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カテゴリー: 生物

鳥が教えて教えてくれた空

カテゴリー:生物

著者:三宮麻由子、出版社:NHKライブラリー
 山のふもとと言ってよいところに住んでいますので、夏の朝、ウグイスを一番に聞くことができます。朝6時ころに鳴き出します。春とは違って、安定した、明るい鳴き声です。ホー、ホケキョという鳴き声を聞くと、今日もいい一日を過ごせそうだと思うことができます。そして、そのうち、蝉の大合唱がはじまります。
 トイレに座ると、スズメたちが元気に鳴いています。わが家には、少なくとも2ヶ所にスズメの巣があり、一家が住みついています。にぎやかなものです。でも、正確にいうと、トイレの窓のすぐ上にあるスズメの巣をスズメたちが出入りするときには、ほとんど物音をたてません。ときに羽ばたく音がするくらいです。スズメなりに気づかれないようにしているのです。巣から少しはなれたところにとまって、にぎやかに鳴きはじめるのです。この本の著者はスズメの鳴き声について、次のように書いています。
 午前5時台には、スズメも寝ぼけ気味のようで、チュンチュンと小さめの声でまばらに鳴きあっている。6時過ぎると、突然にぎやかになり、ジクジクジク、チーユン、チョン、チーエムなど、いろいろ変化がつく。起きているかい、起きてるよ、というような一種の喧噪に聞こえてくる。7時を過ぎると、声はにわかに落ち着きを取り戻し、宴のあとの雑談よろしく、そこここに散っていく。8時にはエサを求めて出勤していくのだろう。通りがかりのスズメがチュンと鳴きながら、バタバタと飛んでいく音くらいになり、外はかなり静かになっていく。
 たくさんのスズメが来ている日は天気が良く、近くであまり声のしない日は、曇りか雨になる。
 著者が全盲であるのを知ったのは、このあとのくだりを読んでからでした。耳だけでよく観察しているなと感心したものでした。著者が全盲になったのは4歳のとき。眼圧を下げる手術によって、一日で光を失ってしまったのです。
 カナリアはひどい寂しがり屋で、そばでチイとつぶやくと、何回でもチイという地鳴きを返してくる。
 鳥は、神様のハシ休めだと思う。小さかったり、弱かったり、またワシやタカののように空の王者と言われても、生態系の頂点の微妙な場所にいる繊細な生きものだ。でも野鳥がいなければ、地球の生活はどんなに無味乾燥なことだろう。
 森の中で、自分が今どんな地点にいるかを知るためには、まずしゃがんで、できるだけ低い姿勢をとりながら耳を澄ますこと。しゃがまなければ、手に入れることのできる情報量は半分ほどに減ってしまう。
 いま、著者が聞き分けられる鳥の鳴き声は100種を超えるそうです。鳥の歌を、そのまま耳に残して覚えたものといいます。すごいですね。
 ソウシチョウは一羽ずつ歌が違うので、簡単に区別がつく。
 ええーっ、そうなんですかー・・・。著者の家ではソウシチョウをゲージの中で飼い、また、放し飼いにしていたとのことです。時間になると、きちんと戻ってくるといいます。たとえば、昼ごろに放すと、午後3時ころに戻ってきて、とまり木にお座りしているというのです。頭がいいし、可愛いですよね。
 ソウシチョウは水が好きな鳥で、水を入れ替えてやると、間髪を入れずに水浴びを始める。しかも、水浴び用と飲み水用の水入れは自分でつかい分ける。水浴びのときでも、必ずくちばしで水質を確かめる念の入れようだ。うむむ、小鳥がそこまでやるのですか。
 ソウシチョウは、自分の名前は一ヶ月で聞き分けて寄ってくる。一羽ずつまったく違う歌を十数種も生み出していく。放し飼いにすると、人間が探しているのを見て、先回りして家に帰っていたりする。ええーっ、ウソでしょ。と言いたくなるような話です。ホントなんでしょうが、まるで信じられません。
 わが家の庭にやってくるのはスズメのほかは、例のあのうるさくて厚かましさ天下一品のヒヨドリ、そして図体のでかいキジバトです。ときどき白と黒のツートンカラーのカササギも庭におりたちますが、何を食べているのか、よく分かりません。春先にはメジロもやってきます。ウグイスは来ますが、姿が目立ちませんので、見たことはありません。
(2002年2月刊、830円+税)

犬も平気でうそをつく?

