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ルポ・保健室

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 秋山 千佳 、 出版  朝日新書
いまほど学校に保健室が必要なときはない。この本を読んで痛感させられました。
子どもたちが、もっと家庭で、学校で大切にしてもらっていれば、保健室の必要性はそれほどでもないのでしょう。でも、働く若者が使い捨てされる社会の仕組みが強固なものになっていて、生存競争を勝ち抜いた強者のみがのさばる世の中ですから、弱者の代表たる子どもたちにひずみがいくのは必至でしょう・・・。
生徒に学校で好きな場所アンケートをとると、保健室とトイレの人気が突出している。それだけ、子どもにとって自分の教室は緊張を強いられる場所なのだ。保健室は、子どもにとって大人から成績で評価されない、否定されることのない貴重な場所になっている。
子どもたちは苦しいことがあると、安らぎを求めて保健室へ吸い寄せられる。とはいえ、はじめから自分の悩みを差し出すわけではなく、お腹が痛い、熱っぽいとか体調不良を訴え、あるいはただ雑談する。
養護教諭は、そんな子どもたちの発するSOSの小さなサインに目を光らせる。そして他愛もない話から、子どもたちの抱え込んでいる悩みを探り、引き出していく。
一年中、マスクを手放せない「マスク依存」の子が少なからずいる。それは、自信のなさの表れ。顔をさらすのを怖がっている。貧しくなくても、いろんな理由からマスクで顔を覆う子がいる。
保健室に来るのは、先生たちからあまり良く思われていない生徒が多い。
LINEでのいじめ、スマホの使い方は、保護者より子どものほうが詳しく、ルール決めが不十分な家庭が多い。その対応に自信がなくても心配無用。相談を受けるときの根幹は、その教師が信用できるかというアナログなものだから・・・。
私は、今もガラケーひとつですし、いつもカバンの底に入れています。スマホなんて使う気もありません。それでも今のところは十分生きていけます。
保健室は社会の鏡。というより、実際には、子どもが社会の鏡で、その子どもの様子がよく見えるのが保健室だということ。
子どもたちを取り巻く社会と学校の深刻な状況の一端がよく分かる本でした。
(2016年8月刊。780円+税)

アフリカに進出する日本の新宗教

カテゴリー:アフリカ

(霧山昴)
著者 上野 康平 、 出版  花伝社
 このところ、創価学会に並んで幸福の科学の政治面での派手な活動が目立ちます。あちこちで候補者を立てています。よほど資金が潤沢なのでしょうね。
その幸福の科学など、日本の新宗教がアフリカに次々に進出しているというのです。驚きます。いったい言葉の壁、生活習慣の違いをどうやって乗りこえるのでしょうか。そして、その活動資金はいったいどうするのでしょうか。アフリカから日本まで来ると30万円はかかりますよね。アフリカの庶民にとっては高値の花ではないでしょうか・・・。
この本では、創価学会と幸福の科学のほか、崇教真光(まひかり)や統一協会、真如苑などが取りあげられています。
日本国内の新宗教の信者は3000万人。これは人口の23%にあたる。そして、宗教家が70万人いる。これは、全国の小中学校の教員数が67万人なので、それよりも多い。
幸福の科学は、東アフリカの小国ウガンダで流行している。ウガンダ国営テレビが大川隆法の講演と映画を放映した。そして、2012年には、国立スタジアムで大川隆法が1万人規模の講演会を開いた。
天理教は、コンゴ共和国で活動している。
真如苑は、日本では創価学会、立正校正会に次いで多い100万人の信者を有する。真如苑は、ブルキナファソで活動している。
崇教真光は、ヨーロッパ・アフリカ方面指導部をルクセンブルグの古城に置いている。1987年に1億6千万円で古城を購入した。西アフリカから日本へ、年に数回、岐阜県の総本山での祭礼に参加しようと、ビザを申請するアフリカ人が大勢いる。
コートジボワールでは、1990年に創価学会の支部が設立されていて、当初200人の会員が、今では3万人になっている(らしい)。
アフリカの地に日本の新宗教が本当に根づくことが出来るでしょうか・・・。疑問が深まりました。
(2016年7月刊。1500円+税)

