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十代のきみたちへ

カテゴリー:司法

著者  日野原 重明 、 出版  冨山房インターナショナル
 ぜひ読んでほしい憲法の本です。
 102歳になる現役の医師が、憲法を、日本国憲法の意義をやさしい言葉で、平明にとき明かしています。もちろん、読み手を十代の読者として、です。
 著者の日常は、百歳をこえた人間にしては、けた外れに忙しく、時間がひどく足りないという思いで、毎日を過ごしている。
 なぜ、医師なのに憲法に興味をもったのか?
 それは、「いのちを守る」という医師の仕事に、日本の憲法が深い関係を持っていると思ったから。憲法は国民のいのちを守るはたらきをしている。ふつうの法律は、人々や守るべきルールを定めている。憲法は、政治家や役人が、つまり日本のえらい人たちが守るべきことを決めている。これが、ふつうの法律と憲法とが大きく違うところ。
 著者は102歳まで生きてきたが、まだまだ毎日が勉強の連続。人間は死ぬまで勉強が続く。この点については、65歳になる私も、まったく同感です。法律論も、社会の現実も、本当に知らないことだらけです。
 ふつうの法律は、ルールとそれを破ったことについての罰則が書かれている。しかし、憲法には、罰則はない。
 日本国憲法は、「戦争をしない」「軍隊は持たない」と明記しているので、自衛隊は戦争の手伝いはできても、アメリカ軍と一緒になって戦うことはできない。それが不満な人たちが、憲法を改正しようと言っている。
 そのとおりです。要するに、日本が昔のように海外に出かけていって戦争しようという人が憲法改正を唱えているのです。そして、その人たちは確信犯ですから、口あたりのいいコトバで善良な人々をごまかして、賛同者に仕立てあげます。そんな人たちが、海外の軍隊に攻められてきたとき、丸腰でどうするんだとヒステリックに叫ぶのです。まるで、集団ヒステリーです。そこには、完全な思考停止があります。そんな近親増悪のような状況にならないようにするのが、政治であり、外交ではありませんか・・・。
 気をつけなければいけないのは、「自衛のための戦争」というのは、いくらでも広く考えることができるということ。
 これまで、世界の歴史において無数の戦争があったが、その多くはもっともらしい理由ではじめられている。
 集団的自衛権にしても、線引きがむずしくて、戦争の原因になりかねない。人類の歴史のなかで、争いが物事を解決した例はない。
 世の中に、本当の「いますぐ」はない。せっかちになりがちな気持ちを落ち着かせ、待っていれば、必ず話し合いの糸口はつかめるものなのだ。
 102歳の医師が、こんなにも平明な言葉で、しかも十代の読者を意識して憲法を語るなんて、本当に驚き、かつ尊敬というより畏敬の念で一杯です。100頁ほどの本です。ぜひ、あなたも手にとってお読みください。
(2014年5月刊。1100円+税)

約束の海

カテゴリー:社会

著者  山崎 豊子 、 出版  新潮社
 海上自衛隊、そして潜水艦の乗員が主人公の話です。
 東京湾内で潜水艦が釣り船と衝突し、多くの死者を出してしまうのです。さあ、どうなるでしょうか・・・。
潜水艦乗りの仕事は、6時間毎の三交代制。深い海の中で、長いときには1ヵ月以上も潜ったまま作戦行動に従事するには、タフな神経の持ち主でなければつとまらない。身体面はもちろん、心理適性検査をくぐり抜けた者だけが選択される。
 潜水艦の乗員は、水雷科、船務科、航海科、機関科、補給科、衛生科のいずれかに属している。そして潜水艦の運航とは関わりのない補給科の庶務員や経理員もふくめて全員が三つの哨戒直(ちょく)グループのどれかに属し、幹部のつとめる哨戒長のもと、任務につく。潜水艦の食事は6時間の哨戒直のローテーションにあわせて、1日4回で回ってくる。朝の6時、夜の6時は重めの食事、正午と零時は軽めのメニューが基本だ。アルコール禁止の船内では、食べることだけが楽しみだ。
 「ようそろ」という掛け声を感じにすると、宜候。「テー」は撃て、のこと。
潜水艦では、真水は海水を蒸留してつくる。その熱源である電池の減りを少しでも防ぐため、シャワーの回数は3日に一度あれば良しとしなければならない生活が続く。
 乗員はスニーカーで、リノリウム張りの床を音もなく歩く。潜水艦は、いわば海の忍者だ。だから、自ら音を発するのは厳禁。
静かに深く潜航して、不審な音を数十キロ以上離れたところから拾い、そこに忍び寄って音源を確認する。この警戒監視が、平時における潜水艦の最大の任務である。
 海上自衛隊は16隻の潜水艦を有しているが、その三分の一は修理に、また三分の一は、基本トレーニングにあたっており、出動するのは、残る三分の一でしかない。これでは、足りなさすぎる。
 長く潜水艦に乗っていた乗員には、ディーゼル・スメルがする。ディーゼル・オイルと艦内の生活臭が混ざった臭いだ。
潜水艦乗員の給与は高い。航海手当のほか、俸給の4割もの潜水艦手当という、いわば危険手当が上乗せされる。だから、手取りは月26万円ほど。
 潜水艦乗りの身辺調査は厳しい。機密保持にシビアなだけ、徹底的に調べられる。本人、親兄弟はもとより、親密に交際している友人にも調査が及ぶ。外国人と抜き差しならぬ関係にある場合には潜水艦乗りから、外される。
 自衛隊の訓練は、基本的には人を殺しことを目的としている。潜水艦乗りは、不測の事態に備え、全員、遺書が要求される。
山崎豊子が亡くなったことにより「約束の海」は第一部だけで終了してしまったのは残念です。第二部、第三部と続く計画だったようです。丹念な取材による貴重な本だと思います。
(2014年2月刊。1700円+税)

