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憎しみに未来はない

カテゴリー:中国

著者  馬 立誠 、 出版  岩波書店
 最近の週刊誌に、日本と中国が、もし戦争したら、どちらが勝つかという特集が組まれています。そこでは、戦争は、まるで他人事(ひとごと)、パソコンの画面上だけのように論じられているのに驚き、かつ、呆れます。
 しかし、局地的な戦争が全面戦争にならないという保障なんて、まったくありませんよね。身近な家族が殺され、殺人マシーンに仕立てあげられるなんて、ちょっと考えただけでも身震いするほど、恐ろしいことではないでしょうか・・・。売れるんだったら何でも書いていいなんて、ちょっとひどすぎると思います。
 安倍首相の言う「積極的平和主義」なるものは、武力で「敵」をおさえつけるということです。そして、「集団的自衛権」の行使というのは、アメリカ軍と一緒になって、世界のどこへでも、日本が戦争をしに出かけるということを意味します。戦争が身近に迫ってくるのです。そこには「限定」など出来るものではありません。
 つい先日、安倍首相は武器輸出三原則を緩和してしまいました。兵器をどんどんつくってもうけよう。そのためには、世界各地に「紛争」がおきてほしいということです。子どものいない安倍首相はちっとも悩まないのかもしれません。でも、我が子が殺され、また外国へ殺しに出かけるなんて、その恐ろしさに、私は身が震えてしまいます。決して、戦争をもて遊んではいけません。それこそ、平和を生命がけで守りたいと思います。安倍首相には、一刻も早く「病気」で退陣してほしいものです。
 著者は、中日関係には新思考が必要だとメディアで提起した。すると、中国のネット上で、民族の裏切り者とか、走狗という言葉があふれた。
 中国のナショナリズムも警戒を要すると思います。でも、中国を責める前に、日本の異常さが突出していることを、もっと日本人は自覚すべきだと思います。
 ナショナリズムの熱狂は、一部のメディアが無責任にあおりたてることと大きな関係がある。一部のメディアは、商業的な利益のために、感情的で低俗な市場のニーズに迎合し、良識や善悪の最低ラインにまで墜落した。一斉に騒ぎたて、センセーショナルに過熱報道し、人々の目を惹きつける。そして、のぼせや高熱をひきおこし、世論の環境を悪化させた。
 アジアに身を置く世界の次男坊と三男坊とが武力対決すれば、まさにアジアの悲劇だ。そして、両国の争いは長男坊が世界の覇者としての地位をいよいよ堅固なものにするのを手助けするようなもの。
 釣魚島の問題は、中日関係の大局でもなければ、中心的な問題でもない。
 中日関係は、相互に影響しあうプロセスである。片方の手だけでは拍手ができないように、日本にも同じように対中関係の新思考が必要だ。
 中国とアメリカが敵対しないという状況で、日本がアメリカに追随することは、中国にとって対立面とはならず、日本とアメリカの同盟は中日間における共通利益の追求を妨げるものではない。中米関係の発展と中日関係の発展は、同時に行っても、互いに矛盾はしない。
 憎しみは毒薬だ。人々の智力を害する毒薬であり、国家の智力を害する毒薬でもある。寛容は、傷跡と人間性を癒す良薬だ。国家と個人を問わず、良薬なのである。
 中日韓は、すでに協力して経済発展をすすめつつあり、世界最強の経済体となる可能性がある。これは、アメリカにとってあまりにも大きな脅威であり、アメリカが隅に追いやられるかもしれず、アメリカにとって決して目にしたくない事態だ。だからこそ、この二つの国が戦うことは、アメリカにとって非常に有利なのだ。
 日本では、何世代にもわたって、「日本が強く、中国が弱い」ことに慣れていたので、中国人を見下げている。第二次大戦での敗戦も、それはアメリカ人に負けたのであって、中国人に負けたのではないと考えている。ところが、このごろ中国の経済力は日本を追い越し、その差はますます大きくなっている。これは日本にとってきわめて強烈な刺激である。
日本と中国の関係を再考させられる、中国人ジャーナリストの鋭い指摘にみちた本です。
(2014年1月刊。2800円+税)

