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ディープ・スロート、大統領を葬った男

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著者:ボブ・ウッドワード、出版社:文芸春秋
 「大統領の陰謀」は、もちろん私も読みました。誰が新聞記者に情報を提供していたディープ・スロートだったのか、長いあいだの謎となっていました。それこそ日の目を見ずに「迷宮入り」になると思っていたところ、ディープ・スロート本人が名乗り出てきたのです。
 正直いって、この本は犯人の答えが分かって読む推理小説のようなものだから・・・と、読む前は、まったく期待していませんでした。ところが、どうしてどうして、さすがアメリカの敏腕記者だけのことはあります。地下駐車場での会合の様子、連絡のとりあい方などをふくめて、当時の状況がリアルに再現されていて、再びウォーターゲート事件の発覚当時の状況を追体験することができました。
 それにしても、FBI副長官がスパイだったとは・・・。
 ニクソン政権は記者に情報を漏らしている高官を突きとめるため、ホワイトハウスの補佐官の電話回線17本を盗聴していたそうです。日本は、どうなんでしょうか・・・。
 ボブウッドワードがフェルト副長官と知りあったのは、まだボブウッドワードが記者になる前からのことだったのです。人生の出会い、そして体当たり取材の大切さをしみじみ感じました。
 なぜフェルト副長官はスパイ行為をはたらいたのか。今にして思えば、フェルトは自分がFBIを護っていると自負していたのだ。ウォーターゲート事件に無数の触手があることを示す材料をFBIはつかんでいたが、それらは顧みられず、葬り去られていた。政治的理由からFBIを操ろうとしたニクソン政権とそのやり口を、フェルトは徹底的に侮蔑していた。フェルトは恐らくボブウッドワードを自分の諜報員と見なしていたのだろう。
 ところで、ニクソン大統領はフェルトがディープ・スロートだということを補佐官から知らされた。そのときの秘密録音テープには次のような会話がある。
 「フェルトはFBIのトップの地位が欲しいのです」
 「やつはカトリックか?」
 「いいえ、ユダヤ教徒です」
 「なんだと、ユダヤ人がFBI上層部にいたのか?」
 「それで万事説明がつくでしょう」
 このやりとりは、ボブウッドワードの周辺に、つまりポスト紙にもディープ・スロートがいたことを示しています。
 フェルトはたしかにフーヴァーFBI長官が死んだあとの長官になるつもりでいました。ところが、それが2回も裏切られてしまったのです。ただし、それだけが原因でポスト紙への情報提供者になったのではないようです。
 フェルトはFBI副長官として、1972年当時の現場捜査官の不満と疑念を知っていた。FBI局内は、ニクソンは嘘をついている、ホワイトハウスはもみ消そうとしているという叫び声があがっている。
 ニクソン政権がFBIにとってきわめて由々しい問題になったのは、上層部ぐるみで支配権を握ろうとしたから。FBIの中立公正とそれにともなう優位をふたたび強化する道具としてフェルトはウォーターゲート事件を利用した。最終的には、FBIは深刻ではないものの長い歳月癒えない損害をこうむった。ニクソンの痛手はさらに大きかった。いや、すべてを失った。大統領職、権力、道徳的権威の残滓。ニクソンは汚辱にまみれた。マーク・フェルトはそれと対照的に、わが道を歩み、ひそかな人生に耐えて生き延び、勝利をおさめた。
 ニクソンの側近のほとんど全員がニクソンを裏切った。証言し、回顧録を書いた。ニクソンの不満や怒りについて語り、大統領の権力を利用して仮想の敵や現実の宿敵に対する過去と現在の借りを返すのにいそしんでいたことを明らかにした。
 ウォーターゲート事件が起きたのは1972年6月のことです。当時、私は司法修習生でした。当時、私たちのクラスに青法協についてスパイ活動をしているとしか思えない人もいました。日刊のクラス新聞を出したり、堂々と活動していたのですが、研修所当局からは目の上のタンコブみたいに思われていたのでしょうね。なにしろ、研修所に入所する前に、司法修習生の全員について公安調査庁が身元調査をしていたのですから。今はしていないのでしょうか・・・。
 やがてニクソン大統領が辞任発表するに至ったわけですが、アメリカって本当に奇妙な国だなと感じたことを今でも覚えています。

