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カテゴリー: 人間

腸科学

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者  ジャスティン・ソネンバーグ 、 出版  早川書房
 私は子どものころから胃腸、とくに腸が丈夫ではないと自覚していますので、腸のことをもっと知りたいと思って読みました。この本は腸内細菌がとても大切な役割を果たしていることを強調しています。
 腸内にすむ細菌や真菌は、人体と環境間で起きる相互作用を決め、アレルギーや自己免疫疾患の発症や予防にもかかわっている。肥満や糖尿病を引き起こすのを防ぐのも、体内の炎症を抑えるのも、悪化させるのも、これらの細菌だ。
 人と微生物の共生関係は人が誕生したときに始まる。人は母親の子宮内では無菌状態にあるが、外界に出たとたんに無菌の身体に菌がどんどんすみついていく。小さい子どもが何か物を口に入れようとしたら、細菌の膜が新たなマイクロバイオータを形成するために貴重な微生物を提供してくれていると考えたらいい。
 腸内細菌がヒトの健康と幸福に欠かせないものだという証拠はたくさんある。人の腸内には、100兆個をこえる細菌が暮らしている。その大半は大腸をすみかとしている。大腸には、数百種をこえる細菌が全部で100兆個以上すんでいて、その内容物を小さじにすくうと、一杯あたり5000億個の密度でひしめいている。小腸内にすむ微生物は比較的に少なく、小腸の内容物を小さじにすくうと、一杯あたり、わずか5000万個しかいない。
 過剰に加工された欧米の食事、抗生物質の乱用、殺菌がすすんだ家屋などによって、腸内の住人はその健康と安全が脅かされている。
 ヒトは、腸内にいる微生物とずっと折り合いをつけてきた。ヒトは腸内マイクロバイオータを必要としている。腸内マイクロバイオータがあるだけで、やせた健康なマウスに体重増加が起きる。
アメリカでは、出産の3分の1以上が帝王切開である。帝王切開で産まれた人には肥満、アレルギー、セリアック病そして虫歯にかかりやすい。帝王切開で産まれた赤ちゃんには、母体の窒に綿棒で細菌を採取し、赤ちゃんの体の複数個所にそれを移植してやるといい。
母乳にふくまれる主要成分の一つは、それを飲む赤ちゃんは消化できないので、役に立たない。しかし、それはマイクロバイオータの食べ物になる。つまり、母乳は、赤ちゃんに飲ませるだけでなく、赤ちゃんの胎内にいる100兆個の細菌にも食事を提供している。
犬を飼っている家庭ではぜん息が減る。あまりに清潔な環境で子どもを育てるのは、その子の免疫系の発達にとって長期にわたって悪影響を及ぼすおそれがある。
腸内細菌を大切にすることは大切なことだということがよく分かる本でした。そのための食事レシピも紹介されています。要は食物繊維をたくさんとること、あまりに清潔すぎるのは良くないということのようです。早速、実行してみましょう。
(2016年11月刊。1900円+税)

山小屋主人の炉端話

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者  工藤 隆雄 、 出版  山と渓谷社
 私は、年に何回か近くの小山(388メートル)に登りますが、本格的な登山や山歩きはしたことがありません。きつくて、寒くて大変だろうなという気持ちから敬遠したいのです。
 私にとって山小屋に泊まったというのは、50年も前の大学生のころに尾瀬の山小屋に泊まったくらいです。山小屋に近いのは、奥鬼怒の三斗小屋温泉の煙草屋旅館です。
 この本は各地の山小屋の主人の聞き語りから成っています。主人といっても男性ばかりではありません。若い女性も、いわば、おばさん級もいます。みなさん、山を愛することでは天下一品。
でも、山小屋の経営っていかにも大変ですよね。とても、もうかる商売とは思えません。ですから、この本にも、身内には跡を継がせたくないという話が出てきます。当然ですね。
 箱根にある金太郎茶屋に小田原少年院の子どもたちを迎えたという話は心温まるものがありました。大自然のなかを歩かせるのは、「非行」少年だけでなく、どんな子どもでもとってもいいことだと思います。自分の足で苦労して頂上までのぼりつめたとき視界360度のパノラマ(風景)は、何とも言えない感動を湧きあがらせます。
そして、ここの女主人は、何と100キロもある冷蔵庫をかついで、2時間かけて茶屋まで運び上げたというのです。信じられない力持ちです。
 今では山小屋のトイレも水洗式になっているところが増えているようですね。環境保護の面からいうと、どうなるのでしょうか。費用対効果ということもあるでしょうし・・・。
 山小屋生活の苦労話だけでなく、楽しい話もたくさんある、炉端話が満載の本です。
(2016年11月刊。1300円+税)

