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幻想の道州制

カテゴリー:社会

著者 加茂 利男・岡田 知弘 ほか、 出版 自治体研究社
 道州制の積極的導入によって九州経済は12%成長する。
 これは、九州財界のシンクタンクである九州経済調査協会のシミュレーションである。
 日本経団連の御手洗会長は、道州制の最大のメリットを次のように強調している。
 府県の廃止や国の出先機関の統廃合によって数兆円に及ぶ財源が浮き、これを国際空港・港湾・高速道路建設などの大規模プロジェクトの建設資金や、多国籍企業誘致の補助金にまわすことができる。
 ええーっ、これって、私たち国民にとって本当にメリットのあることでしょうか……?
 国家公務員のうち、6万6000人を地方に移管し、地方公務員3万2800人をリストラして民間に転出させ、総体として公務員を激減させる。そして、都道府県議会議員の数も半分ないし3分の1にまで減らす。
 道州制になると、一つの州は平均1000万人という巨大なものとなる。そこに「州民」という感覚が育つとは思えない。
そうですよね。九州はひとつというのは、単なる掛声みたいなものですから……。
 市町村合併によって役場がなくなった結果、その役場周辺の地域経済は一挙に衰退した。飲食店は閉店が相次ぎ、土木・建設業者も仕事がなくなり、次々に倒産していった。県庁がなくなることによって、より拡大した経済衰退が再現されるだろう。
 まことにそのとおりだと思います。
 道州制は、財界の古くからの悲願だった。実は、古く戦前の昭和2年(1927年)に最初の提案がなされている。地方自治が確立する前からのものだったとは知りませんでした。ただし、現在でも、東京をどうするか、中部を北陸と東海に二分するか、四国・中国はまとめるのか二分するか、まだ結論が出ていないところもある。
 平成の大合併の結果、1999年3月に3232市町村だったのが、2009年2月に1773市町村になった。町村だけで言うと、2562が998にまで減った。これをさらに、700~1000自治体にまで減らそうというのです。むちゃくちゃです。ところが、合併に反対すると守旧派みたいなレッテル貼りがされるのです。大きいことはいいことじゃないかというのです。でも、それは間違いだと思います。地方自治は身近だからこそ意味があるのです。
 知事会と違って、全国町村会は、道州制に強く反対していますが、私も同じ意見です。
 行政の距離が遠くなって、行政サービスが低下するというのが反対の理由です。
 国民健康保険、生活保護、福祉施設、保健所、児童相談所、教育、消費者行政、どれもこれも、地域密着型でこそ意味があるものばかりではありませんか。
 官僚バッシング(たたき)、公務員無用論、地方議員多すぎ論、私はいずれにも組みしません。前に紹介しましたが、北欧では福祉現場を担っているのは公務員です。身分保障がはっきりしているから、介護も医療も安心・安定しているのです。そこでは公務員が多すぎるという不満は出ていません。だって、自分の老後が安心できる体制が確立しているわけなんですから……。
 道州制論議のまやかしに乗せられないようにしましょう。
 わずか134頁の薄いブックレットですが、とても貴重な内容です。ぜひ、あなたも手にとって読んでみてください。
 
(2009年2月刊。1600円+税)

