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カテゴリー: 社会

忖度しません

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 斎藤 美奈子 、 出版 筑摩書房
反知性主義なるコトバは、私には、まったくピンとこないものです。いったい、誰が何を批判しているのか、さっぱり予測できません。
創価学会支持を高言している佐藤優は、結局、自公政権つまり与党支持者と考えるしかないと思うのですが、アベ政権を批判しているようでもありました(佐藤優の本をちゃんと読んでいるわけではないので、あくまで印象です)。
安倍晋三を批判する人を反知性主義の人たちと決めつけられると、違和感があります。いえ、ありすぎます。だって、安倍首相のやったことは、黒を白といい、「丁寧に説明する」と言いながら何も説明せずに時の過ぎるのをひたすら待つだけだったではありませんか。そこに知性のカケラもないことは明らかです。それを、なんだかこむずかしく「反知性主義」なんてコトバにしてしまうと、かえって、多くの国民は戸惑うだけなんじゃないでしょうか…。
やはり、物事はズバリ言えるときにはもってまわった言い方をせず、ズバリ、「ウソをついたらいけない」、「説明になっていない」と批判すべきです。
佐藤優のコトバは、もってまわった表現で、結局のところアベ政治の本質を擁護しているとしか私には思えませんが、どうなんでしょうか…。
この本の著者は、いつも歯切れよく時評をコメントしていますので、いつもいつも目を大きく見開かされる思いです。
コロナ禍は、おさまるどころか、急激に広がり、医療崩壊に日本中が直面している。ところが、政府のやっていることは相も変わらず「自粛」一辺倒。PCR検査はやらない、ワクチンの接種はいつになるか分からない。だけど、オリンピックはやる。「ムダ」な医療機関の整理・統合は既定方針どおり進める。
本当に日本の政治はまちがっています。アベ・スガ政権による大々的「人災」が進行中としか言いようがありません。
マスコミは、飲食店の「自粛」が徹底しているか「見守り隊」が点検してまわっているのを、さも行政が何かやっているかのように報道します。とんでもない報道です。その前に政府がやるべきことがあることを、なぜ厳しく追及しないのでしょうか、摩訶不思議としか言いようがありません。PCR検査を徹底させる、ワクチンをきちんと確保、病院で治療を受けられるようにする。これが政府の当然の使命です。ところが、どれもやられていません。なぜマスコミは厳しく糾弾しないのでしょうか。オリンピックにしても、聖火リレーの報道なんか止めて、オリンピックそのものを中止せよとなぜ言わないのでしょうか…。
「反中」、「反韓」、「反野党」。これをやっていると売れるとマスコミ経営陣はみているというコメントを読みました(本書ではありません)。戦前の大本営発表を無批判にたれ流していたマスコミの愚行を繰り返してほしくありません。マスコミに働く人々に、もっと現実を直視して、スガ政権に忖度しない報道をしてほしいと切に願うばかりです。
(2020年9月刊。税込1760円)

波浮の港

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 秋廣 道郎 、 出版 花伝社
著者は東京の弁護士ですが、伊豆大島の出身。波浮(はぶ)の港に生まれ、中学校を卒業するまで波浮の村で生活しています。その子ども時代の生活がゆったりと描かれていて、読む人の心をなごませてくれます。
高校からは都内の名門校である日比谷高校に入り、東大法学部を卒業して衆議院法制局に入ったあと弁護士に転じたのでした。私とは同期で、横浜で一緒に実務を修習しました。器械体操をしていたというので、運動能力は抜群で、修習生同志でボーリング場に行くと、いつも目ざましい高得点をあげていたのが印象的です。
生家は牛乳屋で、著者も牛乳配達の仕事をしていました。もっとも父親は著者が5歳のときに病死していて、長兄が父親代わりでした。
父親は早稲田大学法学部を卒業し、戦前は中国に渡って満鉄に入社し、戦前のうちに帰国して、戦時中は波浮の村長もしていたようです。
この本が面白いのは、著者がガキ大将として、2人の子分ともども遊びまわり、ときに悪さをしていたことが、手にとるように分かるところにあります。著者の温かい人柄がにじみ出た文章なので、読んでいると、子分の六ちゃんと史郎ちゃんとあわせて三人とも、いかにも愛すべきガキどもだったことがよくよくイメージできます。
伊豆大島の夏、そして春。子どもたちが嬉々として遊び呆けます。貝や魚をとって、磯の岩場で焼いて食べるのです。そして、春になると出てくる「ほんちゃん」というクモをケンカさせて遊びます。マッチの空箱に入れて飼い、そのお尻をなでると黒くなるのが面白いのでした。
小学校も中学校も1学年1クラス。9年間も一緒だと、みんなまる見え。
教師の紹介もなつかしさを感じさせます。昔の教師はゆとりがあったのでした。
著者の家族は波浮の港の開港者である秋廣平六(へいろく)の家柄であり、父親が村長もつとめていたので、ダンナゲー(旦那の家)として地域から尊敬されていました。それでも、お米は島外からの輸入品で貴重品なので、サツマイモを常食としていた(そのためおならが教室でオンパレードになっていたという愉快なエピソードが紹介されています)。そんな著者の家に傘がなく雨合羽もなかったというのです。
著者は小学2年生のとき、肋膜炎にかかって長く学校を休んで、孤独との戦いで想像力を豊かにした。それが結果的に幸いしたようです。また、九死に一生を得る経験を何度もしています。
この本で圧巻なのは、著者の両親が結婚する前にやりとりしていた100通をこえる恋文(ラブレター)の一部が紹介されているところです。そのころの両親の写真は、いずれも、まさしく美男・美女です。著者は父親似だと私は思いました。
秋廣平六は、上総国(かずさのくに。今の君津市)出身で、江戸時代末期に幕府の許可を得て、1千両近くの経費(今の10億円か…)で波浮港を掘削して、開港した。いま巨人軍で活躍している秋広優人選手も「秋廣平六」の末裔(まつえい)とのこと。
2010年の初版を改定増補した新版です。贈呈、ありがとうございました。著者の引き続きのご健勝を心より祈念します。
(2021年5月刊。税込1870円)

