法律相談センター検索 弁護士検索

裁判員制度と国民

カテゴリー:司法

著者 土屋 美明、 出版 花伝社
 G8(先進国首脳会議)の参加国のうち、国民参加の刑事裁判が行われていないのは日本だけ。世界195ヶ国のうち、80ヶ国で国民が刑事裁判に参加する手続をとっている。おとなりの韓国も陪審員に評決権のない「国民参与裁判」の試行をはじめ、中国でも人民陪審員制度を実施している。
 ところで、アメリカで陪審裁判は、刑事事件全体の5%程度でしかない。
 ドイツの刑事裁判は、捜査段階で警察官がつくった調書はそのままでは証拠にならず、公判での警察官らの証言と証拠物のみにもとづいて審理される。
 フランスの陪審法廷では、判決の言い渡しが夜10時というのは普通で、難しい事件は日付の変わった午前1時ころになることもある。重罪院の判決に対して不服があるときには、他の重罪院に対して控訴できる。そして、このときには参審員を3人増やして12人とし、裁判官3人をあわせて15人で審理する。いやあ、これって大変なことですよね。深夜に帰宅する人はちょっと怖いでしょうね。
 日本の司法に国民が参加することは、司法の姿を決定的に変える。裁判員制度は単に国民が難しい刑事裁判が引っ張り出されるだけの新しい制度というものではない。何世代にもわたる長い時間をかけて、参加が徐々に広がっていけば、日本の社会を根っこから変革していく可能性をもっている。
私も、この指摘にまったく同感です。国民が主人公なのです。それを実感する人が増えたら、この日本ももう少しまともな国になるような気がします。
 重大な刑事事件の裁判は、もともと気持ちの負担の重いものであり、それを国民があえて引き受けてこそ、この制度を行う意味がある。好んで出てくる人だけを集めていては、裁判員制度が広く国民の信頼を得られるようにはならない。簡単に逃げ道を作るようでは、制度そのものが基盤を失い、破綻しかねない。
 今の刑事裁判を批判するのなら、裁判員制度をテコとして批判を少しでも変えていくべきではないのか。そのとおりです。裁判員ぶっつぶせと叫んでいる人には、ぜひ考え直してほしいと思います。
 著者は、裁判員候補者と呼ばれた市民を、選ばれなかったときに、そのまま帰すのではなく、刑務所を案内したり、司法の実情について十分に知ってもらうチャンスとして生かすべきではないかという提案をしています。これまたまったく同感です。国民のなかに死刑賛成の声が高まっているとき、死刑執行はどのようになされているのか、その執行に関わっている人たちはどんな気持ちなのか、多くの市民に知ってもらうことには大きな意味があると思います。また、刑務所の処遇の実情(独居房の様子や労働状況など)も知ってもらったら、「懲役1年」の意味が実感できると思います。
 戦前の陪審制度だけでなく、裁判員制度も失敗するような事態になったら、日本の国民は、そもそも司法への参加になじまない国民性だという批判を裏付けることになるだろう。国民参加は、二度と主張できなくなるに違いない。
 著者のこの不幸な予測が当たらないことを私も願っています。著者は、共同通信社の論説委員をつとめ、裁判員裁判の制度設計に関わったジャーナリストですが、その冷静な論述はかえって溢れる熱意を感じさせるものがあります。私も、5月から始まる裁判員制度は必ず成功させたいと考えていますし、その弁護人をやってみたい気持ちでいっぱいです。弁論で、市民を説得してみたいと思います。
 いま、梅の花がいたるところに咲き誇っています。日曜日に、梅の木の徒長枝を切ってやりました。我が家の梅は少し形が悪いので、形を整えようと思ったのです。紅梅の枝を切って断面を見たら、枝自体が紅く驚きました。白梅のほうとは全然ちがいます。白梅の方は白いというより、普通の木の色なのです。
(2009年1月刊。2500円+税)

