(霧山昴)
著者 頭木弘樹 、 出版 晶文社
筑波大学の学生のとき、20歳で 難病(潰瘍性大腸炎)となり、著者は13年間も入院していました。そのときの見聞記録がよく描かれていて、まさしく身につまされます。
私は年に2回、人間ドックに行っていますので、病院内の雰囲気はそれなりに分かります。そして、交通事故(信号待ちしているところを追突されました)で10日間だけ入院したこともあります。個室に入って白い壁の病室にいて、誰とも話さない生活が続くと、気が変になりそうでした。
著者によると、2人部屋は息が詰まる思いをさせられそうです。むしろ、6人部屋のほうが逃げ場があってよいとのこと。そして6人部屋にいると、自然にそれぞれの家庭背景が分かっ てくるそうです。
誰も見舞いに来ないという人も少なくないようです。日頃の環境によりますね、きっと…。そして、見舞客が見舞いの言葉に悩むのもよく分かります。なるほど…。好きで病気になったわけでもなければ、好きで闘病しているわけでもない。
ところが、見舞客が「あなたがこうなることを、ずっと願っていました」と、悪意のある言葉を吐く人が少なくないというのには驚きました。わざわざことを言いに病室までやって来るとは、よほどの恨みがあったのでしょう。
宗教の勧誘もよくあるとのこと。統一協会もそうでした。他人の不幸につけ込んで、大金を巻き上げるのが「宗教」です。
著者は、病人に対して見舞いのときに言ってはならない言葉のリストを作るのには賛成しません。著者は、病人を傷つけるかもしれないなんて心配せずに近づいてきて、話しかけてほしいと言います。なるほど、ですね。体験にもとづく言葉だと思いました。
医師や看護師について書いてあるところも、心が惹かれました。本当は、一番すごいのは、目立たなかった人たちだ。目立たなかった人たちというのは、きちんと治療し、きちんと看護した人たちだ。きちんと治療し、きちんと看護する人たちによって、患者は生かされている。なるほど、そうなんですよね。
20歳で難病によって入院生活を余儀なくされた著者は、不公平な世の中だと思っていた。ところが、小児病棟があり、子どもの悲痛な泣き声を聞いて、気がついた。人はもともと不平等なのが当たり前なのだ。それを不平等でなければと思っていた自分が間違っていた。それが転機となって、病室の他の人と話をするようになった。
大変考えさせられる話が盛り沢山でした。
(2026年8月刊。1980円)


