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岩合光昭と動物園・水族館を歩く

カテゴリー:生物

著者  岩合 光昭 、 出版  朝日新聞出版
思わず笑ってしまったりする、楽しい写真集です。さすが、プロのカメラマンによるものですから動物の表情がとても豊かです。
 トップにあるのは、ご存知の旭山動物園です。私も行ったことがあります。豪快なホッキョクグマの泳ぎに圧倒され、地上17メートルの高さの綱渡りをするオランウータンも見ました。そして、例のペンギンです。残念ながら、冬ではなかったのでペンギンたちの行進をみることはできませんでした。
 パンダは上野動物園で昔みたことがあります。和歌山の動物園にはぜひ行ってみたいものです。
沖縄の美ら(ちゅら)海(うみ)水族館は、スケールの大きさに息を呑みます。ジンベエザメの泳ぐ姿をみていると、海中で遭遇したときの恐怖感を想像してしまいます。
 まだ行ったことのない動物園や水族館が全国に、こんなにあるのかと思うと、まだまだ時間を見つけて行かなくてはと、ひそかに決意したのでした。
 人の印象って、画像が流れていくビデオよりも瞬間を止めた「写真」のほうが記憶に長く残るもの。
 そうなんです。だから、私は「写真」派なのです。一覧性がありますしね・・・。
(2013年4月刊。1400円+税)

レンズが撮らえた幕末明治・日本紀行

カテゴリー:日本史(明治)

著者  岩下哲典・小沢健志 、 出版  山川出版社
幕末から明治にかけての日本各地の写真が集められています。京都の太奉映画村に江戸時代の町並みが再現されていますが、まるで同じ風景が写真で残されています。
 しかも、初めの写真はカラー写真になっていますので、とても生々しく再現されています。横浜弁天通り(横浜市中区)には、大八車が路上にありますが、なぜか人物がいません。
 東海道杉並木という写真には、カゴがきとともに人物がうっています。
 金沢八景の平湯湾の料亭から小舟が出ようとする、のどかな光景もあります。古き良き時代の雰囲気が、たしかにここにはあります。
 しかし、なんといっても圧巻は厚木宿(神奈川厚木市)の写真です。大通りの真ん中に水路が走り、手ぬぐいで頬がむりした男が縁にすわり込んでいます。
 道の両側には木造の店や家が建ち並んでいて、店先には男たちが立って話しています。中央には、火の見の木ばし子ご立ち、火事のときの半鐘を鳴らす仕掛けが見えます。浪人かヤクザの連中が向こうから一陣の風のなかにやって来そうな気配です。まるで時代劇の舞台です。
明治初めの浅草の芝居小屋の風景写真もあります。
白黒写真で興味深いのは熊本城の写真です。西南戦争の前の熊本城です。堂々たる天守閣が見えます。そして、城の石垣の高さには圧倒されてしまいます。
 明治初めにタイムスリップしてしまう貴重な写真集です。
(2011年12月刊。1600円+税)

ある奴隷少女に起こった出来事

カテゴリー:アメリカ

著者  ハリエット・アン・ジェイコブズ 、 出版  大和書房
アメリカで黒人奴隷制度が続いていたときの実話です。
 セクハラする白人の主人の手から逃れるため、別の白人男性の愛人となり、2人の子をもうけ、さらには奴隷主の家からひそかに脱出したあと、実はすぐ近くの知人の家の屋根裏部屋に7年間も潜伏していたのでした。7年後、ようやく北部へ逃れました。しかし、そこにも南部から追っ手が来て、気が安まることはありません。19世紀前半の話です。
 7年間の潜伏といっても22歳から29歳という、青春まっただなかを暗くて狭いところに閉じこもって生活していたわけです。周囲の支援体制があったからこそなしえたことでしょうが、それにしてもやっぱり本人の意思の強さには脱帽ですよね。
晴れて自由の身になったあと、南部に戻って、解放奴隷のための学校を設立したり活発な黒人活動家として過ごし、84歳に亡くなりました。
 ところで、この本は自費出版で世に出たものの、120年間も忘れられていたのが、1987年に再発見され、しかも事実に非常に忠実な自伝であることが証明されて、アメリカでベストセラーになったのでした。
2人の幼い子どもと、すぐ身近にいながら別々に生活する日々を7年間も続けたなんて、いやはや奴隷制度というのは、本当に非人間的なものですね。
 ただ、奴隷制度を利用する白人ばかりではなかったことが、少しは救いです。でも、結局、映画『リンカーン』にあったように南北戦争に突入してしまうわけです。
理性が暴力を打ち負かすには、多大なる犠牲が必要なのですね。人間社会の不条理を痛感します。読みやすい訳本になっています。
(2013年7月刊。1700円+税)

少年口伝隊1945

カテゴリー:日本史(戦後)

