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カテゴリー: 社会

おじいちゃんのノート

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 中村 輝雄 、 出版  セブン&アイ出版
開くと真っ平になるノートが付録として付いている本です。いわば奇跡のノートですよね、これって・・・。
「このノートは、書きやすくコピーやスキャンも影が出ない、画期的な水平開き製本の新時代ノートです。左右ページ単独に、または両面をワイドに使用!テーマに合わせて使い方いろいろです」
なるほど、どのページもたしかに水平開きになるノートです。
そこで、問題は、誰が、どうやってこんなノートを開発したのか、です。
誰が・・・。零細そのものの「中村印刷所」という会社です。80歳になる製本職人と70歳の社長の二人して2年がかりで完成させたのです。すごい執念です。2012年に始めて、2014年に完成しました。
どうやって・・・、というと、製本職人と社長が二人で、試行錯誤を繰り返したということに尽きるようです。でも、零細な町工場が画期的なノートをつくったからといって、一挙に市場で注目され、売れるものではありません。
そこに、SNS(ここではツィッター)が登場します。
「うちのおじいちゃん、ノートの特許をとってた・・・。宣伝費用がないからできないみたい。どのページを開いても見開き1ページになる方眼ノートです」
このツィッターがたちまち拡散して、半日たたずに2万件をこえた。やがて、10万をこえるアクセスがあり、テレビ局や週刊誌から取材したいと電話がかかってきた。
在庫はたちまちなくなり、引き戸を閉め、カーテンを引いて、部屋の電気も消して居留守を使った・・・。
いきなり、大騒動になったのです。ツィッターの威力って、すごいんですね、見直しました。
すでに10万冊以上の水平開きノートが販売されたそうです。おめでとうございます。
きっかけは、印刷所が不景気になって、仕事がなくなったことにあります。そこで、なんとか売れる商品をつくろうとがんばって世に送り出したのが、水平開きノートだったのです。
「ノドが膨らまないノート」です。ノドとは、見開いた本の真ん中、ページを閉じた部分のこと。水平開きノート開発のカギは、接着剤にある。
いやあ、いい話ですね。苦労が報われる社会というのはいいものですよね。
(2016年8月刊。1500円+税)

前川喜平が語る、考える

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 前川 喜平 ・ 山田 洋次 ・ 堀尾 輝久ほか 、 出版  本の泉社
世の中のことを、真面目に深く考えている人がこんなにたくさんいることを知ると、思わず私の身体も底から熱くなってきます。
山田洋次監督が夜間中学を舞台とした映画『学校』をつくりましたよね。本当にいい映画でした。
昼間の生徒たちは勉強するのがうれしくない。でも、夜の教室に行くと、みんなうれしくてしょうがないという顔をして勉強している。そして教員室も明るい。ちょうど劇団の事務所みたいに、生き生きとしている。
夜間中学では、生活基本漢字381文字を重点として教える。とりあえず大人の日常生活に必要な漢字を身につけさせる。
寅さん映画を見て厚労省に勤める人が山田洋次監督に次のような手紙を書いた。
「寅さんは、どうして健康保険に入ってないんですか。寅さんでも入れます。住所不定なら、さくらさんの住所にすればいいんです。私たちの仕事は一人残らず健康保険に入ってもらう。これが国民皆保険の思想ですから、ぜひ寅さんも入れてやってください」
この手紙は厚労省の本当に心ある公務員は、日本に暮らす人々の暮らしをちゃんと守りたいという気持ちを、強く持っていることを示している。
うむむ、なかなか感動的な手紙ですよね、これって・・・。
同じように、日本の法曹界にしても、まだまだあきらめてはいけない。前川さんのような人が、まだいるかもしれない。だめな人もいっぱいいるのかもしれないけれども、ちゃんと話の分かる人が、これじゃあ良くないと思いながら、悩んでいる人たちもたくさんいるんじゃないか、そう思った・・・。そうであってほしいと、私も切に願います。
教育学の堀尾輝久名誉教授の授業を前川さんは法学部でありながら、教育学部で「もぐり」で受講していたとのこと。私も教養課程のとき聴いた覚えがありますが、人間性を大切にする教育の真髄を教えられ、ズシンと来るものがありました。
いまの教員は忙しすぎて、子どものことを考えられない。マニュアルにしたがってやれば楽だし、文句も言われない。多くの教師が流されていて、労働組合も弱体化している。
右翼が「日教組、撲滅」と叫ぶほどに日教組の力は強くないというのは世間で公知の事実ではないでしょうか・・・。
前川さんも、私と同じようにテレビ『ひょっこりひょうたん島』をみていたそうです。私の旅行仲間の愛称が「ひょうたん島」です。
そこで勉強の歌がうたわれる。
子どもたちが、「勉強なさい、勉強なさい、大人は子どもに命令するよ、そんなの聞きあきた」と歌う。これに対して、先生が「いいえ、いい大人になるためよ。人間らしい人間、そうよ人間になるために、さあ勉強なさい」と歌う。
小学5年生の前川さんは、それで、「そうか人間になるために勉強するのか」、そう思ったとのこと。
学習することが、すべての人間らしい生き方のベースなんだ。人間にとって学ぶことの意味、自分らしく生きることの大切さ、個人の尊厳を大切にする多様性のある社会の必要性、そしてそれらを圧殺しようとする権力の危険性、これをずっと一貫して考えてきた・・・。
教育とは何か、その本質に迫る対談集でした。
大変勉強になると同時に、元気の出る本です。ぜひ、ご一読ください。
(2018年9月刊。1500円+税)

