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失墜するアメリカ経済

カテゴリー:アメリカ

著者 ロバート・ポーリン、 出版 日本経済評論社
 著者は、1950年生まれ、マサチューセッツ大学アマースト校の経済学教授です。
 人間らしい生活のできる賃金、生活賃金を制定すべきだと提言しています。これは、連邦最低賃金をこえる適正な賃金です。既に、アメリカの地方自治体で制定され始めています(2002年末までに90の地方自治体)。私も、この提言に大賛成です。
 政府の規制あるいは実務的な労働組合が、市場で進行している事態に対抗できなければ、労働者は実際に交渉力を弱体化させ生活条件を低落させ続けることになる。
 そうなんです。だからこそ、労働三権が大切なのです。
 ところが現実には、クリントンが大統領であったとき、労働組合員は長期的減少が続いた。レーガン大統領のとき(1988年)に16.8%だった組織率が、2001年1月には3%も減って、13.5%にすぎなかった。
 アメリカの年間軍事予算は3000億ドルのまま。軍事支出額は教育予算の5.5倍のままである。そして、食糧クーポン券その他の扶助費は、1992年の372億ドルから、2000年の288億ドルへと85億ドルも減らされた。
 労働者は適正な最低水準を超える賃金を実現するために、すなわち単に賃金等級表の最低水準の近傍に引き上げるだけでなく、もっと広く賃金・付加給付を増加させ、職場条件を改善させるために団結する権利を有している。そのために必要なことは、労働者が団結し、労働組合を結成する法的権利の強化である。
 労働者が自らの望みに従って団結する基本的権利を、雇用主と政府取締官が尊重しなければ、平等主義的政策過程を推進することはできない。この基本的権利を欠いた平等主義的政策という概念は、語義矛盾である。
 労働者の団結権を擁護することは、もっと大きな恩恵をもたらす。というのは、労働者が労働協約を通じて適正な賃金を受け取れば、自らの支出能力の向上によってアメリカ経済の総需要を刺激できる。
2007年にアメリカ政府は、イラク戦争に1380億ドルを使った。1日あたり3億7000万ドルになる。これは、一国を破壊し、アルカイダにきわめて効果的な徴兵手段を提供するものだった。
 実効性のある進歩的課題を推進する第一歩は、戦争を終結させ、1380億ドルを雇用・保健・医療・教育・環境・貧困削減に費やすことである。それに加えて、20万ドル超を稼ぐすべての人びとへのブッシュ減税を撤廃すれば、アメリカ財務省の歳入が600億ドルも増えることになる。つまり、イラクと富裕層減税をやめると、それだけで2000億ドルが生み出され、さらに進歩的な経済課題の資金に振り向けることができる。
 アメリカの労働人口は1億5000万人。うち680万人が失業中である。前記の2000億ドルの資金移転が行われると、失業率は4.5%にまで下げられる。
 アメリカ経済をどう見たら良いのか、現状を克服する処方箋はどうあるべきか、大変示唆に富む指摘がなされていました。
 
(2009年2月刊。3400円+税)

