法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 社会

黒いカネを貪(むさぼ)る面々

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 一ノ宮 美成 、 出版  さくら舎
私も弁護士の一人として、ときに社会のドス黒い裏面の一端に接することがあります(といっても、ほんの少しだけで、全貌はとても見えてきません)が、この本を読むと、世の中には、ドス黒いお金が、何億円という大金のレベルで黒社会を漂流していることを感じさせます。まったく嫌になります。
最近、法科大学院で教えている大学教員の話を聞く機会がありました。以前は、社会的弱者のために何か役に立つ弁護士になりたいという学生がいたけれど、今では稼げる弁護士になりたいとか、大きなローファームに入って大企業の力になりたいという学生ばかりになっている・・・、とのことでした。残念です。とんでもない自己責任論が横行して、お金がない者は切り捨てられて当然だという社会風潮が強まるなかで、頼れるものはカネ、おカネを稼ぐしかないという拝金主義の発想に少なくない学生がとらわれているようです。本当に残念です。
福岡で起きた金塊160キロの強奪事件は、私も目を見張りました。7億6千万円もの金塊が白昼、博多駅前のビル正面で警察官を装った男たちから強奪されたのでした(2016年7月)。
2017年4月には、福岡空港から、現金7億3500万円を香港に持ち出そうとした韓国人4人が逮捕されました。この日は、天神で2億円近い現金の強奪事件が起きていましたから、その関係かと思っていると、無関係だったとのこと。
金地金の密輸が2017年には、6トン、280億円も税関によって摘発されているそうです。今の世のなかでは、とんでもない金額の現金や金塊が人知れず動いているようで、恐ろしいばかりです。
ヤミ金については、ビジネスとしてのヤミ金はすたれていて、素人のような個人のやる「見えない貧困ビジネス」になっているとのことです。フツーの市民がサイドビジネスとしてヤミ金融をやっているのだそうです。これもネット社会の怖さでしょうか。
積水ハウスが地面師グループから63億円も騙しとられた裏話も紹介されています。
要するに、土地所有者になりすます人間を用意し、本人確認のために必要なパスポートや運転免許証などを精巧に偽造するグループが存在するのです。弁護士も巻き込まれていて、その騙しに一役買ったりしています。それが金に困っての犯行であれば当然に責任をとってもらわなければいけませんが、騙しを見破れなかったとしたら哀れです。
まったく楽しくなく暗い気持ちになるばかりの本なのですが、ときに現代日本社会の現実を知るために必要な本だと思って速やかに読了しました。
(2019年10月刊。1600円+税)

直及勝負

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 たつみコータロー 、 出版  清風堂書店
国会議員って、何をしているのかな・・・、そんな疑問に対して真正面から答えてくれる本です。本というより、少し厚みのあるブックレットというべきでしょうか・・・。200頁あまりの薄さで、1000円ほどですから、手頃な感じです。私は電車内で30分で読みました。
著者は大阪市西淀川区に生まれ、高校時代はラグビー部でがんばり、生徒会長もつとめたあと、なんとアメリカに渡り、エマーソン大学で映画づくりを学んだと言います。映画監督を目ざしていたのです。そして、大学を出てからはヨーロッパや東南アジアをバックパックでまわり、大阪に戻ってからは、「生活と健康を守る会」の事務局員としてつとめ、7000件もの生活相談を受けました。たいしたものです。DVや借金相談で東奔西走の日々でした。そして、今では日本共産党の国会議員(参議院)として、森友学園問題、コンビニ問題で大活躍中です。
その国会論戦が本当に分かりやすく紹介されていて、いやあ国民に役立つ国会議員って、こうでなくてはいけないよね、そう思わせる内容になっています。
森友学園の籠池氏夫妻は、安倍首相夫妻に裏切られて、今では反アベの急先鋒になっています。財務省による国有財産の払い下げに関して、安倍首相夫妻への忖度(そんたく)はひどいものがありました。
そして、辞めるはずの安倍首相は今も居すわったままですし、財務省の幹部たちはみな昇進しています。ひどすぎます。国を私物化しているのが許せないと著者は強調していますが、まったく同感です。
著者が国会の内外で追及しているコンビニの不当なロイヤルティーの計算、ノルマ、24時間営業の強制、ぜひぜひ改めてほしいと思います。
金もうけのためなら人間らしい生活を踏みにじっていなんて、時代錯誤の発想でしかありません。何が「働き方改革」ですか・・・。コンビニの働き方改革こそ先決でしょう。
カジノ問題、ブラック企業問題、そしてスナック営業など、現代日本のかかえる大きな問題にズバリ切り込んでいる40歳台の青年政治家の活躍に大きな拍手を送ります。読んで元気の出てくる楽しい本として、一読をおすすめします。
(2019年4月刊。1112円+税)