遊ぶ鉄工所

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山本 昌作 、 出版  ダイヤモンド社
いやあ、思わず、ウソでしょ、そんなことありえないでしょ、と叫びたくなる破天荒きわまりない鉄工所の話です。しかも、書いたのはその鉄工所の副社長で、外部のライターではありません。
この鉄工所の、何がすごいのか、というと・・・、実はたくさんあるのです。
まず第一に、トヨタや日立のような超大企業の下請ではない。取引先の1社の占める比重は3割をこえないようにしていて、多品種少量生産ですから、製造原価を叩かれることがない。
第二に、工場内はフラットな空間で間仕切りがなく、大きな食堂ではゆったり美味しく食べられる。ついでにいうと、トイレも大変きれいだそうです。
第三に、残業なしで、モノづくりは24時間、無人加工。
第四に、新卒採用には入社二年目の社員をふくめて総あたりで取り組み、社員のモチベーションを大切にする・・・。
すごいですよね。なにしろ、見学する人が年間2000人といいます。
楽しくなければ、仕事じゃない。
自分たちにしか出来ない仕事で勝負する。
社員食堂こそが、社員を活性化し、会社を大きく変える。
1個の受注が68%、2個の受注が10.7%。両方あわせると、80%が、1個か2個の生産を受注している。これを無人化して、こなしている。ええっ、そんなので会社が成りたつのかしらん・・・。でも、見事に成り立っています。それどころか、年々、取引先は増えているとのことです。
取引先は3000社をこえ、アメリカにも支社がある。その取引先には、ディズニーやNASAもふくまれている。いやはや、すごい会社です。社員も工場内も見事にカラーで、気持ちよく働けそうな雰囲気です。ここで働いている人がうらやましい。
モノづくり、人間育成のポイントをしっかえいおさえた明るい見通しがもて、元気が出る、勇気百倍になる本です。
(2018年7月刊。1500円+税)

