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カテゴリー: 司法

あの頃、ボクらは少年院にいた

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 セカンドチャンス!編 、 出版  新科学出版社
少年少女時代にヤンチャをして、少年院に入っていた人たちが、今は必死にがんばっているという話です。読んでいて胸が熱くなりました。非行に走った原因はさまざまですが、親との関係も大きな原因となっています。
少年院の出身者が再犯して少年院や大人の刑事施設に再入院する率は3割と言われています。しかし、それは7割の人は、なんとか捕まるようなこともせずに暮らしているということです。そこを私たちは信じたいものです。
少年院では、更生する気はまったくなかったけれど、資格取得のための勉強だけはがんばった。一年間、何も身につけないよりは、いつか役に立つだろうと思い、暇さえあれば勉強した。おかげで資格も8個もっている。
いま考えると、十代のころは社会すべてが敵で、親さえも信用していなかった。捕まって初めて親のありがたさに気がついた。あれだけ迷惑かけたのに、一度も見捨てずに母は本気でぶつかってくれた。立ち直ることができたのは、多くの周りの支えがあったから・・・。
父は暴力団員、母は風俗嬢。両親が仕事からイライラして帰ってくると、殴られ蹴られの日々。生きていく意味がないと思う毎日だった。親の虐待やネグレクトが知れて、児童相談所に保護されて面会に来たときの母親の言葉。
「おまえみたいな子ども、産まんけりゃ良かったわ。疫病神なんて、火事を出したときに焼け死んでしまえばこんなことにならんですんだのによう。なんで、こんな出来損ないに人生を壊されなあかんのか・・・」
いやはや辛いですね。産みの母親からこう言われたら・・・。
少年院出身者たちを励ますセカンドチャンスは、2009年1月に設立された。すでに10年の実績がある。2011年には福岡で初めての交流会をやった。今では、「セカンドチャンス!女子」という女子の会も始まっている。
この本のなかに、かつて自分を少年院に送った裁判官にお礼を言いたくて会いに行った話が紹介されています。
本当にあの出会いはうれしかった。その裁判官は、審判の席で、すごく心配してくれていて、感じが良かった。真剣に、「もうあなた、いい加減にせんと、人生大変なことになってますよ」と言われた。ああ、いい人だなあと感じて、この裁判官の名前を憶えておこうと思った。
最近、会いに行くと、その山田裁判官は弁護士になっていた。視力がほとんどなくなっていたけれど、裁判官を40年やっていて、会いに来てくれた人は初めてなので、すごくうれしいと言ってとても喜んでくれた。
いい話ですね。司法にもこうやって心を通わせる可能性があるのです・・・。
このセカンドチャンスには、杉浦ひとみ弁護士がずっと関わっています。すごいことです。
セカンドチャンスの基本ポリシーは正直、平等、尊敬です。
少年院出身者が人生をやり直したい、犯罪をやめてまっとうに生(行)きたいと本気で願ったとき、それを温かく支える社会環境を早くつくりあげたいものです。
私は、いま少年院に2回も入った27歳の青年の常習窃盗事件を担当しています。彼が、この本にあるように心を入れかえて愚直に歩み続けてくれることを改めて願いました。
(2019年3月刊。1500円+税)

東大卒筋肉弁護士の超効率勉強法

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 小林 航太 、 出版  主婦と生活社
私はテレビを見ませんので、実際には知りませんが、NHKの筋トレ番組『みんなで筋肉体操』に出ていて、紅白歌合戦(私は高校生のとき、「総白痴化番組」だというコメントを読んで以来、みるのをやめています)にも出演したという有名な筋肉ムキムキ弁護士が、その勉強法を語っています。
神奈川の名門・栄光学園から現役で東大に入学したものの、入学後は燃え尽き症候群に陥って、引きこもりに近い生活を4年間すごし、大学生活6年間。そして、法科大学院では、未修コース3年間を経て、一発で司法試験に合格したのでした。
その東大受験と司法試験受験で実践した勉強法のエキスが紹介されています。いずれも、私もまったく異論のない、きわめて合理的な勉強法です。そして、筋トレです。
間違ったトレーニングをいくら一生けん命に続けても、ほしい筋肉はつかない。司法試験では、文章力、作文力がなければ合格できない。
勉強も筋トレも、カギは習慣とすること。
勉強は、言うまでもなく、自分との勝負だ。勉強とは、すなわち効率を追求するゲームでもある。
東大文系の合格ラインは全科目総得点の5割強。つまり6割とれたら合格できる。司法試験も同じだ。
何時間、勉強するかより、まず1日の生活リズムをつくるほうが大切だ。そして、意識をできる限り勉強に向けない。
夜は12時に寝る。毎日、6時間は眠る。
何を訊かれているのかを察知する知識量が必要だ。
ほれぼれする筋肉のかたまりの肉体美をもつ弁護士です。といっても、私にはマネできそうもありません。
(2019年2月刊。1300円+税)

