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カテゴリー: 生物

美の進化

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 リチャード・O・プラム 、 出版 白揚社
性選択は人間と動物をどう変えたか、がサブテーマになっている本です。大変興味深い内容で、思わずひき込まれました。
なにより人間です。進化のなかで陰茎骨(ペニスにも骨があるのです)をなくした霊長類は、たったの2種類のみ、クモザルとヒトだけ。ええっ、知りませんでした…。
ただし、陰茎骨をもたない哺乳類は、ヒト以外にもオポッサム、ウマ、ゾウ、クジラなどたくさんいて、骨がなくても、ちゃんと勃起できる。
鳥類は、恐竜の祖先からペニスを受け継いだが、およそ7000万~6600万年前に新鳥類のもっとも新しい共通祖先がペニスを失った。
ところが、カモはペニスがある。いったい、なぜ…。
コバンオタテガモのオスのペニスは、42センチという最長記録をもっている。証拠写真が添えられています。
太った女性に性的魅力を感じ、崇める文化もある。アフリカのモーリタリアでは、フツーの体型の女子は「ファットキャンプ」に送られ、体重を増やすために食べ物を大量に食べさせられる。反対に、アメリカでは、非常に太った若い女性は、体重を落とすために「ファット・キャンプ」に送られる。
アフリカのコイサン族の女性は、臀部(お尻)に大量の体脂肪が蓄積されていて、お尻が強調された、きわめて独特な体形。コイサン族の男性には、この特質がきわめて魅力的に思える。
なーるほど、もちつもたれつの関係にあるんですね…。
見知らぬ相手と誰彼かまわずにセックスしたいという飽くなき欲望は、ヒトの進化史とはほぼ無縁のものだった。人口密度は、それほど高くないし、分散もしていたので、行きずりの性的出会いの機会は、戦争のときは別として、きわめて少なかった。その結果、ヒトの男の性行動は、相手を選り好みする方向へ進化してきた。
ええっ、そうなんですか…。これには腰を抜かしそうになりました。
ヒト以外の猿人類のオスは、性欲旺盛で、受精が可能な相手であれば、いつでも誰とでも性交する。ゴリラ、チンパンジー、オランウータンのオスは、機会があれば、いつでも性交する。しかし、ヒトの男は、まったく異なる。これは、生殖に大きな投資をすることと、関係している。ヒトの男は、子の保護や世話、食事、社旗化のために、資源と時間とエネルギーを費やす。
地球上に生息する哺乳類のうち、常に乳房が大きいのはヒトだけ。ヒト以外の哺乳類では、乳房が大きくなるのは排卵期と授乳期だけ。ヒトは生涯を通じて大きな乳房の組織を維持する。常に大きいままの女性の乳房は、男性の配偶者選択によって進化した美的形質。
そうなんですよね…、よく分かります。
もっとも男性的な顔立ち、角張った顕著な顎(あご)、目立つ広い額、濃い眉、こけた頬、薄い唇を女性は好まない。女性は、むしろ中間的な顔立ちは、「女性的な」顔立ちの男性を好む。男性的な濃いあごひげよりも、薄い無精ひげのほうを女性は好む。
女性にもっとも好まれるのは、細身だが、やや筋肉質で、肩幅が広く、逆三角形の体形をした男性であり、筋骨隆々のたくましい体をした男性は一番好まれない傾向にある。
うひゃあ、そ、そうなんですか…。なんだか一般常識とは違っている気がしますけど、本当にそうなんですか…。もっとも、私自身は筋骨隆々とは無縁なんです、はい。
メスにとって不運なことに、霊長類の社会的序列は、本質的に不安定である。
世の中は、実に不思議なことだらけ…としか言いようがありません。
(2020年3月刊。3400円+税)

