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虫のすみか

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  小松 貴 、 出版  ペレ出版
 私たちの身のまわりには、庭にも道ばたにも土の中にも、虫たちの不思議な巣であふれているのですね。そのことを満載した写真によって実感できる、楽しい虫の本です。
アリジゴクの主(ぬし)は、ウスバカゲロウの幼虫だったんですね。アリジゴクは、獲物をつかまえると食べるのではなくて、巨大なキバを獲物の体内に突き刺して、中身を吸い取ってしまう。そして、アリジゴクは糞をしない。成虫(ウスバカゲロウ)になったとき、まとめて大きな糞をする。ええっ、そんなことが可能なんですか・・・。
ハチやアリ、シロアリの多くは集団で分業して社会生活を送る。まるで人間のように洗練した高度な社会をもっている。だから、ある高名の昆虫学者が「利口ムシ」だと評した。それに対して、一人で好き勝手に食べて寝て暮らすだけの虫は「馬鹿ムシ」だと評する。しかし、著者は逆だと主張します。
群れなければ何ひとつまともな生活が出来ず、ひとりにされたら惨めに野垂れ死にする社会性昆虫こそ「馬鹿ムシ」であり、誰に教わるわけでもなく、たった一人で精巧な巣をつくり、毒針で狩りをする狩人蜂こそ至高の「利口ムシ」だと・・・。なるほど、ですね。
ヤマアリは強力な蟻酸をもっている。鳥のなかには、わざとアリ塚の上に降り立って暴れ、アリの蟻酸攻撃を受けることで、羽についた寄生虫を退治する「アリ浴び」の習性をもつものがいる。人間も、戦争中、服を洗うことが出来ないとき、ノミやシラミが湧いて困ったら、服をアリ塚に突っ込んで消毒していた。
うひゃあ、そんなこと知りませんでした。そんなことも出来るんですね・・・。
軍隊アリは、ジャングルにはなくてはならない存在である。軍隊アリは、ジャングルの空間にいちばん多く優先して生息する生物を一掃してしまうので、その区画内に「空き」が生まれる。そのことによって、森の生物の種の多様性をつくり出している。なるほど、そういうこともあるんですね。
東南アジアの国にはツムギアリの「アリの子」を食用にしているところがある。アリの幼虫をスープに混ぜたり、お米と一緒に炊いて食べる。かなり酸味の利いた味。まずいというのではないが、決して美味しくもない。そして、ツムギアリの巣を落として、その幼虫を鳥の餌にもしている。
攻撃的なツムギアリは、しばしば害虫駆除のために活用される。
たくさんのカラー写真とともに丁寧に解説されているので、素人にもよく分かります。
(2016年6月刊。1900円+税)