「羅生門」の誕生

カテゴリー:社会

著者 関口 安義、 出版 翰林書房
 日本の高校国語の教科書の全部に、芥川龍之介の小説『羅生門』が採用されているとのこと。すごいですね。まあ、それだけの内容のある小説ですよね。
 作品の完成度の高さ、文章表現の見事さ、ストーリーの奇抜さ、時代を見抜く洞察力、批評性が評価された結果であろう。なるほど、そうですよね。
 芥川龍之介は、1982年(明治25年)3月1日に生まれた。龍之介の養父は、なかなかの金満家であり、高額納税者名録にも名を連ねている。有能な金融マンであり、退職後の貯えも十分だった。
生母フクは龍之介を生んだ8ヶ月後に発狂したため、龍之介は母の実家に引き取られた。実際に養育したのは、フクの姉、芥川フキだった。
 龍之介は、1910年(明治43年)9月に第一高等学校(一高)に入学した。
 大逆事件が起こったのは、まさにこの明治43年5月25日のこと。大逆事件の判決は、翌年1月にあり、1週間後には幸徳秋水ら12人に対して死刑が執行された。さらに1週間後の2月1日、一高で開かれた弁論部主催の講演会において、徳富蘆花は「謀叛論」と題する講話をなした。蘆花は、このとき42歳。
 幸徳君は死んではいない。生きているのである。武蔵野の片隅に昼寝をむさぼる者をここに立たしめたではありませんか。圧政はダメである。自由を奪うのは生命を奪うのである。我々は生きなければならない。生きるために常に謀叛しなければならない。自己に対して、また、周囲に対して……。
 当時の一高生は、蘆花の演説を主体的に受け止めずにはいられなかった。「冬の時代」であったからである。龍之介も、蘆花の講演をきっと聞いていただろうと著者は推測しています。
 芥川龍之介は若い時から利己的で、「薄暗い諦念」を持った作家だと決めつけるのは、誤りである。
 龍之介の手紙によると、若き日には若き日なりの人間の持つ感情があった。そして、若き龍之介は、優秀で信頼できる多くの友人にめぐまれていた。ただし、龍之介は生母の愛を受けることはできなかった。そこで、女性への思いも屈折したところがあったようです。
 芥川龍之介は、自己の体験をストレートには決して表現しなかった。小説の本道は虚構にあるという堅い信念があった。いわゆる現実暴露の小説は無縁であり、やりきれない思いをひねりにひねって表現した。
 『羅生門』は、謀反を盛り込んだ小説である。『羅生門』を、はじめから自殺した作家の暗い陰鬱な作品だと考えてはならない。謀反の精神は、実は芥川龍之介を中学時代から魅了してやまないものであった。
 芥川龍之介は、決して時代や社会に無関心な青白きインテリ、か弱い芸術至上主義者ではなかった。若いときから、誠実に現実の問題を見つめ、それを作品世界に盛り込もうとした作家であった。よく読むと、『羅生門』には全編に熱気が漂っているのを感じ取れるはずである。
 うむむ、そう言われると、なんだかそんな気がしてきました……。
 龍之介の『羅生門』は、蘆花の『謀叛論』を媒介として、それまで秘めていたエネルギーが一気に爆発して成ったものなのである。
 むむむ、恐れ入りました。芥川龍之介の魅力がさらに深く掘り下げられていて、魅了されました。
 
(2009年5月刊。1800円+税)

ルポ 医療事故

カテゴリー:社会

著者 出河 雅彦、 出版 朝日新書
 医療現場はミスの起きやすいところ。すべての患者が同じ治療内容で、つかう薬の種類や量が単一であれば、間違いはほとんど起きないだろう。しかし現実には、患者一人ひとりの病気は違い、当然、治療に使われる医薬品・医療機器の種類や量は、すべて異なる。そして、一人の患者でも、ずっと同じ治療内容とは限らない。容体は刻々変化する。検査値が変動すれば、一度出された投薬や処置の指示が途中で変更されるのも珍しくはない。
 医療は、準備段階から実施まで、医師・看護師・薬剤師など多くの職種の職員が関わる。治療に必要な情報はチーム全体で共有される必要があるが、その伝達の過程で不正確に伝えられる危険がある。
 しかも、病院は人手不足で、看護師らは多忙を極めている。患者の高齢化、重症化に加え、国が患者の入院日数の短縮を図っているので、患者の回転が速くなり、医療者の負担が増す。
 医療用医薬品は1万数千品目もある。そのなかに、タキソールとタキソルテル、そしてアマリールとアルマールといったように、効能や容量が異なるのに、商品名がよく似ているため、取り違えやすいものがある。
 過去に大きな医療事故を起こした病院については、事故の調査報告書をホームページで公開したり、再発防止に取り組んでいるか確かめておく必要がある。過去の失敗を忘れようとしている医療機関は、事故を繰り返す恐れがある。
 患者の身体を危険から守る役割を期待されているのが、術中の全身管理を担当する麻酔医だ。患者の身が危険にさらされそうになったら、躊躇することなく執刀医に「待て」と命じられる強さを備えていてほしい存在だ。
 医療事故にあったのではないかと疑ったときに取るべき行動は……?
①医療機関側に不審点を繰り返し尋ね、カルテなどの診療記録の開示を求める。
②治療前から事故までの経過を思い出し、記憶が薄れないうちに時系列で記録をつける。
③死亡事例では、遺体や死亡直後の周囲の様子を写真にとっておく。
④医療機関側との話し合いは、すべて録音しておく。
⑤医療機関側との話し合いに、知り合いの医療関係者に立ち会ってもらう。
⑥医療機関側に外部の第3者を交えての原因調査を求める。
⑦医療問題に詳しい弁護士に相談する。
 いやあ、まったくそのとおりですね。
医師法21条は、医師は、死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出さなければならないと定めている。ただし、「異状」とは何か具体的に定められていないため、医療関係者に戸惑いがある。
1999年の届出20件が、2004年に199件と急増した。そして、その後の2007年には、1941件になっている。病床100床あたりの医師数(2002年)は、日本は13.7、イギリス49.7、フランス42.5、アメリカ66.8となっている。これらの国々は、日本より3-5倍の医師が配置されている。日本の医師は絶対的に足りない。
日本政府も、医師の抑制策を転換した。日本の医療費は、先進国のなかで最低の水準である。対GDP比で8.0%しかない。
日本でもヨーロッパ並みに医療費をタダにすべきだと思います。選挙の公約として民主党は高速道路料金を無料化にすると言っていますが、それに必要な財源は1.3兆円だそうです。こんなお金があれば、高齢者や子どもの医療費をすぐに無料にできます。
それに、今以上に車が走ったら大気汚染もひどくなるばかりではありませんか。
自民党は1000円、民主党はタダ。これが選挙の争点だなんて、悲しくなります。
 