虫とゴリラ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 養老 孟司、山極 寿一 、 出版 毎日新聞出版
二大巨人の対談ですから、面白くないはずがありません。
ゴリラは小さな虫を遊ぶことができる。手にダンゴムシをのせて遊ぶ。ココというメスのゴリラは、すごく猫好きで、何匹も猫を飼っていた。ええっ、本当ですか、どうやって…???
東北地方のサルは、江戸時代にマタギによって根絶やしにされた。サルを狩猟していない西南日本一帯では、サルは「神様の使い」だった。
アメリカザリガニは本当にたちが悪い。西日本新聞(2020.8.27)に中国・武漢では、ビールのつまみとして、日本から入ってきたアメリカザリガニが大いに食べられているとのことです。びっくりしました。戦後、日本でも食べていましたが、主としてニワトリのエサでした。私も小学生のころはザリガニ釣りに夢中でした。
いまの日本ではサル以上に恐ろしいのはシカとイノシシ。どれだけ捕まえても、どんどん増えている。
インドネシアの島に7種類のサルがいる。ペニスの形が違うので、交雑種はできない。また、お尻の形が違うと、発情すらしない。
サルやチンパンジーは、年中、毛繕いをしている。それで親しく共存できる。ヒトは体毛がないので、毛繕い以外の何らかのコミュニケーションを考えなくてはいけなくなった。
ゴリラが昼寝するときには、夜のようにベッドをつくらず、お互いに腹をくっつけあってつながって寝ている。
ヒトの祖先は草原(サバンナ)へ進出していった。ゴリラはもっとも保守的で、未知の場所へは出て行かず、むしろ熱帯雨林のど真ん中で暮らし続けることにした。なので、非常に食性を広くもつことにした。
チンパンジーもゴリラも、食物の分配はする。だけど、運ぶことはしない。ヒトだけが、仲間のいる安全な場所へ食物を運んだ。
言葉は聴覚と視覚を利用する。言葉は意味を伝えるもの。
オランウータンは7年も母乳を吸うし、チンパンジーは5年、ゴリラも4年。ところがヒトだけが1年か2年で、乳歯のまま離乳する。
子どもは保育園児までは、虫の好き嫌いが一切ない。小学校にあがると急に虫の好き嫌いが出てくる。子ども時代に自然に接していないと、実は自然に親しめなくなる。
私もザリガニ釣りのためにカエル(ビキタンと呼んでいました)を手にもって地面に叩きつけて殺し、両足をひき裂いて、糸にぶらさげてエサにしていました。カエルの足はザリガニ釣りのエサとしては最高なんです。そして、ストローでカエルの尻に空気を吹き込み、パンパンにふくれあがらせて、池に放りこんで、うれしがっていました。子どもは残酷なことが平気ですし、好きなんです。
子どもは、そうやって虫の世界、動物の世界に入っているし、いける。
人間のもっている大きな力は想像力。想像力が人間の世界を拡張するのに役立った。
いまの日本社会は、「感じない人」を大量生産している。受動的な人間ができてしまう。
常識を破るところに人間の面白さがある。AIは常識を破ることはできない。
日本の大企業の内部留保は460兆円。これは、にほんの国家予算の規模。これが有効に活用されていない。
人間同士のつながりは人間だけではなしえない。そのつながりには、常に自然が介在してきたことを忘れてはいけない。
はっとさせられる指摘が多く、日頃のあまりに「常識」的な発想を反省させられました。
(2020年7月刊。1500円+税)