カテゴリー:生物

著者:スタンレー・コレン、出版社:文春文庫
 犬の鼻は、よく見ると、こまかい畝ができている。この模様と鼻孔の輪郭で構成される鼻紋は、人間の指紋のように個体によって違い、一つとして同じものはない。
 犬は人間より積極的に臭いを集める。左右の鼻孔を別々に動かして、臭いがどの方向から来たかを探る。そして、一瞬、息をとめて臭いを嗅ぐ。犬の鼻がいつも冷たく濡れているのは、匂いの分子を集めやすくするため。鼻の中には、こまかい毛のようなものがあり、それが匂いの分子を鼻腔へと送りこむ。この毛状のものが溶けた匂いの分子を内側へ押していき、匂いを感じとる特別な細胞の近くに分子を集める。この仕組みを常に効果的にはたらかせるためには、大量の粘液が必要になる。
 人間の嗅細胞は500万個しかないが、ジャーマン・シェパードは2億2,500万個ももっている。最高はブラッドハウンドで3億個。だから、1グラムの酪酸を10階建のビルの中で蒸発させても犬は嗅ぎ分けることができる。
 これに反して、犬の視力は、最高で0.26しかない。犬は飼い主が動いているときは1.5キロ離れても見分けることができるが、動かないとわずか90メートルしか離れていなくても見分けられない。ただし、犬の視界は270度ある。
 犬は人間ほど味にこだわらない。犬の味蕾(みらい)は、人間の5分の1しかない。犬は塩分をほしがらないし、敏感でもない。それは肉食だから。肉にはナトリウムが含まれている。犬は慣れ親しんだ味より、新しい味を好む。新しいもの好きだ。
 犬のヒゲが切られると、犬は不安になり、ストレスを感じる。そして、自分の周囲を十分に感じとれなくなる。
 犬は、人間と違って痛みを表現せず、じっとガマンする。群れの仲間から襲われないためだ。だから犬が痛みをあらわすのは、身を守るためのガマンを限界を超えたということ。
 犬は抱かれることをいやがる。動きを制限され、拘束されたように感じるからだ。
 犬が生まれて3週目から12週目までの期間内に人間にふれあうことが大切で、それによって子犬は人間との関係に自信をもつ、知らない人を怖がらなくなる。生まれて8週間きょうだいと一緒に育った子犬に比べて、すぐに引き離された子犬は、相手を強くかんでしまう傾向がある。
 生後10週目までにまったく罰を受けずに育った子犬は、ほとんど訓練不可能な犬になる。犬に罰を正しく与えるのは、非常に難しい。不適切な懲罰は、犬に非常にマイナスの心理的影響を与え、飼い主と犬とのきずなを完全に壊してしまう。
 10歳以上の犬の62%に認知症の症状があると推定されている。認知症でない健康な老犬でも、加齢によって頭の働きは鈍ってくる。
 うちの犬は、自分を人間だと思っている。この考えは間違っている。犬は、私たち人間を犬だと思っている。二本足で歩く、妙な姿をした犬。犬的な行動に完全に反応できない、あまり頭の良くない犬。こう思っている。
 犬は人間について、擬犬化をしている。だからこそ、犬は、ほかの犬にするように人間に向かって尾をふり、前脚をのばして遊びに誘うおじぎをし、人間の匂いをかいでいるのだ。
 最後に、この本のタイトルにあるとおり、犬はほかの犬も人間に対してもうそをつくことができます。だますのもゲームのうちなんです。
 古くからの人間の良き友、犬についてまたまた認識を深めることのできる本でした。
 雨の少ない梅雨になりそうだというので、水不足の夏になるのかと心配していましたが、このところ大雨が降っています。蝉の鳴き声を7月2日に一度だけ聞きましたが、その後は、雨のため地上に出てこれないようです。実は鳴き声を聞く前、まだ雨の降らない6月末(6月30日だったと思います)に蝉の死骸が路上に落ちているのを早くも見つけ、えっ、今年は早いなあと思ったものでした。参院選も今週から始まります。世の中をいい方向に変えたいものですよね。

