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カテゴリー: 生物

ジャングルの極限レースを走った犬

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ミカエル・リンドノード 、 出版  早川書房
この本のタイトルを読んだとき、私の頭の中には、いくつものハテナマーク?が明滅しました。ジャングルの極限レースって、何なの? 北極の氷のなかを走る耐久レースじゃないの? いったい、どこを走るっていうの? それに、レースに犬が加わるって、何? まさかカナダの犬ぞりレースじゃないんでしょ?
ですから、犬派の私としては、何の話なのか、突きとめなくてはなりません。
場所は中南米のエクアドル。700キロのレースだ。158キロをトレッキング・登山・懸垂下降
で、412キロをサイクリングで、それから128キロをカヤックで進む。ゴールまでの標準時間は110時間から190時間。昼夜8日間にわたるレース。標高4000メートル地点からスタートし、ゴールは海抜ゼロ地点。それまで2度にわたって2000メートル地点まで下り、2度にわたって再度4000メートル地点へ登る。有毒のクモやヘビ、モンスーン氷、ジャングル、急流が行手にある。
4人一組で53チームが参加する。ルールでは睡眠は1時間単位でとることになっている。たとえ数分でも時間を過ぎたら、次の1時間になるまで出発できない。もっとも木々が密集し、もっとも人里離れたジャングル地帯。そこを通過するためには、GPSナビゲーションの使用が認められていた。GPSなしでそのエリアを進むのはほぼ不可能。
著者は途中で、泥だらけの、ぼろぼろの目をした犬を見つけた。その犬は実に平然としていた。威厳があり、その穏やかな様子に惹きつけられた。その犬は、ゆっくり近づいてきた。温まったミートボールを差し出し、「はい、どうぞ」と言うと、ほとんど一口で平らげてしまった。
「きみ、お腹が空いていたんだね」
そして、著者たちは出発する。すると、犬がついて来ている。
「きみも一緒に来るかい?」
その犬は、顔を上げ、目を見開いて見つめた。ヘッドランプの光で、その瞳が琥珀色をしていて、茶色い線に囲まれているのか分かった。
著者たちは道に迷った。
「ここは、きみの国だろ。道を教えてくれないかな」
犬は先頭に立って歩きはじめた。しかし、やがて、犬も迷っていることが分かった。カヌーに乗り込むと、犬は泳いで必死にうしろを尾いてきた。
結局、著者たちのチームは146時間でゴールにたどり着いた。12位。悪くはない。だけど、すばらしくもない。そして、この、レースに途中から参加した犬、アーサーと名づけた犬をスウェーデンに連れ帰るのです。アーサー(犬)が極限レースをどうやって乗り切ったかも興味深いところです。連れ帰るための苦労は並たいていのものではありませんでした。なにしろ、ジャングルで出会っただけの野良犬なんです。検疫に手間と時間がかかるのも当然です。しかし、それを忍耐強くやりきったのです。
それにしても、なんと賢い犬なんでしょうね。犬って、すごいですね。世界には、こんな極限レースがあること、そして、途中からチームに参加した犬の賢さ、それを受け入れた人々の心の温かさに読んでる私の心まで、じんわり、ほっこり温まりました。
犬好きのあなたなら、絶対に見のがせない本ですよ。
(2017年4月刊。1800円+税)