著者  井上 ひさし 、 出版  講談社
8月末に広島に出張してきました。昼食は、原爆ドームから遠くないところにある広島ガキ専門店でかきフライ定食(1000円)を食べました。真夏なのに、丸々肥えたカキを美味しくいただきました。夕食には広島名物のお好み焼きを買って、我が家で電子レンジで温めて食べました。期待以上の美味しさでした。
 この本は、そんな広島出張の車中で読んだのでした。平和公園、そして原爆ドームを訪れました。豪雨のあとでしたから、猛暑も少しやわらいでいて、助かりました。
 青空が裂けて、
 天地が砕けた。
 爆発から1秒あとの火の玉の温度は1万2000度だった。
太陽の表面温度は6000度だから、街の上に太陽が二つ並んだことになる。
 その熱で、地上のものは人間も鳥も虫も建物も、一瞬のうちに溶けてしまった。
 火泡を吹いて溶けてしまった。
火の玉からは爆風が吹き出した。音の2倍の速さで、畳一畳あたり10トンの圧力をかけて、地上のものを一気に吹き飛ばした。
 火の玉は殺人光線も出していた。内臓や血管や骨髄などの人体の身体のやわらかなところに、殺人光線がこっそり潜り込んでいた。
 このようにして・・・・数十秒のうちに広島市の半分が消え失せ、その日のうちに12万人が亡くなって、20万人の人々が傷ついた。このときから、漢字の広島は、カタカナのヒロシマになった。
 原爆病にかかって死ぬ人は・・・。
 まず、熱が出る。次に、だるくなる。それから、ものを食べなくなる。髪の毛がごそっと抜けて、からだじゅうが痒くなる。おしまいに足首に紫の斑点が出る。さもなければ、唇や歯茎から血が流れ出る。そうなると、人は死ぬ。
 私のもっとも尊敬する作家である井上ひさしの本です。それなりに井上ひさしの本は読んでいると自負していましたが、この本はまったく知りませんでした。小学高学年向きの本ということですが、大人が読んでいい本です。
(2013年6月刊。1300円+税)

TPP、アメリカ発、第3の構造改革

カテゴリー:社会

著者  萩原 伸次郎 、 出版  かもがわ出版
あれだけ大騒ぎした(している)TPPなのに、そして政府はすでに交渉をはじめているというのに、その交渉状況はまったく報道されません。もちろん、「秘密」にされているからなわけですから、それにしても、その「秘密」をかいくぐってでも状況と問題点を国民に知らせるのがマスコミの責務ではないでしょうか。ここは、マスコミの奮起を大いに期待したいところです。
 TPPでは、協定案ができるまで、交渉は秘密裡におこなわれるというのが、その特徴である。日本がTPP交渉参加国として協議にのぞんだとしても、日本が重要品目を守るのは難しい。安倍首相のいう「聖域」を設けるのは、不可能に近い。
 日本農業への壊滅的打撃が予想される。農水省の試算によると、農業生産の減少は
4.1兆円という規模になり、日本の食糧自給率は40%から14%に激減してしまう。
 とりわけ農業生産量の盛んな北海道のTPPによる影響はすさまじい。関税を撤廃したとき、12品目(米、小麦、乳製品、牛肉など)の影響は、産出高で4931億円の減少。地域経済の尊出額は7383億円、全農家戸数4万戸のうち2万3000戸が減少する。そして11万2000人の雇用が失われる。これでは、たまりませんね。
 アメリカは「ゆうちょ」「かんぽ」の完全民営化を主張してきた。今度、全国の郵便局がアフラックと提携するとのことですが、まさしくアメリカ資本が日本の郵便局を支配しようとしています。
 アメリカは、ことあるごとに医療分野での市場開放を要求している。
 TPPへの参加は、医薬品の関税撤廃だけでなく、医薬品市場の規制を取り払うことによる市場の自由化をもたらす。
 アメリカは、日本の薬価が諸外国に比較して安すぎると主張し、その要因が公的薬価制度にあると言い続けている。薬の自由市場が実現したら、日本の薬価は確実に値上がりする。そして、薬価制度の自由化は、公的保険制度を崩壊に導くことになる。
 薬価制度の自由化を通じて混合診療の全面解禁がおこなわれているのではないか。
 もし混合診療が解禁されたら、自由診療が保険診療を押しのけて大きく幅を利かせていくことになる。
 効能のある新しい薬は、高額所得者だけに使われるという医療格差が生み出される。医療法人に株式会社が導入され、薬価も自由市場によって決定され、製薬資本の思いのままに価格設定がなされる仕組みが幅を利かせていくようになる。そうなれば、日本の公的医療システムは崩壊してしまう。
 マイケル・ムーア監督の映画『シッコ』はアメリカの医療のすさまじさ(ひどさ)を思い知らせてくれました。アメリカは、金持ちは保険でもなんでも使えるけれど、中産階級以下は保険会社から切り捨てられてしまう冷酷な社会なのです。
 TPP推進は、多くの日本人にとって不幸を招くことがよく分かる本です。でも、残る大金持ちの日本人にだって、次はあなたに不幸がまわってくることを忘れてはいけません。いつまでも他人事(ひとごと)ではすまされるはずはありませんよ。TPP賛成の人は、この本を読んでぜひ考え直してほしいと思います。
(2013年5月刊。900円+税)

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