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カテゴリー: 社会

建設業者

カテゴリー:社会

著者  建設知識編集部 、 出版  エクスナレッジ
建設現場の実際について、大変勉強になる本でした。知らなかったことがたくさんあり、大いに目を開かされました。
 鉄骨鳶(トビ)は、一日の仕事を終えて現場から帰るときは、自分の足跡を一つ残らずホウキで掃いて消してから帰る。そこまでやらないと、本当にいい仕事をしたとは言えない。そこまで思いやれるようになって初めて、その人間は現場から信頼される職人になる。
たとえば、20年やっている職人と5年しかやっていない職人が一緒に仕事をするときは、必ず20年目の職人が5年目の職人のレベルに合わせてやる。そうすると、下の職人も自然に下の職人に思いやりを持つようになる。常日頃から、こういうコミュニケーションが大切。
現場の職人が互いに思いやりを持って仕事ができなくなったら、とたんに転落や打撲やら、事故が絶えなくなる。 思いやりをもったコミュニケーションこそが最高の安全対策になる。
 クレーンオペレーターは相手の言うとおりにしていたら事故につながるかもしれないと思えば、たとえケンカになってでも、その頼みは断る。そういう意味での決断力を常に意識しておかないといけない仕事だ。
職人の腕の良し悪しは、すべて段取りに出る。段取りの悪さは致命的だ。子どもに見せられる仕事はいいものだ。
2階以上の深さのある地下なら、たいていどこか下から地下水が染み出してくるもの。コンクリートを打ち継いだ目地やコールドジョイント(接着不良)の部分からジワーっと・・・。
 そこで、防水工の仕事は、まず水が染みている部分のコンクリートをはつって(削り取って)、その出所を突きとめる。次に水に反応して膨張する発泡ウレタンをその出所に注入する。あとは、その上に止水セメントを盛って塗布防水剤を塗れば完了である。
 優秀な職人というのは必ず2つの共通点をもっている。一つは段取りがいいこと。親方から言われたとおりにやる人はダメ。臨機応変、その場に応じた発想ができる人でないと現場はまかせられない。もう一つは、下地をきっちり作れること。うまい人は、仕事に対する欲がある。もっとよくしたい、もっと仕事について知りたいという探求心がある。
 現場には、自然にできあがった職人のランクみたいなものがある。大工がいて、左官がいて、それから鉄筋工、型枠工がいて、設備はずっと下。下の方から数えた方が早い。
 屋根まわりの板金なら、基本的には水が流れたいように流れさせてやることが大切。屋根でも庇でも、水が自然に流れない設計は、いつか必ず漏水を起こす。
 ウレタンを壁に均一に吹きつけるには、その日の気温、現場の階数(高さ)、延ばしたホースの長さ、吹きつけるスピードなど、ありとあらゆる要素をふまえて発泡期の状態を調整しないとできないこと。ウレタンって、非常にデリケートな材料なのである。
 階上解体。建物の上の階から解体機で解体しながら一階ずつ地上まで降りてくる工法のこと。鉄筋がしっかり入っていない建物は、解体機を床の上に安心して載せられない。いわゆる手抜き工事が発覚すると、この仕事は難しくなりそうだと覚悟する。頑丈つくってあれば、私たちも安心して壊すことができる。
 やはり、職人芸には学ぶところがたくさんありますね。
(2013年1月刊。1400円+税)

会えて、よかった

カテゴリー:社会

著者  黒田 清 、 出版  三五館
奈良で活躍していた、私と同じ団塊の世代の高野嘉雄弁護士(故人)が、依頼者となった少年たちに読むようにすすめていた本です。私も読んでみました。
 25人の生いたちが語られ、紹介されていますが、いずれも心を打つ話でした。
 著者も亡くなられましたが、はしがきの言葉も素晴らしい。
書きながら、深い感動に包まれて涙があふれてくるときもあった。書き手がそうなのだから、おそらく読まれるあなたも、どこかで耐えきれなくなり、涙でほほを濡らされるに違いない。だから、この本はできることなら電車のなかなどで読まず、一人いるところで心静かに読んでほしい。人間はどんなにすばらしいものなのか。人間は、どんなに悲しいものなのか。私たちは、そのことを繰り返し感じるべきなのである。
 今の世の中には、いわゆるシラケ状況が満ちていて、感動したり、涙を流したりするのは恥ずかしいことのように思われがちだが、もちろん、そんなに思うことのほうが浅薄なのである。
 ここには、いろんな人がいて、それぞれに人生のうたをうたっている。それは勇気のうたであり、母のうたである。平和のうたであり、生命のうたであり、別れのうたである。
 心から感動せずして、涙を流さずして、すばらしいこの世を生きたというなかれ。感動と涙で心を洗われたあなたは、そのあと一生をそれまでと違った価値観で生きていけるようになるだろう。
 すべて実話というのがいいですね。単なる想像上の話ではなく、現実に生きている人の話だと思うと、よけいに勇気、生きる元気が湧いてきます。
 いい本をありがとうございました。素直に頭が下がります。
(2005年8月刊。1165円+税)

