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カテゴリー: 社会

葬儀業

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 玉川 貴子 、 出版 平凡社新書
 後期高齢者(75歳以上)が800万人いるという日本です。これからますます葬儀業が栄える。そう思っていましたが、どうやら、この本によると、そうでもなさそうです。
これまで葬儀業の市場は2兆円から1兆6千億円という幅のある市場だと考えられてきました。ところが、葬儀一式費用が150万4000円から下がり続けているのです。今では112万円ほどになっています。人口の多い都市部では家族葬が定着しているので、これからも単価は上がらないとみられています。
 葬儀業の所管は厚労省かと思うと、そうではなく、サービス業として、経産省の管轄だというのにも驚きました。
コロナ禍で死亡した人は1万7千人弱。その全員が病院で亡くなっています。遺族は病院で最期を看取ることが許されませんでした。
そして、今や、家族葬が全国平均で65%(東京で52%)。一日葬(通夜なし)が10%、直葬(通夜も葬儀もなし、火葬のみ)が12%。これが最近の実情。
 葬儀の商品化は明治以降というのではなく、すでに江戸時代、関西に始まっている。いやあ、これは知りませんでした。
今ではネットで調べて葬儀社を依頼するというのが多くなりました。葬儀社は、許認可登録事業制ではない。
葬祭ディレクターという資格制度があるそうです。1級と2級があります。厚労省が認定します。
葬儀社の新規参入問題として、冠婚葬祭互助会と農業協同組合(JA)が取りあげられています。私も、少し前には冠婚葬祭互助会をめぐるトラブルにいくつも関わりました。毎月支払う会費では、とてもまかなえない高額の葬祭費を請求されたり、脱会したいのに出来ないと言われて高額の解約料の請求を受けている、そんな苦情(相談)でした。最近は、とんとありません。
私の住む団地では、昔は近所の人が亡くなると、隣組で受付・接待することになっていて、そのためのお茶碗なども隣組にありました。みんな高齢化してしまって、ずいぶん前から葬儀社に頼んでやってもらうようになりました。
日本社会が隅々まで変わりつつあることを実感させられる一つの現象を認識させられました。
(2024年5月刊。1100円+税)

介護の裏

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 甚野 博則 、 出版 文春新書
 この本によると、介護の質はケアマネ次第とのこと。しかし、そんな重要なケアマネを自由に選べないことが多い。いやあ、これは困りますよね…。
そして、介護サービスも幅がありますが、限度額ギリギリまで料金を上げる業者がいるのです。それは決して詐欺ではありませんが、介護施設と介護業者とが囲い込み、ひも付きという癒着をしているわけです。まあ、これは避けられないことでしょうね。
「サ高住」の監督官庁は国土交通省と厚労省。介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームは厚労省が管轄。介護付き、住宅型の施設は老人福祉法、サ高住は高齢者住まい法にもとづいて運用されている。
24時間介護スタッフが常駐する介護付き有料老人ホームは、入居時に数百万円から数千万円の一時金の支払いのうえ、毎月1人20万円が一般的。いやあ、これは大変なことですね…。いえいえ、入居時に数千万円の一時金が必要なうえ、夫婦あわせて50万円という施設はザラなのです。驚くしかありません。
私は今75歳、後期高齢者の仲間入りしましたが、なんと800万人もいるそうです。この介護保険の自己負担額を自・公政権は増加させようとしています。軍需予算を天井知らずに増やすときには財源のことは何も言わないのに、福祉のときだけ財源がないというのです。こんな不公平・不合理は許せません。団塊世代はもっと怒りの声を上げるべきですよ。昔、20代のころに行動したように…。
 東京や福岡には、入居一時金だけで3億円とかいう超高級老人ホームがあります。まあ、タワーマンションを購入できるスーパー・リッチ層ですね。
 「老人は歩くダイヤモンド」
 いやなキャッチフレーズです。介護保険の給付費は2022年度に11兆円。これで、金もうけしようというのです。嫌ですね…。
 それでも介護ビジネスは、まともにやっても決してもうからない。もうかるためには、人件費を削るしかない。そうすると、貧すれば鈍す、です。
 施設における高齢者への虐待が増えている。介護スタッフにまともな給料が支払われなかったとき、また、スタッフが確保されていないとき、虐待が起きるのは必然です。寝たきりで、文句を言わない入居者を囲っておくと介護報酬が業者に入ってくる仕組みが、虐待を生んでいる。いやあ、怖いです。まるで、「養鶏場のニワトリ」のようだ。いやはや、もはや人間扱いされていないのですね…。
 国が「自立支援」と言い出したのは、「高齢者介護になるべくお金をかけたくない」という本音のあらわれ。いえいえ、そうなら、それを止めさせる必要があります。声を上げ、行動するしかありません。自民党や公明党にまかせていたら、私たちのお先は真っ暗なんですから…。
(2024年6月刊。950円+税)