ストップ!! 国政の私物化

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 阪口 徳雄 ほか 、 出版 あけび書房
アベ前首相の国政私物化はひどいものでした。森友学園、加計学園、桜を見る会、アベノマスク…。どれもこれも刑事事件とすべきレベルのひどさですが、われらが東京地検特捜部は期待を裏切り続けてしまい、どれもこれも犯罪として立件することはありませんでした。情けない限りです。国家の不正を弾劾するという検察魂(たましい)をどこかに忘れてしまったようです。悲しいです。トホホ…。
そして、スガ首相。スガの息子が登場する総務省幹部の接待、これも見過ごせないレベルなのに、「私人」なので息子の国会証言はなし。あのカゴイケ氏も私人だったんですけどね…。
文部科学省のトップ・事務次官をつとめた前川喜平氏の告発の内容を知ると、うひゃあ、ひどい、ひどすぎると思わず怒りというより溜め息がもれてきました。
スガ首相が訪米したとき並んでいたのは和泉洋人、北村滋、もう一人でしたよね。和泉洋人というのはコネクティングルームで不倫報道されたりした話題の人間ですが、かなり悪知恵が働くようです。
文部科学省の事務次官の藤原誠は、本命でもダークホースでもなく、次官レースから脱落したはずなのに、スガに気に入られて、もう事務次官を2年もつとめている。問題は、その手法。定年延長をわざわざ2回もしていたというのです。検察庁法のときの黒川弘務については失敗したやり方が文科省では、先にこっそりやられていたというのです。ひどい話です。
「なんでも官邸団」というコトバが出てきます。霞が関は、いまや何でも首相官邸の言うことを聞く官僚ばかりになっているというのです。「ご無理、ごもっとも。無理が通れば、道理が引っ込む」。これでは官僚の世界はガタガタです。ホコリも何も、あったものではないでしょう…。
人事院総裁の一宮なほみもひどかったですね。私と同期の元裁判官ですが、恥ずかしげもなく、黒川氏の定年延長問題でアベ首相におスミつきを与えてしまいました。「恥」というものを忘れてしまった、つまらない人間になり下がったとしか言いようがありません。残念です…。
いま、スガ首相の下に、加藤官房長官がいますが、前川氏は、首相もスガ、官房長官もスガ、「スガスガ政権」になっている。ちっともすがすがしくないけれど…と、最大級の皮肉を投げつけています。まったくもって同感です。忘れてはいけないことが盛りだくさんの本でした。
(2021年4月刊。税込1760円)
 日曜日、孫たちと一緒に庭でジャガイモ堀りをしました。大小さまざまのジャガイモが土の中から次々に出てきて、孫たちは大喜びでした。そばで見ていて、私までうれしくなりました。ジャガイモは失敗がありません(サツマイモは失敗します)。
 タマネギのほうも、すぐ脇に5本ほど収穫できました。新ジャガ、新タマネギをしばらく味わうことができます。