日中映画交流史

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 劉 文兵 、 出版  東京大学出版会
 私にとって李香蘭(山口淑子)ってピンと来ない存在ですし、自民党の国会議員になったことから、どうせ自己中心のスターだろうという感じです。
 ところが、中国人にとっては、李香蘭というのは、日中のあいだに横たわる歴史問題の複雑さを物語るシンボリックな人間であり、また日中文化交流の歴史を語る際に欠かせない存在だというのです。
 李香蘭は、日中戦争のさなかに、日本人であることを伏せて中国人の映画スター歌手として活躍し、中国・日本はもとよりアジア諸国で抜群の知名度を得ていた。
満州生まれの日本人で、満州の日本人小学校を卒業したあと、華北の女子中学校に学び、満映に入社した。
 戦後、山口淑子として再出発してからは、中国に対して繰り返し謝罪し、日本の政治的指導者による靖国神社への参拝には断固として反対した。そして、日中友好に尽力し続けた。
日本映画が満州国の民衆に広く受け入れられたとは言い難い。そして、満州国の統治者側も、中国人向けの日本映画市場の開拓を積極的に行っていたとは言い難い。
満州国では、「協和語」という、中国語と日本語とが混在した奇妙な言語が流通していた。文法をまったく無視した「簡易な日本語」、中国語の単語を日本語の語順で並べる「和製中国語」である。
戦後、日本映画が中国に入った。 『二十四の瞳』は、『芙蓉鎮』の謝晋監督が演出を学ぶべき手本とした。
 小津安二郎、木下恵介、山本薩夫、山中貞雄、山村正樹といった多くの日本の映画人、は戦時中に一兵卒として中国戦線に出征した経験をもっていた。
文化大革命が終わった中国では、空前の日本映画ブームが起こった。
 『君よ憤怒の河を渉れ』は野外に巨大なスクリーンが張られ、正面の一等席に1万人が陣取り、スクリーンの裏側にも8千人の人々が裏返しで映画をみた。
これは髙倉健の主演する映画です。残念ながら、私はみたことがありません。
 この映画は、1978年に封切られて、北京だけで2700万人の観客動員を達成した。中国の人々はいまだ見知らぬ資本主義世界をスクリーンまで疑似体験した。そして、文革のなかで失脚した人々が無実を証明しようとする人々の気持ちにもぴったりのストーリーだった。
 1979年、日本映画『愛と死』は中国で熱狂的に歓迎された。ヒロインの栗原小巻は中国で絶対な人気を呼んだ。
そして、1980年には、『砂の器』が中国の観客に大きな衝撃を与えた。いやあ、これはいい映画、すごい映画でしたね。加藤剛の熱演が忘れられません。
当時の中国人観客にとって衝撃的だったのは、長期にわたって中国映画においては、善でも悪でもないキャラクターの描写はタブーとされていたから。それまでは善玉と悪玉が明確に分かれている図式の映画ばかりだった。
日本での中国映画ブームもすごいものがありました。私の好きなのは、なんといっても『芙蓉鎮』と『初恋のきた道』です。
 中国生まれで、今は日本に住んでいる中国人による、本格的な日中映画交流史です。貴重な労作でもあります。
まだ見ていない映画、見たい映画がこんなにあるのか・・・と思いました。ぜひ時間をつくってみたいものです。
 
(2016年6月刊。4800円+税)

徹底批判、カジノ賭博の合法化

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 吉田 哲也 ほか 、 出版 合同出版 
九弁連(九州弁護士会連合会)が9月下旬に宮﨑でギャンブル依存症に関するシンポジウムを開いたとき、会場の外で吉田哲也弁護士から買い求めました。全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会が編集した冊子です。
カジノは、他人の不幸の分だけもうかるという、「不幸をまき散らすビジネス」である。
ところが、このカジノを日本でもやれるようにしようという自民党議員を先頭とする集団がいます。まさしく、自分さえ良ければ他人がどんなに不幸になってもかまわないという利己主義の固まりの連中です。国会議員を名乗っているのが恥ずかしくないのでしょうか・・・。
日本のカジノ賭博は、日本人をターゲットにしている。来日外国人はあてにしていない。
ところが、日本はすでに世界最大のギャンブル大国である。
競輪、競馬、競艇、オートレースに加えて、18兆円の売上を誇るパチンコ・スロット店をふくめたら、世界最大のギャンブル国なのである。全国のパチンコ・パチスロ店は、1万2千店以上ある。
ギャンブル依存症の比率は、男性で9.6%で、ダントツの世界一。そこに日本版カジノが加わろうとしている。売上予想は2兆円。
世界最大のカジノ企業であるラスベガス・サンズは、31億ドルという高収益を誇っている。マカオで7割、シンガポールで2割をかせいでいて、アメリカ国内の占める比重は1割でしかない。
そして、この会社は、株主に21億ドルもの配当をしているが、その7割はオーナー一族のポケットに入ってしまう。会長に還元されているわけではない。
ギャンブル依存症は、薬物依存と同じで、脳に機能変化をもたらしている。ドーパミンをふくむ脳の機能異常とギャンブルがやめられない行動は密接に関連している。ギャンブル依存症の二大症状は、借金と嘘。
ギャンブル依存症に有効な薬物治療法はない。
いちど依存症になると、脳には、一生その回路が残る。
アメリカでは一般受刑者の30%がギャンブル依存症だといわれている。
日本では、ギャンブル依存症の60%に500万円以上の借金があるというレポートがある。韓国ではパチンコ店が禁止されました。日本も見習うべきです。そして、韓国にはカジノがあり、社会問題になっていますが、それでも、ソウルから離れた不便なところにあります。 
日本では、交通至便のところやハウステンボスのようなレジャー客の集まるところにカジノをつくるというのです。とんでもない計画だと思います。許せません。プンプンプン・・・。
(2014年8月刊。1200円+税)