うなぎ丸の航海

カテゴリー:生物

著者:阿井渉介、出版社:講談社文庫
 日本人の食べるウナギの相当量はヨーロッパから輸入される大西洋ウナギだそうですが、この大西洋ウナギの収穫量が激減しているそうです。この本は、日本産ウナギの産地探しの苦労話です。『アフリカにょろり旅』の主人公の先生たちも登場します。ウナギの産卵地調査は、年々減少の一途をたどるウナギ資源の確保のためでもあるのです。
 ヨーロッパウナギそしてアメリカウナギの産卵地が大西洋にあるサルガッソ海の数千メートルの深海であることが突きとめられたのは1922年のこと。
 では、ニホンウナギの産卵地は一体どこなのか。1967年、台湾の南、バミュー海峡でレプトセファルス(ウナギの仔魚)が発見された。1991年、マリアナ諸島の近くで、さらに小さなレプトセファルスが採集された。しかし、それ以上はなかなかつかめなかった。
 ウナギは群れをつくる魚ではない。一尾いっぴきが孤独に旅をして産卵場にたどり着く。
 ウナギの耳石によると、4月から11月、とりわけ6月から7日の新月の夜がウナギの産卵の日。6月の新月以前に到着したウナギは新月を待ち、それに遅れたものは海底の岩穴にひそんで7月の新月を待って、その日に産卵する。これを新月仮説という。
 レプトとして黒潮に乗ったウナギは、沿岸で体長を縮め、薄い葉っぱの形から初めて親と同じ姿になる。形は同じだが、透明なシラスウナギだ。これが河川に遡上すると黒くなる。そして、7月から10年くらいで、体長60から100センチ、銀色の光沢をもつ銀ウナギに成長する。すると眼を胸びれが大きくなって、台風の増水に乗って海に下る。そして黒潮に逆らうか横切るかして、延々数千キロを泳いでいく。海に入ると一切餌をとらず、胃や腸は縮んで消えてしまう。かわりに雌は卵、雄は精子で腹がはちきれそうに膨らむ。
 ただし、黒潮に乗って沿岸に達したウナギたちの中には、河川に遡上せず、一生を海水中に暮らすものもいるようだ。これはウナギの耳石に含まれるストロンチウムの解析から最近になって判明したこと。
 ウナギはなぜ数千キロの旅をして、卵を産みにふるさとに帰るのか。
 ウナギが数千キロを泳いで、この海まで卵を産みに来るのは、1億年もちきたったDNAによる。恐竜がのし歩く白亜紀にウナギの祖先は地上に現れた。現在のボルネオのあたりに。ウナギは熱帯のぬるく浅い水の中で、豊かな餌を食べて繁栄し、分布を広げていった。グアムに近い熱帯の海で産卵し、孵化した卵は、プランクトンとして北赤道海流と黒潮で運ばれつつ成長し、半年して親の姿になったところで接岸、そして河川に遡上、成熟して降海し、生まれ故郷まで、また数千キロの旅をして産卵という大回遊路を生きる形としてつくりあげた。
 すごいウナギの生き方です。これからは心してウナギのカバ焼きをいただくことにします。ハイ。
 いま、わが家の庭には白、黄色、ピンクそして朱色の百合の花が咲いています。まるで空に青い花火をうち上げたようなアガパンサスの花も咲きました。アジサイと同じで、梅雨の雨にうたれる風情がいいのですが、残念なことに今年は雨が少ないようです。田植えの準備がすすみ、あとは雨が降るだけです。

