法律相談センター検索 弁護士検索

アマゾンと物流大戦争

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 角井 亮一 、 出版  NHK出版新書
 宅配便の便利さは捨てがたいものがあります。旅行のときには、行く先々で宅配便を利用して、読み終わった本を自宅へ送ります。そのとき、その地方の土産品も一緒に送るのです。すると、カバンの中は軽くなり、新しい本を求めることも出来るのです。
 日本の宅配サービスのレベルは非常に高い。全国どこでも、ほぼ翌日配送にすることができる。しかも、配達時間帯の指定ができる。アメリカでは時間指定はできないし、土日祝日もダメ。さらに、日本では、日時指定の再配達も可能。ただし、宅配便の現場では、再配達に泣かされているようです。
宅配便はヤマト運輸が突出した力をもっている。かつて40社もあった宅配便の会社が、現在では21社。そしてヤマト運輸(45%)、佐川急便(33%)、日本郵便(14%)で、上位3社で92%を占める。
トラック運転手の給料が低下したことから、トラック運転手の確保が難しくなっている。
アマゾンは、全品送料無料をやめた。アマゾンにとって、配達費の増加は悩みのタネ。
アメリカでは、アメリカの通常配送は注文してから3~5営業日以内というのが標準。
 アマゾンは、単なるネット通販企業から、巨大なグローバル企業に代わった。アマゾンは、あらゆる手段を用いて物流を効率化し、それを低コストでの運用につなげている。アマゾンは、新車や中古車といった自動車まで売り始めている。
ネット通販では、お客が選んだ商品を販売している側が倉庫から取り出し、丁寧に梱包し、お客の自宅へ宅配する手続きをしなければいけない。誰が1220万もの膨大な品目の中から注文された商品をピッキングし、大きさも材質もさまざまな商品を梱包し、配送するのか。もちろん、それをするのはアマゾンであり、ネット通販会社である。
ロジスティクスでビジネスを制している企業として、著者は、ヨドバシカメラ、アスクル、カクヤスなどをあげています。
 私の事務所でも、アスクルは頻繁に利用しています。やはり便利さにはかないませんから・・・。
(2016年11月刊。740円+税)

進化しすぎた脳

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 池谷 裕二 、 出版  講談社ブルーバックス
 脳学者が、ニューヨークで日本人の高校生を相手に講義した内容が本になっていますので、とても分かりやすく、知的刺激にみちています。実は、私も高校生のころ、一瞬でしたが大脳生理学を研究してみたいなと思ったことがありました。その直後に、理数系の頭をもっていないことを自覚して、たちまち断念したのですが・・・。
 脳は、場所によって役割が異なる。同じ聴覚野でも、内部では、漠然と音に反応しているのではなくて、ヘルツ数順にきれいに並んでいる。たとえば、5番目の視覚野は、動きを認知する場所。ここが壊れると、動いている物が見えなくなってしまう。
網膜から出て、脳に向かう視神経は100万本ある。多いようだけど、デジカメで100万画素というと、今では少ない。100万本は多いとは言えず、それだけなら、ザラザラ、ガクガクしているはず。テレビやDVDは1秒間に30コマ。映画は、もっとコマ数が少なくて、1秒間に24コマ。
 人間の脳は10ミリ秒というのが時間解像度だ。人間にとって、100分の1秒より小さい桁には意味がない。10ミリ秒で、もう十分に「同時」ということになる。
テレビ画面を虫めがねで拡大してみると、「赤・緑・青」の画素がびっしり並んでいるのが見える。人間が識別できる色の数は数百万色。
 世界を脳が見ているというより、脳が人間に固有な世界をつくりあげているというほうが正しい。
視神経のなかで、上丘で見ているものは、意識には現れない。上丘は、処理の仕方が原始的で単純だから、判断が速くて正確だ。
 サルは、人間が意図的に言葉を教えなければ、絶対に言葉を覚えない。サルは、自分たちのコミュニケーションの中でシグナル(信号)は使うけれど、もっと高度な言葉を自分たちで産み出したりはしない。人間に教えられた、ある意味で不自由な状態にならないと、サルは言葉を覚えない。
下等な動物ほど、正確な記憶をもち、ひとたび覚えた記憶は、なかなか消えない。
人間の身体の細胞は60兆あるが、速いスピードで入替わっている。身体の細胞は3日もたったら、乗り物としての自分は変わっている。脳は、そんなことにならないように、つまり自分がいつまでも自分であり続けるために神経細胞は増殖しない。
神経細胞にとって、もっとも重要なイオンは、ナトリウムだ。恐らく生命が誕生したときに、ナトリウムイオンがまわりにたくさんあった。海だ。生命は海で誕生したと言われている。そこで、もっとも利用しやすかったのがナトリウムイオンだったのだろう。
 神経線維と神経線維が接近しているが、間にすきまがある。その極端に狭い特殊な場所で、神経細胞同士が情報をやりとりしている。その場所をシナプスと呼ぶ。シナプスは、ひとつの神経細胞あたり1万もある。シナプスのすき間はすごく狭い。1ミリmの5万分の1。つまり、20ナノメートルしかない。神経伝達物質が一つの袋のなかに数千個から1万個もぎっしりと詰まっている。人間の記憶や思考があいまいなのは、シナプスに理由がある。
脳の神秘が、こうやってひとつずつ明らかにされています。そうは行っても脳の働きが完全に究明されるのは、まだまだ遠い未来の話のように思えます。
 大脳生理学の到達点について、高校生と一緒に学ぶことができました。
 