男という名の絶望

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 奥田 祥子 、 出版  幻冬舎新書
しあわせは いつも じぶんの こころが きめる
相田みつをの言葉です。たしかに、そのとおりですよね。でも、簡単なようで、これが実に難しいのです。つまり、他(はた)から見た姿を想像してしまうからです。
この本で、一番、私の心にグサリときたのは、小学二年生になったばかりの女の子の次の言葉です。
「パパとママは、なんで、仲のいいフリをしてんの?」
パパもママも、それぞれ外に好きな人がいるのを、娘はとっくに見抜いていたというのです。なーるほど、ですね・・・。
男性は今、仕事では、労働環境の悪化から職業人としての誇りを保てず、かたや家庭では、妻と心を通わせることができず、子どもとの関係もふくめた家庭不和に直面している。夫、父親としての自らの価値、存在を見失い、もがき苦しんでいる。
なかでも、中年期を迎えてリストラのターゲットとされながら転職も難しく、晩婚化も影響して、まだ育児や子どもの教育に手のかかる団塊ジュニア世代をはじめとする、四十歳代男性に、その傾向が顕著だ。「男は、こうあるべき」という社会、そして、女性からは容赦ない要請を受け、それにこたえきれない。
そこで、心の中で白旗を掲げながらも、かたくなにから(殻)に閉じこもってしまっている。
このところ、解雇の専門ノウハウを有する人材コンサルティング会社と契約して、リストラを代行させる会社が増えている。リストラ対象の社員に対して、業務命令として社内で人材コンサルタントのキャリア相談を受けさせる。このときは、退職のことは一切触れない。そして、「研修」名目で、人材コンサルタント会社に行かせる。このようにして会社は、自ら手を汚さず、社員を辞職へもっていく。その手法は、ますます巧妙化している。裁判になって、会社が退職を強要したと言われないためである。
産業医に正直に話したことが悪用された例もある。
安倍政権は解雇規制を緩和しようとしているが、転職市場が停滞している現状での解雇規制の緩和は、労働者にとって、ますます不利になるだけだ。
既婚女性の仕事関係の不倫は多い。共通点は、不倫相手の収入が夫より高いことが多いこと。夫は知っていると思うけど、何も言わない。夫の定年でも離婚する気はないと、彼女らは口をそろえて言う。
夫婦間のDV被害者のうち、実は男性もある程度の割合を占めていて、しかも増加傾向にある。
苛酷な職場環境にある男性にとって、妻子には認められているという、他者からの承認欲求共同体であるはずの家族が、実際には互いに心を通わすことなく、気持ちがすれ違い、本来の機能を果たしていないという現実は、たしかに受け入れがたいものがあるだろう。だが、かつてのように夫が揺るぎない主導権を握る家庭というのは、そこにはない。にもかかわらず、その現実を直視できないがために、幻想的な「居場所」へ男性は固執しようとする。
未成年の子どもの親権者が父親になるのは、全国でわずか1割でしかない。
まさに男はつらいよ、を実証したとしか言いようのない本です。といっても、絶望しているだけでは、どうしようもありません。
(2016年3月刊。800円+税)