動物の看護師さん

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 保田 明恵 、 出版 大月書店
人間のための病院に看護師がいるのと同じように、ほとんどの動物病院に動物看護師がいて、獣医師のかけがえのないパートナーとして力を発揮している。
獣医師という存在は当然のこととして認識していましたが、動物看護師という職業は、恥ずかしながら、この本を読むまで認識していませんでした。この本には6人の動物看護師が登場します。
動物なので自分の口から体調を説明したり、進んで検査や治療を受けることはない。そこに動物看護師の存在が欠かせない理由がある。
保定(ほてい)とは、診察や検査、治療などのとき、そのための姿勢を動物にたもたせ、そのまま動きを止めること。力ずくではなく、要所を心得た押さえ方で、動きをピタリと止める。それがプロの保定だ。
飼主と子犬が参加するしつけ教室をパピークラスと呼ぶ。警戒心が弱く、好奇心旺盛な子犬の時期に、飼主以外の人間や他の子犬と触れあわせることで、将来、社会でストレスなく生きていける犬に育てること、また子犬を飼いはじめた人に必要な知識を教えるのが目的。
病院に連れて来られた犬には、できるだけ声をかける。「すぐ終わるよー」などと動物に声をかけて恐怖心をやわらげてやる。
シニア犬の場合には、老衰や認知症がすすんでいて、目を離したすきに何が起きるか分からない。犬のシニア期のスタートは大型犬だと5~6歳ころ、一般には7歳から老化が始まる。異変を察知するとき、まず目をみる。歯ぐきも大切だ。歯ぐきが健康なピンク色でなく白ければ貧血を起こしている。
猫が足をひきずっていると、血栓塞栓(そくせん)症の可能性がある。
死が直前にせまった犬や猫は、必ず「ワン」とか「ニャー」と鳴く。最後のひと鳴きをするのだ。人間の場合は深い深呼吸をするそうです。
犬が揚げ物屋の油の匂いがしたら、膵(すい)炎の可能性が強い。
動物病院における動物看護師の待遇は全般的に恵まれているとは言い難い。座るひまもなく動きまわり、急患の対応に追われることもある業務に見合った金額とはとても言えないのが実情だ。
チンチラ(猫)のメスは気が強め、オスのほうはたいがいボーッとしていてえ、どんくさいコが多い。
うひゃあ、これって人間そっくりじゃありませんか…。
日本には2万人以上の動物看護師がいる。これまで、獣医師は国家資格なのに、動物看護師は民間資格だった。2011年に動物看護師統一認定機構が設立され、試験を受けて認定動物看護師資格を取得するのが一般的となった。そして2019年6月に愛玩動物看護師法が制定され、国家資格となることになった。2023年から国家試験が始まる。
本書では、動物病院ではたらく動物看護師たちの苦労とやり甲斐が語られていますが、それは人間世界そのものだと痛感しました。
これも世の中の大切な職業の一つだと思います。
(2020年3月刊。1600円+税)

タコの知性

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 池田 護 、 出版 朝日新書
ええっ、タコに知性があるだなんて、アホじゃないの…。思わず、そう叫びたくなります。でも、本当にタコは思いのほか賢いようなのです。
タコは、実はハイレベルな学習をやってのける海底の賢者なのだ。
タコの世界的な輸出国は、中国とモロッコ。タコは全世界の海に生息している。世界的なタコとイカの輸入国は、日本、アメリカ、スペインそしてイタリア。
漁獲量はイカが圧倒的に多く、タコは1割ほどでしかない。イカは比較的浅いところを集団で行動しているが、タコは集団をつくらない。
250種のタコが全世界の海洋に分布している、
タコは、近い親戚筋のイカ、オウムガイそしてアンモナイトと一緒に頭足(とうそく)網(こう)というグループに入っている。
タコは8本の腕をもち、イカは10本の腕をもつ。「タコハチ、イカジュウ」と覚える。
タコは色が見えず、色覚を欠いた動物だ。しかし、タコ自身は色彩の使い手。
ミミックオクトパスは、複数のモデル種に化けることができる。パッとミノカサゴになり、次はパッとウミヘビになる。
タコは、色彩をベースとしたボディパターンでコミュニケーションをとる。
タコの寿命は1年ほど。長くて2年を少しこえるくらい。タコは繁殖したら最後、それで死亡する。これはイカも同じ。タコの腕の中には骨がない。
タコは観察学習する。隣のタコのやっていることを真似る。タコは道具を使う。
タコは人間に熱い視線を送る。タコは腕で考える。
麻薬を摂取すると、タコもハイになる。
タコが怒ると、たとえば体表のリング模様をギラギラと点滅させる。まずいエサを与えられると、怒って水中から投げつけて返す。タコの身体の色彩の変化は表情を示しているのだ。
タコの地道な研究の面白さが伝わってくる本でした。
(2020年4月刊。810円+税)