サバンナの宝箱

カテゴリー:アフリカ

著者 滝田 明日香、 出版 幻冬舎 
 すごいですね、若い日本人女性が、愛犬・愛猫とともにアフリカで一人暮らしをしているというのです。お肌の曲がり角を走りぬけ、あっというまに三十路に突入してしまった顛末がことこまかに語られていて、ハラハラドキドキの展開です。胸のトキメキのほうはあるのかないのか、さっぱり語られていませんので、その点は分かりません。福岡出身の日本人女性(永松さん)がマサイの男性と結婚した話は前に紹介しましたが、著者も同じようにマサイの人々が住む地域で獣医として活躍しています。
 表紙の写真からしてド迫力です。サバンナの大地でジープを止めて、帽子をかぶってお昼寝中なのです。ぐっすり眠っていて、ライオンの群れが来たら、一体どうするんでしょうか。実際、夜のテントで一人寝ているうちに、ライオンがやって来た体験が語られています。
 夜中の3時、ぐっすり眠っていたのに身体に響く低い声で目が覚めた。ウォッ、ウォッ、ウォッ、ウォッ、ウォッ、ウォッ……。テントの5メートル以内にライオンがいる。お腹まで震動が響いてくるほどの声。低音震動が身体に響いてくるので、寝てなんかいられない。少し声が遠ざかったとき、寝袋を持ってすぐ近くの車に走り込んだ。やがてライオンの声は遠ざかった。車の中は寝苦しかったので、またテントに戻った。
 うへーっ、こ、これはまいりました。百獣の王、ライオンなんかと決してお近づきになんかなりたくありません。動物園のオリ越しのご対面で十分です。それにしても、そんなライオンが夜中にうろつくようなところにテントで寝て、また、テントに戻ってきて寝なおすなんて、なんとまあ図太い神経の持ち主でしょうか。いやはや、大和撫子のたくましさには、九州男児の一人として、まさに脱帽です。
 著者は、アフリカで獣医になりたいと思って、アフリカの名門大学の獣医学部に入学します。そこでのハードワーク(猛勉強)はすごいものです。睡眠時間を削りに削って、ようやく卒業することができました。
 獣医だから、牛の直腸検査もします。左手を牛の直腸に突っ込み、直腸の中で手を動かす。このとき、牛は思い切り肛門を締め付けるから、腕は血が通わず、麻痺してくる。腸の動きに負けないように手を動かすので、ものすごく疲れる。途中で腕を牛の尻から出してしまうと、空気が入って直腸がふくれて内臓に触れなくなるので、お尻に腕を入れたまま、牛の腰の上に頭を乗せて休憩する。こんなことを2時間も続けると、牛のウンコまみれとなるばかりか、腕も手もふやけてしまう。
 うひょひょ、そんなー……、牛の尻に2時間も腕を突っこんだまま休憩するだなんて、いやはや、まったく信じられません。
 ケニアのナイロビ郊外に住みながら、ホームページを開設し、ブログで活動日誌を発信中とのことです。ぜひ、人間の立派なオスもゲットしてください。そして、これからも身の安全と健康にはくれぐれも注意して、アフリカの大地でがんばってほしいと思いました。
 きのう、庭にボタンの花が咲いているのに気が付きました。やはり、これだけ初夏みたいにあたたかいと、ボタンの開花も早まったようです。
 淡いクリーム色の大輪の花弁の真ん中に黄色い部分があります。とても気品のある花です。さすが美女の代名詞にふさわしい雰囲気が漂っています。
 近くで小鳥がにぎやかにさえずっています。最後にジジジと特徴のある声で鳴くものですから、ツバメだと分かりました。ひとり楽しげで、聴いている私まで何だか嬉しくなってきました。ツバメは駅舎にもたくさん来ていて、元気に飛び交っています。はるか南方のインドネシアあたりからはるばる日本へ毎年やってくるツバメたちです。お疲れさまと声をかけたくもなります。ツバメが安心して住める平和な日本であり続けたいものです。
(2006年12月刊。1400円+税)

タクシー・ニューヨーク

カテゴリー:アメリカ

著者 若宮 健、 出版 花伝社
 当代日米タクシー事情、というサブタイトルがついていて、アメリカはニューヨークで働く日本人ドライバーを紹介しつつ、日本のタクシー運転手の置かれている状況を自分の体験をまじえつつ、熱く紹介している本です。
 私の身近な人にタクシー運転手が何人もいますが、月収20万円を超すような人はほとんどお目にかかりません。長時間のきつい、危険な仕事なのに、賃金は劣悪です。
 ニューヨークでキャブの免許を取る時には、実技試験はない。日本では、普通免許を取得してから3年以上たっていないと資格がなく、試験は学科と実技の両方を受けなければいけない。
運転免許を取得するに必要な費用は、年齢(とし)にきちんと相応するということです。ですから、還暦を迎えた私なんか60万円もかかることになります。うへーっ、ブルブル、大学時代に免許をとっておいて本当に良かったと思います。
 ニューヨークは人口800万人で、市内を走るタクシーは1万3150台。東京都内のタクシーは、5万8000台。これは、ニューヨークの4倍となる。人口比を考えたら、とんでもなく東京のほうが多いわけです。なんでも規制緩和というのは大企業の利潤追求には便宜であっても、そこで働く人々にとっては地獄をもたらすものなのです。ところが、貧しい人ほど小泉政治を支持したという奇妙な現象がありました。
運賃収入は、地方都市で1日2万円台、埼玉で3万円台、横浜で4万円台、東京が5万円台である。福岡でも本当に低賃金で働いています。
 タクシー運転手は強盗にあう心配もある。そのうえ低賃金なのだ。それでもタクシー運転手は、独立が保障されるなどの理由から人気がある。世の中の矛盾の一つですね。
(2009年3月刊。1500円+税)

