法律相談センター検索 弁護士検索

役者人生、泣き笑い

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 西田 敏行 、 出版  河出書房新社
私と同じ団塊世代です。私にとっては、正月映画の『釣りバカ日誌』のハマちゃんですね。お正月には、家族みんなで寅さん映画をみて、さらに時間に余裕があれば『釣りバカ』をみていました。
森繁久弥のアドリブに対して即興で対応できたというのですが、宴会の席でも即興で歌をつくってうたったというのですから、たいしたものです。
役者としてヒットする前は、六畳一間のアパート生活。風呂も電話もない。二人分の銭湯代がなくて、妻を銭湯に行かせて、本人は水道で身体をふいてすませていた。小さな冷蔵庫のなかはいつも空っぽ状態。
「今に冷蔵庫の中をおいしいもので一杯にしてあげるからね」。夢のまた夢のようなことを妻に言っていた。5キロ入りの米袋がカラになると、芝居仲間の家に「もらいメシ」に二人して出かけていた。
私は司法修習生のときに結婚したのですが、貧乏な新婚旅行だったので、同じクラスの修習生の新婚家庭(長崎)に泊めてもらうなどしていましたが、途中で所持金がなくなり、奈良の修習生宅にたどり着いて、そこで借金して、なんとか東京まで帰り着くことが出来ました。ですから、友人さえいれば、お金がなくても生きていけるという実感があります。
中学生までは福島の学校で人気者だったのが、東京に出て高校生活を始めると、福島なまりが恥ずかしくて、コンプレックスの塊になってしまった。だんだん暗い、表情のない少年になっていった。そこでとった解決策は、東京の人間になろうという努力はやめて、カッペとして開き直るというもの。
実はスマートに見えていた同級生だって、実は本当はカッペばっかりだったということが分かってきた。それからは、著者は、人間として地を出して演技をして、それが受けるわけです。そうすると、役者として演じている自分が、どちらが本当の自分なのか、自分でもよく分からなくなるのだそうです。なんとなく分かる話です。
『釣りバカ日誌』は三國連太郎とともに22作も「ハマちゃん」を演じたのですから、本当にすごいことですね。
著者は歌はうたえるけれど、音譜は読めない。聞こえるままを真似で、それを丸暗記してうたう。
こりゃまた、すごいですね。私も音譜は全然よめませんが、ともかく目で活字を確認しないと頭に入ってきません。耳だけで丸暗記なんて無理です。ですから、語学も苦手なのです。
著者は小学生のころから、たくさんの映画をみていたそうです。私も親に連れられて映画館にはよく行きました。
著者もこの本に書いていますが、鞍馬天狗の映画では、杉作少年が悪漢に捕まりピンチになっているところを、白馬にまたがった鞍馬天狗が街道を疾走してくるのです。映画館内は騒然として、大人たちもみな立ち上がり、拍手、大拍手そして大歓声です。
拍手のなかで、鞍馬天狗は悪人どもをやっつけるのでした。胸がスカッとして、みんなで胸をなでおろして帰路に着くのです。その役者ぶりをみて著者は役者にあこがれ、一人で東京まで行ったことまであるというのですから、驚きです。
今日の著者をつくったのは、もちろん本人のその後の努力もあるでしょうが、少年時代に体験したことが生きているのだとつくづく思ったことでした。
西田敏行の初の自伝だということですが、私は仕事の行き帰りに、車を停めて「道の駅」でコーヒーを飲みながら一気に読了しました。至福のときでした。
ただ、心筋梗塞で倒れたりしたこともあるようですから、もう暴飲暴食はほどほどにして、今後も末長く役者人生を歩んでほしいと思いました。
(2016年11月刊。1600円+税)