検証・真珠湾の謎と真実

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

著者  秦 郁彦 、 出版  中公文庫
 日本軍の真珠湾攻撃が成功したことについて、当時のアメリカ大統領であるルーズベルト陰謀説というのがあります。要するに、ルーズベルト大統領は日本軍の真珠湾攻撃を予知していながら、わざと初戦で負けてアメリカ国民を対日戦争に駆り立てたというものです。もっというと、ルーズベルトは好戦主義者、イギリスを助け、ドイツと戦争をするために日本との戦争を始めたかったということです。でも、それはありえないことだったと思います。
 そして、日本では、太平洋戦争を美化しようとする人々は、「ABCD包囲陣」なるものがあって、それと日本は戦わざるをえなかったと言いたいようです。
 しかし、「ABCD包囲陣」なるものの実態はなく、戦前の日本の新聞がつくり出した造語にすぎない。ましてや、ルーズベルトの陰謀ではない。それは、太平洋戦争が植民地解放のための戦争であったというのと同じである。
 真珠湾攻撃は、史上まれにみる希有壮大な大作戦であり、このような戦術を実行する人間がまさか日本にいるなどとは、アメリカの当局者たちは、ルーズベルトをふくめ誰も考えていなかった。
 山本五十六というのは、それだけの大戦術家だった。もし、あらかじめアメリカに発見され、待ち構えていたら、悲惨な敗北になった可能性のある大博打(ばくち)だった。その背景としては、アメリカは日本の戦力を過小評価していたという油断があった。
 日本海軍は最後までアメリカ軍の暗号が解読できなかった。これに対して、アメリカ軍は日本軍の暗号は1940年には完全に解読していた。日本外務省のパープル電報は、アメリカ軍によって、ほとんど解読されていた。
 12月5日、アメリカ軍の情報部は、日本はアメリカを攻撃しない、タイの占領の可能性があると報告した。
 開戦後の半年たって起きたミッドウェー海戦において、日本軍は秘密保全と敵情把握を軽視し、逆に日本の暗号を解読したアメリカ軍は日本艦隊を待ち伏せし、日本軍の大敗、アメリカの大勝利となった。
アメリカは、真珠湾では失敗したが、その後は失敗の教訓を生かした。日本軍は、真珠湾で成功したが、勝って兜の緒を締めよという先人の教えを忘れ、大敗したのだった。
 陰謀史観というものがありますが、この本を読むと、なるほど、ごまかされてはいけないものだと思いました。
(2011年11月刊。686円+税)

