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秘録 警察庁長官銃撃事件

(霧山昴) 

著者 上法 玄 、 出版 草思社

1995年3月30日に発生した警察庁長官銃撃事件は、結局、犯人が不明のまま2010年3月30日に公訴時効が成立してしまいました。「世界に冠たる優秀さ」を誇る日本警察の「本当に大失態」です。国民の一人として私も恥ずかしく思います。

ところが、時効が成立したあと、犯人検挙ができなかったにもかかわらず、警視庁公安部は、やっぱりオウム真理教が犯んだと記者会見を用いて大々的に発表したのです。これは明らかに「大失態」を重ねるもの、恥の上塗りというべきものです。

犯行の指揮役、実行犯、支援者など、詳しい役割分担は不明だが、X元巡査長を含む教団信者8人が関与したオウム真理教による組織的な犯行だと断定しました。断定できるくらいなら、さっさと逮捕して起訴すればいいのですが、逮捕しても検察庁が不起訴にしたりして、起訴にまで持ち込めなかったのです。

400頁ある本のうち300頁は、オウム真理教のメンバーによる犯行だとして追及してきた状況を刻明に明らかにしています。

もちろん焦点はX巡査長です。オウム真理教に潜入信し、警察内の捜査情報をオウム真理教に漏らしていました。長官銃撃事件の下見をしたとか、実は自分が撃ったとか言うかと思うと、やっていないと言い出したり、とにかく二転三転して、つかまえどころのない男でした。

警察の捜査を邪魔し、動揺させるべく、意図的に翻弄したという見方もあります。

取調べにあたって刑事たちとホテルやらアパートで一緒にずっと生活しながらも、客観証拠と合致するような「動かぬ自白」はまったくしませんでした。

ちなみに、國松長官が居住していたこのマンションは超のつくほどの高級マンションであり、警察庁長官の表向きの正規の給料だけではとても購入できないはずだと前から指摘されていますが、本書はスルーしています。要するに、警察幹部の裏金づくりの結晶としての高級マンションではないか、という疑惑です。

X巡査長が実行犯ではないとすると、誰なのか…。この本ではオウムの信者である端本悟に疑いをかけています。目撃者による犯人像と矛盾がなく、銃の扱いも出来るということからです。しかし、端本は最後まで「自白」しませんでした。

銃撃に使われた銃は、コルト・パイソンであり、弾はホローポイント弾だと判明した。4発撃って3発が國松長官の身体に命中している。20.92メートルの距離での命中。これで特別な訓練を受けていないと難しいかと思っていたところ、とても扱いが容易な銃であり、とくに訓練しなくても運動神経が良ければ命中率は高いとのこと。うむむ、そうなんですか…。

警視庁公安部は、疑いをかけたX巡査長を逮捕することなく、ホテルなどで立ち詰めにして取り調べています。そして「身内の犯行」だと世間にバレないよう、裏付け捜査を一切しなかったのでした。これは、いくらなんでも信じられません。

オウムの関係者を次々に逮捕していきますが、みな口が固く、捜査は進展しませんでした。そのうち、マスコミに犯人はオウム信者の警察官だというタレこみ(内部告発)があって、大変なことになりました。警察はここで、ウソを発表して逃げ切ろうとしました。でもマスコミそして世論を馬鹿にしてはいけません。

さて、もう一人の「犯人」は中村泰という男性です。既に2024年に94歳で亡くなっています。こちらは、自分が実行犯だと名乗っていました。アメリカに渡ったこともあって、銃の扱いはプロです。ところが、身長が160センチしかありません。目撃者がみな犯人は170センチはあったというのに全然マッチしません。そして、下見のときに見た、表札は「國松」と旧字体だったというのですが、本当は「国松」という新字体なので、くい違っていたり、つじつまがあわなかったのです。

これだけの大事件なのに犯人不明のままだなんて…、割り切れない思いです。それにしても、オウム真理教の麻原以下の死刑執行は早すぎた、間違いだと改めて実感したことでした。

(2026年4月刊。2970円)

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