ハヤブサ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ヘレン・マクドナルド 、 出版  白水社
ハヤブサは史上最速の動物だ。時速160キロで飛び、いや時速320キロで降下する。ハヤブサは高速で飛び、目が黒っぽく、開けた空中で活発に狩りをする。
ペレグレンハヤブサは鳥を狙うのに対して、砂漠のハヤブサは哺乳動物やハ虫類、昆虫も獲物にする。どちらのハヤブサも、メスのほうがオスよりも身体が大きい。オスは一般にメスの3分の1ほどしかない。
シロハヤブサは、背中の模様がペン先の形に見えたことから、17世紀のスペインでは弁護士(レトラド)と呼ばれた。
ええっ、ハヤブサは弁護士と呼ばれていたのですか・・・。
ハヤブサは、その感覚系と神経系の働きが高速なため、反応がきわめて速い。ハヤブサの世界は人間よりも10倍の速さで動いている。人間の脳は、1時に20の事象しか処理できないのに対して、ハヤブサは70~80の事象が処理できる。だから、テレビ画面では毎秒25枚が放映されるが、ハヤブサは、これを動画としては認識できない。
一瞬のあいだに、人間よりもたくさんのものをまとめて見られるおかげで、全速力で足を延ばして空中の鳥やトンボをつかむことができる。ハヤブサの仲間のチョウゲンボウは、18メートル離れたところから、体長2ミリの虫を判別できる。
ハヤブサは水はめったに飲まない。必要な水分の大半はエサとなる動物から補給する。
ハヤブサの消化系は短い。生の肉は消化しやすいから。
ハヤブサは、一日のかなりの時間を羽のメンテナンスに費やす。脂肪酸、脂肪ろうの分泌液を出し、羽に塗る。この分泌液には、防水効果のほか、ビタミン前躯体があり、これが陽光を浴びてビタミンDに変わる。
ハヤブサは、だいたい一夫一妻であり、婚外交尾はめったに見られない。
ハヤブサの子は、生後1年目に、およそ60%が飢えに苦しんで死ぬ。
ニューヨークやワシントンのような大都会でもハヤブサが繁栄するようになったとのことです。ハトのようなエサが豊富だからのようです。
ファルコンとも呼ばれるハヤブサについて、いろいろ知ることができる本でした。
(2017年5月刊。2700円+税)

知っているようで知らない鳥の話

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 細川 博昭 、 出版  サイエンス・アイ新書
本のタイトルどおり、驚きいっぱいの知的刺激あふれる本です。
カラスは遊ぶのが大好きで、1つのボールを集団で追いかけて奪いあったりする。証拠写真があり、なるほどと思いました。
カラスのなかには、カレドニアガラスのように、未知の材料から、状況(必要)に応じた道具をつくり出す能力のあるカラスがいる。
オウムも、カラスと同じように自作した棒をつかって、食べ物をたぐり寄せる。
カケスは、エサの少ない冬に備えて、実りの季節(秋)に栄養価の高いドングリを隠して、溜め込んでいく。カケスは、最大4000ケ所にものぼる隠し場所を正確に記憶している。どこに隠したのかを忘れることはない。
大型のインコであるヨウムは、好奇心が強く、安心できる相手と認識した人間を深く信頼する。
ヨウムのアレックスは、色や形などを50以上も正確に理解し、自分の口で名称を言えるようになった。
ブンチョウは、音楽を聞き分けている。クラシック音楽を好み、現代音楽を聞くくらいなら無音のほうがマシと考える。
ニワシ(庭師)ドリのオスは、メスの気を惹く構造物をつくる以外には何もしない。オスのつくった構造物が気に入ったメスは、オスの才能を認め、その場で交尾する。オスのつくる構造物は、完成するまで10ヶ月もかかる。
カモのヒナが卵からかえるのが同時期になるのは、卵の中のヒナが、卵の内側から卵殻を突つき、その音をまわりの卵に伝え、それぞれの出す音を聞いて、自分の成長が周囲より早いか遅いかを知って、成長速度をコントロールしているから。
よくも、こんなことが判明したものですね。観察だけからとは思えませんが・・・。
陸上にすむ哺乳類で、息を止められるのは人間だけ。チンパンジーには、その能力はない。
鳥は、息を止めたり、気管支を通る息の流量をコントロールして歌をつくっている。
インコやオウムは、寝ているときに、寝言として、耳にした声や、覚えている人間の言葉を口にすることがある。
カラスやインコは、人間の視線をたどって、その目が見ている先を知ることができる。
ツバメの赤ちゃんが巣から放り出されているときには、つがいを見つけられなかった若いオスが、カップルを破局させる目的でヒナをつまみ出してしまった可能性がある。
メスは、ヒナが全滅してしまうと、カップルを解消して、新しいパートナーを探そうとする。
いやはや、世の中は奇想天外、知らないことだらけなんですよね・・・。
(2017年3月刊。1000円+税)