コンビニオーナーになってはいけない

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 コンビニ加盟ユニオン・北 健一 、 出版  旬報社
私は原則としてコンビニは利用しないことにしています。もちろん、この原則には例外があります。旅行先ではコンビニを利用するしかありませんので、ためらわずに利用します。でも、ふだんは事務所の隣にコンビニがありますが、どうしても仕方がないときにしか店にははいりません。ですから、コンビニを利用するのは月に1回くらいです。
コンビニのオーナー(店主)は本当に現代の奴隷そのものだと思います。一家だんらんの場と時間が奪われてしまって、何のための人生でしょうか・・・。
そもそも、24時間営業というのが、私には、あまりに非人間的だとしか思えません。
暗くなったら寝て、身体を休めたほうが絶対にいいと思います。そんなぜいたくなこと言うなと反発を感じる人も少なくないと思うのですが、本当に夜寝たらいけないのでしょうか・・・。
病院とか介護施設なら、そうだと思います。でも、三交代勤務というのは本当に必要なのですか。これだけ技術が発達しているのに、人間まで寝ずに働く必要があるのですか。ましてや、単に商品を売るだけなのに、24時間、店を開けておくなんて、私には、その必要性が理解できません。身体をこわしてまで便利さを追求するなんて、本末転倒ではありませんか・・・。
セブン・イレブンに加盟するには、最低250万円が必要。開店すると、一気に300万円の借金を背負う。通常は700万円になる。これは、発注した商品の仕入代金が借金となるため。
本部から、1日に2万円以上の廃棄を出してくれと求められる。これは、「機会ロス」を防ぐためだし、本部にとって有利になる会計上の理由もある。
人気商品ファストフード(おでん、コロッケ、から揚げなど)は、原価50%で一般商品よりも安いのでオーナーはもうかるはずだけど、実は、もうかるのは本部ばかりで、オーナーには利益が出ない。
24時間営業をやめると、店の売上高は3割減ると本部はみている。つまり、本部は、オーナーの健康より、売上が減ることだけを心配している。
オーナーの死亡率・傷病率は異常なほど高い。
そりゃあ、そうだろうと私も思います。強いストレスに毎日さらされていれば、健康をそこなうのは必要ですよね。
店のスタッフ(アルバイト)の人件費は、本部が支払うという仕組みのようですが、おかしなことです。直接の雇い主であるオーナーが支払うのが自然です。
「オーナーや従業員(スタッフ)が死のうとケガしようと、本部には関係ないこと。オーナーが働けなくなったら、ほかから連れてくるから問題ない」
いやはや、なんという言い草でしょうか。オーナーって、独立した自営業者なのではなくて、単なる奴隷のような存在にすぎないと本部はみているのですね、ひどいものです。
コンビニは、売上金の全額を毎日、本部に送金する仕組みです。でも、これっておかしいですよね。売上から経費を差引いて粗利(荒利)のなかからロイヤリティーを送金するのが当然だと思いますが、そうはなっていません。そうすると、本部には、毎日、莫大な現金が集中することになります。セブンの場合、1日に125億円といいますから、絶えず数千億円もの巨額のお金を手にしているわけです。これは本部だけが肥え太る仕組みとしか言いようがありません。
今や、日本中、どこもかしこもコンビニだらけ・・・。
本当にそんな社会であっていいのでしょうか・・・。
コンビニ愛好者の人には、ぜひ読んでほしい本です。
(2018年9月刊。1200円+税)

窒息死に向かう日本経済

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 浜 矩子 、 出版  角川新書
いつ読んでも歯切れがよく、心地よいテンポでたたみかけられる気がします。
日本国債等の発行残高は1092兆円(2017年12月末時点)。このうち半分近い449兆円を日銀が保有している。これは、政府の借金の4割を日銀が面倒みてやっているということ。2017年の日本のGDP(名目)は546.5兆円だった。一国政府への中央銀行の債権が、その国の経済規模と同じだというのは、まともな状況とは言えない。なるほど、心配ですよね。
今の黒田・日銀は国債の大量購入をそもそも本来の目的としているのではないか。政府の借金を政府の言いなりにまかなってあげる。政府のためにおカネを握り出す「打ち出の小槌」の役割を果たす。これを狙っているとしか考えられない。それがいいはずはありません。
安倍首相は、「政府と日銀は親会社と子会社みたいなもの」と言い切った。
コーポレート・ガバナンス(企業統治)元年に大企業のモノづくりの不祥事が次々に発覚した。データ改ざんをしたのは、三菱と日産自動車、スバル、神戸製鋼、東レ、三菱マテリアルなど、次々に日本を代表する大企業の不祥事が表沙汰になった。
モノづくり大企業の不正行為が長く続いていたことの本当の意味を考える必要がある。
安倍首相は、かつて神戸製鋼の社員として働いたことがあった。大々的に日本が武器輸出に乗り出したなか、神戸製鋼は、その重要な役割を担っている。つまり、神戸製鋼のアルミ製品は自衛隊の航空機や誘導兵器、魚雷などにも使用されている。まさに、死の商人ですね。ここに安倍首相のルーツがあるというわけです。恐ろしいことです。
(2018年7月刊。820円+税)

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