技術が変える戦争と平和

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 道下 徳成 、 出版  芙蓉書房出版
科学技術の発達が戦争の姿を変えている状況を知ることのできる本です。
インターネットの発達によって、前線にいる兵士と司令部にいる指揮官とのリアルタイム・映像つきの情報交換を可能にした。これによって、指令の伝達や状況把握は、より迅速かつ正確になされる。そして、それは前線の兵士が、司令部への報告そして司令部からの命令が大量となり、兵士は多忙をきわめることになった。
犠牲者回避が主目的化すると、軍隊全体に軍人としての職業倫理・士気の低下をもたらしかねない。
ドイツでは、2011年から志願制となったが、人材確保が以前より重要な課題となった。そして、軍隊に対する忠誠心の減退や離職者対策として、海外派遣中の兵士に対するストレス緩和についての支援が重要なものの一つとなった。たとえば、前線にいる兵士に対して家族からのメールは、自分は何もできないという不安や無力感を感じて、かえってストレスになる。そこで、デジタルが発達していても、昔ながらの絵葉書や小包を前線の兵士への送るということが、兵士と家族の双方にとって、ストレス緩和の効果が高い。
インドが得意とする技術は、ジェネリック医薬品のように、すでにニーズの定まった医薬品をよりコストの安い代替物で生産し、広く普及させる技術。たとえば、人質をとるテロリストを制圧する手段として、インド軍特殊部隊は、突入直前に発光手榴弾の代わりに、世界一辛いとうがらしをつかった手榴弾をつかう。これは値段が安いので、広く普及させることができる。
韓国は、2014年に、世界最大の武器輸入国であり、それはほとんどアメリカからの輸入で占められていた。F35戦闘機40機、グローバル・ホーク機4機、など・・・。しかし、対北脅威の対応としては過大装備ではないかという批判・反省もあらわれている。
北朝鮮は、資金不足のため、ほとんどの武器が旧式だが、戦略・訓練・企画・思考は現場にかなっている。
日本企業100社の上位10社の市場占有率は50%をこえている。そして、10社内に3社が上がった。トップの三菱重工(28位)、2位が川崎重工(18%)だった。日本企業の特徴は、防衛上の施設に対するニーズが低いことにある。
武器の製造に3Dプリンターが活用されている。アメリカ軍は、B52戦略爆撃機やC-5輸送機などの旧式航空機の補修部品の製造に3Dプリンターを利用したときのコストが問題となる。3Dプリンターは、まずまずの性能をおさめ、国内外の雇用の奪いあいを生んでいる。
科学・技術の発達は戦争のあり方も大きく変えていることがよく分かる本でした。
(2018年9月刊。2500円+税)

団地と移民

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 安田 浩一 、 出版  角川書店
団地は日本の象徴です。私の身近な団地も高齢化がすすんでいます。幸いアメリカのようなスラム街にはなっていませんが、エレベーターがなくて、ひきこもり、またゴミ部屋になっていたり、孤独死していて何週間もたって発見されるというのを聞きます。
この本では、団地に外国人が集中して居住している状況がレポートされています。なるほど、と思いました。
千葉県松戸市にある常盤平(ときわだいら)団地には5000世帯が住む。住民の半数が65歳以上の高齢者。単身高齢者が1000人。
いま団地で大きな問題となっているのが「孤独死」。2016年には、10人が自室で亡くなり、死後しばらくして「発見」された。2001年春には、69歳の男性の白骨死体が見つかった。死後3年が経過していた、これには驚きます・・・。
団地は、いまや限界集落にひとしい。
ええっ、限界集落って、交通の途絶した農山村のことかと思っていると、大都会でも起きているんですね・・・。
団地では、孤独死が出ると、壁紙も床もすべて外し、むき出しのコンクリート状態にしてから、内装工事をやり直す。というのは、いくら清掃しても床や壁から死者のニオイが消えることはないから・・・。
埼玉県川口市にある芝園(しばぞの)団地が全2500世帯。半数が外国人住民で、その大半がニューカマーの中国人。
広島市の基町(もとまち)高層アパート(最高20階建)は、戸数3000戸、9000人が暮らす大規模集合住宅。隣接する県営の中層アパート1500戸とあわせて基町団地とも総称される。半数が高齢者、残り半分が外国人。基町アパートの高齢化率は46%。外国籍住民は20%。残留孤児のような中国人が多い。日本語教室が取り組まれている。
愛知県豊田氏の保見(ほみ)団地は日系ブラジル人が多い。1985年、日本にいるブラジル人は1900人。1990年に5万5000人となり、今や20万人。保見団地の全住民8000人の半分がブラジル人など日系南米人。まさに、「小さなブラジル」だ。1999年、保見団地抗争が起きた。右翼と暴走族が「ブラジル人の一掃」をとなえ、ブラジル人グループも全面対決を覚悟した。幸い、機動隊の出動によって、大がかりな衝突は未然に防止できた。
日本社会は移民国家化を避けることができない。いや、すでに日本は事実上の移民国家だ。外国籍住民の人口は、すでに250万人。これは名古屋市の人口を上まわりもはや京都府全体の人口に近い。たそがれていた団地にとって、外国籍住民は救世主となる可能性がある。そして、団地でニューカマーの外国人が自治会役員になるケースもふえている。団地は多文化共生の最前線。移民国家に向けた壮大な社会実験が進行中なのである。
なるほど、現実をしっかり受けとめ、視点を変える必要があると痛感させられました。
(2019年3月刊。1600円+税)

