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ブラザーフッド

カテゴリー:未分類

著者:カン・ジェ・ギュ、出版社:集英社文庫
 すさまじい迫力です。戦闘場面はアメリカ映画以上の生々しさです。機銃掃射の弾丸が迫ってきますので、映画館の座席にいながら思わず身をよけてしまいました。
 朝鮮戦争で同じ民族が殺しあったのは、わずか50年前のこと。金日成の指揮する北朝鮮軍が一方的に南侵を始めたのは歴史的事実ですが、それが世間の常識として定着するまで20年以上かかりました。私が大学生になったころは、まだ北朝鮮は自衛反撃したのだというのが左翼陣営の「公式見解」でした。
 イデオロギーの違いだけでなく、報復が報復を呼んで暴力の悪循環が悲劇を拡大させ、莫大な犠牲者を出しています。映画でも、そのことが生々しく描かれています。日本も朝鮮戦争の発生した原因に深く関わっていますし、なにより朝鮮戦争特需によって日本経済が復興したという事実を忘れるわけにはいきません。
 先の映画『シルミド』は金日成の暗殺部隊の真相を描いたものでしたが、韓国人1100万人が見たそうです。今度の『ブラザーフッド』はそれをさらに上まわり1300万人を突破したというのです。信じられない動員力です。しかし、実際に映画を見ると、それだけのインパクトをもつ映画だと実感できます。単にチャン・ドンゴンやウォンビンが出演しているからだけではありません。
 99年の『シュリ』、00年の『JSA』に続いて韓国映画は社会の現実を生々しく描いて鋭く問題を投げかける感動的大作が次々にヒットしています。この勢いが日本映画にも欲しいものです。韓国には、韓国映画の上映率を定めて、映画界を国が支援しているそうです。そこが日本と違います。日本の文化行政は貧困そのものです。ちなみに、この集英社文庫は映画のノベライズ版ですから、映画を見た人々にはよく分って助かりますが、とても韓国人が書いたとは思えない重大な初歩的ミスが2つあります。
 朝鮮戦争に介入した中国軍を指揮したのは林彪ではありません。彭徳懐です。むしろ林彪は、朝鮮戦争のときに中国義勇軍の指揮を回避したことが死後に罪証のひとつとされています。毛沢東は中国軍100万人を投入し、実に90万人もの死傷者を出したのです。
 毛沢東が朝鮮戦争に介入する経緯については『中国と朝鮮戦争』(勁草書房)、『毛沢東の朝鮮戦争』(岩波書店)という詳細な研究書が出ています。もうひとつは南朝鮮労働党(南労党)です。これは北朝鮮人民委員会の下部組織ではなく、あくまで朝鮮労働党の一部です。南労党についても詳しい本がいくつのありますが、『南部軍』(平凡社)を私はおすすめします。

グローバリゼーションから軍事的帝国主義へ

カテゴリー:未分類

著者:大西広、出版社:大月書店
 大変知的刺激を受けた本でした。
 イラク戦争において、アメリカは実は敗戦した。著者は、このように断言しています。戦争に勝ったと言えるためには、その戦争を支えるだけの国力をもっていなければならない。しかし、アメリカは、財政赤字を3000億ドルから4500億ドルへとふくらませてしまった。
 とどまるところを知らないアメリカの貿易赤字は1.5兆ドルをこえている。これは金利を年率5%として毎年750億ドルの金利返済ができなければ、債務が無限に膨張することを意味している。根元的な資金不足国家が長期に国際金融の中心を担うことはできない。
 世界の資金をアメリカに流入させるために、アメリカは無理してドル高政策をとっている。ドル高政策は、アメリカの製造業に打撃を与え、ただでさえアジアの急追に悩むアメリカの基礎的な工業基盤の弱体化を加速させた。アメリカにとって、世界の「ドル離れ」を阻止できるかどうかがアメリカの生死を決める。アメリカは「国際通貨ドル」を絶対に守らなければならない。イラク原油がユーロ建てになっては困るのである。中東原油に依存する日本や中国などの東アジア諸国の決済通貨がユーロ化してしまえば、「ドル体制」の終焉を意味する。 原油のユーロ建てを企てたベネズエラのチャベス大統領がクーデターによって追放されようとしたのも、アメリカの意図が反映されていた。イラクのフセイン攻撃も同じ脈絡でとらえられる。なるほど・・・。
 このほか、北朝鮮や中国についての分析も興味深いものがありました。

