(霧山昴)
著者 信夫隆司 、 出版 中公新書
実に腹立たしい新書です。いいえ、もちろん著者にたいして怒っているのではありません。日本政府のあまりにも卑屈な姿勢に対して怒っているのです。
つい先日、沖縄にあるアメリカ軍基地から史上最悪の化学物質であるPFASが漏出していることをアメリカが認め、日本に通告し、このことを公表していいとしたのに、日本政府はそのことをずっと隠してきた、小泉防衛大臣はPFASの発生源は明確ではないなどと嘘をついていた、このことが暴露されました。沖縄の地元紙による一大スクープですが、本土の大新聞はひっそりと報道するだけです。
PFASって、次の世代にまで重大な健康被害をもたらす最悪の化学物質なんです。日本政府は日本人がどんな健康被害を受けようが、「自己責任」だとして、何らの対策もとっていません。つまり、日本政府は日本国民を守ることはしないのです。それにもかかわらず、日本政府は「国を守る」ためと称して、トマホークをアメリカから購入し、長射程ミサイルを各地に配備しつつあります。それは、「日本国民を守るため」ではなく、「国」と軍需産業そして自分たち与党政治家を守るためなのです。
佐藤栄作首相は「非核三原則」を打ち出し、核のない沖縄返還を実現したとして、1974年12月にノーベル平和賞を受賞しました。ところが、佐藤栄作は、その前、アメリカ大使との会談で、「非核三原則なんて ナンセンスだ」と発言していたのです。
今、高市首相は、同じように「非核三原則」のうちの「持ち込み」を認める、つまり「非核三原則」は、もう止めると公然と言っています。とんでもないことです。いったい、日本に核兵器を持ち込んで、誰から何を守るというのですか...。
日本海側にはたくさんの原発(原子力発電所)があります。核兵器ではない、通常ミサイルを「決死隊」が原発に撃ち込んだら、日本はもう終わりです。
ウクライナと違って日本の周囲は海ですから、陸路を歩いて逃げることも出来ません。
アメリカにとって在日米軍基地を自由に使へること、極東戦略上、譲れないことだった。日本政府は、公式には、寄港・領海通過を含む核持ち込みを拒否してきた。しかし、実際には、核兵器をのせた船舶の日本の港への寄港をずっと黙認してきた。
つまり、アメリカ政府と日本政府は、核搭載船舶の寄港・領海通過について協議の対象外としたのです。
文書で双方が署名したというものはありません。そういうのはなく、「討論の記録」として添付書類にした。国民にバレないようにです。日本政府は文書がないものの、趣旨を徹底するため、歴代の首相や外務大臣にメモを見せて確認させている。
核兵器をのせた船舶の通過・一時寄港は一定期間内であれば、「持ち込み」にあたらないとするというのが日米政府の解釈です。
密約は短期的には摩擦を避け、柔軟な運用を可能にしたかもしれないが、その代償として否定や虚偽答弁に依存する体質を生み出す。そして、国民の政治への信頼を失わせる。
国民や国会に説明できない政策は、長期的には政治の正当性を損なうものである。
核兵器を持てば日本の平和と安全を維持できるなんて、まるで悪い幻想でしかありません。そんなのは高市政権が言いふらす、いつもの嘘です。私たち国民は高市首相に騙されないようにしなければいけません。
(2026年4月刊。1166円)