(2016年2月刊。1000円+税)

世界が認めた「普通でない国」日本

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 マーティン・ファクラー 、 出版  祥伝社新書
 日本をよく知るアメリカ人が、日本の憲法は素晴らしい、その先駆的な意義を日本人はもっと自覚して大切にすべきだと強調している本です。
 著者は、ニューヨーク・タイムズの東京支局長を長くつとめていたアメリカ人です。
 アメリカの小学生のとき、テレビで日本のアニメ「マグマ大使」をみていて、なぜ怪獣をやっつけるために軍隊が出てこないのを不思議に思っていたといいます。もちろん、日本に軍隊がないから、軍隊なんて出てこれないわけです・・・。
 パクス・アメリカーナで一番優等生だったのが日本。パクス・アメリカーナの可能性をフルに活用して、日本は豊かな富と社会の繁栄を勝ちとった。
アメリカ軍が世界各地に基地をもうけて軍隊を駐留させる体制は、戦後の東西冷戦下で構築されたものだから、冷戦終結後すでに20年以上たった今日、いつ終わってもおかしくない。
トランプ新大統領の言葉は一種のモーニング・コールだ。日本は、トランプ現象について、日本が目覚めるための刑法だと受けとめたらいい。
トランプ現象とは、アメリカが世界の警察官であることに疲れたということを意味している。
 日本は戦後ずっと平和に徹してきたことによって、ある意味での貯金・資源の蓄積がある。それは捨てないほうがいい。日本は普通の国になるべきではない。世界から日本のこれまでの生き方を評価されているのだから、慎重に動いた方がいい。
 日本は、世界から高く評価されている。世界で日本ほどイメージのいい国は少ない。これほど高く評価されているのは、日本とスイス、そしてスウェーデン、カナダくらい。このことに、多くの日本人は気がついていない。
 今の天皇は、戦後日本のアイデンティティーをそのものだ。天皇の発言によって歴史修正主義の動きにも歯止めがかかっている。その意味では、道徳的なリーダーでありながら、政治的な存在でもある。
 ところが、日本のメディアは天皇の発言をあまり大きく伝えていない。安倍政権の権力が大きいので今の日本では自由に議論できない状況になっている。メディアは安倍政権の意向を忖度(そんたく)して、安倍政権が難色を示すような報道は自粛している。そんな情けない状況にあるメディアは権力からもっと自立することが求められている。
 日本の政治が機能していない大きな理由の一つが、日本のメディアが本来の役割をはたしていなことにある。報道の自由度ランキングで日本は世界11位から、なんと72位まで後退している。実におぞましい状況です。悲しくなります。
 アフリカに今、日本の自衛隊員350人が行っています。何のためでしょうか。日本の企業がアフリカに進出するのを助けるためなのでしょうか。アフリカの平和構築に役立ちたいと本気で日本が思うのなら、アフガニスタンにおける中村哲医師のような、地道な民生支援こそするべきではないでしょうか・・・。
 この本は、日本人は、もっと真剣に国のあり方について議論すべきだと提起しています。私はまったく同感です。とても読みやすくて、しかも内容の濃い本です。サッと読めますので、強く一読をおすすめします。
(2016年12月刊。800円+税)