北朝鮮軍の全貌

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著者:清水 惇、出版社:光人社
 北朝鮮軍の現状は、兵器の老朽化、士気の低下、規律の弛緩などで、戦争での勝利はおろか、組織的な戦闘を展開できるのかどうかも怪しい状態にある。
 正規軍は大規模な演習や挑発行動や軍事パレードを行うことで、弱体化しているように見えるが、本当は戦えるのだというパフォーマンスを諸外国に向けて演じている。
 北朝鮮軍の内部には4重の監視体制が敷かれている。総政治局に所属する政治将校、秘密警察である国家安全保衛部、軍の情報機関である保衛司令部、さらに労働党組織指導部直属の通報員。このため、1995年以降3回あったクーデターはすべて未遂で終わっている。
 北朝鮮軍がクーデターを起こすとすれば、治安機関や金正日の親衛隊ともいえる護衛司令部が寝返るなど、体制維持システムが末期状態になったとき以外には考えられない。
 金正日は、いまだに金日成の威光を利用せざるを得ない。それは金正日にカリスマ性がないから。
 北朝鮮では金日成と金正日だけが将軍と呼ばれる。金正日の生母である金正淑も白頭山の女将軍と称しているので、この3人を白頭山三大将軍と呼ぶ。
 人民軍の兵力は、地上軍が100万人、海軍が6万人、空軍が11万人であり、正規軍だけで117万人いる。このほか、教導隊や労農赤衛隊などの準軍事組織があり、こちらは700万人ほどいる。北朝鮮軍のなかで日本にとってもっとも脅威となるのは特殊部隊12万人の存在である。
 北朝鮮軍が朝鮮戦争のときのように南侵を開始したときに、ソウルは火の海になるかどうか検証されています。結論は、ならないというものです。なぜか?
 北朝鮮軍の長射程砲300門はその大半が地下施設にあるため、ソウルを火の海にするのは難しい。その前にDMZ(非武装遅滞)を突破するため10万発をうちこむ必要がある。それすらやっとではないかと思われるから、ましてやソウルを火の海になどできるはずがない。
 そしてDMZを突破するには、自軍と米韓両軍が埋めた地雷を処理しなければならない。南侵トンネルは有効に機能しないだろう。そのうえ、制空・制空権を米韓両軍に握られている。これでどうして南侵できるというのか・・・。
 北朝鮮軍が、いわば破れかぶれの状態で南侵してくる危険性がないわけではありません。しかし、それについては外交上の努力でくいとめるしかないのです。北朝鮮軍の脅威をことさらあおりたて、日本の自衛隊をもっと強くしなければいけない。そのためには憲法9条をなくせ、と叫ぶ人がいます。しかし、私はそれは間違っていると考えています。戦争にならないように努力すべきなのです。その最大の武器が憲法9条だと私は考えています。

ガダルカナル

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著者:西村 誠、出版社:光人社
 2万人の日本兵が斃れ、餓島とも呼ばれた苛酷な戦場だったガダルカナル。その今を現地踏査し、カラー写真で再現した本です。
 澄み切った青空と太平洋の海原に囲まれた南海の楽園の島です。ここが、あの有名なガダルカナル島と言われても、ちょっとピンと来ませんでした。
 ガダルカナルの日本軍はもっとも多いときには3万人からいた。日本軍が次々に敗退し撤収作戦が始まった昭和18年1月の時点での日本軍は1万4千人ほど。3度の撤収作戦はいずれも成功したとされ、残った日本兵の大半が引き揚げた。
 アメリカ軍のかまえる堅固な陣地に突撃した一木支隊は2000人のうち生存者はわずか128人のみ。一木大佐の最後は不明とされている。無謀な突撃を敢行した一木大佐は廬溝橋事件のときの現地の大隊長。銃剣突撃による夜戦の達人とされていた。アメリカ軍が砲兵と機関銃で鉄壁の陣をしいているところへ、真昼間、歩兵が銃剣突撃をしてバタバタと倒れていったというのですから、そのお粗末さと、兵の命を軽んじているのはお話になりません。一日で一木支隊が壊滅してしまったのも当然です。
 そのあと、今度は6000人の川口支隊がジャングルから攻めこもうとし、アメリカ軍の猛反撃にあって1000人もの死傷者を出して敗退します。残った5000人は、ジャングルのなかを歩くうちに飢えと過労でバタバタと倒れていきました。
 ジャングルは、今でもムッとする熱気で、20メートルも入ったら方向感覚を失うといいます。四国の3分の1ほどの大きさがあるそうですが、こんなきれいな島でかつて悲惨な戦争があり、日本兵が上官の無謀な指揮によって無駄死にさせられたかと思うと、本当に哀れです。靖国神社に私は行ったことはありませんが、無謀な戦争を起こし、上官の命令は絶対だなどといって兵をむざむざ死地に追いやっていた軍上層部の反省がないことは絶対に許せません。

