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カテゴリー: 社会

護られなかった者たちへ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 中山 七里 、 出版 宝島社文庫
 福岡のタワーマンションを全室1億円以上で売りだしたら、まもなく完売。高級ブドーは1房160万円、1粒4万8千円…。福岡・天神に新装オープンした超高級ホテル(リッツ・カールトン)は素泊まりで最低10万円。目の玉が飛び出るような話です。そして、天下の日立では年棒1億円以上の取締役が20人もいるとのこと。いやはや、持てる者はますます富み栄える世の中です。
 その反対に、生活保護の受給者はどんどん増えています。月4万円ほどの国民年金しかもらえないという人の話を聞くと、いったいどうやって生活しているのか、不思議でなりません。
 60代の男性が公営団地で生活保護を受けながら一人で生活していて、電気代が心配なので、エアコンつけてないと聞いて、せめて昼間はショッピングモールに避難することをすぐに勧めました。すると、クルマを持っていないからバスで行くしかないけれど、足が弱って歩けないというのです。本当に深刻な状況です。
この本は、生活保護の現場の問題点を鋭くえぐっています。映画化されていますが、私はみていません。
 保護課の受付の人はこう言う。
 「生活保護は最終的なセーフティネットという位置ですから、少しでも余裕があるのなら、生活保護は受けない方向でがんばってほしいんです」
 「広い意味での不正受給が圧倒的に多い。低賃金であくせくするよりは、働かずに生活保護を受けたほうが楽だとか、生活保護を受けながら闇の商売をするとか、社会制度を食い物にしている連中が少なからず存在している。ところが、その一方で、本当に生活が困窮してぎりぎりの生活を送っているのに、他人に迷惑をかけるのは嫌だ、恥ずかしいという理由だけで、申請をためらう人たちがいる」
 「ここは感情ではなく、現状をよく見て生活保護を支給するところですから、あまり国に甘えないでください」
 肉体的にも精神的にも追いつめられた申請者が窓口で、さらに追い詰められている状況は、見ていて楽しいものではない。
 生活保護を申請する人は、ひどく追い詰められた精神状態にある人がほとんどなので、受給を妨害しようとするケースワーカーは、いわば天敵みたいなもの。不正受給の取り締まりの端緒はほとんど市民からの通報による。
 貧困の臭い。生活費を切り詰め、風呂も隔日になり、最後は食費も節約していくと、こんな臭いがし出す。
福祉事務所や保護課は、社会的弱者を救うための機関のはず。ところが、実際にやっているのは弱者の切り捨て。
そんな現場で働く、生真面目一本の公務員が狙われ、強制的に餓死させられて殺される事件が相次いで発生した。いったいどういうことなのか…。
 いやあ、本当によく出来た、考えさせられるストーリー展開でした。北九州で、「おにぎり食べたい」と書き残して餓死してしまった男性を、つい思い出してしまいました。こんな不公平・不平等な現実を一刻も早くなくしたいものです。
(2021年9月刊。858円)

