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クモはなぜ糸をつくるのか?

カテゴリー:生物

著者  キャサリン・クレイグ、レスリー・ブルネッタ 、 出版  丸善出版
クモは、その始祖から4億年の星霜を経て今日にいたった生き物である。
クモは4万種以上いる動物のなかで、一番多いのは昆虫、次がダニ、そして3番目はクモ。
クモの歴史は海から始まる。クモは、節足動物門の仲間だ。三葉虫も仲間になる。出糸突起は、水生節足動物の特徴を受け継いだもの。
クモは必ず糸をつくる。クモの一番の特徴は、なんといっても糸で円網をつくること。糸を作らなくては、クモとは言えない。クモが何万種に分かれていても、糸こそがクモをクモらしくするもの。
 クモが、さまざまな環境で生きられるのは、糸があったからこそ。クモは、進化するにつれて、糸の使い道を広げてきた。進化したクモは、いろいろに使える6種類以上の糸をつくる。
 クモの糸は、最強の化学繊維ケプラーよりも丈夫だ。糸はタンパク質だ。
 クモの糸のうち、しおり糸は、クモが懸垂下降するときに使う糸。地球上で、もっとも強靱な物質で、大きな力に耐え、莫大なエネルギーを吸収して壊れない。
 大瓶状腺糸の構成は、素晴らしい引っ張り応力に耐える能力を生む。引っ張り強さが大きいことから、クモが突然に下降したり、糸をすばやく上って戻ってくるのに耐えられる。
 すべてのクモの糸のタンパク質は、初めは液体だが、腺から導管を通って出糸突起に移動するあいだに導管のうち側の細胞が水を抜き取る。クモの体から出して空気に触れると、さらに水を失う。
 わが家の室内にも、自然が近いせいか、大小たくさんのクモが生息しています。毒蜘蛛はいないと思いますが、大きなクモを発見すると、大騒ぎして、外へ放り出します。殺したくはありません。これは芥川龍之介の『クモの糸』を読んで以来のことです。
 たくさんのクモの面白い生態を知ることのできる本でした。
(2013年6月刊。2300円+税)

私の従軍・中国戦線

カテゴリー:日本史(戦後)

著者  村瀬 守保 、 出版  日本機関紙出版センター
1937年(昭和12年)7月に招集されてから1940年12月に日本に帰国するまで、2年半のあいだ中国大陸を兵站自動車中隊の一員として転戦した兵士のとった写真です。
カメラ2台を持っていたので、中隊の非公式の写真班員として認められていた。召集兵ばかりの中隊だったので、古参兵によるいじめはなかった。
 天津市内に入ると、すっかりさびれていた。日本軍の爆撃で目ぼしい建物はほとんど崩壊していた。
 続いて上海へ。上海戦線は、日中両軍が2ヶ月間も死闘を尽くした激戦だった。
逃げ遅れた中国人の老人と子どもをとった写真があります。いかにも脅えた表情のあどけない子どもは痛々しいばかりです。キャプションには80にもなる老婆がつかまって、2人の日本兵に犯され、ケガをしたとあります。
南京大虐殺の現場をうつした写真も何枚かあります。今でも、「幻の大虐殺」などという日本人がいるのは信じられないことです。
 そのあと、有名な徐州作戦に参加しました。ところが、中国軍の主力は逃げたあと。待ちうけていたのは、待ち伏せ攻撃だった。
 狭い路地を通過しているときに、真ん中の車両が攻撃され、分断される。怪しい中国人は、日本刀の試し切りとして惨殺される。そんな写真が何枚もあります。
 漢口に行き、山西省へ八路軍の討伐に向かう。そして、従軍慰安婦に出会います。日本軍の公設の慰安所が各地にありました。河野談話を否定するなんて、歴史のねじ曲げでしかありません。
 ノモンハン戦線に向かって、もうダメかと思っていると、休戦協定が成立。これで、無事に日本へ生還できたのでした。
くっきり鮮明な戦場写真は、それだけ余計に戦争の悲惨さ、残酷さを浮きぼりしています。
(2005年3月刊。2400円+税)