ウォール街、欺瞞の血筋

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著者:チャールズ・ガスパリーノ、出版社:東洋経済新報社
 人々はインターネットでお金持ちになると信じたかった。感情が牽引力となった。
 建設労働者、秘書、バーテン、学校教員など、経済学を学んだことさえない人々が、銀行から預金をおろしてミューチュアルファンドに投資をしたり、証券会社から株を直接買って買いあさりはじめた。アナリストは投資家に下がったら買えと勧めることによって、値動きの激しいハイテク銘柄が下落したときでさえ、何十億ドルという資金を誘導して市場を下支えした。多くの投資家が、いい時期は永続きするものではない、という話を聞きたくないのは当然だろう。
 ウォール街のブローカーたちは、できるだけ多くのカモの資金を市場に呼びこむという、より大きな戦略の一翼を担っているにすぎない。最優良顧客は大企業だ。個人投資家が公平に取り扱われることは決してない。大手証券会社は、小売顧客を第二級市民として取り扱っている。
 貧困層に個人的なサービスを提供する時間的な余裕はない。このようにうそぶいている。
2000年3月からのピークから2001年3月までの1年間で、株価は60%も下落した。この損失はアメリカの歴史上最大規模の破壊(クラッシュ)だ。それは2兆5000万ドル、いや、他の市場をあわせると4兆5000億ドルが雲散霧消した。
 ウォール街の仕組みについてほとんど知識のない中産階級のアメリカ人が、ゲームのやり方を熟知しているブローカーに一生涯の貯蓄を預けてしまった。それは、短期間はうまく機能していた。しかし、市場が暴落したとき、すべてを喪ってしまうことになった。
 わずか3年ほど前には、アナリストはウォール街でもっとも人気のある職種だった。それが今では、大きなトラブルを引き起こすため、投資家にもブローカーにも、そして証券会社の法務部にも嫌われるパリア(最下層民)だ。
 ホント、アナリストって、今では口先だけの、あることないこと口からでまかせを言って信じこませようとするペテン師のイメージがすっかり身についてしまいましたよね。
 投資家にだまされるな。サブタイトルにそう書いてあります。今や多くの日本人の若者が自分こそはだまされないと信じ、ひがな一日、パソコンの前にすわりこんで投機の道に走っています。いえ、家庭の主婦も参加しているそうです。こんなことでいいのでしょうか。こんなことしてたら、日本の将来はお先まっ暗なのではありませんか。

安田講堂

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著者:島 泰三、出版社:中公新書
 1969年1月、安田講堂の攻防戦がテレビで実況中継されました。東大闘争とはこの攻防戦のことと思いこんでいる人があまりに多いので、私の親しい友人は、そのような誤った認識を少しでも解消しようと「清冽の炎」(花伝社)第1巻を発刊しました。
 この「安田講堂」は、社青同解放派のメンバーとして安田講堂に残留し、機動隊と「華々しく」闘い、懲役2年の実刑を受けた人による本です。
 要するに、安田講堂から東大生は卑怯にも全員逃亡したと世間から思われているが、実は、70人も残って闘ったのだ。そして、著者をはじめ懲役刑を受けた東大生が何人もいたということが著者の言いたいことです。そこには何の反省もありません。悪かったのは日本共産党系の学生であり、全共闘は正しかったという言葉のオンパレードです。いえ、考え方が違うのは、お互い、どうしようもないことです。でも、事実をこんなに曲げてしまっては困ります。私は当時、駒場の一学生でしたが、駒場には全共闘対日本共産党系学生そして右翼の学生しかいなかった、などと単純に片づけられていることにはすごい異和感があります。
 著者はマダガスカルのなぜのサル、アイアイの研究者でもありますので、私も、それらの本は感心しながら読みました。しかし、この本は、全共闘賛美につらぬかれているだけではなく、宮崎学の本「突破者」をうのみにした間違いが多すぎて嫌になってしまいます。「東大闘争資料集」を参照したのなら、もう少し事実を確認してほしかったと思います。
 たとえば、11月12日の総合図書館前の激突について、全共闘がぶつかったのは宮崎学らが指揮する「あかつき部隊」500人だとしています。全都よりすぐりの暴力部隊、暴力のプロだとされています。たしかに都学連部隊が予備として控えていたそうです。しかし、ここで全共闘と激突したのは駒場の学生(東大生)が主力でした(私も、その一人です)。
 12月13日の駒場の代議員大会についても、「日本共産党系部隊の公然たる暴力のなかで開かせ、その暴力で実現した会議決定」というのには、とんでもないデタラメさに噴き出してしまいました。あまりに全共闘を美化すると、こんなにも世の中のことが見えなくなるのですね。むき出しの暴力をふるったのは、当時すでに少数・孤立化していた全共闘の方だったことは、駒場の関係者に少し聞いたらすぐに分かることです。
 1月10日夜の駒場寮の攻防戦にしても、「部屋のひとつひとつの取りあいという市街戦に似た攻争」というのはまったくの間違いではないにしても、全共闘が制圧したのは三棟のうちの一つ、明寮の1階のみです。寮生であった私は、その2階にいたので(たまたま1階にいたら、全共闘に攻めこまれて2階へ逃げたのです)間違いありません。私の周囲には、ほかにも大勢の寮生がいました。いわゆる民青の外人部隊が大勢いたのも事実です。そして、このときには、たしかに「あかつき部隊」が来るというマイク放送があっていました。それにしても、中公新書という伝統を誇る新書にこのような間違った記述があると、それが歴史的事実だとして定着するのでしょうね。本当に恐ろしいことです。
 私の友人の本(先ほどの「清冽の炎」)は小説ですし、すべて真実だとは言いませんが、やはり歴史を語るのであればもっと客観的な事実をふまえてほしいと思います。「清冽の炎」はちっとも売れていないそうです。このままでは、2巻目以降の発刊は危ぶまれています。みなさん、ぜひ買って応援してやってください。

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