寿命はなぜ決まっているのか

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 小林 武彦、 出版  岩波ジュニア新書
寿命があるのはなぜか。これって、少し考えると簡単なのですよね。人間が不老長寿の存在だとしたら、新しい人間は生まれる必要がないし、生れたら、増える一方なので、住むところもないほど、あふれてしまうでしょう。
つまり寿命がないと、世代の交代はできない。新しい命が誕生できなくなり、進化も起こらない。
生命は淀みなく流れる川。常に入れ替わり、新しい流れをつくる。それが唯一、自分を育んだ集団を、ずっと先の子孫まで継続させる手段なのだ。
個人にとっては、寿命があることから何か寂しい感じがする。しかし、生命の連続性を維持するということでは、非常に積極的で、生物が若返るためには必須のもの。
動物と植物とでは、寿命を単純に比較することは出来ない。
動物は、基本的に身体を構成する、すべての細胞を維持することで「生きている」状態になる。
植物、ことに樹木の場合には、細胞分裂をしているのは、幹の外側や先端、そして葉や根の一部のみであり、ほかの細胞の多くは分裂しないか、既に死んでしまっている。
人間の脳には140億個の神経細胞がある、人間は赤ちゃんのときから1日に10万個ほどずつ死滅してしまう。平均寿命までに、20~30%の神経細胞が消えてなくなってしまう。
しかし、もともと脳は、その一部しか使っていない。だから、神経細胞の減少は、脳の老化の主要な原因ではない。むしろ、ある程度は数が減ることが神経細胞のネットワーク形成に重要なのだ。
人間の寿命について、またまた有益なアドバイスをいただきました。ありがとうございます。
(2016年2月刊。840円+税)

進化しすぎた脳

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 池谷 裕二 、 出版  講談社ブルーバックス
 脳学者が、ニューヨークで日本人の高校生を相手に講義した内容が本になっていますので、とても分かりやすく、知的刺激にみちています。実は、私も高校生のころ、一瞬でしたが大脳生理学を研究してみたいなと思ったことがありました。その直後に、理数系の頭をもっていないことを自覚して、たちまち断念したのですが・・・。
 脳は、場所によって役割が異なる。同じ聴覚野でも、内部では、漠然と音に反応しているのではなくて、ヘルツ数順にきれいに並んでいる。たとえば、5番目の視覚野は、動きを認知する場所。ここが壊れると、動いている物が見えなくなってしまう。
網膜から出て、脳に向かう視神経は100万本ある。多いようだけど、デジカメで100万画素というと、今では少ない。100万本は多いとは言えず、それだけなら、ザラザラ、ガクガクしているはず。テレビやDVDは1秒間に30コマ。映画は、もっとコマ数が少なくて、1秒間に24コマ。
 人間の脳は10ミリ秒というのが時間解像度だ。人間にとって、100分の1秒より小さい桁には意味がない。10ミリ秒で、もう十分に「同時」ということになる。
テレビ画面を虫めがねで拡大してみると、「赤・緑・青」の画素がびっしり並んでいるのが見える。人間が識別できる色の数は数百万色。
 世界を脳が見ているというより、脳が人間に固有な世界をつくりあげているというほうが正しい。
視神経のなかで、上丘で見ているものは、意識には現れない。上丘は、処理の仕方が原始的で単純だから、判断が速くて正確だ。
 サルは、人間が意図的に言葉を教えなければ、絶対に言葉を覚えない。サルは、自分たちのコミュニケーションの中でシグナル(信号)は使うけれど、もっと高度な言葉を自分たちで産み出したりはしない。人間に教えられた、ある意味で不自由な状態にならないと、サルは言葉を覚えない。
下等な動物ほど、正確な記憶をもち、ひとたび覚えた記憶は、なかなか消えない。
人間の身体の細胞は60兆あるが、速いスピードで入替わっている。身体の細胞は3日もたったら、乗り物としての自分は変わっている。脳は、そんなことにならないように、つまり自分がいつまでも自分であり続けるために神経細胞は増殖しない。
神経細胞にとって、もっとも重要なイオンは、ナトリウムだ。恐らく生命が誕生したときに、ナトリウムイオンがまわりにたくさんあった。海だ。生命は海で誕生したと言われている。そこで、もっとも利用しやすかったのがナトリウムイオンだったのだろう。
 神経線維と神経線維が接近しているが、間にすきまがある。その極端に狭い特殊な場所で、神経細胞同士が情報をやりとりしている。その場所をシナプスと呼ぶ。シナプスは、ひとつの神経細胞あたり1万もある。シナプスのすき間はすごく狭い。1ミリmの5万分の1。つまり、20ナノメートルしかない。神経伝達物質が一つの袋のなかに数千個から1万個もぎっしりと詰まっている。人間の記憶や思考があいまいなのは、シナプスに理由がある。
脳の神秘が、こうやってひとつずつ明らかにされています。そうは行っても脳の働きが完全に究明されるのは、まだまだ遠い未来の話のように思えます。
 大脳生理学の到達点について、高校生と一緒に学ぶことができました。
 
(2016年2月刊。1000円+税)

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