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カテゴリー: 社会

北岳・山小屋物語

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  樋口 明雄 、 出版  ヤマケイ文庫
 残念なことに私は本格的な登山をしたことがありません。日本アルプスを縦走したという話を聞くと、大変だったろうなと同情をこめて感嘆の声をあげるばかりです。
 本州の山と言えば、奥鬼怒(きぬ)の三斗小屋温泉に登り、そこで4泊5日、煙草屋旅館で合宿したことは今も忘れることができません。私の大学生活の最大のハイライトです。そして翌年の6月に尾瀬沼を歩きました。それ以来、尾瀬沼に行ったことはありません。最近、三斗小屋温泉から登山した人(60代)が強風のため低体温症になって死亡したというニュースに接しました。山は怖いですよね。
 九州では、阿蘇を縦走しましたが、完走したのかは定かではありません。
 南アルプスの北岳(きただけ)には、いくつも山小屋があるようです。著者はそれらの山小屋の管理人を訪ね、山小屋事情を明らかにしています。
 まずは、白根御池(しらねおいけ)小屋です。管理人は吾妻潤一郎。この山小屋がオープンしているのは、6月から11月まで。山小屋で働くアルバイトの確保が難しくなっている。応募する若者が少ない。面接したとき「通り一遍な答え」しかしない(できない)若者は現場では、まず使えない。
 ありふれたフォーマットの言葉でしか自分を表現できない若者は、仕事でもフォーマット通りにしか働かない。つまり、応用が利かない。
 応募してくる若者とは電話で話すだけで、その口調と話しぶりで、だいたいのスキルが分かる。多くの若者はプロ意識をもとうとしない。遊び感覚の延長線上にあるから、率先して働いたり、手伝ったりしない。働くことから何かを学んだり、経験として自分の血肉にしようという意識がなく、ただそこで時間を過ごすという意識だけ…。
 料理がちゃんと出来る若者は、だいたい何をやらせても上手。他で器用な子も、すぐに料理を覚える。料理は、視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚という五感のすべてを駆使して行われる。材料を選別し、何をどう組み合わせ、どうやって作るかという想像力を働かせ、さらに包丁を使って切ったり、混ぜあわせたり、こねたりなど、手先と指先の細やかな働きを必要とし、火を使って茹(ゆ)でる、炒(いた)める、そして盛りつけるというプロセスにおいて、脳は休むことなくフル稼働する。
 私は残念ながら料理できません。ひたすら食べる側です。
山小屋で働き始めた若者は、最初のころは基本を守るし、行動も慎重なので、あまり失敗ではない。ところが、慣れてきたことにミスが目立つようになる。
 予約しているのに来ない客は個人に多い。団体客は旅行会社を通しているから、キャンセルが少ない。
 山小屋の仕事でも体力の温存は重要。むやみに夜更かしすると体調を崩して風邪をひいたりする。ひとりでもスタッフが抜けると、山小屋にとっては貴重な力を喪って、痛い。
 山小屋のスタッフで一番に起きは午前3時半。朝食の炊飯を担当する人が地下のプロパンを開けて、スイッチを入れる。食堂を開けるのは午前4時半ころ。早寝早起きが登山の基本。お昼の弁当を予約している人は、朝食時にフロントで受け取り、次々に出発していく。午前5時半には客の全員が出発し、山小屋ではスタッフが掃除を始める。
 いやはや、すごいんですね…。そして、山小屋の管理人は遭難事故の連絡が入ったら、救助に向かう義務があるのです。これは大変ですよね。
 山小屋のスタッフにとって、眠ることも仕事のうち。睡眠不足は自分に不利になるばかり。そして、入浴時間は、きっかり30分。まあ、私も風呂を毎日に欠かせませんが、30分で出ています…。
遭難救出に行くときは最低2名が必要で、できたらもう1名の連絡係を連れていく。
山では水分補給が足りず、脱水症になる人が多い。体重1キロにつき、1時間で5ミリリットルの水分が必要。体重60キロなら、1時間に300ミリリットルの水分を補給する必要がある。
山小屋のトイレの屎尿(しにょう)はバキュームポンプを差し込んで吸い出し、タンクに密閉してヘリコプターでふもとまで搬送して処理する。うむむ、これは大変な仕事ですね…。
山梨県警の管内では、2022年の1年間に遭難事故として155件の発生があり、19人が死亡した。いやあ、これって多いですよね…。
 登山客が増えると、いい人もいるけれど、悪い人も目立ってくる。万引きする人だっている。トイレを汚して平気で出発する人もいる。まあ、登山客が全員、善人ということは、やはりありえないことでしょうね。
 そして、山小屋は世代交代の時期を迎えている。まあ、そうでしょうね。下界でも、みんな後継者の確保に苦労しているんですからね。
 スマホに頼りきりの登山者が、バッテリー切れでスマホが使えなくなって遭難寸前ということも起きているとのこと。スマホに頼れないときのバックアップが山でも必要だということです。
 山小屋で働く人々の苦労が少し分かった気がしました。
(2023年8月刊。1210円+税)

