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食品の裏側2

カテゴリー:社会

著者  安部 司 、 出版  東洋経済新報社
 私の法律事務所の隣にもコンビニがあります。もとはガソリンスタンドでしたが、倒産して久しく空き地になっていたところ、その周囲の家屋も追い出して広大な駐車場付きのコンビニになってしまいました。
 私は滅多に利用しませんが、所員は昼食の弁当買いなど、頻繁に利用しています。
 そのコンビニで売られているハンバーグ弁当のハンバーグが、実は、牛肉ではないというのです。衝撃的な内容です。
見た目には、デミグラスソースのかかったハンバーグ。しかし、本物のデミグラスソースはおろか、ふつうのソースもケチャップも使われていない。肉も牛肉ではなく、鶏肉と豚肉に牛脂を加えたもの。牛脂を加えるのは、柔らかさを出すためと、牛肉らしい風味を出すため。
 ハンバーグの赤茶色の美味しそうな色をつけるのは、ベニコウジカビから抽出された赤色の天然着色料。カラメル色素とあわせて使われている。
 ナポリタンにも、ケチャップではなく、トマトパウダーと酸味料などの添加物で色と味をつけている。ポテトサラダのマヨネーズは本物ではなく、添加物でつくったマヨネーズ風ドレッシング。
 ハンバーグに添えられているキャベツは、千切りにカットしたあと、次亜塩素酸ソーダで、何度も洗浄し、殺菌している。風味はなくなり、ビタミンCも壊れてしまうが、黒ずんだり、しなびたりするのを防ぐ。
 白ご飯にも添加物が使われている。古米が使われているときは、さすが「新米シール」は貼られていない。古米はぱさぱさして、美味しくないので油や添加物によって味やつやを補っている。ご飯につやを与えるために植物油を入れる。この油には乳化剤が配合されていて、炊飯油とも呼ぶ。
 さらにショッキングな事例が紹介されています。
 福岡県内の養豚農家で、コンビニの廃棄弁当をエサとして与えるようになったところ、死産が続いた。結局、250頭もの子豚を亡くしてしまった。養豚農家はあわてて元通りのエサにしたところ、お産は以前と同じに戻った。
 うひゃあ、こ、これって怖いことですよね。
私たちの生活を与える食品化学物質のうち、もっとも「わかりやすく、防ぎやすい」もの、それが食品添加物だ。食品添加物こそは自分の努力次第で自分たちに入ってくる前の段階のもの、だから玄関で食い止めることができる。そこが、他の原発やPM2.5・・・、のように容易に逃げられないものとは違う。
 この本を読んで、食品添加物の怖さを久しぶりに自覚しました。
(2014年5月刊。1400円+税)

震える・・・許さない!カジノ賭博の合法化

カテゴリー:社会

著者  全国カジノ賭博反対連絡会 、 出版  全国カジノ賭博反対連絡会
 自民党がカジノ解禁推進法案の成立を目ざしています。そのため、安倍首相はわざわざシンガポールのカジノを視察して、その実現に向けて世論を誘導しようとしています。
 推進派は規制緩和と経済成長のためと言いますが、要するに、そのホンネは金もうけです。ギャンブルで金もうけしようというのは、戦争のための兵器を売って金もうけしようというのと同じことです。どちらも、弱者を踏み台にして、金持ちがますます金持ちになろうという仕掛けです。
 そんな弱者切り捨て、金持ち礼讃の安倍政権が、片や道徳教育の推進に本腰を入れているのですから、世の中は間違っています。弱者の切り捨ての道徳教育というのは、あきらめを押しつけ、反抗心を奪って従順な羊になれということでしょう。とんでもない「教育」です。これは教育ではなく「訓育」でしょう。
 厚労省によれば、日本の成人男性の1割近く、成人女性の2%近くがギャンブル依存症。ということは、500万人もの日本人がギャンブル依存症の患者だということになる。
 これは諸外国に比べても異常な現象だ。というのも、日本にはパチンコ店が1万軒以上あり、そこに1000万人以上もの人々が出入りしている現実があることによる。
 既に日本は、世界に冠たるギャンブル大国なのだ。そして、そのギャンブル依存症の人々による深刻な事件や犯罪が日々、全国で生起している。
 ギャンブル依存症患者の周囲の人々は、本人の依存行動によって、大変な被害を受けている。家族は、本人の借金の尻拭いをしたりして経済的負担も大きい。家族が良かれと思ってした返済が、本人にとっては、ギャンブル再開の環境が整ったことを意味し、結果として本人の依存行動を助長する。
 この冊子には、ギャンブル依存症の本人と家族、30人の手記が載っています。その始まりがビギナーズ・ラックだったという人が何人もいます。ある日、大勝ちをし、十数万円もの大金を手にして、有頂天になったのです。そして、喧騒の中、たまに大当たりが出ると、その快感を思い出し、忘れることが出来ない。
そして、もうしないと誓っても、ついつい再開してしまう。これをスリップという。
GA(ギャンブラーズ・アノニマス)に参加して、脱ギャンブル1年を無事に迎えると、バスデーを仲間から祝ってもらう。
 ギャンブル依存症は、慢性、進行性の疾患であり、完治することは難しい。
 カジノ賭博場の設置は、窃盗、強盗、殺人、放火などの犯罪の多発をもたらす。
 日本でカジノの合法化を決して許してはいけない。このように痛感させられるタイムリーな小冊子(70頁)です。
(2014年4月刊。1000円+税)

