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カテゴリー: 社会

暴君

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 牧 久 、 出版  小学館
新左翼・松崎明に支配されたJR秘史。これがサブタイトルです。ようするに革マル派の最高幹部でありながら、東京中心のJR東日本の「影の社長」とまで言われた松崎明の実像をあばいた本です。
公共交通機関であることをすっかり忘れ去ったJR九州に対して、私は心の底から怒っています。今や、JR九州は金もうけ本位、それだけです。もうからないローカル鉄道はどんどん切り捨て、新幹線のホームには駅員を配置しない。しばしば列車ダイヤが乱れるのは、維持・管理の手抜きから・・・。要するに乗客不在でもうからないことは一切やらない、安全軽視の民間運送会社になり下がってしまっています。
そして、社長は、いかに金もうけができたか、その自慢話を得意気に語る本を相次いで出版しています。安全第一・乗客第一の交通機関である誇りを忘れてしまったサイテーの経営者としか言いようがありません。本当に残念です。
今では大事故が起きないのが不思議なほどです。
同じJR北海道では、歴代社長が2人も自殺してしまったとのこと。よほど責任感が強すぎたのでしょう。JR九州には、ぜひ一刻も早く目を覚ましてほしいものです。
松崎明は、「国鉄改革三人組」、井手正敬、松田昌士、葛西敬之の三人を次のようにバッサリ切り捨てた。
この三人のなかに立派な人はいない。目的のために常に手段を選び、人間が小心、ずるがしこい。この「三人組」にとって、国鉄改革とは、まさしく立身出身の手段そのものだった。したがって、その後の「悪政」は必然の道だった。
まあ、歴史的事実としては、そんな「三人組」と大同小異なのが松崎明だったということなのでしょう・・・。
松崎明は、2010年12月9日、74歳で病死した。
松崎明は2000年4月、ハワイのコンドミニアム(マンション)を3300万円で購入した。寝室3つ、浴室2つの豪華マンションである。その1年前にも、同じハワイに庭付き一戸建て住宅2630万円を購入している。日本では、埼玉県小川町の自宅マンションのほか、東京・品川区の高級マンションをもっている。さらに、群馬県、沖縄、宮古島の保養施設3ヶ所も実質的に松崎が所有していた。
2005年12月、警視庁公安部は松崎の自宅などを業務上横領の疑いで家宅捜索した。4日間、80時間ほどをかけ、徹底したものだった。そして、2007年11月、警視庁は業務上横領で松崎明を書類送検した。ところが、同年12月末、嫌疑不十分で松崎明は起訴されなかった。
JR東日本の社長となった松田は、松崎明が革マル派を抜けていないことを本人に確認したうえで、利用した。共産党や社会主義協会派とたたかわせるためには、革マル派を使うほかにないと考えたのだ。
JR東日本ではストをやらせない、今後もやらせない。少々高いアメを松崎明たちにしゃぶらせても、結局は、その方が安上がり。こういう考えだったのです。
驚きました。JR東日本の松田社長は松崎明が革マル派の最高幹部だということを本人の告白によって知っていたのです。えええっ・・・。
元警察庁警備局長(キャリア組)の柴田善憲は、松崎明に完全に取り込まれた。JR東日本の本社、各支社には20人以上の元警察庁幹部が定年後に、「総務部調査役」として入っていた。その仲介役が柴田善憲だった。
10年間ほど、警察庁警備局は、「危ないのは中核派だ。中核派を重点的に調べろ」という指示を出した。それで、革マル派は警戒対象とならず10年間ほど、空白の期間があった。
ところが、革マル派のもつ埼玉県のアジトでは公安警察無線を傍受していた。
革マル派なんて、とっくに消滅してしまっているんじゃないの・・・。そう思っていると、おっとドスコイ、今も細々ながら生きのびているということです。
500頁近い大変な力作であり、恐るべき本です。新幹線をふくめて、主要なJRに今なお革マル派が巣喰っているだなんて、信じられませんよね・・・。
(2019年4月刊。2000円+税)