定年自衛官再就職物語

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 松田 小牧 、 出版 ワニブックスPLUS新書
 自衛官の定年は55歳(2024年9月までは54歳)。ただし、将官は60歳。
 そうすると、まだまだ元気な定年後をいかに過ごすのか、真剣に考える必要があります。そのとき、定年後、何もしないという選択肢はおすすめできません。魚釣りざんまいの生活をしいているうちに社会的刺激がなくなって認知症になったという話も聞きます。やはり、何かしらの社会に関わる仕事をしたほうがよいのです。
 定年の早い自衛官だから、年金も早くもらえるとばかり思っていました。でも、年金は65歳からしかもらえないのです。そしたら、ますます働かざるをえませんね。もちろん、自衛官のトップ層は別格です。そんな心配は不要です。需要産業である三菱重工やら川崎重工に顧問として迎え入れられ、破格の顧問料が保障されます。
 潜水艦の保守・点検作業の関係で、川崎重工や三菱重工が現職自衛官に供応・接待している事実が先日から発覚しました。需要産業と軍部の癒着は戦前もありましたし、古今東西、あたりまえの現象です。要するに、口先では勇ましいことを言ってくるくせに、実は自分と身内の便益優先というのが、いつだって、どこだって悲しい高級軍人の現実なのです。
 自衛官が高給取りなのは昔も今も同じです。陸・海・空将は月給70万円から117万円、一左(昔の大佐)で40万円弱から54万円、1尉(少尉)で28から44万円。しかも、これに年4.5ヶ月分のボーナスが付加されます。そのうえ、イラクやジブチなどに赴任すると、さらに破格の危険手当が支給されます。
 そして、55歳で定年退職すると300万円の退職金がもらえます。
 どうですか、こんなに高給・優遇されているのに、近年、志望する若い人が激減しています。なぜ…。もちろん、戦争の危険が現実化しているからです。
 自衛隊の訓練の基本は何か…。要するに、人殺しの訓練です。それも、効率よく大量の人殺しができるようになる訓練です。ためらうことなく「敵国」人を殺さなければいけません。そして、それは当然、殺される危険も伴います。それでも上司の命令とあらば、四の五の言わず黙って従い、文句を言うことは許されず、ただ死ぬしかないのです。死んだら遺族は1億円もらえるぞ、靖國神社に祭られるぞ…、誰だって、そんなの嫌でしょ。私は、もちろん嫌です。
 定年した自衛官の再就職事情をピンからキリまで、知ることができる新書でした。
(2024年6月刊。1100円)