オウム真理教秘録

カテゴリー:社会

著者  NHKスペシャル取材班 、 出版  文芸春秋
オウム真理教と言えば、私にとっては坂本堤弁護士一家殺害事件と地下鉄サリン事件を忘れるわけにはいきません。
 オウム真理教による坂本堤弁護士一家殺害事件が起きたのは、1989年11月のこと。私と同期で親しい岡田尚弁護士(同じ横浜法律事務所)と別れた日に一家で住んでいたアパートに踏み込まれて、妻子ともども殺害されてしまったのでした。
坂本弁護士夫妻は、全国クレジット・サラ金被害者交流集会で大牟田市に来たこともあり、面識ある関係だっただけに、その「救出」活動に私も少しばかり関わりました。殺害されたあとに「救出」というのも変ですが、どこかに「拉致・監禁」されているという話もあったのです。占い師というのは、まったくあてにならない存在だと改めて実感したのは、このときです。すべての「占い」が見事にはずれてしまいました。
 私は、事件の真相が見えていないとき、坂本弁護士一家の住んでいたアパートの見学会にも参加しました。フツーの庶民の住む、どこにでもあるアパートです。この前途有為な弁護士が殺害されたのには、マスコミの責任重大でした。テレビ局が軽率にもオウム真理教に事前に画像を見せてしまったのです。
 霞ヶ関サリン事件についても、その後まもなく日弁連の会議で上京した私にとって、他人事(ひとごと)ではありませんでした。
 そんな殺人集団の信者が今でも存在するなんて、とても信じられません。
 熊本の波野村(なみのむら)にオウム真理教の拠点がつくられようとした話も怖いですよ。ここに教団武装化の拠点をつくろうとしたというのです。上九一色村のサティアンと同じような施設がつくられようとしたわけです。本当に怖い話です。それでも、抵抗した村民は、まさしく生命がけでした。本当に偉いものです。
麻原は、不遇な生いたちや学業・事業での挫折から、強い被害妄想と誇大妄想があった。自らの不遇・挫折について、弾圧されるキリストのようなものとして、奇妙な形で正当化しようとした。そして、麻原には、不幸にも霊能的なカリスマ性があったため、誇大妄想が強まっていった。
未解決事件といえば、国松警察庁長官の襲撃犯も、結局、今のところ検挙されていません。ひところはオウム真理教の信者である、射撃のうまい警察官が犯人だとされていました。しかし、それも「無実」が確定して、まったく犯人の手がかりはありません。これでは世界一有能な日本の警察という看板が泣いてしまいますね・・・。
(2013年5月刊。1600円+税)

弁護士の仕事術Ⅱ

カテゴリー:司法

著者  藤井 篤 、 出版  日本加除出版
弁護士が仕事をするにあたって必須のことが縦横無尽に語り尽くされています。著者よりは少しだけ先輩になる私にも大変役に立つ内容です。もちろん、若手・中堅弁護士には大いに活用・実践してほしいものばかりです。
 忘れないうちに書いておきますと、私が早速とりいれようと思ったのは、交渉事件について、当初の委任契約書において、数ヶ月という期限を切っておくべきだという指摘です。これは本当にそうしたらよかったと思いました。
 ヤミ金からの取り立て防止の案件、また消滅時効を主張する案件では、せいぜい1~2ヶ月がヤマで、あとはまず動きがありません。だから、3~6ヶ月で動きがなかったら、事件は終了したものとみなすという条項を付しておいたら、安心して既済事件として処理することができるのです。これまで、私はその条項がないばかりに、1年も2年もたって、みなし既済としていました。
 この本は、東京二弁のフロンティア基金法律事務所の初代所長を8年もつとめた著者による、若手弁護士育成の経験をふまえたマニュアルを集大成したものですから、とにかく、明日と言わず今日からすぐ使える実践的な内容です。
 「正義を分からせたい」と主張する請求は、よくない。
 「とれたお金は全部、弁護士にやってよい。全額寄付する」という言葉を、額面どおりに受けとってはいけない。
 本当に、そのとおりです。私も、何度、このようなセリフを聞かされたことでしょうか・・・。そんなことを言う人は、決して信用してはいけないことを何度も身にしみました。
自分がやれそうもなかったら、他の弁護士を紹介する。
そうなんです。私は、出張仕事は受けないことにしています。その地の弁護士を紹介するのです。同じように、私の活動する地域で起きた事件でしたら、全国各地の弁護士から紹介してもらっています。このようにして、弁護士からの紹介が3割あるという一般統計もあるくらいです。
必要もないのに依頼者の家や会社に出かけない。仕事の話は法律事務所でするのが基本。依頼者に弁護士を自宅や会社に呼びつけて何かやってもらう。この「悪習」を作らないのは大切なこと。対等の関係をあくまで維持する必要があります。安くみられてはいけません。
 また、依頼者を電話で説得しようとするのもいけない。説得は、直接、面談してすべきもの。そして、それも1時間以内にとどめる。そのときに説得できなければ、しばらくあいだをあけて、次回に続行する。
 裁判の報告はA4版ペーパーで1枚くらいで簡潔にする。電話ですまさない方がいい。私は、メールやFAXは使いません。なぜなら、郵便で依頼者に届くまでに、そして、その返事が来るまでに別の仕事ができるからです。メールやFAXだと、あまりに早く応答が来てしまい、他の仕事にとりかかれません。なんでも早ければいいというものではありません。時間を考えた優先順位というものがあるのです。
 うんうん、そうだよね・・・と、何度もうなずきながら読みすすめていきました。
 7冊シリーズの2冊目の本です。本になる前から、このマニュアルの存在を知っていました。多くの弁護士の共有財産にしたい内容が満載です。
(2013年7月刊。2200円+税)