ふたつの日本

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 望月 優大 、 出版  講談社現代新書
いつのまにか私たちのまわりにはたくさんの外国人がいるのに、私たちの認識はその現実にきちんと対応していないように思います。
いま、日本には264万人の外国人が存在している。これは全人口の2%。「永住権」をもつ外国人だけでも100万人をこえている(109万人)。そして、1980年代半ばまでは韓国・朝鮮籍の人が8割以上を占めていたが、今では2割にみたない。
世界的にも日本は世界第7位の「移民大国」となっている。日本の人口が1億2千万人なので、日本人はそんなに「移民大国」となっている実感をもっていない。
いまの安倍政権は「移民」の定義をごまかしています。そして「永住権を増やさず、出稼ぎ労働者を増やす」政策をとっている(ローテーション政策)。これは、外国人を「人」として扱わず、「モノ」としてみている。「人」として扱うのには、相応のコストがかかる。
たとえば、コトバの問題。外国人2世の子どもたちが日本語をうまく話せない、ましてや1世である親は十分でない。それを国として放置していいはずはない。教育システムをつくって運営するには相応の費用がかかる。医療・年金そして社会保障システムのなかで外国人をどう位置づけるのか、きちんとした対策を日本政府はとっていない。
外国人の1位は中国で74万人(28%)。2位が韓国で45万人(17%)。3位はベトナム(11%)、そして4位がフィリピン26万人(10%)、5位のブラジル20万人(7%)と続く。
日本には109万人の「永住移民」がいて、155万人の「非永住移民」、131万人の「移民背景の国民」がいる。合計すると400万人だ。このほかに、「非正規移民」(超過滞在者)が7万人いる。
技能実習生が29万人近くいて、その1位はベトナム13万人。2位は中国7万人、3位フィリピン3万人、4位インドネシア2万人、5位タイ1万人と続く。ベトナムだけで、全体の47%を占めている。
「移民」を否認する国は、「人間」を否認する国である。排除ではなく、連帯する方向へすすむべきだ。これは「彼ら」の問題ではない。「私たち」の問題なのである。
コンパクトに問題点が整理されていて、改めて問題がどこにあるのか、認識することができました。
(2019年3月刊。840円+税)

貧者のホスピスに愛の灯がともるとき

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山本 雅基 、 出版  春秋社
山田洋次監督の映画『おとうと』のモデルの一つとなったホスピス「きぼうのいえ」の施設長だった著者の本です。心温まる話が多いのですが、つい胸に手を当てて考えさせられるエピソードもたくさんあります。著者は55歳ですが、最近、大病したということです。やはりストレス、心労が見えないところにたまっていたのではないでしょうか・・・。
なにしろ、15年間に270人もの人を見送った(看取った)というのです。私には、とても真似できることではありません。前著『山谷でホスピスやってます』(実業之日本社)に続く本です。
「きぼうのいえ」は、山谷地区でホスピス・ケア(終末期医療)を目的に、医療・看護・介護といった分野の専門職と連携して運営される在宅ホスピスケア対応集合住宅。
元ホームレスなど身寄りない人のための、日本ではじめてのホスピス。
銀行から1億円の融資を受けて、定員21人の施設をつくったのです。毎日10万円、年間3650万円の赤字が生まれる施設です。それは浄財・寄付金でまかなうしかありません。
日本のホスピスや緩和ケア病棟の平均在院日数は40日ほど。「きぼうのいえ」は、入所後2日で亡くなる人もいれば、何年も入所することになる人もいて、さまざま。
入居者は、はじめ信じられない。
「うまい話には絶対に裏がある。ひとが善意だけで、いいおこないをするわけがない」
「製薬会社から裏金をいくらもらっているのか」
「死んだら、内臓をどこかに売る気だな・・・」
そんな不信のかたまりの人たちに、愛情をおもてなしのシャワーを浴びてもらって、不信感を溶かしていく。これがスタッフの役割。
「きぼうのいえ」のスタッフのケアの中心は、積極的な傾向にある。無理して聞き出すのではなく、本人が語ってくるままに、そのひとが言いたい範囲で積極的に話を聞く。
「きぼうのいえ」では、入所者の飲酒は自由。自分で買いに行くのは何も言わないし、飲む量にも何も言わない。究極的には、お酒を飲んで死ぬ自由もある。
また、入所者の外出も自由。
「病気」になってひどく動揺するのは、会社の社長とか立派な学者という人に多い。それまで自分の人生をコントロールして(できて)きた人は、「自然」が運んでくるものを素直に受け入れることができない。
「きぼうのいえ」では、入居者がうれしそうでしあわせそうであればいい。こころの底から共鳴して、一緒に大笑いしたら、すばらしいこと。
「きぼうのいえ」のスタッフには、バーンアウト(燃え尽き症候群)がない。
これは、実にすばらしことです。大変な仕事、辛い目にあうのもたくさんな仕事を毎日続けているのに、燃え尽きないというのに本当に驚嘆します。
このような施設を私たちは本当に大切にしないといけませんよね・・・。
とてもいい本です。ぜひ、ご一読ください。著者に対して、十分に健康に留意したうえでの引き続きの健闘を祈念します。
(2019年1月刊。1800円+税)