カラス屋の双眼鏡

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 松原 始 、 出版  ハルキ文庫
『カラスの教科書』の著者は、カラスや鳥に限らず、ヘビをふくめて、生き物なら、なんでもござれの生物学者だったんですね・・・。
花粉を運ぶのはハチだけではない。鳥も花粉を運ぶ。サザンカやツバキが冬に大きな花を咲かせるが、島を呼び寄せ、蜜を吸うときに花粉を頭にくっつけて運んでもらう。
ハシブトガラスは巣を隠すことに異常なほどのこだわりをもっている。それでも生物学者は簡単にカラスの巣を見つけるのですから、たいしたものです。
カラスは、ふつう巣から少し離れていて、自分の縄張りが見渡せ、かつ、巣の周辺がよく見える場所に陣取って見張っている。
東京・銀座のド真ん中にも、カラスの巣があるなんて驚きですよね。皇居の森の中にあるんじゃないのですね。丸ビルの前の並木にカラスの巣があるだなんて、信じられません。
縄張りがあると、縄張りのなかに住んでいるのは、ペアのカラスの2羽だけ。
ハシブトガラスは、「カアー」と、ハシボソガラスは「ゴアー」と鳴く。
カラスは、しばしば人の声や物音を即興でまねして返す。ハシブトガラスに比べると、ハシボソガラスは鳴かない。ハシボソガラスが鳴きはじめたら、確実に何かが迫っているということ。
カラスは、鳥や獣を捕らえることに関してはシロウト同然である。手際がよくない。
ヘビの起源は、地中仮説が有力になっている。地中では脚が邪魔になるので退化してしまい、目もウロコに覆われてなくなりかけたが、再び地上に出てきたので、目を覆うウロコが透明になって見えるようになった。
ヘビを見たら、すぐ捕まえる。ヘビやクモに咬まれたらどれくらい痛いのか、黙って手を出して咬まれてみる。うひゃあ、なんということをするんでしょう・・・。とても、ヘビ屋なんかにはなれませんし、なりたくもありませんよね・・・。でも、こんな変人・奇人の学者がいるおかげで、判明したことがたくさんあるわけです。世界の視野を広げてくれる本でした。
(2017年3月刊。660円+税)

クマムシへんてこ最強伝説

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 堀川 大樹 、 出版  日経BPマーケティング
体長わずか1ミリしかないクマムシは地球上の最強生物。
その強さは、体を縮めて乾燥している仮死状態(乾眠)に入ったら、マイナス273度の低温からプラス100度近くの高温に耐えられる。ヒトの致死量の1000倍の線量の放射線にも、紫外線にも、そして水深1万メートルの75倍相当の圧力にも、さらには真空でもアルコールにも耐えて生き続ける。
宇宙空間の真空に10日間さらされた乾眠クマムシは、地球に帰還したあと、見事に復活した。
体長1ミリなので、顕微鏡をつかわないと、じっくり観察できないというのが難点ですが、ともかく、その生命力のすごさには圧倒されてしまいます。
クマムシは、ムシつまり昆虫ではなく、動物。小さいけれど脳もあり、消化器官もある。ちゃんと神経や筋肉だってある。
クマムシは水生動物であり、水の中でのみ活動できる。ただ、水中を泳ぐのではなく、水の底を歩く。
ヨコヅナクマムシにはオスがいない。メスは交尾をせずに、自分自身で卵をつくって産む。
クマムシは、これまで1200種が知られている。
最後に、知られざるクマムシを食べてみたとのこと。あまり美味しいものではなかったようです。
かわいくて強い、へんてこな小動物、クマムシのいろいろを知ることのできる面白い本です。いやあ、世の中には、こんな動物もいるのですね。万物の霊長なんて、人間は威張っておれませんよ。
(2017年2月刊。1400円+税)

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