最高裁に告ぐ

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 岡口 基一 、 出版  岩波書店
タイトルがいかにも挑戦的なので、どんなに過激な本なのか、思わず手にしたくなる本でしたが、読んでみると、しごく穏当な主張が冷静なタッチで展開されています。その意味では、タイトルはいささか独走している気がしました。
むしろ、このまま今の最高裁に日本の司法をまかせて大丈夫なのか、「王様」化した最高裁は世の中の要請にこたえていないのではないのか、そんな趣旨のタイトルにしたらどうか、ついそう思ったことでした。
著者は「バッシングを畏れて世間に迎合する判決を下すようになったら司法は終わりである」としています。本当にそのとおりなのですが、正確には迎合する先は「世間」ではなくて、安倍内閣を先頭とする権力ではないでしょうか・・・。
原発裁判もはじめとして、あまりにも権力(自公政権と電力会社・原子力ムラ)べったりの司法判断が続いていて、嫌になってしまいます。
全国裁判官懇話会が開かれていたのは2007年までのこと。もう10年以上も裁判官の自主的な集まりはない。そして、1970年代以降、最高裁判事は官僚派の裁判官(そのほとんどは裁判実務をしていない)が大勢を占め、社会秩序重視の判決が多くなっている。
日本国民は司法にあまり関心をもっていない。その理由として、最高裁は本当の意味で国家の基本に関わるような判断をしないこと、国民生活に広く影響を与えるような問題について積極的な判断を行うこともあまりないことがあげられる。そうなんですよね、司法の存在感は薄いし、ますます薄れています。
著者は最高裁があまりに多くの事件をかかえて超多忙だという実情を指摘していますが、それにしても最近の最高裁判決の質が劣化していることを鋭く糾弾しています。要するに、憲法違反としながら、憲法の条文を明記せずに「明らか」という強調語で逃げていたり、集会の自由や表現の自由が問題となったケースの判決で従来の最高裁判例との整合性があるのか、また判決文に理由が明示がされていないということなどです。
東京高裁の林道晴長官、そして同高裁の吉崎佳弥事務局長は、二人して著者に対して脅迫・強要行為を東京高裁長官室で50分にわたって続けた。これらはパワハラにも該当する。
このように著者は指摘しています。
また、最高裁は今回、著者を戒告処分に付したわけですが、そのとき、著者が過去に厳重注意処分を受けたことも理由としてあげていることも大きな問題です。著者も、その弁護団も、この点について大いに問題にしています。つまり、「前科」ではないのに「前科」があるかのように不利益判断したわけで、これは最高裁が著者と弁護団からの釈明申立を認めず、事実上「1回結審」したことの問題点でもあります。
民事訴訟の裁判官が「王様」になるには、次の3つの方法がある。その1、当事者のした主張に答えない。その2、そもそも当事者に主張をさせない。その3、当事者がした主張にデタラメな理由をもって答える。
著者は、下級審の民事裁判官は、この3つの方法のいずれも実行できないとしています。本当でしょうか・・・。私は、福岡地裁でも福岡高裁でも、この3つをいずれも経験して、煮え湯を飲まされました。よほど、担当裁判官(まだ若い人です)を忌避してやりたいと思いましたが、あと一歩のところで思いとどまりました。それが良かったのか、本人のためにも忌避すべきだったのではないか、今も迷っています。
司法の現実を知るうえで、弁護士はもちろんのこと、司法に少しでも関心のある人にはぜひ読んでほしい本です。
(2019年4月刊。1700円+税)