当選請負人、千堂タマキ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 渡辺 容子 、 出版 小学館文庫
東京・横浜のベッドタウンでの市長選挙の実情の一端を描いた小説です。読ませます。
選挙とは、自分の主義主張と心の内面をこれでもかというほど裸にして、それを公衆の面前にさらけ出して審判を受けるという厳粛なる儀式である。
本当は、そうなんですよね。でも、実際には、イメージ選挙のほうが先行しているし、強いです。その根本的な理由は、「べからず選挙」とまで言われる公選法による規制です。戸別訪問を禁止するなんて、とんでもない間違いです。選挙のときこそ、国民が自由に政治を語るべきなのです。
そして、マスコミです。お金さえあれば、マスコミ操作は出来ます。それに権力がともなえば、マスコミなんて、ちょろいものです。かの「アベさまのNHK」に堕してしまった悲惨さは、残念無念というほかありません。
「選挙で勝つには、政策も大事です。ポスターもビラも決しておろそかには出来ません。ですが、もっとも大切なのは、候補者の人間力なのです」
現実には、候補者に「人間力」が全然なくても当選する人が少なくありません。「政策は当選したら勉強します」と臆面もなく言ってのけて当選してしまうタレント候補が昔も今も少なからずいます。
地上戦とは、支持者・支持団体を回って投票を訴え、地道に票を掘り起こしていく活動をいう。空中戦とは、選挙カーや街頭、そしてインターネットを介して広く世間に政策を訴え、浮動票の獲得を図る戦術をいう。
マイクを握るのは左手が基本。右手、また両手でもつと、集まった人々から握手を求められたときに、マイクを持ち替えなければいけない。
「カクダン」とは確認団体のこと。選挙期間中に、特定の政治活動をすることが認められた政党その他の政治団体をさす。
カクダンのビラには、選挙活動用のビラと違って、枚数や回数に制限がない。何枚配ってもOK。ただ、ビラには候補者の名前や顔写真は載せられない。
選挙には多くの人がかかわっているから、誰かのシナリオや思惑どおりに物事が運ぶなんていうことはありえない。それどころか、選挙期間中には、自陣のミスや相手方のミスによって、まったく予期していなかった事件やハプニングが必ず起きる。
想定外の出来事がおきたとき、どれだけ冷静に、かつ素早く事態を掌握し、状況を脱するための方策を練るか。どんなピンチに陥ったときでも、頭を使えば、最悪の状況を打破して、それをチャンスに変えてしまう面白いアイデアがひらめくものだ。
実は、私も、選挙には何回もかかわりました。もちろん、候補者としてではなく、後援会の役員として、です。ですから、街頭での訴えの難しさは身にしみています。歩いている人の足を停めさせるような話をしたいのですが、なかなか出来ません。自分の体験を語り、自分の言葉で候補者への支持を訴えるようにしています。
結局、自分の身近な体験した話題を切り出して、話を具体的に展開するしかないと思いました。
日本人は、もっと真正面から政治とか司法のあり方を議論すべきだと思います。
政治になんか関わりたくないと思っても、政治のほうは私たちを放っておいてくれません。その意味で、投票率54%でしかないという現状を変える必要があります。
(2014年9月刊。670円+税)

大脱走

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 荒木 源 、 出版 小学館
就職に苦労した末に入社できた住宅リフォーム会社は典型的なブラック企業。
そんな会社に入ったとき、どうしたらよいか・・・。
とにかく契約をとること。新人がまずやらされるアポインターというのは、アポをとるのが、すべて。そのためには、まずたくさん「叩く」。
インターホンを押し続ける。200枚の名刺をわずか半月で使い切る。
アポインターは、あとを引き継ぐクローザーが、客と商談をすすめる材料を集めるお膳立ても整えておかなければいけない。
どんな仕事でも、仕事のない恐怖に比べれば、まだまし。
もちろん、サギまがいの住宅リフォーム会社に騙される客ばかりが世の中にいるわけではありません。逆に、騙したはずの客に会社が脅かされてしまうことだってありうるのです。そんなときには、会社は、それは現場の人間が社の方針とは違ってやったことで、社は責任がないと突き放してしまいます。怖い仕組みです。
そんなことを許していいのか・・・。社員が結束してブラック会社を変えよう。そう思っても、一緒に行動してくれる人はほとんどいない。みんな、自分の身が可愛い。じゃあ、どうする、どうなる・・・。
救いのあるような、ないような、身につまされるストーリー展開の本でした。
なかなか、こんなブラック企業って、なくなりませんよね。どうしたらいいんでしょうか・・・。
(2015年11月刊。1400円+税)