半導体産業のすべて

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 菊地 正典 、 出版 ダイヤモンド社
 世界の半導体市場のなかで、日本は1990年には49%と世界の半数を占めていた。ところが、今では凋落の一途で、2020年には、わずか6%、今後さらに低下していく見込みだ。同じく半導体メーカーの売上高ランキングをみてみると、1992年には世界トップ10(テン)のうち、日本のメーカーが6社いた。ところが2021年にはわずか1社のみ。
 「ジャパン・アス・ナンバーワン」なんて時代は、今やすっかり過去も過去の話なんです。
 なぜ、日本は半導体の世界でこんなに凋落してしまったのか…。
 第一に、アメリカと1986年に結んで「日米半導体協定」によって、日本はアメリカにコストデータ等の報告義務が課され、またアメリカの製品の購買義務まで課された。
 韓国、中国、台湾は政府の手厚い庇護を受けて伸ばしていたのに、日本政府はアメリカの言いなりでしかなかった。
 第二に、日本のメーカーにおいて半導体事業は一部門でしかなく、メーカー内の「新参者」扱いをされていた。要するに、経営陣が育成の目をもっていなかったということ。
 第三に、日本の企業トップは半導体に関わる先端的製造技術が求められていることを理解できず、従来の立場に固執するばかりだった。
 第四に、半導体業界の不振に国が適切な手をうたず、弱者連合になってしまったこと。
この本の著者は書いていませんが、科学・技術の自由な発展のためには、学問そして科学・技術の世界に権力が目先の成果ばかりを求めて介入してくるのは大きな間違いだということです。それはいったい何の役に立つのか、そんな愚問を言わず、投げかけず、学者・科学者に好き勝手にさせておくと、そのなかで、いつか画期的な発見があるのです。目先にとらわれすぎてはいけません。
 この本では、半導体とは何か、どのようにしてつくられるのか、集積回路(IC)とは何か、どうやってつくるのかも図で示しながら解説されています(一見やさしい解説なのですが、基礎が分かっていない私には理解不能でした)。
 日本の半導体装置メーカーの売上高は2013年に100億ドルだったのが、2021年には3倍に増加している。そして世界シェアは最高だった2012年の35%が2021年には28%へ、7ポイントも低下している。これは、世界全体で伸びているなかで、相対的に低下しているということ。
世界最大かつ最強の半導体ファウンドリーであるTSMC(台湾)が、熊本に新しい工場をつくろうとしている。これには、ソニーやデンソーそして日本政府が膨大な補助金をあてている。ところが一方、アメリカでも同じようにTSMCはアリゾナ州に1.3兆円を投じて新工場をつくろうとしている。また、インテルやサムスンもオハイオ州やテキサス州に新工場をつくりつつある。これらに対して、アメリカ政府は6兆円の補助金を支給する。このように、アメリカは国内に半導体産業の生産工場を確保することで、中国との覇権対立を乗り切ろうとしている。
 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という掛け声で酔っ払ってしまった日本政府には反省してもらうしかありません。それにしても、半導体産業も食料自給率の確保と同じように、日本にとって大切なものだということを改めて認識させられました。
 ただ、熊本にTSMCが進出してきて、地下水の枯渇と汚染を私は心配しています。本当に大丈夫なんでしょうか…。
(2023年6月刊。2200円+税)
 山の手(徒歩5分で登山口)の高級住宅街(高台です)に住んでいますので、自然をごく身近に感じる生活です。
 家の中は、大小のクモをあちこちに見かけます。ときに、台所には小さなアリが行列をつくっています。ナメクジが出てくることもあり、ゴキブリやムカデが出てきて驚かされます。風呂場などに小バエが湧いてきます。夜になると、窓にヤモリがぺたっと張りつきます。
 庭にはセミの抜け殻を見つけますが、セミは減りました。トンボはシオカラトンボやアキアカネです。チョウはクロアゲハ、そして、ミツバチやマルハナバチが花の蜜を吸っています。アシナガバチがわが家に巣をつくろうとしている気配がありますので、その予防のため蚊取り線香を軒下のあちこちにぶら下げています。
 台所の生ごみを入れたポリバケツにはウジムシが湧いていますので、満杯になると庭に穴を掘って埋め込みます。おかげで庭の土は黒々、ふかふかです。アスパラガス、そしてサツマイモを楽しみにしています。ブルーベリーは終わりました。ミミズを狙うモグラがいますし、土ガエルも見かけます。気をつけなくてはいけないのがヘビです。40年前に入居した当初から、庭にヘビが住みついていますが、いったいヘビは何を食べているのか不思議です。
 庭の隣の藪からタヌキが朝、出てきて散歩しているのを見かけたときはびっくりしました。夜道をイタチが横断することもあります。
いま、庭にはフジバカマを植えています。秋になったらアサギマダラ(チョウ)がやって来るのを待っているのです。
田舎で生活するというのは、こういうことです。