病棟夫婦

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 宮川 サトシ 、 出版 日本文芸社
 よく出来た、考えさせられる社会派マンガです。
もう十分に老年の夫婦が二人してガンにかかって、入院中です。病院ですから、ホテルと違って夫婦同室というわけにはいきません。どっちが先に逝(い)くのか、ちょっとした言い争いになりします。
 抗ガン剤の影響で食欲がなかったりします。
 病院食の塩気抜きだと味気ないので、白ごはんにふりかけをたっぷりかけて、看護師に叱られてしまいます。
遠くに住む娘は孫を連れて病院にまで面会に来てくれます。でも、もう一人の息子のほうは、ずっと自宅に引きこもっています。もう10年にもなります。家の中は両親が出たあとは、ゴミ屋敷状態です。ゲームざんまいの生活のようです。恐らく両親の財産と年金を頼りにしているのでしょう。
もう青年とはいえない年齢の引きこもりの男性は、私の身近に何人もいます。いろんな原因があると思いますが、この本では、親父が息子のやりたい道を「世間体(せけんてい)」を気にして「弾圧」したことによります。父親は息子のためを思ってというのですが、それは自分の見栄のためということが少なくありません。
夫婦の入院先の病院には小児ガンの子どももいます。元気だったのですが、ある日突然、亡くなってしまいます。その子の好きなゲーム機を買ってやったのに、手渡す前に亡くなってしまったのです。
 そして、いよいよ老夫婦は終末期を迎えます。主治医は転院を息子に言い渡します。
 そのとき、息子は、土下座して両親を同室にさせて下さいと主治医に頼むのでした。
 「こんな自分なんかの土下座になんの価値もないのは分かっています。それでも、これしか思いつかなくて、すいません」
 泣かせるセリフです。まもなく、夫婦はほとんど同時に、同じ病室で亡くなります。
 老親と引きこもりの子どもを描いたマンガとして、秀逸だと思いまいた。
 ひきこもっていた息子はマンガ家になるのです。自伝のように思わせるところが憎いです。
(2024年6月刊。814円)

かくれ里

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 白洲 正子 、 出版 新潮社
 1971年に初版が刊行された本の新装版です。なので、「ゲバ棒を持った学生」という表現も出てきます。私の大学生時代のころ、大学を暴力で支配しようとした全共闘の学生を指しているのです。彼らのなかの多くは、今は立派に社会に貢献していますが、なかには暴力賛美を今も唱えている人がいたりします。残念です。
 著者は1910年生まれで、1998年に亡くなりました。女性として初めて能舞台に立ったそうです。ええっ、能って男だけの世界だったのですか…。
この本は著者が1970年から71年にかけて2年間、「芸術新潮」に連載した随筆をまとめたものです。京都や奈良、北陸など、各地をまわってそこで得た見聞記が主体ですので、そのころの各地の風情がよく伝わってきます。
岐阜県可児(かに)町の山中に住む陶芸家(荒川豊蔵氏)の自宅を訪問して山菜尽くしの夕食をごちそうになっています。いろり端のある荒川氏宅は見事な茅葺(かやぶ)きの田舎家です。今も残っているのでしょうか。思わず見とれてしまうほど、堂々たる古民家です。
 古い農村の行事には公開をはばかるものが多い。豊穣の祭りには、必ず性の身振りがつきまとう。それは神聖な行為であり、おまじないでもあった。だから、ふだんは厳しい男女の仲も、祭りの日は大目に見られた。要するに、性の開放があったということです。
 日本全国の木地師には筒井、小椋(おぐら。小倉、大倉)が多い。木地師の本拠は近江の愛知郡小椋谷。木地師は椀をつくるかたわらで、能面も製作していたようです。
 金勝(こんぜ)族は金属、丹生(にう)族は水銀、木地師は木材を扱っていた。そこへ大陸からの帰化人(今は渡来人と言います)が入ってきて、加工の技術を教え、器用な日本人は、たちまちそれを自分のものとした。
 日本の仮面は、おそらく神像の代用品としてつくられ、神事から次第に芸能の世界へ移って行った。
 丹は朱砂とか辰砂を意味し、その鉱脈のあるところに「丹生」(にう)の名前がついている。朱砂は煮詰めると水銀になる。古墳の内部に朱を塗るのは、悪魔よけと防腐剤をかねている。
 丹生神社は全国に138ヶ所あり、半分以上が和歌山県に集中している。
僧侶と稚児の関係。戦国時代の武将が男色、同性愛にふけっていたのは有名です。たとえば、織田信長と森蘭丸です。最澄と空海は、泰範という弟子を争ったとのこと。知りませんでした。
 「稚児灌頂」という文書には、一種の儀式にまで発展した、男色の秘戯が記してあるという。うひゃあ、そうなんですか…。師弟の間柄も、肉体関係を結ぶことによって、本当に血の通った伝授が行われたのだろうとのことです。
見事なカラー写真があって、目と心を洗い流してくれます。
 残念なのは、頻繁に「にも関わらず」と書かれていることです。もちろん「関」は間違いで「拘」です。校正段階で正すべきでした。生前の著者の間違いをそのまま残すべきではありません。
(2021年4月刊。3400円+税)

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