犬が私たちをパートナーに選んだわけ

カテゴリー:生物

著者  ジョン・ホーマンズ 、 出版  阪急コミュニケーションズ
 犬派の私ですから、このタイトルなら読まざるをえません。
 アメリカの犬は、1996年に5300万頭だったが、2010年には7700万頭になった。
 ペット用品は、年商380億ドルという一大産業に成長した。
飼い主のほとんどは、犬に話しかけることがある。81%は犬を家族の一員とみなしており、犬のなかには飼い主と同じベッドで寝る特権まで享受している。
犬は、人間がビクトリア時代に「発明」した文化の産物である。
 犬は全世界に3億頭いる。人間は70億人。牛と羊は、それぞれ13億頭いる。
 犬の経済的貢献度はほとんどゼロに等しい。犬の社会性は、人間自身の性癖を繁栄している可能性がある。
 仕事から帰ったときに出迎えてくれる犬がいるのは、誰にとってもうれしいものだ。
 犬が人間を注視することをいわない性質は、犬とオオカミの基本的な違いのひとつだ。
 犬には人間に敏感に反応する驚くべき能力がある。
 犬は、どんなときでも人間に支援されることをいとわない。その典型が、冷蔵庫をじっと見つめてから、飼い主の顔を振り返ること。
 犬は、基本的に自分で自分を家畜化していった。犬の家畜化が起きたのは、1万5000年前にすぎない。そして、犬の遺伝的多様性は東アジアでもっとも大きい。
 犬の最大の強みは、決して人間の助けを断らないことにある。
犬がこの瞬間を精一杯生きようとする姿は、人間の心を打たずにはおかない。どんなに困難な状況に置かれても、犬は快活さを失わず、新たな体験に自ら進んで飛び込んでいく。
 多くの遺跡で、犬は人間と同じように埋葬されており、犬が死後も「名誉人類」として扱われていたことを意味する。
犬をもう一度、飼ってみたいと思いつつ、旅行優先で断念している私でした。
(2014年2月刊。2500円+税)
 天神の映画館「KBCシネマ」で『チスル』をみました。「済洲島4.3事件」を映画化したものです。
 1948年4月3日、済洲島で300人ほどの武装隊が警察署(支所)を一斉攻撃してはじまった惨劇です。韓国軍がアメリカ軍をバックとしてゲリラ部隊の鎮圧作戦に乗り出し、以来、完了するまでの7年間に3万人の島民が犠牲になりました。その大半は政治やイデオロギーとは無縁の島民でした。済洲島から日本へ避難した人も多く、そのほとんどが大阪にたどり着いています。
 この映画では、3万人の虐殺場面が出てくることはほとんどありません。島内を逃げまとう島民の姿が静かに描かれ、鎮圧する側の部隊の兵士たちの葛藤も浮きぼりにされています。
 いまや年間観光客が1000万人をこえる済洲島ですが、65年前にこんな悲劇があったことを思い返すのは決して無意味なことではありません。
 情感あふれるシーンに見入るばかりでした。

ゼロ

カテゴリー:社会

著者  堀江 貴文 、 出版  ダイヤモンド社
 刑務所に一度入った人はたいてい謙虚になり、人生の意義を考え直すものです。
 同じ福岡県に生まれた著者の場合は、どうだったのか。ちょっとした好奇心から読んでみました。
 素直に自分の人生を振り返っているな、というのが私の第一印象です。
 親のこと、勉強のこと、塾のことなど、読んでいて、なるほどそうだなと思いました。
 そして、大学での寮生活は、私のころと似たようなものだと思ってしまいました。私は6人部屋でした。私はマージャンはしませんでした。廊下では毎晩どこかでやっていましたが・・・。そして、先輩がふらりと部屋に入ってくるのが寮でした。それが門限もない、完全な自治寮の良さでした。私は、そこで、人間づきあいの基本を学ぶことができたのです。本当に幸いでした。
 2011年6月末、著者は長野刑務所に収監された。刑期は2年6ヵ月。そして、刑務所のなかで40歳の誕生日を迎えた。
中高時代も、大学生時代も完全に落ちこぼれていた。
 ええーっ、そ、そうなの・・・と驚きますよね。久留米大学附設高校という名だたる受験高から東大に入っているのに、落ちこぼれだなんて・・・。
 大学生時代は、地味でひねくれた田舎者でしかなかった。私も同じ福岡県出身で、方言まる出しで、恥ずかしい思いをしました。ただし、地味だとは思いますが、「ひねくれた」という点は私と同じではありません。
 附設高校が男子校なのが良くなかったようです。そして、著者は、子どものころ寂しい思いをしていたようです。家庭の温もりがほしかったというのです。一人っ子なのに、それほど温もりのある家庭生活ではなかったようなのです。お気の毒としか言いようがありません。厳格で独裁者の母親を持つと、その子どもは大変なんですね・・・。
 著者は、子どものころ、百科事典を読みふけっていたといいます。
 私の家には百科事典はありませんでした。私は、もっぱら学校の図書館で本を借りて読んでいました。
 著者は、中学2年生のとき、パソコンのプログラミングのアルバイトをして10万円を報酬として受けとったとのこと。これはすごいです。私なんかとてもできないことです。やっぱり性にあっていたのでしょうね。ところが、成績の方は反比例してドン尻になってしまったのでした。202人のうち199番というから、最悪ですね。
 しかし、親元から脱出するには東大に入るしかない。そこで一大決心をするのです。私の場合も似たようなものです。田舎町を抜け出すには、東京に行くには東大だと思いました。
 著者は、受験英語とは英単語をきわめることに尽きると結論し、完全な丸暗記に挑んで、達成したのでした。
私は、部厚い英和辞典(サイトウ)を一冊、全頁、読破しました。これで英語への怖さを払拭しました。
著者が大きく変身したのは、大学生時代に経験したヒッチハイクの旅。これは、私も高校生のときに挑戦しました。阿蘇、大分そして北九州をまわったことを覚えています。
経験とは、経過した時間ではなく、自らが足を踏み出した歩数によってカウントされていくもの。日本全国をヒッチハイクしてまわったことによって、著者はもう見知らぬ人に声をかけるのも怖くない、交渉だってうまくできるという自信をつけたのでした。
私の場合は、それは、セツルメント・サークルで身につけました。
感情や感性よりも理性を大切にしているのは自分が天才でないことを正面から受け入れているから。自分が天才ではないからこそ、会社をつくる。優秀な仲間を集め、自分に欠けた部分を補ってもらう。そして、一緒に大きな夢を実現したい。
最後まで素直に読める本でした。
(2014年1月刊。1400円+税)