戦争法制を許さない北の声

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 髙崎 暢 、 出版 寿郎社
 安保法制の違憲性を司法の場で明らかにしようとした北海道訴訟の記録集です。本文2段組で、なんと790頁もあります。思わず、昼寝用の枕にちょうど良いと皮肉られた井上ひさしの『吉里吉里人』を調べてみました。それは843頁ですから、さすがに上には上があるものです。それでも、2段組の本書のほうが、勝っているんじゃないかと思い、念のために再度『吉里吉里人』を見てみると、なんとなんと、こちらも2段組だったのです。さすがに井上ひさし大先生にかなうものはいないということです。
 盆休みも終えて、少し暇なところに届きましたので、暇にあわせて、午後から読みはじめました。というのも、同期の岩本勝彦弁護士より、書評を書いて紹介せよという指示が添えられていたのです。この指示に背くわけにはいきません。他の仕事そっちのけで、自宅に持ち帰って、夜までかかって、その日のうちに読了しました。私の取り柄は、なんといっても速読なのです。
この北海道訴訟は一審・二審と敗訴して、上告は断念しています。一審(岡山忠広裁判長)は証人調べも一切やっていません。原告弁護団が忌避申立したのも当然です。でも、控訴審(長谷川恭弘裁判長)も、結局は、一審判決を是認し、控訴棄却としました。
田中健太郎弁護士は、「憲法は多数決民主主義の欠陥を裁判所の違憲立法審査制度で正し、個人の人権を保障したり平和と人権の体系である憲法秩序を維持させようとしているのに、裁判官たちは職責を果たそうとせず逃げ回った」と、厳しく弾劾しています。
一審判決は、「現時点においても、戦争やテロリズムによる原告らの生命・身体及び財産等の侵害の危険が切迫し、現実のものとなったとはいえない」「恐怖や不安を抱いたとしても、それは漠然かつ抽象的な不安感にとどまるものと言わざるを得ず、原告らの人格権ないし法律上保護される利益が侵害されたということはできない」「原告らの抱く不安や恐怖は、同時点においては未だ抽象的な不安の域を出ないというものである」と判示したのです。この裁判官たちは、あのJアラートの切迫感あふれる「警告」をまったく聞いていないようです。
そして、二審判決においても「平和的生存権が憲法によって保護された身体的権利であるとはいえない」として、原告団の主張を排斥するだけでした。
そこで、次に、原告となった人たちの主張を紹介します。
この本で圧巻なのは132人の思いが込められた陳述書です。
戦争体験のない人がほとんどですが、それでも身内に戦死者がいるというのは珍しくありません。しかも、それは戦死というより餓死であったり、輸送船が撃沈されて亡くなったりというものです。むしろ戦場で敵の弾丸によって戦死したというのは少ないのではないでしょうか。さらに、私も記憶がありますが、戦後まもなくは、駅頭に白装束の男性が何人か立っていて通行人にカンパを訴える光景をよく見かけました。傷痍(しょうい)軍人です。戦場で負傷した人たちの生活が守られていなかったのです。
ある人が、こう書いています。「戦争はいったん始まってしまうと、誰も責任を取ることなく、無責任に遂行されることは歴史が証明している」。ロシアのウクライナ侵略戦争がまさに、これを証明しています。戦争にならないように懸命に努力するしかないのです。
北朝鮮がロケットを飛ばすと、日本ではJアラートが発令されて、大々的に警戒発令となりますが、韓国では何事もなくフツーの日常生活です。日本政府は日本国民を恐怖で脅しているのです。
北海道では、毎年500人以上の高校生が卒業後自衛官になります。そのとき、他国の若者と武器を持って殺し合うことなど、考えにありません。せいぜい、災害救助のときの活躍のイメージでしょう。
現職の自衛官を息子にもちながら反戦・平和を叫び続けている平和子さん(仮名)は、ついに自衛官の息子に絶縁状を書き、息子との連絡は絶ってしまいました。息子には妻子がいて、生活を考えると、自衛隊を退職するのは容易なことではないと考えています。
それでも、平和子さんにとって、息子の命が奪われることは、自分の身が引き裂かれるのと同じ。そして、平和子さんは、自分の息子さえ無事であればいいとは考えていません。息子の無事のためだけでなく、それ以降の世代のためにも、まだ見ぬ子どもや孫のためにも、安保法制の違憲を命ある限り訴え続けたいと結んでいます。
かの有名な恵庭(えにわ)事件の元被告だった野崎健美さんも原告の一人です。野崎さんは昭和10(1935)年生まれで、日本敗戦時は国民学校5年生。両親の営む野崎牧場は自衛隊の演習場に隣接していて、ジェット機の轟音、そして大砲の射撃訓練によって、乳牛の育成に多大の困難・支障が生じました。それで、抗議するため、自衛隊の連絡用通信線を切断したのです。被害額は、せいぜい数百円。そして、器物損壊罪で始まった取り調べは、起訴されたときには自衛隊法121条違反となっていたのです。それで、たちまち全国480人の弁護士が応援する大裁判になりました。野崎さんは大いに勉強し、裁判のなかでは、基地公害と自衛隊の反国民性に焦点をあてて主張しました。
自衛隊トップの栗栖統幕議長が、自衛隊とは何を端的に言ったのは、このころのこと。「自衛隊は国民を守るためにあるのではない。天皇を中心とする団体を守るためにある。国民は勘違いしている」
この裁判で、裁判官は、法廷で検察官に対して論告・求刑を禁止したというのです。信じられません。「ただし、自衛隊の合憲性についての論告は許可します」。
この裁判では、自衛隊と自衛隊法が合憲かどうかだけが争点になったのです。ところが、裁判官は肩すかしの「無罪判決」。この無罪判決を聞いた検察官は怒ったり、落胆するどころか、「良かった、良かった」と肩をたたきあって喜んだのでした。もちろん、検察官は控訴せず、確定。被告人も無罪判決ですから、控訴できません。
野崎さんは言います。「平和を生きる権利」を守るためには、不断の努力が必要で、憲法はその武器になる。本当に、そのとおりだと思います。流されてはいけません。そして、小さくても、そこで声を上げる必要があります。
アジア・太平洋戦争に召集され、戦後に駆り出された兵士たちは「お国のために」命を捧げたはずですが、実のところ、日本が仕掛けた大義のない侵略的戦争だったわけですから、「国家に殺された」のです。そんなことを繰り返すわけにはいきません。
原告弁護団の共同代表である藤本明、高崎暢の両弁護士は、私も以前からよく知っていますが、実働の常任弁護士は、10人ほどで、良く言えば「少数精鋭」だったとのこと。大変だったと思います。そう言えば、福岡もほとんど同じです(私は法廷に参加するだけで、実働はしていません)。
一審裁判のとき、岡山忠広裁判長が、まさかの証人申請却下・終審を宣告したとき、高崎暢弁護士は、すぐ「忌避します」と言った。そうなんです。裁判官の不当な訴訟指揮には勇気をもって忌避申立すべきです。私の自慢は、弁護士2年目のとき、一般民事裁判で裁判官に対して忌避申立したことです。代理人は私ひとりで、とっさに申立しました。何の事前準備もありません。事務所に戻って報告すると、先輩弁護士たちから、「勇気あるね」と皮肉なのか、励ましなのか分からないコメントをもらいました。今でも、私は、このとき、「忌避します」と言ったことを、ひそかに誇りに思っています。たとえ弁護士2年目でも、おかしいと思ったらおかしいと言うのは正しいのです。もちろん、忌避申立すると、少しばかり(2~3ヶ月)、裁判が遅くなります。でも、それは明渡を求められる被告事件なので、訴訟遅延は喜ばれるだけということは私にも分かっていました。
本論に戻って、北海道裁判の原告と弁護団は、「断腸の思い」で、上告を断念しました。その残念な思いが、この部厚い記録集に結実したわけです。本当にお疲れさまでした。髙崎暢弁護士より贈呈していただきました。ありがとうございます。
                           (2023年7月刊。4500円+税)