進化

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 カール・ジンマー 、 出版  岩波書店
生物の進化に関する面白い興味深い話が盛りだくさんの大型本です。
ダーウィン・フィンチの写真があります。ガラパゴス諸島に生息するフィンチのくちばしが、こんなに異なっていることに驚かされます。ダーウィンは、これによってすべての生物は進化したのだと結論づけたのです。
人間が音を聞くのに使っている骨は、かつて人間の祖先がものをかむのに使っていた骨である。
化石から、鳥がどのようにして恐竜から進化してきたのかが分かる。羽は、恐竜の子孫たちが空を飛べるようになるはるか以前に、恐竜のからだに進化し、単純なトゲのようなものから、ふわふわした羽毛になり、最後には飛行中の動物を支えられるようになるまで、徐々に進化してきた。
羽毛をつくっている遺伝子は、もともとウロコをつくっていた。その後、皮膚の一部は、羽毛をつくるために使われるようになった。
光が眼に入ると、オプシンというタンパク質にぶつかる。オプシンは光受容細胞の表面にあり、それが光子をとらえると、一連の化学反応の引き金を引いて、光受容器が脳に向かって電気信号を送ることになる。
初期の眼は、おそらく明るいか暗いかが分かるだけの、実に単純な眼点にすぎなかった。ずっとあとになって、いくつかの動物に、光の焦点を合わせて像が結べる球状の眼が進化した。像が結べる眼にとって決定的に重要だったのは、光の焦点を合わせるレンズの進化だった。レンズは、クリスタリンとよばれる驚くべき分子でできているが、クリスタリンは、からだのなかでもっとも特殊化したタンパク質のひとつである。透明だが、入ってくる光線を曲げ、網膜に像が結ばれるようにする。クリスタリンは、また身体のなかでもっとも安定なタンパク質であり、その構造は何十年と変化しない。ちなみに、白内障は、老年期にクリスタリンが固まることで生じる。
古生物学者は、かつて存在したすべての種の99%が、この地球上から絶滅したと推定している。今日存在している昆虫のすべての料の50%が2億5000万年前にも存在していた。2億5000万年前に存在した四足(しそく)類のどのひとつの料も、現在は存在しない。
植物を食べる能力は、昆虫に大量の食料を提供する。植物を食べることが昆虫の多様性を爆発的に増やした。
動物はカンブリア紀に突然この地球上に降ってわいたのではない。進化してきたのだ。
鳥のメスは、単純なさえずりのオスよりも、複雑なさえずりを歌うオスを好む。カエルのメスは、夜間に小さな声で鳴くオスよりも、大きな声で鳴くオスを好む。
つがいを形成する鳥たちの多くは、見た目ほどには互いに対して忠実ではない。つがいを作っている鳥たちの巣にいるヒナのDNAを分析すると、しばしば、そのうちのかなりが、母親のつがいのDNAでないことが判明している。母親は、つがい相手以外のオスと交尾しているのであり、つがい相手は一生けん命そのヒナを育てている。
カモなどの水鳥の交尾の3分の1は強制交尾だ。ところが、望まれないオスが実際にヒナの父親になるのは、わずか3%でしかない。メスは、体内で精子をコントロールし、侵入者の精子よりもつがい相手の精子を優先させている。
夜の照明と飛行機による長時間の飛行は、ともにガンのリスクを上昇させる、ホルモン周期を撹乱させるからだろう。
学習した頭の良いハエは、15%も寿命が短くなる。より長く生存するのは愚かなハエのほうだ。うひゃあ、そ、そうなんですか・・・。
(2012年5月刊。5600円+税)

寿命はなぜ決まっているのか

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 小林 武彦、 出版  岩波ジュニア新書
寿命があるのはなぜか。これって、少し考えると簡単なのですよね。人間が不老長寿の存在だとしたら、新しい人間は生まれる必要がないし、生れたら、増える一方なので、住むところもないほど、あふれてしまうでしょう。
つまり寿命がないと、世代の交代はできない。新しい命が誕生できなくなり、進化も起こらない。
生命は淀みなく流れる川。常に入れ替わり、新しい流れをつくる。それが唯一、自分を育んだ集団を、ずっと先の子孫まで継続させる手段なのだ。
個人にとっては、寿命があることから何か寂しい感じがする。しかし、生命の連続性を維持するということでは、非常に積極的で、生物が若返るためには必須のもの。
動物と植物とでは、寿命を単純に比較することは出来ない。
動物は、基本的に身体を構成する、すべての細胞を維持することで「生きている」状態になる。
植物、ことに樹木の場合には、細胞分裂をしているのは、幹の外側や先端、そして葉や根の一部のみであり、ほかの細胞の多くは分裂しないか、既に死んでしまっている。
人間の脳には140億個の神経細胞がある、人間は赤ちゃんのときから1日に10万個ほどずつ死滅してしまう。平均寿命までに、20~30%の神経細胞が消えてなくなってしまう。
しかし、もともと脳は、その一部しか使っていない。だから、神経細胞の減少は、脳の老化の主要な原因ではない。むしろ、ある程度は数が減ることが神経細胞のネットワーク形成に重要なのだ。
人間の寿命について、またまた有益なアドバイスをいただきました。ありがとうございます。
(2016年2月刊。840円+税)

文明開化がやって来た

カテゴリー:日本史(明治)

(霧山昴)
著者 林 丈二 、 出版  柏書房
明治時代の実相を、当時の新聞の挿絵(さしえ)で紹介しています。なるほど、そうだったのかと、何度も頭を上下させてしまいました。
日本人って、活字大好き人間が多いですけど、今も新聞にはマンガが絶対に欠かせませんよね。新聞マンガと言えば、サザエさんにサトーサンペイに、今では「まんまる団地」ですね。
ザンギリ頭を叩いてみれば、文明開化の音がする。断髪令が出たのは明治4年。散切り頭の普及は、それなりにすすんだのですね。散髪普及率は、明治5年に10%、明治8年に20%、明治10年に40%、明治13年に70%。西南戦争は明治10年でしたよね・・・。
チョコレートが日本で売られたのは明治11年。風月堂は、日本で初めて西洋菓子の「ショコラート」、つまりチョコレートを販売した。明治19年の新聞広告には「チャクレッ」と書かれているが、これもチョコレートのこと。
明治11年7月の新聞に、風月堂は「アイスキリム」宣伝している。アイスクリームだ。50銭する。このころ、東京・銀座の店で氷水が一杯4銭だったので、一桁ちがう高さ。ところが、明治22年の挿絵では4銭にまで下がっている。
明治17年ころから、日本でも、いろいろビールが売られるようになった。
長屋では、「長屋の犬」として共同して犬を飼い、番犬にしたてあげ明治15年から19年にかけて、ピストル強盗が東京で連続して発生した。ピストルって、このころ、案外、容易に手に入っていた。
明治の生きていた人々の風俗を目で見て知るためには欠かせない本です。絵の訴求力は、たいしたものです。
(2016年10月刊。1800円+税)

