは、それを分解できるのは、微生物とシロアリ。
ヤギは紙を食べない。ヤギ自身はセルロースを分離することはない。セルロースを分解できるのは、微生物とシロアリ(そして一部のゴキブリ)のみ。
化学の授業を通して、沖縄のおばあたちの楽観的な生活を知ることができ、化学もまた現実のなかで生きていると思ったことでした。
(2018年12月刊。880円+税)

そこにあった江戸

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 上条 真埜介 、 出版  求龍堂
幕末から明治初めにかけての日本を外国人が撮影した写真が集められています。当時の日本人の膚黒さを実感させられます。白黒写真だったのを彩色して、カラー写真のように見える写真集です。
もちろん自動車なんて走っていないわけですが、それにしても住還道路が幅広いことに驚かされます。両側にワラぶきの民家が建ち並び、道路の真ん中を排水溝が走っています。ほこりっぽいけれど、清潔な町だったのですね。
子どもたちの姿は、ほんの少ししか写真にとらえられていません。子育てするのも子ども、とりわけ娘でした。子だくさんだったようです。
幕末に来日した西洋人たちは物にとらわれない日本人の暮らしぶり、清らかな目をしている日本人の子どもたち、そして満面に屈託のない笑みをたたえる農村の子どもらに心が打たれたようです。
「犬が向こうからやって来た。私は威嚇するように屈んで小石を拾った。犬は気にせず歩いてくる。私は、それに驚き、慌てて手の中の石を犬のほうに投げた。どこの国でも、犬は石を拾おうとする人影を見ただけで他所へ行く。しかし、日本では違う。その犬は、どうしたことか、足元に転がる石を見て首を傾けると、近くに寄ってきた。犬の顔は優しかった。こんな国があるのか、オーマイ」
子どもだけでなく、犬にまで驚いたのでした。
妻籠(つまご)とか大内宿(しゅく)など、江戸情緒をたっぷり残しているところありますよね。ぜひ行ってみたいです。九州にも、島原とか知覧に武家屋敷が一部残っています。実際に居住すると不便なことも多いでしょうが、観光資源ともなりますし、昔の人の生活をしのぶ格好の学習資材としてぜひ保存・活用してほしいものです。
大判の写真集ですし、4500円もしますので、ぜひ図書館で手にとって眺めてみてください。きっと江戸時代のイメージが豊かになりますよ・・・。
(2018年11月刊。4500円+税)

横田空域

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 吉田 敏浩 、 出版  角川新書
実に腹の立つ本です。途中で、あまりにバカバカしくなって何度も読むのをやめたくなりました。いえ、著者の悪口ではなく、この本をけなしているわけでもありません。
日本の空をアメリカが支配していて、アベ政権は文句のひとつも言おうとしないバカさかげんに腹を立てたのです。まったく、これでは恥ずかしくて日本は独立国家とはとても言えません。ドイツやイタリアはアメリカに言うべきことをきちんと言っているのに、日本だけがアメリカの言いなり、アメリカに隷従しているのです。例の思いやり予算と同じです。アメリカにはほんの少しだってたてつけないというのですから、今のアベ政権なんて、売国奴政権みたいなものです。なさけない限りです。
横田空域とは、正式には横田進入管制区といい、「横田ラフコン」と略される。南北で最長300キロ、東西で最長120キロ、首都圏から関東・中部地方にかける地域の上空をすっぽり覆っている。高度2450メートルから7000メートルまで、6段階に設置され、日本列島の中央をさえぎる巨大な「空の壁」となっている。
横田基地のアメリカ軍が横田空域の航空管制を握っているため、羽田空港や成田空港に出入りする民間機は、アメリカ軍の許可がなければ横田空域内を通過できない。そのため迂回を強いられる。
日本の空の主権がアメリカ軍によって侵害されている。世界的にも異例な、独立国としてあるまじき状態が長く続いている。
そして、この横田空域でアメリカ軍は、低空飛行訓練、対地攻撃訓練、パラシュート降下訓練にフルに利用している。まさしく軍事空域である。事故率が高く、欠陥機とも呼ばれているオスプレイも何の制約も受けずに首都圏の空を飛び回っている。
この横田空域には、実は国内法上の法的根拠は何もない。日米地位協定にも明文の規定はない。日米合同委員会の密約があるだけ。
一国の首都の中心部にフェンスで囲まれ、銃で武装した警備員がいて、外国の軍事高官や将校、政府要人に加えて、情報部隊の諜報員までが出入りする外国軍基地が存在している。尋常ではない。ここは事実上の治外法権ゾーンになっている。
2017年11月、トランプ大統領は、大統領専用機を羽田でも成田でもなく、横田基地に乗りつけた。そこから米軍ヘリで六本木のヘリポート基地に飛んでくる。これは日本を独立国家とみていないことを示しています。
横田基地から出入りしているアメリカ人は出入国管理局の対象とはならず、出入国の記録もないと聞いています。アメリカの裏庭の感覚で出入りしているのです。許せません。
イラク戦争に従軍したアメリカ軍パイロットは、日本の空で操縦・攻撃の技能、戦技を磨いて、イラクの戦場へ行って激しい空爆を繰り返した。つまり、アメリカのイラク侵略戦争を日本は直接的に支えたのです。
在日米軍基地は、アメリカ軍の海外での戦争の出撃拠点となっている。日本の防衛のためにアメリカ軍がいるわけではありません。そんな戦争のための基地の維持費など、アメリカ軍の経費を年に6000~7000億円も日本は税金で負担している。
うっ、うっ、ホント許せません。海外でのアメリカ軍の人殺し作戦を私たちが税金で支えるなんて・・・。
アメリカ軍だって、アメリカ本土では、ほとんど人の住んでいない広大な砂漠地帯などで低空飛行訓練をしているのです。なのに、日本では都市の上を我が物顔で低空飛行を続けています。そして、ときに学校の校庭に不時着したり、部品を空から落とすのです。なんということでしょうか・・・。
ドイツやイタリアにできたことが、日本にもできないはずはありません。要は政府のやる気です。そして、それを後押しする国民の監視の目なのです。
わすか280頁ほどのちっぽけな新書ですが、独立国家とは言えない恥ずかしい日本の実体をあますところなく明らかにした怒りの本です。ぜひ、あなたも最後まで読んでください。
(2019年2月刊。840円+税)