原発難民

カテゴリー:社会

著者  鳥賀陽 弘道 、 出版  PHP新書
この本を読んで驚き、かつ、呆れたことは次のくだりです。なーんだ、政府(菅首相以下)も東電も法律に反していたことは明らかじゃないか。改めて怒りを覚えました。
原子力災害対策特別措置法15条に定められたとおり、福島第一原発が政府に「緊急事態」の通報を3月11日午後4時45分にした時点で、放射能格納容器が壊れることを想定し、住民非難を指示しなければいけなかった。すなわち、放射性物質が外に漏れ出すことを考えて、住民を避難させなければならなかった。
 安定ヨウ素剤を子どもにのませるのは、被曝から24時間以内でないと効果が急激に下がる。格納容器が壊れてから飲んでも意味がない。「壊れそうだ」という時点で飲ませなければいけない。
 メルトダウンがあったのか、なかったのかという論争は、住民避難の観点からは、枝葉末節でしかない。寺板信昭・原子力安全・保安院長は、15条通通報が出たのだから、ただちに緊急事態を宣言し、住民避難を開始してくださいと菅首相に進言すべきだった。15条通報の段階では、原子力のなかでどうなっているのか、メルトダウンしているかどうかは分からない。分からなくても、15条通報があったら、住民の避難を開始すべきだった。
 このとき、東電は事態をまだ楽観視していて、廃炉になるとは思っていない。菅首相などの政府首脳も、それは同じこと。だから、ずっとずっと後手後手にまわってしまい、犠牲者を増やしてしまった。
東電、原子力安全・保安委員そして政府(菅首相)は、なんとかして廃炉になるのを避けたいと思っていた。原子炉を助けようとして、住民のことを忘れていた。
 巨大な資産だった原発が、一気に価値ゼロの廃棄物になるため、バランスシートが急激に悪化する。
 1号機を廃炉にする決断を早くしていれば2,3号機は助かったかもしれない。
1号機の水素爆発によって、放射能レベルが高くなったため、2,3号機に近づけなくなり、3月14日と15日に、メルトダウンを起こした。
全電源喪失や炉心溶融は、地震や津波と関係なく起きる現象である。格納容器は壊れないことにしてしまう。
日本の原発は、テロ、ミサイル攻撃そして誤操作などに対して十分に対策がとられているとは思えませんよね。恐ろしいことです。
(2012年11月刊。760円+税)

ルポ・子どもの貧困連鎖

カテゴリー:社会

著者  保坂渉・池谷孝司 、 出版  光文社
日本の子どもたちが、今、大切にされていないことが明らかにされています。安倍政権は教育改革と言っていますが、ここにこそ光をあてるべきだと思います。でも、やっていること、やろうとしていることは差別の拡大です。残念です。
文科省によると、高校の奨学金受給者は2007年度に15万2000人だったのが、2009年度は予算ベースで17万2000人に増えた。
 不況で大都市圏を中心に定時制受験者が急増し、多数の不合格者が出ている。希望すれば入れるのが定時制だったのに、学校が統廃合で減った。定員を増やし、門戸を開いてほしい。学びの最後のセーフティーネットがほろび始めている。
 文科省によると、定時制高校は1997年度に907校だったのが、2009年度は732校に減った。ところが、不況とともに新卒の志願者は増え、1997年度の2万367人から2009年度は3万989人になった。
 この数年、不況の深刻化で全日制の公立高校を落ちても経済的な事情で私立高に進めず、定時制の公立高を志望する生徒が激増している。定員を増やしても受験で不合格者が出て問題化するほどになった。
 困窮している高校生のなかには定期代や教科書にも事欠く子が大勢いる。公立高の授業料が無償になったとはいえ、私費負担はまだ大きい。途中でやめる子も多い。高校の実質的な無償化が必要である。
 教員がなぜこんなに疲れているかというと、ありとあらゆることが指導の対象だから。日本では、「○○指導」と言えば、何でも教員の守備範囲とみなされる。清掃指導、給食指導、下校指導、校外指導、みな教員がやらなければならない。それが、一番根幹のはずの授業に割ける時間、エネルギーを奪っている。担い過ぎているものを代わりに担当する人を付けていく必要がある。部活の指導者や図書館司書もちゃんと手配する細かい対処が必要である。しかし、政府は、手厚い公教育の提供をサボってきた。
 もっと国が教育に費用を投入する必要がある。所得税の累進制を大きくしたり、相続税を大幅にアップしたりして、富裕層からの再分配を拡充すべきだ。
 1955年に廃止された失業対策事業をリニューアルして、もう一度やるべきだ。仕事を探しても全然ないとき、高い賃金ではないけれど、ここに来たら当座の働き口はあるという場を公的につくる必要がある。
 これについては、私も大賛成です。働ける人は、みんな働きたいのです。
問題のある子どもや家庭を支援していく教育ケア会議の対象となる子どもの6割が生活保護世帯、一人親家庭も入れると7割になる。
虐待ケースでは身体的な虐待にいく前のネグレクトで発見できる比率が高い。野宿している若者は、母子家庭と虐待が多い。母子家庭で生活保護を受けていて帰れないとか、暴力がひどくて家には死んでも帰れないと言う。親を頼れない若者が、どんどん貧困、野宿になっている。
一人親家族や非正規雇用の家庭・虐待家庭が増えていることに学校も苦労している。そうした子どもたちの多くは、社会のスタートラインから不利な立場に置かれる。学校の保健室は子どもたちの駆け込み寺のような存在だ。
学校によっては、7割の子が虫歯で4割は死力が低下している。お金がないので歯医者に行けず、眼鏡を買えないという家庭が少なくない。
 保健室を利用する小学生は2006年度には一校あたり1日41人で、これは2001年度より5人も増えている。相談内容のうち、心の悩みが41%にのぼる(9%増)。うつ病やそううつ病など、「気分障害」の患者は1999年に44万人だったが、2008年には104万人、2.4倍に急増した。
 一時保護は、児童相談所が虐待や非行などで緊急に収容の必要のある子どもや、養育者のいない子どもを保護する制度。対象は18歳未満で、全国に125ヶ所ある一時保護所に2ヵ月内をめどに入所させる。2008年度の受付件数は2万件ほど。
 かつては日本の子どもほど親に愛され、大切にされている子どもはいない、このように絶賛されていましたが、今では悲惨な状況に置かれているのですね。
 安倍首相の教育改革は、こんな実情に目をふさいで、国のいいなりになる強い子どもを育成しようというものです。とんでもない改革ですよね。
(2012年8月刊。1600円+税)