やまと尼寺精進日記(3)

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 NHK制作班 、 出版 NHK出版
 「やまと尼寺、精進日記」は私の大好きな番組でした。録画してもらって、日曜日の夜に、寝る前みて楽しんでいました。ともかく紹介される精進料理がどれもこれも、とても美味しそうなのです。
 しかも、素材はみな地元産のとれとれのものばかり。それを住職と副住職、それにお手伝いのまっちゃんという女性3人が笑いながらも真剣に料理をこしらえていきます。さすがにNHKの撮影も見事でした。
この番組は2016年に始まり、2020年3月に撮影終了。4年間でした。今は、住職ひとり、そして別なお手伝いの人が来ているようです。
お寺は奈良県桜井市にある音羽(おとば)山の中腹にある音羽山観音寺(融通念仏宗)。創建は奈良時代で、かつては山岳修行の場だったというのです。車でお寺に乗り入れることはできません。歩いて50分もかかります。
 住職の後藤密榮さんは、30年もこの寺を守り続けてきました。ほとんどものを買わず、山の恵みと里から届けられる食材を知恵と工夫でおいしくしてしまう料理名人。よく笑い、よく食べる。一人暮らしの山中の尼寺で単調な生活…。いえ、全然違うのです。
 住職はきのうと違う今日を生み出す達人なのです。たとえば、夏には香草ごまだれそうめんです。金ごまを鍋で煎(い)る。香りが出るまで中火でゆっくり、焦がさないように注意しながら。そして、すり鉢(ばち)に入れてする。すれてきたら、刻んだバジル、エゴマ、青じそ、しその実を加え、そしてする。いやあ、おいしそうなそうめんですよね…。食べてみたいです。白菜を千切りにして、納豆をからめたサラダもおいしそうです。
住職は、年齢や職業を訊くことなく、ただ「お寺に集う仲間」として迎え入れる。お互い、ありのまま付きあいましょうということ。なんとも心地が良い。
お寺の庭は、季節ごとの草花と樹木の花で彩られる。そして、室内にも季節の花を活けて飾ります。わが家の庭は、少し前までアガパンサスの花が咲いていました。そして、ブルーベリーも収穫できました。今は、アサガオが咲きはじめていて、サツマイモを待っています。ヒマワリのタネを植えたのですが、大雨のせいか芽が出ていません。苗を買うしかないかもしれません。
高菜の油炒めに住職が初挑戦。これは筑後地方で定番の郷土料理です。子どものころは、これをおかずにして白メシのお代わりをしていました。
粉吹きいもには、少し砂糖を入れたら、さらに美味しくなるそうです。
 4年間の番組を担当したプロデューサーのコトバもいいですよ。ひとりだけど、孤独じゃない。そうなんですよね。人間、みんなどこかで支えあって生きているのです。また、生かされているのです。
 こんないい番組があったなんて知らない人がいて、お気の毒に…と、つい思ったりしました。
(2022年11月刊。1600円+税)