アレクサンドロスの征服と神話

カテゴリー:アジア

(霧山昴)
著者 森谷 公俊 、 出版  講談社学術文庫
紀元前334年、アレクサンダー大王(本書ではアレクサンドロス)はマケドニアを出て東方遠征に出発し、わずか10年でギリシャから小アジア、フェニキア、エジプトさらには広大なペルシア帝国まで征服し、インダス川に至るまでの空前の大帝国を築いた。
なぜ、30代と若いアレクサンダー大王にそれが可能だったのか、そして、大王の死後たちまち大帝国が四分五裂してしまったのか・・・。
その謎を本書は解き明かしています。
アレクサンダー大王は、征服された側からみたら、まぎれもない侵略者だ。いったい何のための遠征だったのか・・・。反面、アレクサンダー大王は、諸民族・諸文明との平和共存を目ざしてもいた。
ところで、アレクサンダー大王の墓は発見されていない。各地に建設した都市アレクサンドリアもエジプトを除いて消滅してしまっている。
アレクサンダー大王の帝国は、変幻自在で、その中心は遠征軍とともに絶えず移動していて、留まることがない。そして、首都は、アレクサンダー大王のいる何ヶ月間かのことでしかなかった。
支配体制に一貫した原則は認められない。統治方法も、征服した都市や地域の多種多様な条件と伝統に適応して、多様だった。これを寛容政策と呼んでもいいが、放任とも言える。
アレクサンダー大王は、カメレオンのように姿を変えていった。まずマケドニアの王、エジプトのファラオ、バビロニアの王、そして、ゼウスの子であり、アモン神の子を自称した。
アレクサンダー大王は、すべてを星雲状態のままにして、この世を去った。
アレクサンダー大王を、マケドニア人将兵は絶対的に信頼していた。これが東方遠征の基礎だった。マケドニア軍の中核をなす騎兵部隊は、8隊1800人から成り、仲間とか朋友を意味するヘタイロイという美称をつけて、騎兵ヘタイロイと呼ばれた。
マケドニア歩兵には、ベゼタイロイという重装歩兵部隊があった。1500人の部隊が6隊、900人から成る。長さ5.5メートルにおよび長槍をもつ密集戦列を組んで戦う。前2世紀にローマ軍に敗れるまで、不敗だった。
そして、攻城塔をもち、石弾を打ち出す射出機をもって都市の城壁を攻め落とした。
ギリシア人はマケドニア人に制服された民族でありながら、アレクサンダー大王の帝国では支配者側の一員だった。しかし、両民族の間の壁は深いままだった。
アレクサンダー大王がペルシア帝国を倒して、そこを支配するときペルシア人を登用していったことに、マケドニア人たちの不満が高まった。
アレクサンダー大王は、旧ペルシア領を治めるには、ペルシア人貴族の協力が不可欠であることを認識していながら、肝心の彼らとの間に安定的な統治システムを構築することができなかった。
アレクサンダー大王は、将兵に対して機会あるごとに功績に応じた褒美を与え、部下たちを名誉のための競争へと駆り立てた。すべてのマケドニア人が追求したのは名誉だった。
すべての将兵の出世が王一人の決断に依頼している以上、宴会では側近同士が王の溺愛を求めて争い、激しいつばぜりあいを演じた。
古代マケドニアの社会は、ギリシアと同じく、男性同士の同性愛によって成り立っていた。アレクサンダー大王は、発病してわずか10日目で亡くなった。33歳になる直前だった。
アレクサンダー大王は、父の7回の結婚による騒動を経験しているため、王族の結婚は、王権にとって利益よりむしろ混乱をもたらすと考えたのではないか。自分が結婚すれば、妻の一族と、妹たちが結婚したら、その夫の一族との利害関係が王権にからんでくる。それによる王国の不安定化は避けなければいけないというのが父の結婚から学んだ教訓だった。そして、アレクサンダー大王自身が世継ぎをもうけて王朝を継続させようという観念をもっていなかった。22歳の大王は、まだ自分ひとりの名誉を追求することしか頭になかった。その代償は重かった。
結局、大王が死んだとき、まともな後継者がいなかった。それによって王家は滅亡するしかなかった。
とてもよく分かる分析がなされている文庫本でした。
(2016年2月刊。1230円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.