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みつばち高校生

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 森山 あみ 、 出版  リンデン舎
長野県富士見高校には全国でも珍しい「養蜂部」がある。そこで飼っているハチは外来種の西洋ミツバチではなく、日本在来種の日本ミツバチ。
そして、創立以来3年目にして全国大会で優勝したのでした。快挙というほかありません。
全国大会というのは、日本学校農業クラブ全国大会です。いわば農業甲子園なのです。そこで発表した報告のタイトルは、「ニホンミツバチで笑顔広がるまちづくり」です。
富士見高校は、長野県の諏訪地方にある、全校生徒300人という小さな高校です。
ミツバチは、女王蜂を中心とした集団生活を営んでいる。春から夏にかけて群れの中に働き蜂が増え、巣が手狭になると、女王蜂は次に女王となる卵を産む。そして、これが孵化する少し前に、半分の働き蜂を連れて別の場所へ飛び去る。これがミツバチの巣分かれ、分蜂(ぶんほう)である。養蜂家は、分蜂した群れを捕まえて、群れを増やす。
もし、地球上からハチがいなくなると、人類は4年以上は生きていけない。世界の農産物の3分の1が昆虫による受粉によって成り立っている。そして、昆虫の8割をミツバチが占めている。
日本ミツバチは、昔から日本に生息する在来種。気性はおとなしく、寒さや病気に強い反面、巣の環境が気に入らないと、集団で逃げてしまう。これを逃去(とうきょ)という。
日本ミツバチは、人間が家畜として飼いならすことはできない。そして、日本ミツバチは西洋ミツバチと違って売られていない。
日本ミツバチの群れには8千から1万匹のハチがいる。働き蜂の寿命は、およそ4週間。
日本ミツバチから蜜をとるのは年に1回だけ。西洋ミツバチのようにたくさんはとれない。
一匹のミツバチが一生かかって集められる蜜の量は、ティースプーン1杯ほどでしかない。
農業甲子園に出場し、優勝の栄冠を見事勝ちとるまでの苦難の日々がよく紹介されています。ブラスバンド、チアダンスそして養蜂と、日本の高校生も捨てたものではありません。そして、指導した教師の粘り強さにも頭が下がります。心から拍手を贈りたいと思います。
(2016年3月刊。1500円+税)

わたしは、こうして執事になった

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ロジー・ハリソン 、 出版  白水社
『おだまり、ローズ』というイギリスの貴族にメイドとして仕えていた女性の回想記を前に紹介したと思いますが、同じ著者が同業の執事たちの話をまとめた本です。イギリスの貴族たちの日常生活を垣間見ることができる点という点で面白い内容です。
貴族は、朝は使用人が運んでくる紅茶をベッドの中で飲み、着替えやヒゲソリさえも使用人の助けを借りる。
華やかなディナー・パーティーでは、すべての参加者は会話を絶やしてはいけない。右側に座っている人とひととおり会話をしたら、ころあいを見はからって左の人とも会話をしなくてはいけないのだが、そのタイミングはなかなか難しい。
これって、貴族じゃなくても日本の食事会でも共通する課題ですよね・・・。
食事が終わると、女主人は食卓を囲んでいる女性たちに視線を送り、女性は全員すっと立って食堂から応接間に移る。言葉を使わず、目線だけで退場のメッセージを送り、女性の客も、「そろそろだな」と思うと、女主人を注目しなければいけない。残った男性たちは、ポートの瓶を回し、政治や「淑女には聞かせられない」話をひとしきりしてから、応接間に向かう。こうしたしきたりを知らない客は恥をかくことになる。
夜食つきのパーティーが開かれるときには、使用人は午前2時前にベッドに入れる見込みはまったくなく、朝は遅くとも7時には起きなくてはならない。
イギリスのご婦人は、旦那様はしょっちゅう替えるけれど、執事は絶対に替えない。
金持ちや貴族のモラルを批判する世の人々は、彼らが常に誘惑にさらされていることを忘れている。ストレスを受けて心が乱れた雇い主は、ときに立場を忘れ、身近に仕える使用人の意見や助言を求めることがある。しかし、従僕にとって、見ざる、聞かざる、言わざるが一番よいこと。
秘密を守れない人物とみなされた従僕は、どこでも雇ってもらえない。
上の人も、下の人も、それぞれ苦労は尽きないということのようです。
(2016年12月刊。2600円+税)