奪取、振り込め詐欺・10年史

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  鈴木 大介 、 出版  宝島スゴイ文庫
 この本は、一人でも多くの人に読まれるべきだと強く思いました。
 騙されないように気をつけましょう。銀行のATM操作でお金を受け取るつもりが送金させられてしまいかねません。郵パックで現金送れは詐欺です・・・
 そんな警告をいくらしても、詐欺被害は一向になくなりません。なぜなのか・・・。
 この本は加害者側の分業体制がすすんでいる内情を明らかにすると同時に、騙される側の情報がなぜ「犯人」たちに筒抜けになっているのか、名簿屋の最新の情報入手先を明らかにしています。そして、なぜ、被害者が被害を申告しないのか、多くの人が泣き寝入りしている、その理由も究明しています。
 私も、弁護士として何件もの被害者からの相談を受けましたが、大半は泣き寝入り状態で、被害回復はほとんど出来ていません。すぐに口座凍結はするのですが、すでに引き出されてしまっているものばかりですから、ほとんど実効性がありません。
 振り込め詐欺は何段階も進化をとげている。思いもよらないほど大きな組織と巧妙に仕組まれたネットワークがある。
 末端の集金役としての「ダシ子・ウケ子」。被害者に電話をかけるプレイヤー。それらを統括する番頭。組織の外部協力業者としての「名簿屋」と「道具屋」。天上人として現場に直接たずさわらず、組織に種銭(たねせん)を投げて収益を得る「金主」。犯罪である以前に、あくまで営利を追求する組織だ。
 何があっても頂上の金主だけは摘発されないという至上命題の下、組織は巧妙に合理化され、より多くの収益を上げるために詐欺のシナリオやターゲットの絞り込みを極め、現場要員の育成も徹底する。その企業活動としての振り込め詐欺組織の理念や組織論は、もはや一般の企業がぬるいと思えるほど卓抜したものとなっている。
 名簿屋の最新の入手先は二つ。一つは訪問介護事業者。介護事業の現場で働くホームヘルパーから、詐欺に適した高齢者の情報が商品として売られている。
 もう一つは、住宅のバリアフリーリフォームをした顧客リスト。バリアフリーが必要になる年齢で、リフォーム代金をポンと出せる人の名簿だ。
 そして、「下見屋」がこする。こするとは、情報を精査する作業のこと。
 かたり調査というのは、国勢調査とか市役所からの調査を装って電話をすること。高齢者は、暇で寂しいから、雑談をまじえると、どんどん必要ないことまで話してしまう傾向がある。
 つまり、名簿屋も親名簿をひっぱってくる収集班、下見班そしてパッケージの3段階に分かれている。
 最近すごく高値で取引されているのは「三度名簿」。詐欺で3回だまされたことのある人だけをのせた名簿。3度やられた人は、リスクも高いけれど、4度目も騙される可能性は高い。
 詐欺ではなく、恐喝まがいの脅し文句で迫るケースもある。声だけで怖い奴がいる。ターゲットの家の住所、携帯番号どころか、息子や孫の名前、勤め先を会話の端々に出す。もう逃げられない。報復が怖い。とりあえずお金さえ言われるまま支払っておけば、この問題から逃げられる。被害者が怯えてしまっているケースだ。
 いやはや本当に勉強になる本でした。ぜひ、みなさん、ご一読ください。
                   (2015年3月刊。720円+税)

これから戦場に向かいます

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  山本 美香 、 出版  ポプラ社
 4年前の夏(2012年8月)シリアで取材中に銃撃を受けて亡くなった女性カメラマンの文と写真です。その尊い犠牲を少しでも無駄にしてはいけないと思って写真集を買って眺めました。
 さすが戦場カメラマンです。緊迫した状況がひしひしと伝わってきます。
 でも、彼女の言葉が良いのです。まったくそのとおりです。平和のための戦争が大好きなアベ君に、よく言いきかせてやらなくてはいけません。
 一度動き出した戦争の歯車は簡単には止められない。
 だからこそ、戦争を始めてはいけない。
 ミサイルも爆弾も、まだ普通に生活していた人々の上に落ちた。そこで死ななければならなかった人たち。あまりにも無念だ。
 力でねじふせるやり方は、即効力があるから、表面的には効果があるように見える。しかし、人間の心に刻み込まれた憎しみは何かの拍子に爆発し、暴走するだろう。
 戦場で何が起きているのかを伝えることで、時間はかかるかもしれないが、いつの日か、何かが変わるかもしれない。そう信じて紛争地を歩いている。さあ、現地に到着だ。
 45歳という、油の乗り切った若さで、「戦死」してしまった彼女の無念さを私たちはきちんと受けとめなければいけないと思います。
 戦場でたくさんの人を殺した人ほど英雄視されるなんて、間違っています。
 自爆犯を志願する若者に、ほかにやるべき何かがあることをみんなで伝えたいものです。
 私は、戦場の無惨な写真を見るたびに中村哲さんのアフガニスタンでの、砂漠を緑の大地に変える壮大な取り組みを想起します。こんな取り組みこそ、日本が官民あげて協力すべきこと、もっと日本の若者を現地に送り出したいものだと思います。自衛隊員をアフリカに送るより、素手の日本人が砂漠の緑化工事に関与できる状況を一刻も早くつくり出したいものです。
 貴重な大判の写真集です。 ぜひ、あなたも手に取って眺めてみて下さい。
(2016年7月刊。1600円+税)

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