ギャンブル依存

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  染谷 一 、 出版  平凡社新書
維新の党を支持する人が少なくないのに私は驚いています。「身を切る改革」というのは、自分の身は安全にしておいて他人の身を切るものでしかありません。その象徴が最近発覚した市会議員でありながら国会議員秘書を1年半も兼職していたことです。2000万円もの税金を手にしていたようです。許せません。さらに、大阪万博と夢州のIR(カジノ)です。万博を発案し企画を推進したのは橋下・松井の二人でしたよね。今では、どの国もパビリオンをまともにつくらず、建設工事はうなぎのぼりに増えるばかりです。吉村知事は大阪万博でなく、日本万博に名前を変え、国が税金で負担してやるべきだと言い出しました。うまくいったら維新の手柄、失敗したら国の責任。あまりにも無責任だし、卑怯です。IRカジノのほうはアメリカの業者に逃げられたのに、まだしがみついています。スロットマシーンを大量に並べて日本人の庶民から大金を巻き上げようというのです。
でも、すでに日本はギャンブル大国です。そしてギャンブル依存症で困窮した家庭は無数であるのです。それを加速させようとしているのが維新なのです。やめてください。
ギャンブル依存は、アメリカ精神医学会がアルコールや薬物などによる「物質関連障害および嗜癖(しへき)性障害群」と同様に分類している症病。
ギャンブルを続けることで過剰な刺激を受けた脳内の神経路である「報酬系」に異常が生じている病気だ。アルコール依存症は109万人。インターネット依存は421万人。これに対してギャンブル依存は536万人(2014年)。
2018年10月、ギャンブル等依存症対策基本法が施行された。日本国内のギャンブル依存の原因はパチンコ、パチスロが大半を占める。
日本は世界一のギャンブル依存大国。
ギャンブル依存(障害)の有病者の割合は、アメリカ0.42%、イギリス0.5%、マカオ1.8%に対して、日本は3.6%と突出して多い。さらに、ゲーム機の設置台数はアメリカ86万台、イギリス45万台、ドイツ27万台に対して、日本は457万台と桁違いに多い。
今はやっているのがオンラインカジノ。日本では店舗型は違法なので、無店舗型、そして主催者は海外業者。すると、日本の刑法には触れないことになる。
 日本ではパチンコ店が駅近くか郊外にあるのはあたりまえなので、人々が慣らされている。これが日本人にギャンブル依存症の人が多い最大の理由。罪の意識がなく堂々と出入りできる場所に通ううちに病気になってしまう。これを維新が莫大な税金を投入して大々的にやろうとしているのです。そんなこと、あなたは許せますか…。私は絶対に許せません。
橋下徹は政治家をやめて今や無責任に論議するばかり。議論家になりました。本当にひどい男です。大阪万博も夢州IR(カジノ)も今すぐ中止すべきだと思います。
(2023年7月刊。920円+税)

すてきな地球の果て

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 田辺 優貴子 、 出版 ポプラ社
 夏は北極、冬は南極、そして春と秋は東京で生活するという植物生理生態学者のレポートです。写真もたっぷりあって、うらやましい限りです。植物の生理生態を研究するには野外調査が必要だというのは分かりますが、北極にも南極にも行ったなんて、すごすぎます。
 南極には、2007年、2009年、2011年と3回も行ったのです。著者は、身内が遺伝性の難病をかかえていることから、「好きなことをして生きていく」と決断し、実行しています。
自分の足で、見たこともない場所に行って、匂い、音、温度、湿度、色、風の流れ、季節の移り変わり、その全部を自分の身体で知りたい、体得したいということです。旅するって、そういうことですよね。
 私は、離婚して傷心の依頼者に対して、遠くへ旅行することをいつも勧めています。北海道、それも利尻島なんていいですよね。私もまだ行っていませんので、ぜひ行ってみたいです。
 青森出身の著者は大学を京都で過ごし、ペルーに出かけた。そして、大学を休学してアラスカに出かけた。アラスカでオーロラを体験。
 そして、大学院のとき、京都を出発し、自転車で青森に向かった。ときは5月。2004年5月のこと。京都を出発して15日目、ついに秋田と青森の県境に至った。その日は、海岸沿いで寝ることにした。コンロを出し、スーパーで買ったウィンナーをコッヘルで焼き、おにぎりと一緒に食べた。
目の前の日本海が荒々しく並の音をとどろかせている。海からの強い風が顔にまっすぐ吹きつける。空には雲ひとつない。太陽が水平線にどんどん近づいていき、波で削られたゴツゴツの奇岩群が真っ赤に染まっていた。その赤い大きな岩々になんども荒波がぶつかっては、砕けたしぶきを水平線に沈む夕陽がオレンジ色に染め上げた。それを見て、なんだか涙がこみ上げ、あふれそうになった。
 バックパッカーとして世界を旅した女性のこまやかな観察が文章によくあらわれていると思いました。うらやましいというか、自分には、とてもこんな勇気はないなと思いつつ、ひたすら没入しました。
(2013年8月刊。1500円+税)