また、桜の国で

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 須賀 しのぶ 、 出版  祥伝社
第二次大戦前のヨーロッパが舞台です。
ナチス・ドイツが台頭しつつあり、戦争に向けて緊迫した状況が生まれています。
ヒトラーがイギリスのチェンバレン首相と笑顔で握手します。チェンバレン首相が見事にだまされたわけです。
ポーランド人の父と日本人の母のあいだに生まれた青年が、外交官としてワルシャワの日本大使館で働くようになります。
第二次大戦のとき、ポーランド人の戦災孤児56人が日本へやってきて、日本は温かく彼らを迎え入れ、育てて本国へ送り返したということもありました。私は、ワルシャワ蜂起について日本人の書いた本で、そのことを知りました。この本にも、その親日ポーランド人青年が登場し、活躍します。
ポーランドの孤児たちは4歳から12歳までだったので、たちまち日本語を習得した。そうなんですよね。子どもの頭の柔らかさは、万国共通、まったく変わりません。私の孫の一人も、いま、日本語と韓国語を上手に使い分けて育ちつつあります。大人には、とても出来ない芸当です。
1939年10月1日、ナチス・ドイツ軍がポーランドに侵攻し、ワルシャワを占領した。ポーランド軍が降伏したのは9月28日だった。
ワルシャワにある日本大使館に所属する外交官として、ナチス・ドイツのユダヤ人迫害に対して、いかに対処するか、難しい決断が迫られます。同じころ、「センポ・スギハラ」は勇気ある決断をして、いま高く賞賛されています。
ワルシャワ市民がナチス・ドイツ軍に抗して蜂起して立ちあがります。しかし、その結果は無惨なものでした。スターリンが意図的に見殺しにしたのです。
歴史をふまえて、人物がよく描かれている小説だと思いました。ワルシャワ蜂起の実情については、このコーナーで何冊か紹介していますが、その素材をもとに想像力で補ってストーリーをつくりあげる著者の筆力たるや、たいしたものです。さすがは直木賞候補作だと思いました。
(2016年10月刊。1850円+税)

安倍三代

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 青木 理 、 出版  朝日新聞出版
安倍首相の国会答弁のひどさは、一言でまとめると、えげつないということになります。国民に対して、論争点を誠実に説明しようという気がまるでありません。そのくせ口先では説明責任を丁寧に尽くしたいとは言うのですから、救いようがありません。
どうして、こんなに不誠実を絵に描いたような首相の支持率が5割をこえているのか、世の中の七不思議のトップに来ます。
この本は、安倍首相がどういう育ちなのか、いつからそうなのかに迫って、解明しようとしています。
安倍首相には受験戦争の経験がまったくない。成蹊学園の小学校に入り、中学、高校、大学までの16年間を過ごした。そして、同じ学年やクラスを一緒にした人、そして教える側の教員にまったく印象を残していない。
可もなく不可もなく、どこまでも凡庸で、なんの変哲もない、おぼっちゃま。
ごくごく普通の「いい子」だった。成績が悪かったわけではないが、決して優秀でもなかった。東大は無理だったし、早稲田や慶応も恐らく無理だったろう・・・。
アーチェリー部に入っていたか、とくにいい成績もあげていない。アメリカに行ったけれど、その実態は語学留学に毛のはえた程度にすぎない。
若き日の晋三は、16年も籍を置いていた学び舎で何かを深く学んだという形跡がまったくない。少なくとも、何かを深く学んだと教員や周囲の人間から認識されていない。何かを学んだという印象すら残していない。特筆すべきエピソードがない。悲しいまでに凡庸で、なんの変哲もない。善でもなければ、強烈な悪でもない。
母方の祖父である岸信介には溺愛された。では父の晋太郎はどういう政治家だったか。
晋太郎は、タカ派の系譜を継ぎつつも、実際には、平和憲法擁護論者だった。
晋太郎には戦争体験があった。特攻を志願し、もう少し戦争が長引いていたら、生命がなかったかもしれなかった。
晋太郎には、必死で地盤を耕したことに由来する目線の低さ、なによりも絶妙のバランス感覚があった。特攻に散る寸前だった戦争体験は、晋太郎の基底に強固な反戦意識を形づくっていた。晋太郎は東京帝国大学法学部に入学したものの、学徒出陣で海軍の滋賀航空隊に徴兵された。
さらに晋三の祖父・安倍寛はどうか。
安倍寛は戦前、東京帝大法学部を卒業し、村長を経て衆議院議員に当選している。
それも、大政翼賛会の推薦ではなくて無所属として・・・。安倍寛は、貧富の格差を憤り、失業者対策の必要性を訴えた。ええっ、これって無産政党の主張と同じではありませんか・・・。
安倍寛は、村長をつとめていた日置村では98%もの票を独占した。特高警察の干渉にもめげず、1942年にも2度目の当選を勝ちとった。
安倍寛は、大政翼賛会に反対し、裸一貫で東条英機に反対した。ところが、安倍寛は惜しいことに戦後、1946年に51歳で病死してしまった。
安倍家三代で、今の晋三は、祖父にも父にも似ていないことがよく分かる本です。
恐らく晋三には強烈な学歴コンプレックスがあるのでしょう。それを見せないためにも強がりを言い通すしかないのです。でも、それで迷惑を蒙る国民は、たまったものではありません。安倍家の三代をよくぞ調べあげたものだと思います。
決してキワモノ、決めつけ本ではありません。ご一読をおすすめします。
(2017年4月刊。1600円+税)

