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なぜニワトリは毎日卵を産むのか

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  森 誠 、 出版  こぶし書房
私と同世代の農業博士です。ニワトリの専門家でもありますから、ニワトリをめぐる面白い話が満載の本です。
なま卵を食べるのは日本だけ。それだけ、日本の卵は安全なのでしょうが、驚きますよね・・・。古代ローマ人は、なま卵に穴をあけて、寝転がって中身をすすっていた。ちなみに、キリストの最後の晩餐でも、使徒たちはテーブルに向かってイスに座っていたのではなく、臥台に寝そべっていた。それが当時の風習(習慣)だったのです。
バイオリニストの先住真理子は、毎朝、3~6個のなま卵を呑む。これが彼女のスタミナ源。私も、おでんには卵がほしいと思いますが、毎日、なま卵という感じではありません。
温泉玉子とかたゆで玉子の違いを識りました。かたゆで玉子は、白身も黄身も固くなっています。それに対して、温泉玉子は、黄身は固まるけれど、白身は固まらない温度である70度のお湯に30分ほどつけておくと出来上がる。この温泉玉子も、日本独特のもの。ガイジンは半熟玉子を好む。
 フランスはモンサン・ミッシェルにある有名なレストランでオムレツを食べたことがあります。泡立てた卵を使って厚さが10センチにもなるものです。このときは、卵を銅製のボールで力一杯泡立てるのです。この銅イオンのおかげで、泡が安定するのだそうです。ですから、見かけこそ巨大オムレツですが、実は、一人前なんてペロリと食べることができます。食べ過ぎの心配は無用なのです。ぜひ、一度、ためしてみてください。
ニワトリは、1日に1個以上の卵は産まない。
日本人は、江戸時代は卵は食べても、ニワトリはあまり食べなかったようです。明治のはじめに東北地方を旅行したイギリス女性のエザべㇻ・バードは、結局、ニワトリを食べることはなかったと旅行記に書いています。
江戸時代の日本人は、動物の肉をおおっぴらに食べることはなかった。それで、鶏肉をカシワと呼び、猪肉はボタン、鹿肉をモミジと呼んだ。馬肉はサクラだ。
江戸時代の日本で、鶴は最高のごちそうだった。しかし、さすがの中国人も鶴は食べていない。なぜか・・・?つまり、鶴はまずいから。なーるほどですね。
ニワトリにまつわる興味深い話が満載の本でした。
(2015年12月刊。2000円+税)

フランスの美しい村を歩く

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者  寺田 直子 、 出版  東海教育研究所
見るだけでも楽しい、フランスの美しい村を紹介する写真集です。
フランスには「もっとも美しい村」協会に加盟する155の村があります。
そこへ、旅行作家の著者が訪問して、写真と文章で生き生きと紹介しています。ながくフランス語を勉強していますので、現地で困らない程度に会話は出来ますから、私もぜひ「美しい村」には行きたいと思っていました。前にもこのコーナーで紹介しましたが、この本に紹介されている「美しい村」で私が行ったのは、唯一、フラヴィニー・シュル・オズランがあります。
ここは、百年戦争、あのジャンヌ・ダルクが登場する14世紀の世界です。このとき、イギリスに占領されたのだそうです。ブルゴーニュにある小さな村です。私は、ディジョンからタクシーで行きました。映画『ショコラ』の舞台ともなった古い教会があります。人口300人という、ごくごく小さな村です。それでもレストランがあり、カフェーがあります。美味しい昼食をとり、カフェーで赤ワインを一杯やって、しばし休憩しました。
フランスの美しい村には、日本のようなコンビニがないのはもちろんのこと、昔ながらの建物が少なくとも外観はそっくりそのまま残っています。近代的なビルとか、どこの国の建物なのか惑わせるような建築様式のものは一切ありません。14世紀の村にタイムスリップしたと思わせてくれるのです。
それは、南仏のエズ村でもそうでした。ノルマンディーのオン・フルールでも、外観は昔ながらで、内装は近代的というホテルに泊まりました。そうやって昔のままの外観が観光客を呼び込んでいるのです。
ゆったりした時間の流れる「美しい村」に、またぜひ行ってみたいと思います。
(2016年2月刊。1850円+税)