ネット右翼の逆襲

カテゴリー:社会

著者  古谷 経衡 、 出版  総和社
 私はネット社会に無縁に生きていますし、これからも無縁でありたいと願っています。ですから、「ネット右翼」なるものが、インターネット上で幅をきかしていても、なんということもありません。でも、「ネット人間」にとっては大変なことなんだと思います。
 この本は、「ネット右翼」のイメージが、必ずしもあたっていないことを「実証」しています。その限りでは、なーるほど、と思いました。
「ネット右翼」のイメージの特長は、①学歴における低学歴、②年収における低所得、③社会的地位・立場における底辺、④外見上の底辺。
 ところで、麻生太郎・元首相が、マンガをよく読み、アキハバラおたくだということは、よく知られています。結局、彼は、知性がない(乏しい)という一言に尽きるのではないでしょうか。そんな人に日本を動かしてほしくはありません。ひっこんでいてください。そう叫びたくなります。
 「ネトウヨ」(ネット右翼)は、年収200万円以下としたのは、小林よしのりだった。
 しかし、調査してみると、「ネトウヨ」の最終学歴は、大学、大学院卒業が63%をこえている。そして、年収も200万円以下というより400万円台にある。
このように「ネトウヨ」の実態は、一般のイメージとはかけ離れている。実際には、東京や大阪に住む、社会的にはミドルクラス以上、つまり典型的な中産階級で、年齢としては40歳より前、社会人としては成熟した、金銭的に余裕のある人々が多かった。
 「ネトウヨ」の怒りの矛先は、韓国であると同時に日本の既成大手メディアにも向けられている。
 冷戦時代において、日本人の韓国観は、保守層は一貫して融和的であり、左翼・リベラル側が一方的に嫌韓(辛辣)だった。
 なーるほど、たしかに、そうでしたね。だって、あのころ、韓国では、ずっと軍事独裁政権でしたし、ベトナム侵略戦争にも積極的に加担していましたからね・・・。
 「ネット右翼」は、日本人の悪いところを増幅してしまっているというのが、悲しい現実だと思います。早いうちに、そのことに気づいてくれることを私は願います。
(2013年6月刊。1500円+税)

六つの瞳の光に輝らされて

カテゴリー:人間

著者  のがみ ふみよ 、 出版  鉄人社
 三つ子を産んだ母親が、そのうち二人が障害児だったという話を、明るく爽やかに紹介している本です。
 すごいお母さんだと驚嘆しました。なにより、明るい話として展開していくので救われます。実際には、暗く、おちこむ場面も多々あったと思うのですが、いつも前向きに挑戦して、乗りこえていったのですね。すごいです。
 そして、それを何より実証しているのが、本の表紙になっている一家四人の笑顔あふれる写真です。
 三つ子のうち、一人だけ健康児として育った「やすき」君を私はたたえたい気分になりました。母親が二人の障害児にかかりきりになって、ややもすれば寂しい気分になりがちのところをしっかり母親について、それを支えていったのはすごいです。
 三つ子は、男の子二人と女の子一人です。女の子はおしゃれに夢中の中学生。字を書く手が不自由でも、勉強大好き人間なのです。
 車椅子でしか動けない男の子は、実は記憶力抜群なのでした。
 母親は、なんとモデルとして活躍し、ヨガ教室を主宰したり、障がい児の施設を開設したり、そのパワフルさに圧倒されます。
 残念なことに、三つ子の父親が話しに登場しません。離婚したのです。父親の悪口はまったく出てきません。ただ、父親は三人の子どもと、どのように関わっていたのでしょうか。気になるところではあります。
 思春期まっさかりの三つ子とともに歩む若き母親の歩みを、心から応援します。無理なく、引き続きがんばってくださいね。
(2014年1月刊。1300円+税)

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