昆虫の知恵

カテゴリー:生物

著者 普後 一、 出版 東京農工大学出版会
 いやはや、昆虫って、すごいですね。昆虫に学べ、とは、よく言ったものです。そのとおりですね。
 ヒトの皮膚にとまった蚊は、皮膚の下にある毛細血管を探り当てるために、足の裏にある感覚器官から超音波を発信し、その反響を利用して血管の位置を感知する。
 うへーっ、まるで腹部エコー検査みたいですね。
蚊が吸血するとき、体重の2倍ほどのヒトの血液を一気に吸って消火器に流し込む。一度に腹いっぱい吸血するため、異なったヒトの血液型が混じり合うことはない。そして消化酵素ですぐに消化吸収されるため、血液が凝固することはない。ふむふむ、なるほど。
 蚊のもつ抗血液凝固物質は、酵素反応の最終段階をストップさせる。このプロリキシンSという物質は、血液を凝固させないほか、血管の平滑筋を弛緩させる作用を持っている。蚊は、吸血するとき、ヒトの皮膚感覚を麻痺させるために唾液を注入し、ヒトに気づかれないようにしている。蚊の唾液がアレルギー反応を引き起こし、かゆみの原因となる。ただし、本来、蚊の唾液は吸血終了とともに蚊の体内に戻る。そのため、かゆみも止まる。ところが、吸血が中断されると、蚊の唾液がヒトの体内に残されるので、ヒトはかゆみを感じる。
 つまり、蚊の気が済むまで血を吸わせたら、かゆみはほとんど感じないわけである。
 うひょう、な、なーんと、蚊を叩き潰すことによってかゆみを感じるというわけです。でも、蚊って見つけたらすぐに叩き潰してしまいたいですよね。
 ちなみに、蚊は一般には花の蜜や果物の汁、樹液などを吸っているが、交尾したメスの蚊だけが卵のためにヒトの血を吸う。蚊のオスは人間の敵ではないということなんですね。
 生ゴミを処理するのに、アメリカミズアブを使うといいそうです。初めて知りました。50センチ角の箱にアメリカミズアブを100頭入れて高温にしておくと、有機廃棄物が効率よく分解処理される。ふーん、そうなんですか……。いま、我が家はEMボカシで生ゴミを処理していますが、これより、もっと簡単で効率が良さそうです。
 モンシロチョウからピエリシンという物質がとれ、抗がん作用に役立つという話も初めて知りました。昆虫って、偉大なる遺伝子資源なのですね。絶滅させたら、人類にとって巨大の損失です。ミズスマシやセミの抜け殻が糖尿病に良いなんて、本当でしょうか。
 傷口にウジ(ハエの幼虫)を這わせておくと、早くよくなるという話にも驚きました。戦場での実際の体験的知見による発見だそうです。
 ウジは、自分の持つタンパク質分解酵素を分泌して壊死状態の組織を溶かし、それを吸い上げることによって壊死組織を除去する。このタンパク質分解酵素は、健全な組織を融解することはないので、壊死組織だけが選択的に取り除かれる。そして、この物質はMRSAなどの薬剤耐性菌をふくむ病原菌に対する殺菌作用ももっている。ただし、ウジを使った治療法には健康保険が適用されない。見かけによらず、ウジも人間に役立つということなんですね。
 将来の宇宙食として有望なのは、昆虫(カイコガ)である。カイコガの蛹は、栄養的に非常に優れ、絹は用途が広く、微粉末にして食材にもできる。カイコガをキャットフードに25%混ぜると、猫は喜んで食べるそうです。
 バッタが幼虫時代に劣悪な環境で育つと、身体が褐色となり凶暴化して、大害虫と化す。これまた人間に似た話ですね。
 うひゃあ、すごいすごい。昆虫ってバカにできませんね。人間は昆虫に大いに学ぶべきです。
 先週末、春一番の突風が吹き荒れました。まともに傘をさして歩けず、電車も乱れていました。でも、風が温かいのです。ああ、春一番だとすぐに思いました。隣家の庭に今年も黄水仙が列をなして咲いています。輝くばかりの黄金色です。そして、近所にはしだれ紅梅も咲き誇り、春到来を感じさせます。
(2008年5月刊。1400円+税)

警視庁捜査二課

カテゴリー:警察

著者 萩生田 勝、 出版社 講談社
 まずは業界用語を紹介します。
 起番は、おきばん。宿直のとき、詰めていること。
 猛者は、もさ。スリ係。
 本庁は、警察庁のこと。
 本部は、桜田門にある警視庁のこと。
 司法関係の機関のうち、もっとも低能力な集団は警察である。なかでも、特筆すべき超低能力集団が刑事だ。この記述は、多分に反語的なものであり、だけど集団の力はすごいものがあることが何度となく語られています。
刑事の楽しみであり、美学は、現場で一瞬にして判断すること。ところが、いま、現場に行きたがらない刑事が増えている。若手が現場に出ない。経験豊富なベテランがいなくなる。この二つだけでも警察の捜査能力の低下が心配だ。
 刑事課のなかでは、隣の係は完全に敵だ。ライバル同士なんていう甘い関係ではない。捜査員同士の競争意識は、ケタ違いの熾烈なものだ。
 大企業のトップや高級官僚にいる人間は、地位やプライドが邪魔をして容易には落ちない。落ちるのは、ホネと取調官の人間としての次元がピタリと合ったとき。
 特捜部と違う捜査二課の強みは、人海作戦にある。ただし、そのとき、小さな集団の結束がもっとも大切だ。ただし、そのとき粘りと、証拠品を飽きるほど見つめる態度が不可欠だ。それは、そうなんでしょうね。
 取り調べで大切なのは、調べにあたる刑事それぞれの人格だ。人生そのものの経験が求められる。人生経験の不足を助けてくれるものとして、読書がある。本を読んでも人格形成はできる。まったくそのとおりです。
 警察署の内部にも、収賄のおこぼれにあずかりながら、いけしゃあしゃあと生き残っている幹部が実はかなりいる。いやはや、これは困ったことです。
 警察署内部のことがかなり赤裸々に語られていて、面白く読めました。
(2008年12月刊。1600円+税)