超一極集中社会アメリカの暴走

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 小林 由美 、 出版  新潮社
アメリカの暴走は恐ろしい限りです。シリアへトマホーク・ミサイルを撃ち込みましたが、明らかに国際法に違反する犯罪行為です。ところが、日本のマスコミは問題にせず、シリア政府軍がサリンを使って子どもたちが死んでいる事態を看過できないと考えたというトランプの言い分だけを大きく報道しています。
仮にシリア政府軍が残虐行為をしていたとして、なぜアメリカ軍がミサイルを撃ち込んでいいのでしょうか。それだったら、北朝鮮が収容所内で自国民を虐待しているとして、平壌市内にアメリカ軍がミサイルを撃ち込んでもいいことになります。いくらなんでも、それはないでしょう。
なぜ、そんな暴走をアメリカはするのか。それは、アメリカの支配層が超大金持ちだけからなっていて、それをプア・ホワイト(貧乏な白人層)をふくめて多くのアメリカ人が他人事(ひとごと)のように相手し、支持しているからです。
アメリカの上位0.01%、1万6500世帯の平均年収は29億円。上位0.1%、16万世帯、60万人でみると6億円。上位1%、149万世帯は1億2600万円。残る99%の国民の所得は減り続ける一方である。むしろ、借金のシェアを増やしている。
アメリカのエリート大学に入る間は一段と狭くなっている。エリート大学に入るためには、家族ぐるみで、長年にわたって特別な努力が必要となる。ユダヤ人と中国人がそれをこなしている。エリート大学に入学するには、勉強が出来るだけではダメ。スポーツやボランティア活動そしてパーティ、さらには大学への寄付など、簡単ではない。
エリート大学の授業料は高い。スタンフォード大学は年に470万円で、このほか学生寮に入ると、700万円はかかる。卒業までに3000万円を要する。
アメリカでは、授業料の高さは、大学の質の高さと考えている人が多い。いやな国ですね。ヨーロッパを見習ってほしいです。
アメリカでは、大学に進学する人の60%以上が学生ローンを利用している。この負債は学生が自己破産しても免責されず、債務が消えることはない。
アメリカの製造業が回復しているのは、シェールオイルやシェールガスの発掘が急増し、石油製品の製造も増えているため。
ヘッジファンドは運用資金の2%を手数料としてもらうほか、別に運用益の20%を成功報酬としてもらう。したがって、ヘッジファンドに投資すると、1年目には元金が減っている可能性が高い。
金融機関の多くは、預金者や事業者、経済、社会に対するサービスには関心がない、また、それを犠牲にしてまでも自らの利益追求に走っている。
今では資本市場は、資金をもつ人たちのカジノと言うのが実態に近い。したがって、「投資ファンド」ではなく、正直に「浪費ファンド」とか「ウォール街雇用ファンド」、「分の悪いギャンブルファンド」という実態を反映した名称で呼ぶべきだ。
グーグルはメールを全部保存していて、コンピューターで、読みとって、さまざまな情報を抜き出し、分析して、ターゲット広告に利用したり、データとして販売している。
グーグルの売上7兆5000億円(2015年)の大半は、データを活用した広告宣伝収入と、データを販売した売上収入である。
フェイスブックは情報資産が1兆8000億円の売上収入をもたらした。
データ量がこれだけ膨大になり、そのデータの販売がビックビジネスになったのは過去10年内のこと。
世界のインターネット広告は15兆1600億円で、グーグルは44%、フェイスブックは8.5%、バイドウは5.8%。この3社をあわせると、6割近い58.3%のシェアを占める。
この本は、ネット情報を売り物にしている企業が巨大な利益をあげていますが、ネットで情報をじっとみていても考える力はつかないと警告しています。たしかに、というか、なるほど、そうだろうなと私は思いました。
事実に即した、大変に迫力のある本でした。ぜひ、ご一読ください。
(2017年3月刊。1500円+税)

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