愛をばらまけ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上村 真也 、 出版 筑摩書房
大阪は西成(にしなり)区の釜ヶ崎にある小さなキリスト教の教会(メダデ教会)の牧師(西田好子さん、68歳)と信者たちの苦闘の日々が紹介されている本です。
西田牧師は、学校の教師を辞めて、関西学院大学(関学)で神業を勉強して牧師になり、60歳から西成で牧師として活動している。
釜ヶ崎は、かつては「労働者の街」だった。東京・山谷(さんや)、横浜・寿(ことぶき)町をしのぐ日本最大のドヤ街(簡易宿泊街)として、日本経済を下支えした。暴動もたびたび起きた。ところが、長引く不況と高齢化によって、今では「福祉の街」に変容した。住民2万人の4割超が生活保護を受給している。
メダデ協会のメダデって、聞き慣れない言葉だが、旧約聖書に出てくる人物の名前。ヘブライ語で「愛があふれる」という意味。
西田牧師は、野宿者に声をかけて信者を増やしていった。ところが、トラブル勃発。ケンカをふっかける者、暴れる者、酒やギャンブルにおぼれる者、ついには教会のお金を持ち逃げする者まで…。
西田牧師は、キリスト教の伝道とあわせて、福祉制度や酒・薬物依存症への対処法を学んだ。信徒と一緒に寝泊まりし、特売品を買い、病院に付き添い、働き口を探す。
24時間、365日、生活のすべてを教会にささげる。
釜ヶ崎での生活保護は野宿者も受給しやすくなった。
20人ほどの信徒は全員が生活保護を受けている。家賃などを差し引いて生活費に回せるのは月6万円。酒やパチンコ・外食にまわして散財したら、たちまち生活に窮する。
西田牧師は、聖人君子や聖母のイメージではない。本人も、派手な性格で誤解されやすいと言う。それでも離婚しながら、二人の息子を立派に育て上げている。失敗、失敗の人生と西田牧師本人は言うけれど、これも本人が選んだ人生なので、悔いはなさそう。
徘徊を繰り返す認知症の信徒、暴れる薬物依存症者、寝たきり患者の信徒…、20人の信徒に正面から向きあう西田牧師…。
「メダデ教会は、毎日が綱渡り。今日一日が無事に終わるのは奇跡やねん」
この本を読むと、まさしくその「奇跡」の連続のなかで、よくも心と身体の平穏がたもてるものだと驚嘆するばかりです。ナニワのおばちゃんって、すごいもんやなあ、とつい慣れない関西弁が口から出てきました。
こんな人もいるのか、ほなら、わたしも、もう少しがんばりまひょか…。
そんな気分にさせる本でした。読売新聞の大阪版で連載されて大反響を呼んだ記事が一冊の本にまとめられたものです。
(2020年11月刊。税込1540円)

マナーはいらない

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 三浦 しをん 、 出版 集英社
小説の書きかた講座の本です。著者の体験にもとづいていますので、なるほどなるほど、ふむふむと思いながら読みすすめました。
私は『舟を編む』くらいしか著者の本は読んでいませんが、辞書をつくりあげていく世界が実感をもって伝わってくるいい本でした。
推敲が行き届いていない原稿は、草ボーボーの庭みたいなもの。
まったくそのとおりだと私も思います。そんな原稿を読まされるほうは辛いものです。ていうか、すぐに放り投げてしまいます。
推敲は、小説を読むひとのため、そして作者である自分自身の客観性を保つためにも必要。
一人称で書くと、どうしても視野が狭くなりやすく、物語に閉鎖感が出てしまう。それに外見について書きにくい。
そうなんですよね。なので、私も、今ではなるべく三人称で書いています。
では、三人称単一視点と三人称多視点はどうか…。ただ、いずれにしても、この小説は、誰が、誰に向けて語っているのかが難点となる。
うむむ、そこが難問になるのか…。
登場人物のセリフをどう書くか、他の文との組み合わせをどうするか、いつも頭を悩まします。
著者は、電車内で他人の会話に聞き耳を立てたとのこと。それによると、男コトバ、女コトバは、現代の口語表現ではあまり使われていない。会話は決して理路整然とはしていない、ということのようです。まあ、きっとそうでしょう。
私は電車で聞き耳を立てるというより、喫茶店で隣の人たちの会話を聞くともなく聞いています。本当は本を読んだり、書きものに集中したりしたいのですが、面白い会話だと、ついそちらに耳を傾けてしまうのです。なるほど、世の中では、そんなことが起きているのか、とても勉強になります。
ただし、小説内のセリフは、現実の会話よりは大幅に整理整頓されている。というのは、読者が、あまりに「まどろっこしい会話」を嫌がるからです。それはそうですよね。冗長さは嫌われます。
描写は観察が大事。注意深く自他を観察し、目に映ったもの、感じた気持ちを、脳内でなるべく言語化するよう努める。
ううん、これが大事だということはよくよく分かります。でも、それが難しいのです、トホホ…。ここに、私がモノカキから小説家に昇華できない弱点があります。
取材するときにはメモをとらない。そうなんですよね…。
想像力を構成する大きな要素である「言語」を獲得するには、時間がかかるし、経験が必要である。そうなんですよね。私は、まだまだだと自分でも思っています。でも、まあ、あきらめずに、書いていくつもりです…。
(2020年12月刊。税込1760円)

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