維新政治の内幕

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 小西 禎一 、 出版 花伝社
 なんで「ホラ吹き」連中の政党がこんなに受けているのか、不思議でなりません。コロナ禍「対策」と称して高言した「イソジン・吉村」そして「雨合羽・松井」が真面目に謝罪したとは聞いていません。大阪府と市を一体化させるという「都構想」だって、「二重行政の解消」と称して、現実にはコロナ禍のなかでの保健所の縮小・廃止でした。しかも2回も住民投票で否決されたというのに、まだあきらめていないなんて、往生際が悪すぎます。
 諸悪の根源は橋下徹にあります。最近、「憲法の壁」とか言って憲法を敵視する発言をして、顰蹙を買いましたが、橋下の眼というか、頭の中には基本的人権の擁護とか弱者保護という政治家がもつべき理念はカケラもないようです。こんな人物をマスコミが関西方面にかぎらずいつまでももてはやすなんて、日本のマスコミも堕落してしまったと嘆くばかりです。
 この本の著者は長く大阪府の副知事をつとめた人です。6代もの府知事の下で働き、ついには維新候補と対決して府知事選挙にも出馬したのでした。惜しくも当選には至りませんでしたが…。
 いま、維新は大阪では自民党と対抗して張りあっていますが、維新のルーツは自民党そのもの。なので、維新の馬場代表が「第2自民党」と自称したのはホンネを言ってしまっただけのこと。
 維新が大阪で選挙に強いのは、政党幼成金などの資金を大阪に集中させ、「どぶ板」やビッグデータを駆使した選挙戦術、府知事・市長として圧倒的なメディア露出量、そして芸能界との強いつながりによる。
 維新のポピュリズムは、行政改革の名の下に、市場原理にそって公的事業の民営化や規制緩和を進める新自由主義的なポピュリズムだ。
 維新の「都構想」挫折後のビッグ目玉は、大阪万博と夢州のIR(カジノ)です。ところが、今ではこの二つとも赤信号が灯っています。大阪万博では大阪府民の負担はない(少ない)はずでしたが、今やそれどころではありません。国にすがって国の税金を大量に投入して失敗の現実化を回避しようと必死です。でも、結局は失敗し、大々的な借金を残すこと必至です。もうひとつのカジノだって、もしオープンしても中国の金持ちが呼び込めるのか大いに疑問ですし、結局、日本の零細な年寄りがスロットマシーンにすがる程度のものでしょう。
 橋下徹は、テレビ界出身のタレントとして、拍手喝采(かっさい)がいつまでも続かないことを身に沁みて感じている人間。
 橋下徹は民間企業と地方自治体を単純に比べる発想に終始するけれど、そもそも行政は民間の営利企業と違って利益を上げることを目的とはしていない。
 橋下徹の政治手法の本質は、次々に「大騒動」をつくり出し、世間の注目を集め、自己の賞味期限を維持していくことにある。
 橋下徹は、「特別顧問」「特別参与」という制度をフル活用した。特別顧問12人、特別参与は12人。この特別顧問たちが、あたかも職員の上司であるかのように職員に命令したり「知事に言うぞ」と恐喝まがいのことをやった。そして、これらの特別顧問参与に支払われた給与は何回も引き上げられてきた。維新は身内には甘い。
 維新の言う「成長」は、万博そしてIR(カジノ)であり、カンフル注射的に大阪を元気にするだけのことで、市民生活の向上を意味するものではなかった。
 最後まで、大変興味深い本でした。
(2023年6月刊。1800円+税)