こっぽら~と

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 ふるいけ博文 、 自費出版
 大牟田で小学校の教員を定年退職したあと著者は専業写真家として活躍しています。とはいっても、被写体は国内だけではありません。アラスカのオーロラを撮りに出かけ、中国(桂林)の山水画風景、そしてインドネシア(バリ島)の棚田など、海外にも足をのばす行動派の写真家でもあります。
 この写真集(写真物語)は10年ぶりのものです。前は還暦のとき、今度は当然ながら古稀です。そして、今回はなんと写真のキャプション(解説文)は英語つきです。それだけ国際派なのです。
 解説によると、カメラ月刊誌が3つとも休刊(廃刊)になったとのこと。これってコロナ禍の影響だけではないのでしょうね…。
タイトルの「こっぽら~と」は、大牟田弁で「一人で、のんびりと…」という意味のコトバ。たとえば、商店街のベンチにこっぽらーと座って、一日中、通行人を眺めて過ごす。そんな感じのコトバです。
 大牟田の写真家ですから、当然、三池炭鉱の遺産を紹介した写真も少なくありません。雪化粧した宮原鉱の建物があります。炭鉱社宅もいくつか残すべきでしたよね…。
 大牟田に限らず、柳川など各地のお祭りにも著者は積極的に出かけています。大牟田では、夏まつりのときの、火を吹く「大蛇山祭り」が勇壮です。子どもを「大蛇」の口に差し出して「かませ」ると、泣かない子はいません。
 鳥取砂丘に出かけて、若者がジャンプしている様子を撮った写真には生命の躍動感があります。お祭りの場面が多いですね。朝早くから、また泊まりがけで大きなカメラをかかえて出かけたのでしょうね。それでも、フィルム・カメラのときのように、ネガの管理が不要になって、助かったことでしょう。バッテリー切れを心配するだけだし、出来あがったものは、すぐに見れるし、便利な世の中になりました。
 でも、写真こそ、「一期一会」(いちごいちえ)です。この縁の結びつきは、下手すると「一生もの」なんですよね…。
 大判270頁の写真集です。チョッピリ高価な写真集ですから、学生の皆さんは親におねだりして買ってもらうのも一つの手だと思いますし、年輩の人にとっては図書館に購入するよう要請したらいいと思います。高価だからといって、簡単にあきらめたらいけません。ともかくぜひ、あなたも手にとってご一読、ご一見ください。
(2022年12月刊。4400円)
 お盆休みは、連日のように夕方5時ごろから庭の草取りをしました。庭には昔からヘビが棲みついていますので、突然の出会いを避けるためでもあります。すっかり見通しが良くなりました。いったいヘビ君は何を食べて生きているのかな、まさかモグラじゃあるまいよね…、なんて心配していました。
 翌日、家人が黒いヒモを庭で見つけて、「アレッ、何かしら…」と思っていたら、なんと動き出しました。ヘビだったのです。すっかり見通しがよくなってしまって、ヘビ君は困惑していたのかもしれません。
 広くもない庭でヘビと共存するというのは容易なことでないことを実感させられました。

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