江戸時代の流行と美意識

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者  谷田 有史、村田 孝子 、 出版  三樹書房
 江戸時代は現代日本と同じく美意識をもてはやしていたようです。
 女は美しく、男は粋でありたいと願っていた。江戸の人々は当時のファッションリーダーだった花魁(おいらん)や歌舞伎役者をまねて、センスを磨き、ヘアスタイルやコーディネイトに工夫をこらしていた。
 江戸の遊郭・吉原は売色の巷(ちまた)ではあったが、同時に江戸庶民の一大社交場でもあった。文化・風俗・言語など、ここから発生して江戸の流行をつくったものが少なくない。
お歯黒は、今の私たちからすると、なんだか気味悪いですよね。でも、歯を保護して、虫歯を予防する効果もあったそうなんです。なるほどなんですね。
 原料は、五倍子粉(ぶしのこ)(ヌルデの木にできる虫瘤)と沸かしたお歯黒水(酢、酒、米のとぎ汁に折れた針や釘などを入れてつくった)で、これを交互に歯に付けると歯が黒く染まった。
 吉原では、遊女だけが客の一晩だけの妻になる意味から歯を染めたが、芸者は染めなかった。京阪の遊女や芸者は歯を染めたが、江戸では吉原の遊女だけだった。
 女性の髪形そして、かんざし、いずれもいろいろ手が込んでいますね。 
 タバコは、女性も吸っていました。江戸時代の中期には、女性の喫煙は一般的でした。長いキセルを持ち、女性用のたばこ入れが流行していました。
日本人の美意識を知るためには江戸時代をよくよく認識する必要があります。江戸時代を暗黒の時代とか停滞していた時代だと簡単に決めつけてはいけない、それを実感させてくれる本です。
 カラー写真で、江戸時代の日本人の美意識のすばらしさを伝えてくれています。
(2015年6月刊。2600円+税)

ドキュメント銀行

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  前田 裕之 、 出版  ディスカヴァ―・トゥエンティワン
日銀がマイナス金利を発表したあとに起きた三つの出来事。その一つは、家庭用金庫が急に売れ出して、在庫のないホームセンターが続出したこと。その二は、金貨が売りきれて店頭から姿を消してしまったこと。その三は、デパートの会員券が飛ぶように売れていること。月1万円ずつ支払っていると、1年たったら12万円ではなくて13万円の商品券がもらえるのです。こんな高い金利なんて、今どき考えられません。多くの人が飛びつくのも当然です。ただし、そのデパートでしか買い物できません。したがって、デパート買い物族というレベルの家庭でしか通用しません。
銀行が次々に合併して名前を変えてしまったので、何が何やらわからなくなってしまいました。この本は、銀行の最近の変遷を追って、いったい銀行とは何者なのかを追求しています。庶民にとっての銀行の存在意義は何なのかという視点が弱いように感じましたが、それも日経新聞の記者(編集委員)だから仕方のないことなのでしょうか・・・。
大和銀行ニューヨーク支店で起きた1100億円という、とてつもない巨額な損失事件。これが、たった一人の銀行員がやったことだというのです。私が驚いたのは、それほどの損失を出しても大和銀行は倒産しなかったという事実です。しかも、アメリカ政府から360億円もの罰金が課せられて、すぐに全額を一括で支払ったというのです。いやはや、銀行の超巨額資産には声も出ません。このとき、銀行経営者の責任が法的に追及されたこともないようです。まことに不可思議な銀行世界の闇です。
借主に「誠実で優しい銀行」だという評判は、銀行にとって必ずしもほめ言葉ではない。
多くの国民は、自分は銀行に対する債権者であるという意識をもたず、銀行は現金の保管場所であるという感覚だ。
融資ほどおいしい商売はない。貸出金利と預金金利の利ざやか決まっていれば土日に銀行が休んでいても、安定した金利収入が入ってくる。
銀行(支店)に来て、公共料金の振込をする人は、銀行に収益をもたらす顧客ではない。ATMコーナーを利用するだけの顧客も同じ。顧客の待ち時間をゼロにしても、銀行の評判を良くするかもしれないが、それで銀行の収益が向上するわけではない。かえって余分なコストが発生するかもしれない。
銀行は、妙にプライドの高い人たちの集団である。
かつて日本には大手の信託銀行が7行あった。
金融機関にとって、投資銀行業務は、使いこなすのが難しい危険な武器だ。
銀行同士の合併は、昔から日常茶飯事である。銀行の歴史は、合併の歴史だ。
日本には1901年(明治34年)に2258もの銀行があった。それが、昭和初期(1939年代)には、1500行になった。地方銀行は1945年に53行、戦後それが64行になって、現在も64行のまま。旧相互銀行からの第2地銀は1989年に68行あったのが、現在は41行。
銀行の本質は金融仲介業であり、仲介業務には巨額な利益は必要ない。
相続は地域外への資産の移動を伴うことがある。親が地方、子どもが首都圏に住んでいると、相続資産は地方から首都圏へ移転する可能性が高い。今後10年間で地方の相続資産238兆円のうち、21%の50兆円は、子どもの住む3大都市圏へ移転する。首都圏だけでも10年間に36兆円が流入する。これは、毎年丸ごと1行の地銀が首都圏にやってくるようなものだ。
既存の銀行では、ATMの維持費が手数料収入を上回り、完全な持ち出しになっているところがほとんど。セブン銀行は、ATM業務を進化させ、人件費や物件費をできる限り抑えて運営しているので、収益を確保している。
ゆうちょ銀行の総資産は208兆円(2015年3月末)。総貯金残高は177兆円。貯金残高はピーク時の260兆円に比べると減っている。それでも、ゆうちょ銀行の貯金残高は、3メガバンクそれぞれの預金残高をはるかに上回っている。ゆうちょ銀行は、この巨額資産を有価証券を中心に運用している。その大半が国債だ。
顧客が一番相談してはいけないのが、銀行の窓口だ。というのも、銀行が熱心に販売している投資信託や保険は、銀行に入る販売手数料が大きく、必ずしも顧客の将来の資産形成を真剣に考えているわけではないからだ。
銀行の窓口に相談するのは危険だというのは、税務署と同じですね。いずれにしても、自分のことしか考えていませんから、とんだ火にいる夏の虫ということになりかねません。
日本の銀行の最近の歩み・変遷についての概説本です。勉強になりました。
(2016年2月刊。2400円+税)
 庭にアイリスの花が咲きはじめました。黄色と白の気品のある花です。チューリップは雨と風がひどくて、かなり散ってしまいました。でも、まだこれから咲こうというチューリップもいます。
 雨が降ったおかげでしょうか、アスパラガスが3本のびていました。店頭に並べて遜色のない太さのもあります。春の味が楽しめます。
 先日、家の前の道路をキジが歩いていました。鮮やかな色をしていましたので、オスでしょう。初めてのことで驚きました。