検証・尖閣問題

カテゴリー:社会

著者  孫崎 享 、 出版  岩波書店
無責任なマスコミと評論家が日本と中国が今戦争したらどちらが勝つか、などの特集を組んだりして放言しています。そして、日本の自衛隊が勝つと断言する人までいて、呆れてモノが言えません。
 日本と中国が戦争するなんて、大変なことです。本当に戦争になれば島をめぐっての局地戦ですむはずもありませんし、日本が勝てるなんて、ありうるわけではないでしょう。アメリカが日本を応援してくれるはずだという幻想に浸っている人が多いのにも困ります。
 アメリカは「日中戦争」をある意味でけしかけ、また、「仲裁」には乗り出すでしょうが、それはあくまでアメリカの国益にそった行動でしかありえません。アメリカが日本を無条件に応援するというのは、まるで考えられないことです。
 多くの日本人は中国軍が弱体だと思っている。しかし、戦闘機とミサイルをかけあわせたとき、日本側が中国に勝つというシナリオはない。同じく、在日アメリカ軍も中国と戦争して勝てるという状況ではない。現時点で軍事費は日本1対中国3くらいの差がある。
 戦闘が起これば、海軍対海軍では終わらない。空軍が出る。ミサイル部隊が出てくる。そのとき、日本の勝ち目はない。
 まったく、そのとおりでしょう。なにしろ、物量に圧倒的な差があるのです。日本が尖閣諸島周辺で軍事行動をとれば、中国は必ずそれに呼応する。軍事力勝負で日本が長期的に勝てるというシナリオはない。
 こちらが軍備を増せば、相手国は当然増す。今日の国際政治では、紛争を避けることに多くの国は利益を見出している。国連憲章には集団的自衛権の規定がある。しかし、自民党の提起する集団的自衛権はそれとは異質なものだ。
 集団的自衛権を推進・主張する人は、国連で認められた権利であり、これを行使できないのはおかしいと主張する。しかし、これは間違いだ。
 国連憲章は、武力行使を相手国が軍事的攻撃をしたときに限定しようとしている。
 自民党などの主張する集団的自衛権は、先制攻撃の一部なのである。両者はまったく違うもの。
 尖閣諸島をめぐる領土紛争は棚上げすべきだと著者は強調しています。
棚上げは、双方が主権を主張するなか、互いの主権主張を認めつつ、軍事紛争への発展を阻止するために、両国では現状を凍結することを目ざしている。
 尖閣諸島を棚上げするのは、日本に有利である。
 まず第一に武力紛争を避けられる。日本の実効支配を中国が認めることになる。この実効支配が長期化すれば、国際法下で、日本の領有権が確定する。
著者は尖閣諸島が日本固有の領土と見ることができるのか、懐疑的です。それには、ポツダム宣言と、カイロ宣言を抜きには考えられないという意見です。
 無主の地であったこと、そして先占の法理が成り立つという主張にも疑問を投げかけています。いずれにせよ、領土紛争が武力紛争に発展しないような知恵と工夫が今求められていると思います。大変タイムリーな本です。
3月1日(金)夜6時から、福岡・天神の都久志会館で著者を招いた弁護士会主催の講演会が開かれます。ぜひ、ご参加ください。
(2012年12月刊。1600円+税)

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