日本法の舞台裏

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 新堂 幸司(編集代表) 、 出版 商事法務 
立法や制度改革の過程で起きていたことを立法秘話として関係者が語った本です。商事法務の編集長を長くつとめてきた松澤三男氏の古稀記念論文集でもありますが、学者や弁護士、そして官僚など、日本の法曹界で名高い人々が登場している点でも画期的な内容になっています。
法制審議会やら国会対策、そして各種研究会でのエピソードが豊富で、さまざまな法律の立法過程が手にとるように見えてきます。
研究者が発言するとき、わざわざ「個人的見解だ」と断りを入れる人がいるが、不自然な感じを受ける。研究者にとって、個人的見解以外のものが果たして、あるのか。そして、自らの意見を開陳するのは義務というべきこと(伊藤眞)。
法案づくりは、営業と似ている。消費者法を改正しようとするとき、説明すべき業界は限りなく多い。もれがあると、あとあとのプロセスで表面化し、大きな問題になりかねない。(川口康裕)。
閣法とは、内閣の提出する法案のこと。議員提出法案は、議員の所属による提出先議院の違いにより、衆法とか、参法と呼ばれる(村松秀樹)。
日本でも、渉外婚姻等によって夫婦や親子間で氏を異にする家庭も少なくない。それを考えたら、氏を異にすることが家族の一体性を害し、婚姻の意義を薄れさせるという消極論は、現実を見ない、観念論にすぎない(加藤朋寛)。
審議会の意見をまとめる必要があるときには、結論に至る論理をまず展開し、次にそれと異なる意見があったことを具体的に紹介する。責任は結論をまとめた学長がとることになっている(平野正宣)。
新法の名称をどうするか話題になったとき、幹事として出席していたので、「民事再生法」としてはどうかと提案したところ、並居る論客から一蹴された。ところが、法務省の呈示した案の一つに民事再生法があったので、うれしかった。あきらめかけていた迷子の子犬にめぐりあった気分だった。日弁連では大方の賛同を得られた(瀨戸英雄)。
私も、個人版民事再生法の制定過程の議論に少しだけ加わりました。一丁あがり方式の破産免責では救われない債務者が少なくないことから、私が必要に迫られて実践していた方式を踏まえて発言したのです。
民事執行法の制定過程では、午前3時ころに議論を終え、会議室の床に貸布団を敷いて就寝する。庁舎内で泊まると、朝8時半まで眠れるので便利だ。そのうち、会議室の床よりは、じゅうたん敷きの局長室の床が良さそうなので、密かに寝場所を変更した。起床後は、局長の出勤前に臭気取りのために窓を全面開放して部屋を寒気にさらした。帰宅するのは交替で週1日だけ、入浴のため。やせた豚になるよりは、太った豚になるほうがまし、と考えていた(園尾隆司)。
平成8年の新民事訴訟法の制定過程で部会のなかで敢然として発言する気骨ある弁護士がいて、感銘を受けた。ところが、当局のつくった原案に賛成する意見を述べるばかりの弁護士もいた(高橋宏志)。
商事法務研究会は経営法友会の事務局を支えている。そして、法律編集者懇話会が組織されている。
いずれも私の知らないことでした。そんな立法秘話が満載ですから、500頁もの大作になっています。私は、東京から福岡までの帰りの飛行機のなかで、一気に読みとおしました。
(2016年10月刊。4600円+税)

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