法廷通訳人

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者  丁 海玉 、 出版  港の人
 表紙の装丁がいいですね。思わず手にとって読んでみたくなる色あいです。
 私は通訳付きの法廷というのを体験した記憶がありません。被告人が外国籍ではあっても、皆、日本語が出来る人たちでした。日本に長くいたら日本語を話せるようになるのも当然ですからね・・・。
著者は韓国(朝鮮)語の通訳を親の代からしています。在日韓国人二世です。
法廷通訳人とは、その言葉どおり、裁判所の法廷で通訳する人のこと。裁判所で定めた認定試験や資格のようなものはなく、もちろん裁判所の職員や専属でもない。
法廷通訳人の報酬は、「裁判所が相当と認めるところ」と定められているが、具体的な額は公表されていない。
ソマリア人の「海賊」を紅海で自衛隊が捕まえて日本に連れ帰り、東京地裁で刑事裁判が開かれたことがありました。ソマリア語を通訳できる人が日本には数人しかいなくて、裁判所、検察庁、弁護人で奪いあうという事態が起きました。自衛隊の海外派兵が本格化すると、もっと困難なケースがどんどん出来ることになるのでしょうね・・・。
法廷通訳人は、最初に宣誓書を朗読して、目に見えない「良心」と「誠実」を担保にしなければならない。
通訳人候補者として登録するときには、履歴書と作文を提出したうえ、面接と導入説明がなされる。
 法廷という非日常の空間のなかで、普段の生活ではなかなか見えない人間の姿があぶり出される光景を目の当たりにすることがある。そこにあるのは、言葉だ。言葉には、それを使う人の人となりや個人史、生き様が反映される。放たれる言葉によって、その人の「生」が鮮やかに浮かび上がることがある。
法廷通訳は、生きた言葉を直訳して、正確に通訳する。裁判官、検察官、弁護人そして被告人から出た言葉の全部を要約せず、すべて訳さなければならない。
 韓国から来た男性のオーバーステイは、かつては建築現場で働く人がほとんどだった。その動機も圧倒的に子どもの学費のためだった。大の男が祖国にいる子を思い出して裁判官の前で大粒の涙をこぼすことも少なくなかった。
そして、しばらくすると、ホストが登場してきた。韓流ブームに乗ったのか、韓国好きな日本の女性、日本に滞在する韓国の女性など、客層は意外に広かった。
韓国語通訳を通してみた法廷の実情がよく描かれている本だと思いました。
(2015年12月刊。1800円+税)

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