タヌキのひとり

カテゴリー:生物

著者:竹田津 実、出版社:新潮社
 面白く、やがて悲しき物語です。森の獣医さんの診療所便りというサブ・タイトルがついています。すさまじいまでの苦労話を読むと、野生動物とつきあうのがいかに大変なことか、ノミに喰われたかゆみ・痛さとともに伝わってきます。でも、写真だけを眺めていると、カッワユーイと、つい叫んでしまいそうです。
 森に帰らなかった一人っ子タヌキの「ひとり」。子どもを連れて里帰りしたキタキツネの娘、集団入院したモモンガ、溺れたカモ・・・。いろんな森の動物たちが登場します。
 今日も森の診療所は大忙し!
 これはオビの文句です。しかも、まだまだ登場するんです。ノネズミは愛娘の布団のなかで圧死してしまいました。キツツキは朝5時なると診療所の窓ガラスを叩きます。エサくれ、とねだっているのです。野ネコ(野良猫とは違います)は、キタキツネとナワバリをめぐって熾烈な戦いをくり広げます。
 獣医師は、助けた患者から感謝されることのない職業。それどころか、助けた患者からありがたいお礼参りで、何度も痛い目にあわされる。ひゃあーっ、損な役回りなんですね。でも、それを承知でこの仕事を続けているのですから、ホント、偉いものです。森の中にリハビリセンター小屋まで建てたというわけで、すごいすごい。
 モモンガは空を飛ぶ。でもその前に、人間はモモンガのノミにやられてしまう。痒さとしつこさはたまらない。読むだけで背筋がゾクゾクしてきました。お風呂に入ると、身体のビミョーな部分ほどたまらなくかきむしってしまうというのですから、おっとっと、近寄りたくありません。それでも、飛べないモモンガをリンゴでつって飛行訓練させているところの写真なんか、つい痒みを忘れて私もしてみたくなります。
 カモのヒナが水に溺れて、本当に死んでしまった。実はカモは水に浮かない。浮くには条件がある。カモのヒナが水に浮くのは、ひとつは体を覆う綿毛といわれる羽毛が静電気を帯びていること、もうひとつは羽毛に油脂がぬられていて、それが水をはじき、結果として水面に浮く。さらに、カモのヒナは親鳥の翼の中に出入りをくり返す。このふれあい、こすりあいの摩擦によって静電気が生じる。では、親鳥がいなかったらどうするか。絹製の風呂敷のなかにカモのヒナを入れて、上下・左右にふりまわす。油脂を体中にぬりこむ作業のほうは、お手本もなく大変だった。それでも、ちゃんと空を飛べるようになって仲間と一緒に渡り鳥になっていくのです。
 うーん、素晴らしい写真ばかりで、たんのうしました。

野生のカメラ

カテゴリー:生物

著者:吉野 信、出版社:光人社
 オビに動物写真家の世界冒険撮影記と書かれていますが、まさに納得のキャッチ・コピーです。すごい迫力の動物写真のオンパレードです。これで1900円とは、実に安い。
 クマが出没する地域でキャンプするときには、食料は車の中か、特別にもうけられた食料貯蔵庫に入れておかねばならない。そんな規則は分かっていたはずなのに、友との久しぶりの再会を祝って、夜遅くまで語りあってマグカップを机の上に置いたままテントに入りこんで寝てしまった。そこへ夜中、グリズリーが登場した。危機一髪。その友というのは、1996年にシベリアでヒグマに襲われて亡くなった星野道夫氏のこと。いやあ、いつも危険と隣りあわせだったんですね。
 トラの写真をとりに行ったとき、一番近づいたのはわずか3メートル。このとき、著者はゾウに乗っていました。オープンのサファリカーに乗ったときには5〜6メートル。いずれも襲われる心配はしなかったということです。トラがジープのすぐ横を通り過ぎながら、軽く口を開けて、「やあ」といわんばかりの顔で著者に挨拶していったこともあるそうです。えーっ、そうなんですかー・・・。でも、やっぱりトラって怖いですよね。
 この本には、ジープの屋根の上にチーターが乗っかっていて、著者がその脇に頭を出している写真までもあります。こうなると、何メートルどころではありません。何センチという近接した距離です。チーターがひょいと爪を立てたら一生の終わりです。
 ネコ科の動物は基本的に水を嫌う性質があるが、トラは例外で、暑い夏の日などには好んで水に入る。なるほど、それででしょう。インドでベンガルタイガーが水浴びしている瞬間をとらえた迫力満点の写真もあります。
 アフリカでもっとも恐ろしい動物は、なんとアフリカスイギュウだというのです。驚きました。ライオンやトラ、そしてワニではないんです。ホントなのかなあ、思わずつぶやいてしまいました。
 好きなことをやっていて本人はとても幸せだと思うのですが、臆病な私なんかにはとても真似できない話のオンパレードです。でも、このような冒険写真家がいてくれるおかげで、野生動物の生態が茶の間で居ながらにして楽しめるのですから、感謝、感謝。大いに感謝しています。

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