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核戦争、世界滅亡までの72分間

(霧山昴)

著者 アニー・ジェイコブセン 、 出版 朝日新聞出版

日本も核武装して日本を守るべきだと主張する政治家がいて、少なくない日本人がそうなのかなと思い込まされています。でも、核兵器は一度でも使われたら、この地球が終ってしまうという恐ろしい兵器なのです。この本を読んで改めて実感しました。

この本では、さまざまな状況を想定して、核戦争が起きたときの真実を恐ろしいほど写実的に描いています。

ワシントンにあるペンタゴンに1メガトンの核兵器が命中したら、たちまち周囲の空気は数百万度にまで熱せられ、巨大な火球が形成される。火球ははじめ時速数百万キロの速度で膨張し、数秒後には直径1.7キロの大きさに達する。その光と熱の威力は、コンクリートの表面を砕き壊し、金属は溶解・蒸発化し、石材は粉々に砕けて散り、人間は一瞬にして燃え尽き、炭となる。ペンタゴンの庁舎は一瞬のうちに粉塵と化す。すべての壁が木っ端みじんに砕け、2万7000人の職員は全員が即死する。火球の内側には何も残らない。

火球から放射される熱線は光速で広がり、中心から数キロ先まで、全方位見渡す限りの範囲にある可燃物を片端から発火させる。やがて、その猛火は、250平方キロをこえる範囲、600万人の住む地域を焼き尽くす。

ペンタゴンから東へ4キロ離れた野球場にいる3万5000人の観客の衣服が一斉に発火し、その場で焼け死ぬか、まもなく死に至る。

その後、さらに100万人が爆発から数秒のうちに深刻な熱傷(ヤケド)を負い、9割は死亡する。

人類が20世紀に核兵器を生み出したのは、世界を悪から救うためだった。そして21世紀の今、核兵器が世界を滅ぼそうとしている。焦土と化すまで徹底的に…。

アメリカ政府は「全面核戦争」に向けて態勢を整え、作戦を立て、シミュレーションを繰り返してきた。

全面核戦争とは、最短で20億人もの死者が出ることを前提とした、核使用をともなう第三次世界大戦である。

核兵器を持つことが、どうして核戦争から人を守ることになるのか? 抑止力が働かなくなったとき、いったい何が起きるのか?

 1985年、ロナルド・レーガン大統領とミハイル・ゴルバチョフ書記長は、共同声明でこう言った。核戦争に勝者はありえず、決して起こしてはならない。

アメリカは1770発の核兵器をもち、その大半が即発射可能な状態にある。現在、核兵器を保有しているのは9か国。アメリカ、ロシア、フランス、中国、イギリス、パキスタン、インド、イスラエルそして北朝鮮。

北朝鮮の核兵器は、おそらくソ連崩壊時に保管庫から盗み出され、売られたものだろう。核弾頭とデコイ(おとり弾頭)を見分けるためのレーダーシステムSBXには、数十億ドルの開発費と数億ドルの維持費がかかっている。

アメリカで核兵器の発射権限を持つのは大統領ただ一人。誰の許可も要しない。あの情緒不安定、言うことがくるくる変わり、大言壮語するトランプが地球の死活を左右するボタンを持つとは…、恐ろしすぎます。

核搭載ミサイルが原子炉を撃つというのは、想像を絶する最悪のシナリオだ。これ以上ひどい状況は考えられない。私は、通常ミサイルでも同じことだと思います。

原発防衛というが、核ミサイルの襲来を想定した訓練は一度も行われていない。なぜなら、その場合の防衛手段は存在しないから。

灼熱の球体が直径30メートルの大きさとなり、10分にわたって、どこまでも昇り続けるだろう。原子力発電所全体が海面に陥没し、クレーターとなる。火球の内側にあったものは、影形もなく一掃される。

核戦争が始まれば、開戦直後に5億人が命を落とし、生き残った人々も飢餓と死に追いやられる。北半球全体が放射性降下物により居住不能となる。

もはや清潔な水はどこにもない。あらゆる街灯も照明もない。あるのは、ろうそくの光だけ。電話もつながらない。15分もしないうちに、病気を媒介する虫がうようよと湧きはじめ、人間の排泄物を、ゴミを、そして死体をむさぼり食いはじめる…。

いやあ、核兵器の恐怖、また、そのむなしさの恐怖など、ひしひしと実感させられました。今夜はじっくり眠れそうもありません。

(2026年2月刊。3630円)

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