(2009年3月刊。860円+税)

アメリカ福祉改革の悲劇に学べ

カテゴリー:アメリカ

著者 エレン・リース、 出版 耕文社
 アメリカの生活保護は、一人につき最長5年間しか受けられない。そして、日本の知事会が日本でもアメリカと同じような期間制限を求めて運動している。
 ええーっ、なんということでしょう。許せません。ひどい話です。道州制で地方分権と言っている裏で、とんでもないことを要求しているのですね。絶対許してはいけません。怒りに頭がフラフラしてきました。いえ、決して夏の暑さではありませんよ。プンプンプン。
アメリカでは生活保護を受ける人が1970年代から1980年代末までは1000万人ほどだった。ところが1990年代に入って増加し、1994年には1416万人(503世帯)まで急増した。そのための支出は209億ドル(3兆円)になる。
 そこで、アメリカ政府はこの支出を削減しようとした。そのため、TANF(貧困家庭一時扶助)は国民の権利というものではなく、あくまで政府が決めた予算の範囲内ですればよいものとされた。
 そのうえ、受給者には就労活動などが義務付けられた。その結果、1416万人だった受給者が、460万人と7割にも減ってしまった。福祉の支給額も310億ドルだったのが284億ドルにまで減った。
 アメリカでは福祉を失うと、ホームレスになる可能性に直結している。
 このようなアメリカにならって、知事会と市長会は2006年10月に有期保護を提案したのです。そこでは、生活保護制度が国民の自助自首の精神と調和しないことも理由にあげられています。
 とんでもない提案です。年金額よりも、生活保護の額が高くなっているので問題だともされています。いえ、年金のほうがあまりに低すぎるのです。いやはや、とんでもない提案がされているものですね。ちっとも知りませんでした。
 知事会の会長って、福岡県知事ですよね。その前に、生活保護制度の充実こそ先にやるべきではありませんか。弱者を切り捨て、力のある強いものにしか目を向けないようでは、地方自治体の役割を果たしたことになりません。情けない知事たちですね。ひきずりおろしてやりたいものです。
 
(2009年7月刊。667円+税)