法廷で裁かれる日本の戦争責任

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

著者  瑞慶山 茂 、 出版  高文研
 太平洋戦争は正しかったなどとNHKの経営委員(百田茂樹)が暴言を吐くのを社会が許容しているようで、本当に残念です。日本国憲法の前文には、政府の行為によって、戦争の惨禍を再び、くり返してはならないと明記しています。
この本は、強制連行、「従軍慰安婦」、空襲、原爆、沖縄戦・・・など、戦後日本で裁判所によって明らかになった事実が紹介されています。そして、担当した弁護士がその判決について解説しています。
 本当に、アジアへの侵略戦争を始め、無数の人々を苦しめた日本軍とそれを支えた日本の政財界の責任は重大です。そのことに目をつぶっていてアジアで日本はやってけるはずがありません。加害者は忘れても、被害者は末代まで忘れるはずがないのです。
 2段組みで600頁もの大作です。読んで気の重くなる本ではありますが、「自虐史観」などという前に知るべき歴史的現実だと思います。
 戦後世代である私たちの責任は、国家に対し国家責任を履行させるための個人責任であり、個人として直接的に対外的対内的に賠償責任を負うわけではない。いわば間接責任の一種である。そして、ここでの戦争責任は、法的賠償責任ではなく、政治的責任と道義的責任である。だからこそ、戦後世代は国のあり方について積極的に考え、参加し、発言すべきなのである。私も、この考えにまったく同感です。
 山口地裁下関支部の判決(1998年)は、「『慰安婦』としての性的強制は重大な人権侵害であり、人類にとって許すべからざる犯罪である。・・・・戦後、これを放置してきた国には、この被害回復義をつくさなかった違法があり、損害賠償をすべき責任がある」とした。
 東京高裁の判決も、「業者を監視し、慰安所の実質的管理をしていたのは軍であったから、軍は業者の使用者としての管理を怠った責任がある」とした。
 このように、「従軍慰安婦」の問題は、単に「強制連行」されたかどうかだけではありません。
 河野談話について、アメリカ政府がその見直しを止めるように安倍政権に忠告しているのは当然のことです。これは不当な内政干渉というべきものではないでしょう。なぜなら、日韓政府はもっと仲良くしてくださいと言っているわけですので・・・。
 日本軍のトップにいた岡村寧次・北支那派遣軍総司令官は、「現在の各兵団は、ほとんどみな慰安婦団を随行し、兵站の一部となっている有様である。第六師団のごときは、慰安婦団を同行しながら、強姦罪は跡を絶たない有様である」と述べた。
 間(はざま)組は、中国(主として河北省)で拉致した中国人1500人を1949年4月に日本へ強制連行し、福島、長野、群馬などの発電所で苛酷な労働を強制した。この強制労働の16ヶ月間のうちに53人もの死亡者が出ている(死亡率8.7%)。このほか、負傷率も43%と異常に高い。
 長野地裁の辻次郎裁判長は、判決言渡のとき、「私的見解」と断りながら、次のように述べた。
 「提訴から8年かかったことをお詫びします。また、和解が成立しなかったことを残念に思い、お詫びします。私は団塊の世代で、全共闘世代に属するが、率直に言って私たちの上の世代に人たちは、ずいぶん酷いことをしたという感想を持ちます。
 裁判官をしていると、訴状を見ただけで、この事案は救済したいと思う事案があります。この事案も、そういう事案です。一人の人間としては、この事件は救済しなければならない事案だと思います。心情的には勝たせたいと思っています。でも、結論として勝たせることができない場合もあります。このことには個人的葛藤があり、釈然としないときがあるのです」
 ここまで言うのなら、もう一歩踏み込んで原告勝訴の判決を書けばいいのに・・・と思ったことでした。
 戦前、中国から強制連行されてきた中国人は4万人近くで、そのうち死亡者は7千人近く(17.5%の死亡率)、しかも1~2年のあいだに死亡している。ところが、国は、終戦直前に三井や三菱に対して6千万円近くの国家補償をした。これは、三井鉱山や三菱鉱業が、1日あたり5円の賃金を支払ったとして国に対して損失額を計上したことを根拠とする。しかし、現実には、中国人に賃金を支払ってはいなかった。それなのに、巨額の賠償金を国からもらっていたのである。ひどいものです。このような国の大企業優遇は今も変わりませんよね。
 貴重な文献であり、大いに活用してほしいものです。
(2014年3月刊。6000円+税)