骨の記憶

カテゴリー:社会

著者 楡 周平、 出版 文芸春秋
 東北の山奥から貧農の少年が上京してきます。就職した先でひどくこき使われます。何度もやめて田舎へ帰ろうと思うのですが、田舎には仕事がありません。また、帰りたくない暗い過去もあるのでした。やがて、ひょんなことから別人になりすましてしまうのです。
それが幸運の始まりでした。思わぬ土地代金が入り、勤めていた運送会社を独立して始めた運送業も大当たりです。お金が面白いように入ってきます。政治家から土地ころがしの口がかかって、大儲けもします。そして、金持ちの令嬢と結婚し、豪邸を手に入れます。
 ところが、令嬢は成り上がり者とバカにして見向きもしません。そこから復讐が始まるのです。
いったい、少年のころの暗い過去とは何だったのか、復讐はどのようになされていくのか。いやはや、すごい作家の発想力です。それも情景描写がきちんと出来ているからこそ読ませます。
 人生には常に光と影があることを考えさせてくれる本です。500ページもある力作長編でしたが、ぐいぐい本の世界、暗い、どうしようもないやるせなさのつきまとう世界ですが、そこへ引きずり込まれてしまうのでした。
 
(2009年2月刊。1714円+税)

アメリカ、自由の物語(上)

カテゴリー:アメリカ

著者 エリック・フォーナー、 出版 岩波書店
 昔、ギリシャの哲学者セネカが、次のように喝破したそうです。
 「奴隷でない人間にお目にかかりたいものだ。ある者は性の奴隷であり、またある者はお金の奴隷であり、またある者は野心の奴隷なのだ」
 うむむ、こ、このように決めつけられると、私なんか、ぐうの音も出ません。それでも……。
 18世紀、自由の理念が広まった、イギリス・フランス・オランダという国々は、すべて大西洋奴隷貿易に深く関与していた。イギリス人が非常に大切にした海洋の自由とは、自国の商人が望む、いかなる港にも奴隷を運ぶ権利を含んでいた。
 そこで、「黒人奴隷の監督者から、自由を求める最も声高い要求を聴くとは、いったいどういうことだろうか」という皮肉な指摘もなされていた。いかにして、アメリカ人は、アフリカ人の自由な権利や幸福を追求する権利を奪うことを正当化できるのだろうか、と。
 黒人奴隷制は、必ずしも白人であるアメリカ人の自由の理解とは矛盾しなかった。多くのアメリカ人にとって、奴隷を所有することは、真の自由に不可欠と広くみなされた経済的自立を保障するものだった。1857年、トーニー最高裁長官によれば、黒人は市民ではありえなかった。アメリカ国民は白人に限定された政治的家族集団を構成していると考えられていた。
 アメリカ北部の社会のもっとも顕著な特徴として、自由労働が称賛を受けても、その中にはアフリカ系アメリカ人は含まれなかった。
 1860年、400万人のアフリカ系アメリカ人がアメリカにおいて奴隷として働いていた。
 自由黒人は、西部の開拓を利用して、アメリカの自由にとって不可欠である自らの経済的地位を向上させることもできなかった。連邦法によって黒人は公有地の獲得を禁じられ、インディアナ、イリノイ、アイオワ、オレゴンの4州は、自由黒人が州内に入るのを全面的に禁止した。
 リンカーンは、人種的平等主義者ではなく、当時の社会で広く見られた人権剥奪の多くの事例を容認した。人生のほとんど最後までリンカーンは黒人の選挙権に反対し、折にふれて国外への黒人の植民について語った。
 しかし、南北戦争になって、その後半に連邦軍に20万人の黒人が入隊したことが、黒人市民権の問題は戦後に検討されるべき事項となった。
 奴隷制の廃止は、自由の誕生を自動的には意味しなかった。
 20世紀に入って、何百万人という白人女性が新しく有権者に加えられたが、民主主義を改善するという名目で、何百万人もの人々、つまり黒人・移民・労働者が有権者名簿から削除された。
 今日のアメリカがよく用いる、ダブル・スタンダード(二重基準)というものが、実は昔からのものであることもよく分かる興味深い本でした。
(2008年7月刊。3800円+税)

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