先制攻撃できる自衛隊

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 半田 滋 、 出版  あけび書房
安保法制が施行されて3年たった。日本は戦争に巻き込まれていない。では、あのとき私たちは取り越し苦労をしたのか・・・。安心するのは、まだ早い。今は、たまたまアメリカが戦争をしていないから、日本も静かなだけ・・・。
アメリカが世界のどこかで戦争をはじめ、日本に応援を求めてきたときには、日本はすぐに自衛隊を世界中のどこにでも送り込み、アメリカと一緒になって戦争することになる。
アメリカが戦争していないからといって、安保法制は休眠してはいない。南スーダンで「駆けつけ警護」が命じられた。ところが、それが本格的に実施される前に自衛隊は撤退した。
それは、安倍首相が国会で自衛隊員に死傷者が出たらどうするかと追及されて、責任をとると明言したから。死傷者が出ないように撤退させたわけだ。
そして、自衛隊のアメリカ軍防護活動も始まっている。しかし、その状況は国民に公表されていない。
日本はアメリカから攻撃型武器をどんどん買わされている。かつては毎年500億円ほどだったのが、今では桁ちがいの7000億円にまではね上がった。
武器を売り込みたいアメリカにとって、日本は文句ひとつ言うことなく、ハイハイと、どんな高額かつ欠陥品であっても買ってくれる天国のような国になっている。
アメリカは、日本の国土を自分に都合よく利用させてもらっているので、その片手間に日本の防衛も手伝うといっているにすぎない。これが日米安保条約の真の姿。なので、日本が世界最高額のアメリカ軍経費を負担しなくてはいけない義務なんてない。
かつては外務省にも良心的な幹部官僚がいたようです・・・。
アメリカも日本も、軍部と支配・権力層は絶えず、「敵」を探している。「敵」がいないと、とたんに防衛費は削減され、武器や隊員も削減されること必至なので、「敵」つまり「日本に対する脅威」なるものを必死で探し求めている。しかし、見つけられない。
秋田と山口に建設されようとしているイージス・アショアは、当初は1基800億円だとしていましたが、今では1340億円の購入費のほか、維持・運営費を加えると、5000億円近い。そして、日本の秋田と山口に建設するのにこだわっているのは、実は、アメリカのハワイとグアムを防衛するために立地上として都合がいいからであって、日本防衛とは関係がない・・・。うむむ、なんというバカげたことでしょうか・・・。5000億円もの予算を教育・福祉にまわせば、日本社会もどんなに住みやすくなることでしょう・・・。
軍事予算をどんどん増やしていけば、福祉予算の切り捨ては必至です。介護保険料を引き上げ、生活保護費の引き下げはまったなしで実現することでしょう。まさしく、お先真っ暗です。
なんのために軍事予算を増大させようとしているのか、どうして年金に頼って生活できないほど年金額が低いのか・・・。
いったい、教員はまともに日本という国の政治を子どもたちに教えているのか・・・。
自分たちの生活の実際を直視し、年金問題では、各人が2000万円を積み立て投資が求められていることを自覚すべきだ。いやはや、そんなことが、自覚したとしても出来る人が日本全国にいったいどれくらいいるでしょうか。
軍事的機能、軍事予算そして生活費に与える多大なマイナス影響・・・。これを考えたら安倍改憲なんて、まっぴらゴメンだということになります。
今、ひとりでも多くの人に読んでほしい本です。
(2019年5月刊。1500円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.