欲望の植物誌

カテゴリー:未分類

著者:マイケル・ポーラン、出版社:八坂書房
 マックのアイダホ・ポテトのつくり方はこうだ。
 早春、土にくんじょう処理をほどこす。ネマトーダや土中の病原菌を抑えるため、ジャガイモを植えるまえに、そのなかの微生物をすべて殺せるくらいの化学薬品を土に浴びせておく。ついで除草剤をまく。レクサン、セルコン、エプタムをつかって雑草を根こそぎにし、畑をクリーンにする。ジャガイモを植えたあとは、ティメットのような組織性殺虫剤をまいておく。これは若い芽に吸収され、数週間のあいだ。その葉を食べようとする虫すべてを殺してしまう。さらに、その苗が6インチほどに育ったころ、雑草を抑えるため、再び畑に除草剤をまく。
 ジャガイモ畑は大きな円の形をしていて、中心にかんがい装置がある。農薬も肥料も、この装置によって水と一緒にまくことができる。週に10回、化学肥料のスプレーをする。葉が茂ったころ、ブラボーという殺菌剤をスプレーする。2週間おきにアブラムシを抑える農薬をまく。モニターと呼ばれる有機リン化合物もまく。だから、生産農家は、自分で食べるジャガイモは別につくっている。もちろん、無農薬の有機栽培だ。
 ええーっ、そんな薬づけのジャガイモを食べさせられているの・・・?うーん。恐ろしい・・・。
 ジョニー・アップルシードと呼ばれた男はアメリカ中をリンゴのタネをまきながら歩いた。しかし、リンゴをタネから育てても、美味しいリンゴはできない。食用リンゴは接ぎ木からしかできない。では、どうしてジョニー・アップルシードが歓迎されたのか。それは、リンゴ酒をもたらすからだった。初めて知りました・・・。
 チューリップも、リンゴと同じく、タネからは同じものができない。タネから育てられた子孫は親とほとんど似ていない。
 自然の営みに素直に耳を傾けて、人類の生存の可能性を探っていく時期だとつくづく思いました。

走る!漫画家

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著者:渡辺やよい、出版社:創出版
 漫画家が出版社に渡した原画が、出版社が倒産してヤフーオークションにかかり、「まんだらけ」で投げ売りされていたことに気がついた母ちゃん漫画家の奮闘日記です。最後まで面白く読ませます。母ちゃん漫画家が、子どもの面倒をみながら、車椅子の老愛犬や大きくなった金魚の世話までする日常生活のドタバタぶりに身をつまされます。ところが、なんと、そのドタバタの合い間に、ここで引用をはばかられるような表現の官能小説をモノにし、さらに過激な性描写を特徴とするレディース・コミックも描きあげるというのです。その日常性との落差には唖然としてしまいます。そうなんです。流出した漫画原稿は過激な絵のオンパレードだったのです。それが1作品1000円程度で売られていたというのにも著者は腹をたてます。
 自称二流三流のエロ漫画家がバロン弘兼先生たちを巻きこんで「漫画家原稿を守る会」を結成し、社会的な運動の流れをおこすのです。それなりに成果をあげることができました。しかし、「まんだらけ」との裁判は今なお継続中。
 漫画家のおかれている状況を正しく認識できる本として、おすすめします。

徹底解剖100円ショップ

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著者:アジア太平洋資料センター、出版社:コモンズ
 100円ショップ主要5社の売上合計は3836億円(2002年度)。赤ちゃんから寝たきり老人まで、すべての日本人が年間1人30個を買ったことになる。97年度は660億円だったので、5年間で5.8倍になった。なかでもダイソーは68%のシェア率を誇り、一人勝ちしている。
 ダイソーの矢野博丈社長は、ダイソーを株式上場しない理由を次のように述べている。上場すると、数字をオープンにさらけ出して、丸裸になる。お客様が、ダイソーは損して売っているのかと思っていたのに、利益も出ていると思ってしまったら、買い物の楽しさが減ってしまう。気の毒に、こんなもの100円で売って、かなり損しているんだねと思われる方がいいんだ・・・。しかし、実は、100円ショップの粗利益は平均32%で、これは一般専門小売店の27%に比べて明らかに高いのです。100円ショップで売っている商品の仕入原価は1円から120円まで。それでも、衝動買いが多いから十分に成り立ちます。大量仕入れ・大量販売。たとえば賞味期限が残り1ヶ月のものを仕入れる。100円ショップ用に製造した商品を直接仕入れる。10万から100万個単位を現金仕入れするから安くなるのも当然。仕入れの基本は10万個で、これを3ヶ月で売りさばくのを原則とする。広告・宣伝費はゼロに近い。
 ダイソーの従業員は1万人いるが、正社員は、わずか400人。パートの比率は94%。店長以外はパート・アルバイト職員。
 海外に続々「100円ショップ」を展開中だが、実態は在庫処分ではないか。日本の倉庫費用はばかにならないので、家賃の安い途上国にもっていって売りさばこうというもの。常に新製品をうみ出し、お客さんあきられないようにする。原産国は中国46%、台湾10%、韓国12%そして日本は15%。東南アジアから安く仕入れているが、「搾取」という概念では割り切れない現実がある。
 「100円ショップ」が街角の目立つところにある現在、その背景についていろいろ考えさせられる本でした。

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