地涌の涙

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 加藤 賢秀 、 出版 南方新社
トカラ列島の諏訪之瀬島が舞台です。
トカラ列島は、種子島や屋久島のさらに南、奄美大島との間の大海原に、点々と12の島々が浮かぶ。有人7島、無人5島。南北160キロに及ぶ、日本一長い村、十島村。
主人公は半分野良猫のニャンと完全に野生のカラス、アラとアララを「飼って」いる。どちらもエサをもらいにやってくるのだ。
主人公は牛を放牧して育てています。母牛のエミールが人知れず、山のなかで出産する。母牛は通常、1年に1頭産む。ところが、母牛のエミールが死産し、自らも死んでしまうのです。そして主人公が現場に戻ると、なんともう一頭、牛の赤ん坊がいたのでした。双子だったのです。エミールは死ぬ間際に2頭目を産み落としたということです。
さあ、大変です。母牛がいないなかで、生まれたての仔牛を育てなくてはいけません。
母牛の初乳を仔牛は飲まないと免疫力がなくて、仔牛は死んでしまうのです。
仔牛の瞳を凝視すると、その瞳の奥には深い存在の根源そのものの静謐(せいひつ)と緊迫と、いまだ封印されている躍動の波が感じられる。透明な視線だった。
仔牛に地涌(じゆう)という名前をつけた。地から湧き出たるものという意味だ。
地涌は食欲が満たされると、躁状態になり、思わずはしゃぎ回る。これをパカラと呼んだ。
和牛業界では、仔牛生産農家が仔を誕生から8.9ヶ月齢まで育成する。そして競(せ)りにかけて売買し、その後、肥育農家の手で20ヶ月間養われ、その後、競売屠殺(とさつ)され、牛肉として市場に出回る。肉牛は経済動物であり、営利の対象だ。つまり主人公は、いくら仔牛の地涌と仲良くなっても、それはせいぜい9ヶ月間だけ、そして競りにかけて手放さなければいけない。
月日がたち、いよいよ地涌との別れの日が明日になった。主人公が声をかけながら牛舎に入っていくと、部屋の一番奥に座っていた地涌は、ゆっくり立ち上がり、一歩一歩いつもとは違う歩調で近づいてきた。あれっ、と思い地涌の顔を見ると、地涌は泣いていた。涙で瞳は光り、下まぶたは涙の滴で大きく濡れている。地涌には明日の別れが分かっていたのだ。主人公は地涌の顔を手で抱いて、頬にまで流れる涙を親指で優しく拭(ぬぐ)った。地涌の命からほとばしる無念の滴(しずく)だった。
かけてあげる言葉はなく、一緒に泣きたかった。そして改めて地涌の涙あふれる瞳を見つめた。地涌もじっと主人公を見つめた。すると、地涌の瞳は愁(うれ)いではなく、明るく慈愛の光に満ちていた。地涌の涙は惜別や悲哀の情ではなく、主人公の心情を斟酌し、そのすべてを許し、すべてあるがままを受け入れる真理からにじみ出た慈悲の涙なのだ。主人公は思わず、その涙に手を合わせた。そして、地涌の目は久しぶりにやんちゃな眼差しに戻っていて、何をして遊ぼうかと行動を起こしはじめた。いつものパカラだ…。
前に女性が豚を2頭、子豚から大人の豚になるまで飼って、ついに殺してもらってとび切り美味しい豚肉を食べたという本を読みました(このコーナーで紹介しています)が、それを思い出しました。日頃、私たちが美味しい美味しいと言いながら食べている牛肉は、このように鋭い意識を持つ生命体を殺しているのですね。そのことを自覚しないといけないと改めて思ったことでした。
世界54ヶ国を放浪している団塊世代(1945年生)の味わい深い小冊子でした。
(2019年10月刊。1200円+税)

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