日米安保体制史

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 吉次 公介 、 出版  岩波新書
辺野古の埋立を安倍政権が今なお強引にすすめていることに怒りと大いなる疑問を感じています。いったい、主権者たる日本国民(この場合は、直接の当事者である沖縄県民)の明確な意思に反して行政がすすめられてよいものでしょうか・・・。
県民投票で7割の埋立反対の意思表示を踏みにじっていいという根拠は何なのでしょうか。それほど、日本はアメリカに奉仕しなければいけないことになっているのですか。アメリカは日本を守るつもりなんてないと本人(アメリカ政府当局)が何度も明言しているのに、漠然とイザとなったらアメリカは日本を守ってくれるはずだという幻想に多くの日本人が今なおしがみついているようにしか見えないのはどうしたことでしょう・・・。
日米安保条約があるから日本の平和は守られているなんて、単なる幻想でしかないと私は考えています。この本は、日米安保条約とそれにもとづく安保体制の変遷を明らかにしています。
かつて沖縄には1000発以上の核兵器が配置されていた。1950年代に、アメリカ軍にとって沖縄は海兵隊と核兵器の拠点だった。
アメリカによるベトナム侵略戦争のときには、B52戦略爆撃機が嘉手納基地から直接ベトナムへ出撃していった。毎月350回も出撃した。
ところが、その後、アメリカの核戦略が変わり、地上配備型核兵器から、潜水艦搭載型核兵器へ重心が移り、沖縄から核兵器を撤去した。しかし、いったん有事の際には核兵器を自由に持ち込めるように佐藤首相とニクソン大統領は「沖縄核密約」をかわした。にもかかわらず、佐藤首相は表向きは核抜き返還をアメリカから勝ちとったなどと宣伝し、ノーベル平和賞まで受賞するに至った。日本の首相は今のアベと同じく昔からとんでもない大嘘つきだったのです。
日本に駐留しているアメリカ軍は日本政府から至れり尽くせりの厚遇を受けている。高速道路だって無料ですよね。その典型が悪名高い「思いやり予算」です。当初は、一時的なものだと説明され、年に62億円でした。しかし、恒常的なものとなり、今では年間5000億円ものアメリカ軍駐留経費を負担しています。
日本って、本当にお金持ち国家なんですね。これだけのお金を大学生や司法修習生の奨学金にまわしたら、日本の将来も前途洋々たるものになると思いますよ・・・。
いま、アベ首相はアメリカに追従するだけで、韓国や中国とますます冷たい関係にあります。北朝鮮ともろくに話し合いもしていないため、拉致問題の関係も遠のくばかりです。
著者は、アメリカ軍の権益と日本の対米協力の拡大を追求するだけの安保体制のあり方は考え直す必要があると提言しています。まったく同感です。
辺野古の埋立をどんなに強引にしたって普天間基地がなくなることなんてない、このことを私たちはきちんと認識すべきです。そして、そろそろ安保条約そのものをなくすべきではないでしょうか・・・。
(2018年10月刊。860円+税)

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