決別。総連と民団の相克77年

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 竹中 明洋 、 出版 小学館
 総連も民団も、今や日本社会ではあまり目立たない存在になってしまいましたよね。
 私が弁護士になった50年前のころ、総連の役員は肩で風を切る勢いがありました。それは郷里の福岡に戻ってきてからも同じです。小さなパチンコ店が駅前だけでなく、あちこちにあり、繁盛していましたし、焼肉店や材木店にも「在日」の経営者はたくさんいて、私の依頼者にもなってもらいました。職業としては、医師や弁護士そして金融業をしている人も少なくありませんでした。
 大学生のころ、朝鮮大学校の学生との交流会に参加したことがあります。そのころ、のほほんとした学生生活を送っていた私には、朝鮮人として自覚しながら日本でいかに生きていくかを模索しているという話を聞いて、ぶったまげた記憶があります。
 かつて在留外国人の大半が韓国籍や朝鮮籍だった時代、総連と民団は日本において絶大な影響力をもっていた。二つの組織の対立が生み出すダイナミズムは戦後日本社会のひとつの軸をなすほどだった。
 2021年3月、国籍別の在留外国人数において、中国に続いて2位だった韓国はベトナムに抜かれて3位となった。順位の変化は「在日」の地盤沈下を意味している。
 総連とは在日本朝鮮人総連合会で、民団とは在日本大韓民国民団のこと。
 1960年代初期、日本社会には「三そう」というコトバがあった。総評(日本労働組合総評議会。今の「連合」の前身だが、そのイメージはまったく異なる)と創価学会そして総連だ。
 総連は「在日」の人々を北朝鮮へ帰還させる運動を大々的にすすめた。9万3000人もの「在日」の人々が北朝鮮へ渡った。「地上の楽園」のはずが、現実には悲惨な生活を余儀なくされた。
 金正恩と妹の金与正の生母(母親)は高英子(ヨンジャ)、大阪にいた高京澤の次女である。しかし、最高指導者(金正恩)の母親が「在日」だったことは北朝鮮ではタブーになっている。
松本清張に『北の詩人』という小説があります。主人公の詩人・林和(リムファ)は南朝鮮労働党の主要メンバーだったが、1947年に北朝鮮に入り、朝鮮戦争後に朴憲永らとともにアメリカのスパイだったとして処刑された。この本の著者は、松本清張に材料を提供して書かせた勢力がいたのではないかとしています。私が今も尊敬する松本清張にしても、北朝鮮の思惑にからめとられてしまったようなので、残念です。
金大中事件が起きたのは1973(昭和48)年8月のこと。東京のホテルグランドパレス22階の部屋を出たところを拉致され、船で韓国へ連行された。犯人はKCIA。私が弁護士になる前の年のことです。日本中を騒然とさせました。
そして、翌1974(昭和44)年8月、「在日」の文世光による朴正煕大統領襲撃事件が起き、朴夫人が死亡した。文世光が使った拳銃は、大阪の交番から盗まれたものだった。文世光は裁判で有罪となり、1974年12月、死刑が執行された。果たして、北朝鮮そして総連が文世光に朴大統領暗殺を指令したのか、どんなメリットがあるというのか…。むしろ、事件はKCIAのデッチ上げではないのかという疑問があるようです。世の中は疑問だらけですね…。
 日本人青年の拉致事件の大半は、1970年代の後半に集中している。1974年の文世光事件のあと、日本では総連の取り締まりが強化された。そこで、韓国へ潜入するには、より完璧な日本人になりすますしかない。そのため、日本人化教育が必要であり、教師役となる日本人が必要となった。
 また、韓国のKCIA側でも、朝鮮大学校に潜入して学生になった人がいたり、朝鮮総連の幹部になって、北朝鮮に行って対南工作の教育まで受けた人がいたという。
 「在日」のなかでも超有名人はなんといっても力道山(百田光浩、金信洛)と美空ひばりですよね。この本では、力道山の争奪戦の模様が明らかにされています。
 朝鮮大学校の実情、そして朝銀の破綻など、興味深いのオンパレードです。
 たとえ日本の国籍をとっても、自分はあくまで韓国人だ、朝鮮人だという感覚はフツーなのではないでしょうか。アメリカ国籍をもつ日本人はやはり日本人なんです。そこに、まったく違和感はありません。また、納税したら選挙権をもつのは当然だと思います。義務があるのに権利がないなんて、おかしいですよ。大変勉強になる、刺激的な本でした。
(2022年9月刊。1800円+税)

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