アンダークラス

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 橋本 健二 、 出版  ちくま新書
現代日本社会の実態を正確に認識する必要があると痛感します。
非正規労働者のうち、家計補助的に働いているパート主婦と、非常勤の役員や管理職、資格や技能をもった専門職を除いた残りの人々を「アンダークラス」と呼ぶ。
その数は930万人、就業人口の15%を占め、急速に拡大しつつある。平均年収は186万円、貧困率は38.7%(女性は5割に達する)。男性の66%が未婚者で、配偶者がいるのは26%に達しない。女性でも未婚者が過半数を占め、44%近くが離死別を経験している。
アンダークラスが増えはじめたのは、1980年代末のバブル経済期から。
日本の貧困率は、1985年(昭和60年)に12.0%だった。それから30年後の2015年には15.6%となった。30年間で3.6%も上昇した。
ちなみに、日本の資本家階級は254万人ほど。これは、就業人口の4.1%を占める。
アンダークラスの若い男性は、絶望と隣りあわせに住んでいる。
アンダークラスの男性は、社会的に孤立していて、協力行動にふみ出しにくい。他者からサポートを受ける機会も少ない。
老後の生活の経済的基盤は、きわめて脆弱だ。金融資産は平均948万円。
「自分は幸せではない」と考える人の比率は、実に55.7%である。
アンダークラスと失業者は格差の解消と所得の再分布を支持する。ところが、自民党支持を拒否するにもかかわらず、その他の政党を支持するわけでもない。どの政党も支持しない。また政党への無関心をきめこむ。したがって、アンダークラスの意思は、政治には反映されない。
投票率の低下がアベ一強政権を黙って支えている現実を深刻に真剣に考えるべきだと私は考えています。
(2018年12月刊。820円+税)

キャッシュレス覇権戦争

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 岩田 昭男 、 出版  NHK出版新書
日本は今も現金が大手を振って通用している。キャッシュレス決済比率は18.4%でしかない(2015年)。韓国は89.1%、中国は60.0%、そしてアメリカは45.0%というのとは大きな開きがある。
日本の銀行券の製造コストは年に517億円。そして全国20万台あるATMから現金を引き出している、このATMの維持管理コストは現金運搬の人件費を加えると年間に2兆円。
キャッシュレス化を進めたい国の立場は、徴税を徹底したいということ。現金は匿名性が高くて、その流れを把握しにくい。
キャッシュレス化は便利だが、資産やお金の使い方が企業そして国に筒抜けになる。そのうえ、蓄積された個人情報を分析して、その人の信用度を数値化してランク付けする「信用スコア」ビジネスが始まっている。
ソフトバンクとヤフーの共同出資会社であるペイペイが2018年12月から、「100億円あげちゃう」キャンペーンを始めた。そして、実際に、10日間で100億円を使い切った。1日10億円である。
個人商店のキャッシュレス化が進まない理由の一つは、手数料の高さ。3%から7%の手数料をとられてしまうことにある。ラーメン店の多くは、カードお断りだ。
中国では、スマホ決済は日本のGDP546兆円をはるかに上回る660兆円(2016年)に達している。そして、中国では顔写真つきの身分証がなければスマホを買えない。逆にいうと、スマホがID(身分証明)の役割を果たしている。
アリペイのゴマ信用は、返済履歴や買い物履歴だけでなく、個人の生活情報(暮らしぶり)も取り込み、AI(人工知能)によって点数化したもの。このゴマ信用は、一企業の信用情報というより、人々をランク付けする半ば公的な基準となりつつある。中国政府のブラックリストに載った人間は、実際に飛行機や高速鉄道の切符が買えないという制裁を受けている。
いま、中国政府は、無料の健康診断を実施し、指紋、血液、DNAなどの生体情報の収集をすすめている。
アメリカでは、警察署の多くが、犯罪予測システムを運用している。過去に発生した管轄内の犯罪データをAIが分析し、犯罪が起きる「時間帯」と「場所」を予測し、このデータをもとに、重点的にパトロールする。
キャッシュレス社会とは、誰が、いつ、どこで、何を、いくらでどれだけ買ったかという情報が、私たちの知らないところで集められ、分析される社会でもある。個人は「丸裸」にされてしまう。
ポイントカードによって顧客を囲いこみ、年齢・性別・職業などの属性と購買動向をひも付けて記録して、自社のマーケティングに役立てようという狙いがある。
私はなるべくカードを使わないようにしています。自分の足跡を誰がずっと監視しているなんて、恐ろしすぎます。やはり、便利なものには裏があるのですよね・・・。
(2019年2月刊。780円+税)

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