よく分かる自衛隊問題

カテゴリー:社会

著者 内藤 功 紙谷 敏弘 ほか、 出版 学習の友社
 日本の自衛隊の現状と、そのかかえる矛盾、問題点を、コンパクトにまとめたブックレットです。大変よく分かりました。一読をおすすめします。
 軍事用語は、本質をごまかそうとする動きのなかで、大変分かりにくいものになっている。たとえば、陸海空三自衛隊の統合運用という用語によって、陸海空三自衛隊の幕僚長の格付けが変わり、対外的には「大将」格になった。ええっ、日本の自衛隊に大将なんていたの……、驚きました。
 日本の自衛隊は、いま、「本物の軍隊」を目指している。
①外敵に対して、国家権力の発動としての軍事力(武力)を最高度に行使できる
②軍事行動について、国民や国家・地方機関に協力を義務付けできる
③軍人に関わる事件について、軍刑法、軍事裁判所、憲兵といった軍固有の捜査・司法機関を保有する
 そして、今の自衛隊には、次の4つの特徴がある。
①アメリカの戦略に組み込まれていること
②外征軍(攻撃的戦力)としての性格を強めていること
③国民を敵視し、監視する性格を強めていること
④憲法に違反する存在であること
 日本の自衛隊が、いま任務づけられている作戦行動は、単なる戦闘ゲームではなく、生身の人間がやる殺傷破壊行為である。ところが、肝心の隊員、とくに下級隊員の精神的支柱の脆弱さは、自衛隊内に大きな矛盾を生んでいる。
 現在、自衛隊員にも憲法の基本的人権は保障されている。「諸君のイノチは、この隊長が預かった」とイラク派兵のときに指揮官が訓示した。しかし、生命を捨ててまで、という気にならない隊員が少なくない。
 2008年4月、陸海空にあった保全隊を全部まとめて、情報保全隊本部をつくった。隊員と家族の思想調査を担当し、あわせて国民を監視する機関である。
 自衛隊員は25万人、防衛省本省の文官(背広組)が2万人、合計27万人もいる日本最大の国家公務員組織。
 そうなんですよね。公務員が多すぎるというとき、真っ先に減らすべき存在です。
 フォースプロバイダー(FP)とフォースユーザー(FU)というように、司令官の役割分担を明確にした。これは、アメリカ海軍の方式を踏襲(ふしゅうとは読みません)したもの。
 イラクに派遣された陸上自衛隊員は、のべ5500人。戦地イラクを体験した幹部。隊員は、その後、要職に就いている。イラク派兵部隊の15人にのぼる群長・隊長のうちの3分の1が、一佐から陸将補に昇給した。陸上自衛隊のすべての基幹部隊に「戦地」経験をさせるという壮大な幹部教育を実施する意図があった。そして、イラクでの兵器・施設・設備の戦時使用を学び、生かすことができた。
 自衛隊のイラク作戦の目的は、イラクの復興支援であると同時に、一人の犠牲もなく隊員全員を日本に連れて帰ることであった。
 なーるほど、だからサマワの周辺地域に金をバラまいて、安全を買ったわけですね。
 日本の国防費は、諸外国に比べて他省庁に組み込まれているものもあり、トータルすると総額は9~10兆円規模にまでなる。世界有数の軍事費大国なのである。
 選挙戦で財源問題が焦点になっていますが、総額10兆円にものぼる軍事費を半減させたら、老人と子どもの医療費の無料化は直ちに実現できますし、日本の福祉も劇的に改善・向上するのです。軍事費こそ、何よりのムダづかいではありませんか。
 コモ(イタリア)の駅で、ミラノまでの特急列車の切符を窓口に並んで買いました。自動販売機で買おうとしたのですが、ドイツ語表示なので分かりません。別の若者たちも自動販売機で買おうとしていましたが、同じように買えず、窓口で買っていました。
 ミラノまでの往復切符をなんとか買って、ホームに入りました。すると、予定より早いのですが、列車が入ってきました。ミラノ行きであることは間違いありません。迷うことなく乗り込みました。すると、これが大正解だったのです。この特急列車は、ミラノ中央駅行きではなく、ミラノ・ガリバルディ行きでした。途中で検札に来たら、ドイツ語が解らなかったからととぼけるつもりでいたのですが、心配した検札は来ませんでした。
 ガリバルディ駅も、もちろんミラノ市内にあります。地下鉄で、中央駅とも結んでいます。ミラノには何本もの地下鉄が走っているのでした。ガリバルディ駅に着いて、よく調べてみると、なんと、コモとも私鉄で結びついています。しかも、ここからミラノ・マルペンサ空港行きの急行列車が出ているのでした。なんだ、なんだ。それでは、明日、コモからこの私鉄に乗ってガリバルディ駅に出て、そして急行に乗り換えてマルペンサ空港に向かうというのが一番安全・確実なコースじゃないか。すっかり安心しました。でも、一応、ミラノ中央駅からマルペンサ空港までの足も調べておきましょう。地下鉄に乗って、ミラノ中央駅に着いて驚きました。なんと、とてつもなく巨大な駅です。そして、切符を買うための窓口には何百人もの人々が延々と長蛇の列をなしています。見るからに気の遠くなりそうな光景です。うんざり、げんなりしてしまいました。そそくさとガリバルディ駅に戻りました。次は、何時何分のコモ発列車に乗ったらよいかです。駅の時刻表を見てみます。6時30分にコモを出て、ミラノに7時半に着く列車があると書いてあります。よし分かった。コモ駅に着き、念のために明日の日曜日、コモ発、ミラノ着で6時か7時の列車はどれですかと尋ねました。すると答えは日曜日に出ているのは6時17分だけ、次は7時17分だというのです。ええーっ、なんということ……。驚きました。だって、ミラノ・ガリバルディ駅には6時17分発の列車なんて書いてなかったのですよ……。でも、コモ駅の係員が嘘を言うはずはありません。時刻表にも確かにそう書いてあります。
 翌朝、ホテルを出たのは6時15分前です。スーツケースを引っ張って、6時少し前に着きました。間違いなく、6時17分発と表示された列車がいました。ミラノ・ガリバルディ駅でマルペンサ行きの急行に乗り換えました。大学生らしい若者たちでほとんど満席でした。
 あてにならない駅の時刻表に、今も不思議でなりません。
 
(2009年4月刊。1500円+税)

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