NHKが危ない

カテゴリー:社会

著者  池田 恵理子・戸崎 賢二ほか 、 出版  あけび書房
 近ごろのNHKは、本当になんだかおかしいですよね。
 集団的自衛権について、その反対運動の全国的な盛り上がりをNHKがきちんと報道したとはとても思えません。政府公報をたれ流しているのではありませんか・・・。
 原発問題や特定秘密保護法についても同じです。あれだけ国会周辺で反対の集会やデモ行進がしきりに盛り上がっていても、その大半をNHKは無視していました。
この本に籾井会長の記者会見の詳細が紹介されています。本当に腹立たしい暴言の限りです。この会長は商社出身のようですが、営業は出来ても日本史や日本社会について、まともな常識を持っているのか疑うばかりです。
 特定秘密保護法について、「まあ通っちゃったんで、言ってもしょうがないのではと思いますが。決まったことに対して、ああだこうだ言ってもしょうがない」
「民主主義に対するイメージで放送していけば、政府と逆になるということはありえないのではないかと。議会制民主主義からいっても、そう言うことはあり得ないと思います」
「尖閣諸島、竹島という領土問題については、明確に日本の立場を主張するのは当然のこと。時には政府の言うこと、そういうこともありますよ。政府が右と言うことを左というわけにはいかない」
 これでは、NHKはまるで安倍内閣の一宣伝機関だと宣伝しているようなものではありませんか。表現の自由を駆使する言論人の自覚など、そのカケラもない人物です。従軍慰安婦についても、橋本市長と同じようなことを言って、「どこの国にもあったこと」と言い切ります。そして、同じようなものとしてオランダの飾り窓を持ち出すのです。とんでもありません。
 この人が、「どこの国」というとき、アメリカ軍もあてはまるのでしょうか。さらに、「日韓条約で全部解決している」などと事実に反することを述べています。
 放送の仕事は、その基底に弱い立場の人たち、虐げられた人たち、声を上げられない人たちに寄り添い、その声を代弁する志が求められる。
 籾井会長の居

人の命は腸が9割

カテゴリー:人間

著者  藤田 紘一郎 、 出版  ワニブックス新書
 寄生虫博士として高名な著者が腸内細菌の大切さを説明しています。とても納得できる本ですので、私も早速、納豆食を取り入れることにしました。
不老長寿の実現には免疫力を高めることが不可欠。それには腸内細菌の助けが欠かせない。身のまわりの菌の排除は、これに逆行する行為だ。
 免疫力は、身近な病原体と戦うごとに鍛えられ、強化される。細菌やウイルスが怖いと言って平時からむやみに排除してしまっていると、免疫機能は鍛えられる機会を失い、弱体化してしまう。
 善玉菌優性の腸をつくるには、悪玉菌の助けが必要。赤ちゃんには、とにかく多くの菌と触れあわせること。赤ちゃんが舐めたがるものは、なんでも舐めさせること。ただし、化学物質や薬剤、食品添加物は避ける。
 度を超した清潔志向は、自分や家族の身体を病原菌に弱くする危険性を高める。
 日本人の腸には、日本の発酵食品が最適。植物性乳酸菌は、動物性乳酸菌よりも胃酸に強く、生きて腸まで届きやすい。
免疫の7割は腸で築かれる。残り3割の免疫がつくられるのは、心。免疫を向上させる笑いは楽しく笑うこと、大声で笑うと、いっそう効果的。
 善玉菌優性の腸を保つことができていれば、肉も卵も命を縮める原因にはならない。腸の働きが悪くなると、消化吸収能力が低下するだけでなく、腸内バランスが乱れて、免疫力も低下する。
 人間の腸は、食物からビタミン類を合成する能力をもたない。人間の代わりに合成作業しているのが腸内細菌。
 人間の精神活動に大きく関与しているセロトニンは、その前駆体が腸でつくられる。そのうちの9割がセロトニンとなって腸にとどまり、残りの1割が脳や他臓器へ送り出される。脳にあるセロトニンは、全体量のわずか2%にすぎない。
 腸内細菌の活動が活発だと、セロトニンの分泌量が増え、大便の量も多くなる。
 大便は基本的に体に悪いものではない。問題なのは、大便が長いあいだ腸内にとどまり続けること。大腸に滞留することによって腐敗がすすみ、善玉菌が毒素を発生させるようになることが問題なのだ。
 大変勉強になりました。腸内細菌ってこんなに存在価値があるのですね・・・。
(2014年3月刊。800円+税)

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