脳の中の時間旅行

カテゴリー:人間

著者  クラウディア・ハモンド 、 出版  インターシフト
 脳と時間の関係の関係について考察した、楽しい本です。
 楽しいときは、本当に時間が飛んでいく。生命の危険を感じているときは、時間の流れが遅くなるように感じる。
 休暇は速くすぎていくのに、あとでは長く続いたように感じる。これをホリデー・パラドックスという。
キューバにある、アメリカのグアンタナモ収容所では、食事、睡眠、尋問の時間を決めず、予測できないようにしている。これによって囚人が時間を数えようとする気持ちをくじき、不安を感じさせるためだ。
 決まり切った日課は安心感を与えてくれる。その重要性は、高く、それに反するだけで時間の概念が乱れ、極端な場合には恐怖をひきおこす。
人間の自殺率は春が高い。春の訪れによって、陰うつな気分から救われるという期待が裏切られ、深い絶望に見舞われるからではないか。
 野球やサッカーの試合を見ていて、ひいきするチームが勝っているか負けているかで、時間の流れが違って感じられる。負けているときの残り時間は短く感じられる。逆に勝っているときには、時間のたつのがひどく遅く、相手チームには得点のチャンスが恵まれているような気分がする。このように、感情によって時間はゆがむ。
うつ病の症状が出ているときには、過去と現在だけが存在し、未来、とりわけ希望のある未来を想像できなくなる。うつ病の人にとって、時間は半分のスピードで流れている。
 退屈というのは、時間の流れのそのものに注意を向けたときに起こる。
人間にとっての一瞬とは、2秒から3秒を意味する。3秒という時間は、メモしたり長期記憶にゆだねたりせずに、何かを記憶しておける時間である。
 切断された死体の映像を見たり、悲惨なイメージに直面すると、身体と頭で闘争・逃走本能がはたらき、内なる時計の進み方が速くなり、パルスが増大するため、時間の流れが遅くなるように思える。
 年齢(とし)をとるにつれて時間の流れが速くなるという感覚がある。いったい、なぜなのか・・・。多様で、興味深い経験にみちた時間は早くすぎるように、感じられる。しかし、思い返すと、長く感じられる。子どもの毎日は、新しい経験に満ちている。子どもの生活には、全体として大人の休日と同じように面白いことに溢れていて、新しい記憶がたくさんあるため、あとで振り返ると、1ヵ月、1年がひきのばされたように感じる。
だから、できるだけ行動のバラエティを増やす。目新しくて、今が楽しいと思える生活をつくれば、あとで振り返ったときに、長かったと感じられる。
時間が早く過ぎていくのは、多忙で充実した生活を送っている証拠だ。楽しいときほど、時間が短く思える。時間が早く過ぎるのを止めるには、予定を積極的に入れ、テレビは覚えていられる時間だけみるようにすることだ。
 何かに没頭すればするほど、時間は速く過ぎていく。
 なーるほど、人間の脳と時間との関わりが少し分かりました。
(2014年3月刊。2100円+税)
 梅雨入りしてから、なぜか雨らしい雨が降りません。よそでは大雨のようですが・・・。田植えの準備はすすんでいますので、雨を待つ心境です。
 日曜日は恒例のフランス語検定試験を受けました。一級ですので、合格するはずもありませんが、ボケ防止のためにもチャレンジしています。もう10年以上にもなりますが、単語の忘れはひどいものです。新鮮な気持ちで毎日NHKのラジオ講座を書きとりし、なるべく暗誦するようにしています。
 試験は惨々でした。長文読解も前半はさっぱり、後半はなんとか。書きとりと聞きとりは、まあまあでした。仏作文は適当にごまかしたのですが・・・。甘あまの自己採点で55点(150点満点)です。11月は準一級です。がんばります。

いちえふ(1)

カテゴリー:社会

著者  竜田 一人 、 出版  講談社
 福島第一原発で働いている現役作業員がマンガで仕事を紹介しています。
 写真より、もっと臨場感がある気がします。現場作業員が実際に働くまでには、毎日、大変な手順をかけることを改めて知りました。頭から靴まで、全身を汚染からガードするために完全防備するのです。これでは息苦しくてたまりません。夏には、炎暑のため、汗だくだくになるそうです。
 そして、ヘルメットをかぶると、たとえば鼻の先がかゆくても、かけないのです。ガマンするしかありません。これって辛いですよね・・・。
 そして、この本では、福島第一原発の作業員になる大変さも紹介されています。
 ハローワークには、たくさんの求人広告が出されているようです。ところが、そのなかにはインチキ会社も混じっているようなのです。そして、運良く採用されたとしても、すぐに原発の現場作業に入れるとは限りません。
 なにしろ、東電の下の下の下の下の下の下あたりの会社に入ることになり、日給2万円のはずが、日給7千円とかになってしまうのです。そして、そこから宿舎の費用や弁当代が差し引かれるというのです。現場作業では熱中症にかかったり、いろいろ大変のようです。マンガで、その大変さがリアルに紹介されています。イメージとして、よく伝わってきます。
 「原発事故は収拾した」なんていう政府発表なんて、まったくのインチキだと言うことも実感できるマンガです。
 現場作業員の実際が絵に描かれていますので、原発事故の対応の全体像が描かれているわけではありません。だから、その恐ろしさが十分に伝わってこないという恨みがないではありません。それでも、暑さのなかでの全身防護服での作業をしていることの大変さ自体は、よく伝わってきます。
 日本人、とりわけ原発輸出に賛成している人には、必見のマンガなのではないでしょうか。
 あなたにも、この原発災害の復旧現場で働く覚悟がありますか?
 私は申し訳ありませんが、その覚悟はありません。ただただ、原発の即時廃止に向けての工程表を一刻も早く確立すべきだと主張するばかりです。
(2014年1月刊。580円+税)

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