「市場と権力」

カテゴリー:社会

著者  佐々木 実 、 出版  講談社
竹中平蔵という人物の本性を、よくよく暴いた本です。経済学者というのが、アメリカも日本も、これほどまでに世の中の経済を分析すると称して、実は自分の金もうけに熱中しているのか、その実態を知って愕然としました。
アメリカの名だたる経済学者が、結局、投資顧問とか証券会社に取り入って超高給とりになっているのは、アメリカのことだから、そんなものかと思いました。でも、竹中平蔵をはじめとする日本の高名な経済学者も結局、同じだったのですね。これには、いささか幻滅させられました。もちろん、例外もあるのでしょうが、東大教授の肩書きでTPP推進の弁を述べる人は、ほとんどこれにあてはまるのでしょうね。
竹中平蔵は、超高級マンションを東京都内にいくつも所有しているとのこと。本人は、本がたくさん売れて、その印税で購入したと弁明していますが、それでは説明がつきません。あちこちの大会社の取締報酬が超高額なのです。言わば、マッチポンプのようなものです。政府の中枢に食い込んで、それをすべて自分自身の金もうけに結びつけるのです。そのくせ、日本に本当に貧乏人なんかいるのですか・・・、と平然と問い返すのです。その厚顔無恥には、呆れるというより、怒りすら覚えます。許せません。
 日本で非正規社員が増えたのは、正社員が保護されすぎているためだからだと竹中平蔵は言う。とんでもありません。正社員を既得権益者として竹中平蔵は指弾している。「働き方の自由」を実現するため、解雇規制の緩和が必要なのだと竹中平蔵は言う。
 フツーの人々の生活の安定なんて、竹中平蔵の眼中にはないのですね・・・。
竹中平蔵は高校生のころ、民青の一員だった。もちろん、民青というのは、日本民主青年同盟、つまり日本共産党のシンパの組織です。ところが、一橋大学に入る前のころから、竹中平蔵は民青と訣別し、一路、金もうけの道にまっしぐらです。
そして、共同研究の成果を竹中平蔵一人の著者にしても平気です。共著にすると業績としての価値が低くなるからです。嫌ですね。こんな品性下劣の人とは一緒にいたくありませんよね。
竹中平蔵の所得は、2000年ころ、申告納税額が2000万円ほどなので、9000万円ほどと思われる。これは、政策コンサルタントとして稼いだものだろう。うひゃあ、すごいですね。
 しかも、竹中平蔵は、日本人として支払うべき住民税を免れるため、アメリカに居住しているとして、日本での住民登録の抹消と再登録を繰り返した。
 いやはや、あまりにも「せこい」手法に、呆れかえってしまいます。これが高名な経済学者のすすめる「節税」だなんて・・・。
 そして、竹中平蔵は、内閣・官房機密費(2000万円)を使って、アメリカに留学しようとしたのです。月1億円は内閣が自由に使えるという例の「ヤミ支出」です。竹中平蔵の腹黒さも、ここまでくると、「サイテーの男」としか言いようがありません。
 竹中平蔵は、企業人との出会いを、たちまち、自らのビジネスチャンスに変えてしまう。
 竹中平蔵は、言論の基本ルールを逸脱しているため、言論戦に敗れることがない。これって、「嘘八百」ばかりというころですよね。
竹中平蔵は、自民党政権の中枢に食い込む一方で、反対党の民主党(鳩山)にも手をのばしていた。そして、自民党のなかでも、次の政権を狙いそうな政治家にも・・・。
 これって、あまりにも見えすいていますよね。だから、小泉純一郎には気に入られても、次の麻生からは嫌われたようです。こんな低レベルの男によって日本の経済政策が動かされていたのかと思うと、寒々とした気分になります。
 竹中平蔵と同じレベルの企業家が宮内義彦(オリックス)です。自分のことしか念頭にない人たちによって、日本という国がダメにされるなんて我慢がなりません。
 企業が金もうけすること自体は、私だって悪いことだとは思いません。それでも、それは、従業員をふくめて、みんなの幸せにつながるからいいのではありませんか・・・。自分と自分のファミリーだけよければ、あとはどうなっても「自己責任」だなんて、とんでもないことですよね。読んでいて、思わず腹の立つことの多い本でした。
(2013年4月刊。1900円+税)

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