裁判官が答える裁判のギモン

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 日本裁判官ネットワーク 、 出版  岩波ブックレット
現職裁判官の自主的組織である裁判官ネットワークがフツーの人の裁判に関する疑問について、とても分かりやすく解説したブックレットです。わずか100頁ほどの小冊子ですが、市民の誰でもが抱いている疑問が28問とりあげられています。そのなかには、裁判官の日常生活や最近話題のSNSに関する質問もあって、興味をそそられます。
私が弁護士になる前の司法修習生のころには「宅調」といって、裁判官が裁判所に出ないで自宅で判決を書く日が認められていました。たしか週に2日は認められていたと思います。最近では「宅調」という制度は廃止されたと思っていたら、この冊子では「最近は減ってきたよう」だとありますので、制度としてはまだ存続しているのでしょうか・・・。
それから夏休みです。正しくは「夏期休廷期間」というようですが、3週間とれることになっています。実際には、この期間を難事件の判決起案日にあてることが多くて、完全な休みにはならないとのこと。私も、そうだろうと思います。
岡口基一仙台高裁判事(その前は東京高裁判事)のツィッターが有名で、最高裁判所は戒告処分に付しました。私は、この戒告処分には賛成できません。裁判官の市民的自由はもっと大切にされていいと考えているからです。
それに何より、もっとひどいことをしている裁判官は他にたくさんいる現実がありますので、岡口判事のしたツィッター程度で目くじらをたてるなら、ほかにも懲戒免職相当という判事は多数いると思うのです。その典型がもう故人ではありますが、元最高裁長官の田中耕太郎です。私もいつも呼び捨てにします。だって、最高裁での審理状況を実質当事者であるアメリカ政府、その代表者ともいうべき大使に報告し、その指示を仰いでいたという、とんでもない男なんですよ。まさしく元長官の名誉を剥奪すべき人物です。ところが、そのことが客観的事実として判明してなお、最高裁は何もしていなのです。こんなひどい話はありません。プンプンプンです。
ネットワーク会員の竹内浩史大阪高裁判事はブログ「弁護士任官どどいつ集」を発信しています。権力に向って平気でモノを言うような、型破りの判事がもっと増えてほしいです。
裁判官は本当に合議しているのか、裁判長が結論を決めているのではないか、裁判長の意見を忖度(そんたく)しているのではないか、私をふくめて多くの人が疑問を抱いています。この本では、最近は、活発に自分の意見を述べる左陪席(若手)裁判官が増えているとしています。
これが本当なら、喜ばしいことですが、本当に大丈夫でしょうか・・・。
刑事裁判で裁判員裁判が始まって、刑事裁判は少しはいい方向に向かっているという積極評価がなされています。私も同じ意見です。とは言っても、残念ながら裁判員裁判を担当したことはありません。殺人罪で逮捕された被疑者が嘱託殺人罪で起訴されたからです。
痴漢していないのに犯人に間違われそうになったとき、逮捕されないように現場を立ち去るのがいいかどうかは、刑事専門の弁護士でも意見が分かれているとのことです。私は、できるだけ足早に遠ざかるのがいいと考えていますが、それすら困難なときは、周囲を見わたして、自分の無実を証明するための協力を呼びかけるのがいいというアイデアが紹介されています。単純に逃げたほうがいいというのは誤りだし、走って逃げだすのはもってのほかだと書かれています。なるほど、そうだろうなと思います。でも、現実は難しいでしょうね・・・。
裁判所と裁判官が、もっと国民に開けた存在であるためには、かつての青法協裁判官部会のような自主的組織が必要だと思いますし、裁判官ネットワークの会員がどんどん増え、この冊子のような情報発信を国民にむかってするべきだと思います。
あなたもぜひ手にとってお読みください。
(2019年4月刊。660円+税)

労働弁護士50年

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 高木 輝雄 、 出版  かもがわ出版
名古屋に生まれ育ち、大学も名古屋、そして弁護士としても一貫して名古屋で活動してきた高木輝雄弁護士に後輩の弁護士がインタビューしたものが一冊の本にまとめられています。話し言葉ですし、インタビュアーの解説もあって大変読みやすく、私は機中で一気に読み終えました。
司法修習は20期で、同期には江田五月、横路孝弘そして菊池紘・自由法曹団元団長などがいる。当時は青法協が非常に活発で、修習生の半分以上が青法協の会員だった。
弁護士になってすぐ弾圧事件にとりくみ、打合せして帰宅するのは午前2時。それから尋問の準備をしたあと、4時に寝て、朝6時には起きる。
うひゃあ、す、すごいです。とても私にはマネできません。すべての時間を仕事に注入したのでした。
次は、四日市公害訴訟。このとき、疫学的因果関係が認められました。
次の全港湾事件は、日韓条約反対のストやデモをして、業務命令違反で組合役員8人が解雇された。裁判所は、政治的な問題がからむと非常に弱い。司法の独立は大切なものだと考えて司法の世界に入ったけれど、結局のところ、司法は立法や行政に頭が上がらないことを実感した。
レストランのコックに対して営業職への出向が命じられて拒否したところ、業務命令に反したというので解雇された。このとき就労請求を求めたら、裁判所が認容した。コックは業務をやっていくなかでコックとしての能力を向上させるものという特別性を訴えた。このころは解雇の事前差し止めの仮処分申請をして、認められることがあった。
東海道新幹線が開通したのは1964年(昭和39年)、私が高校1年生のときです。大学生のときは新幹線は高値の花で、寝台特急みずほや急行などを利用して九州へ帰っていました。
沿線住民があまりの騒音・振動に耐えかねて裁判を起こした。一審だけでも3回ほど現地で検証した。そして、国労が現場で減速走行してみせるというように協力してくれた。沿線の住民がワァーって歓声をあげると、運転士がパッパッパッーと汽笛を鳴らして応じる。
いやはや、すごいことですよね、これって・・・。今では、まったく考えもしません。
法廷に緊張感があり、傍聴席から裁判長に対して意見をいうと、強く受けとめている気配があった。このころ、著者は「喧嘩太郎」とか「瞬間湯沸かし器」と言われていた。
この裁判のあと、JR東海とは1年に1回協議をしているが、もう30年以上は続いている。これってすごいこと、すごすぎますね・・・。
新幹線訴訟のときも午前2時まで作業していて、毎日2時間ほどしか眠れなかった。
こうなると、過労死寸前ですね・・・、笑いごとではありません。よく身体がもちました。
運動は楽しくなきゃいけない。義務だけではダメ。本当にそのとおりです。
著者は今76歳。ますますお元気にご活躍し、お過ごしください。
(2019年1月刊。1600円+税)

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