負けを生かす技術

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 為末 大 、 出版  朝日文庫
私はテレビを見ませんし、オリンピック競技にも関心がありませんので、著者のことはまったく知りません。陸上トラック種目で日本人として初めてメダルをもらった選手のようですね。
オリンピックに出場した体験にもとづいた言葉は、それなりに重みがあります。
オリンピックに出場した選手のほとんどは、オリンピックにいい思い出をもたないで生きていくことになる。 
勝つことの難しさ、負けを乗りこえながら生きていくことの大切さを味わう。勝つ人は、ほんの一握りにすぎない。
オリンピックでは勝たなければいけないという空気が日本ほど強い国は少ない。メディアが一気に騒ぎたてる。どうしても気にしてしまう。
プレッシャーの正体は、外から自分がどう見えているのかを気にしているということ。これを無視できるかどうか、が問われる。
失敗や挫折と同じように、成功もきちんとリセットしていかないといけない。これができるかどうかで、実は人生が大きく分かれていく。
生き残っていくためには、しばし立ち止まって、まわりを眺めてみることが必要だ。今の時代だからこそ、淡々と、ひょうひょうと、世間から距離を置いて生きていくことが大切だ。何が失敗で、何が成功なのか、実は長い人生においては簡単には分からないこと。
失敗を肯定し、失敗して良かったと思えることを、ひとつでも見つけることが大切。それが出来るかどうかが人生を分ける。
私は、失恋もそうだと考えています。失恋しても、だからこそ人間を、自分を見つめ直すことが出来たとしたら、それはそれで素晴らしいことではないかと考えるのです。
不条理、不合理にみちみちている世界、それが世間の現実だ。それと、いかに向きあうかそれが私たちの課題となっている。
「間違えました」と宣言して改められる人は強い。なぜなら、何度でもチャレンジできるから。だから、いかに早い段階で間違いを認められるか、それがとても重要だ。何かの目標を立てたら、それ以外は全部を捨ててしまう。
私は、たくさんの本を読む、具体的には年間500冊以上の単行本を読むと決めていますので、テレビを見るのはやめ、見るスポーツも、歌番組も、一切やめた生活をしています。
それでも本人としては、大いに満ち足りた生活を過ごしています。
明確な目標に向かって、毎日をいきいきと生きるという報酬が既にある。
私は、この言葉にまったく同感です。
どこまで行っても、人生は賭けなのだ。
本当にそうなのでしょうね。たった一度の人生ですから、お互い、やりたいことを精一杯やって生きたいものです。私より30歳も年下の人だとは思えない指摘ばかりでした。さすがオリンピックの、苦労して栄冠を勝ちとったメダリストの言葉は違いますね。
(2016年7月刊。640円+税)

日本会議と神社本庁

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 「週刊金曜日」・成澤 宗男 、 出版  金曜日
先日(2016年12月)、柳川市議会で憲法改正を求める請願が可決されたという報道がありました。恐らく、これも日本会議が全国ですすめているものの一環なのでしょう。
アメリカ軍のオスプレイが墜落しても文句ひとつ言えない哀れな安倍政権のメンバーが、日本国憲法はアメリカの押しつけだから良くないなんて言っているのですから、その頭の中はどうなってるんでしょうね。
日本会議の三代目の会長は、三好達という元最高裁長官です。この三好達という人物を私はよく知りませんが、憲法改正を求める右翼団体のトップに名前を出すとは、本当に情けない話です。いったい、裁判官在任中には日本国憲法をどう考えていたのでしょうか。こんな憲法なんて、守るべき価値はないとでも考えていたのでしょうか。もし、そうだとしたら、最高裁長官になったのは、明らかに間違いです。在任中はそうでもなかったけれど、退任してから考え方を変えたというのなら、明らかに老害というべきでしょう。
日本会議、福岡の役員構成が紹介されています。
九州電力の会長(松尾新吾)やJR九州の相談役(石原進)の名前も見えます。石原進っってNHKの経営委員長ですよね。NHKが右寄り偏向していると批判される根拠でもありますね。
福岡は、他県と違って宗教関係者が少なく、地元経済界関係者が中心になっている。なぜ福岡の地元経済界は平和憲法攻撃に手を貸しているのでしょうか。理解できません。韓国や中国との経済意交流を強めようと言っているはずなのに、こんなことでは二枚舌をつかっているとしか思えません。外国から信用されないような言動はやめてほしいですよね。
目が離せない、日本の平和と安全をこわす危ない団体の一つです。
(2016年8月刊。1000円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.