アイバンのラーメン

カテゴリー:社会

著者:アイバン・オーキン、 発行:リトルモア
 東京は世田谷に、アメリカ人によるラーメン屋があるそうです。京王線の芦花公園駅の近くです。今度、私も行ってみましょう。といっても、開店日にはかなりの行列が出来ているようなので、行っても食べられるか心配です。
 店主は、生粋のアメリカ人です。それも、コロラド大学を出て、シェフになったうえで、日本にやってきて自己流のラーメンを作り上げたというのです。すごいものです。伊丹十三監督の映画『タンポポ』を見て、ラーメンにあこがれたというのですから、大した根性です。
 店主の父親は知財専門の弁護士です。すごく成功しているそうです。
アイバンで出るラーメンが見事な写真で紹介されていますが、どれも、いかにも美味しそうです。ともかく、メンもスープもトッピングの卵も、すべてが手作りだというのです。しかも、感心したのは、仕入れが近所の商店街からなのです。いやあ、実にいいことですよね。共存共栄の精神をまさに実践しているのです。
サイドメニューとして焼きトマトがあり、豚飯があり、デザートのアイスクリームまであるのです。スープは豚骨スープではありません。塩ラーメンとしょうゆラーメンです。これも脂の多すぎるラーメンにしないようにしているからです。
毎日でも食べられるラーメンであるために、豚の脂は10cc未満しか入れていない。有名ラーメン店のラーメンは、基本的に一杯のラーメンに30~40ccの動物性の脂が含まれている。こんなに大量の脂が入っていると、身体に良くないし、毎日なんか、とても食べられない。
アイバンのラーメンは、さわやかな味だそうです。食べたあと、よい気持ちになるラーメン。これがコンセプトというのです。ここまで聞いたら、一度は食べずにいられません。でも、1日、120人の客しか入れない。営業時間も平日は夕方から夜のみ、土日は昼から夕方まで。そして、水と第四火は休み、というのです。席も10席しかありません。そのくせ、キッチンは広々としているというのですから、異例づくめです。
 メンはスープとよくからんでいる。メンをすすると、スープが口に入り、メンマも細長いので、同時に口に入る。一度に3つの味を楽しめる。さらにチャーシューと卵を合間に食べたら、すべての味がなじんで、ひとつのラーメンの味になる。一口ですべてが味わえるのが、アイバンのラーメンだ。
 いやあ、ぜひぜひ行って味わってみたいラーメンです。
(2008年12月刊。1600円+税)

スーパー弁護士の仕事力

カテゴリー:司法

著者 荘司 雅彦 ほか、 出版 日本実業出版社
 弁護士の書いた「仕事術」の本が、ビジネスマンから高い評価を得ているそうです。うひゃあ、そうなんですか。私も『法律事務所を10倍活性化する法』という小冊子(新書版)を出しましたが、マスコミの評判は得られませんでした(ううっ、ついつい涙ポロポロ……)。
 スーパー弁護士のカバンの中に何が入っているか、写真で明らかにされています。なんとアイポッドが2つも入っていました。私も泊まりがけの出張のときにはアイポッドを持参しています。夜、ベッドに入ってシャンソンを聴くためです。
 弁護士は、あらゆる場面で質問力を必要とする。ほしい情報を得るには、いかに適切な質問をするかが大切なのだ。
 時間は現代人にとって、もっとも希少な財だ。だから1分1秒を徹底的に有効活用することが必要である。交渉において、明確な勝者と敗者を生むことがその目的ではない。交渉相手の立場や主張、大義名分を十分に理解し、交渉の結果に対して相手もそれなりの満足度が得られることが大切なのだ。そのためには、交渉の場でかっとならず、あくまでも冷静に組み立てていくことが秘訣である。
 交渉の場で興奮すると、契約書に調印するときに興奮のあまり手が震えてしまうことがあります。これって、ちょっとみっともないんです。気取られないようにしていますが……。
 優秀な交渉人(ネゴシエーター)は、意思を表明する勇気を持ち、裏表のない正々堂々とした態度でいられる人。臨機応変に対応でき、明朗さと包容力がある人を言う。
 自分はすばらしいが、相手もすばらしい。自己も他者も肯定し、受容する。相互にOKの精神をもつ。交渉相手は敵ではなく、知人あるいは友人となる相手であることを忘れない。うむむ、これって、口で言うのは簡単ですが、実行は難しいんですよね。
 クレーム対応の初めての場では、ひたすら謝罪し、いいわけなどしない。出されたお茶には手をつけず、背筋をピンと伸ばし、相手の目を見て謝る。
 口頭でプレゼンするときには、はじめの10分間で全体を見渡せるようにする。
 準備書面では、裁判官が読みやすく、論点をそらさない。その最大の目的は、争点整理にある。よけいなことには触れず、必要最低限のことを押さえ、一番大事なことを厚く書く。
 書面はクオリティを犠牲にして、まずは速度優先で書く。とにかく書き上げて、それから推敲する。そして、最後に一度、声に出して読んでみる。
 なるほど、なるほどと感心することの多い本でした。
(2009年1月刊。1200円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.