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鳥を識る

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 細川 博昭 、 出版  春秋社
鳥だって夢を見るし、寝言をいうというのです。ええっ、ま、まさか・・・と思います。しかし、たしかに人間と話せる鳥がいるのは間違いありません。
あくびだって、人間と同じように移るのです。セキセイインコで確認されています。
インコ科のヨウムという鳥は、うるさい音をたてる人間に対して「あっちへ行け」と叫んだり、用があるときには「ここに来て」とお願いすることができました。鳥と人間とのあいだで、対等に言葉をつかってのコミュニケーションが成り立つことが実証されたのです。アレックスと呼ばれた、このヨウムは31歳で亡くなってしまいましたが、人間との会話が自由にできていました。
人間の場合、遊びをするのは大人になる前の子ども。ところが、鳥だと、遊ぶのは基本的に成鳥(大人)。脳が発達していくにつれて、遊びたがるようになり、その遊びも高度になる傾向がある。つまり、鳥は人間と同じで、遊ぶのです。
そして、鳥のなかには、道具をつくる文化をもつものもいます。ニューカレドニア島のカレドニアガラスは、エサをとるための道具を自分でつくり、それを使いこなします。
鳥のなかには、人間の音楽にあわせて声を出しながら全身で踊ってみせるのもいます。スノーボールと呼ばれるキバタンの動画がユーチューブで確認できます。
現在、世界には3000億羽の鳥がいる。最小のマメハチドリは体長5センチ、体重はわずか1.7グラム。もっとも大きいワタリアホウドリは、翼を広げると、3.7メートル。ダチョウの体重は100キログラムをこえる。
私が小学生のころ、我が家でもジュウシマツを飼っていました。ジュウシマツは江戸時代の日本で品種改良して誕生した小鳥です。わずか200年間で、祖先の鳥(コシジロホンパラ)には認められない複雑なさえずりを展開するようになった。
鳥の祖先は恐竜だというのは、今では確定した定説です。でも、不思議なことですよね。絵本に出てくる超大型恐竜が絶滅したのではなくて、鳥として今も生き残っているというのです。
鳥を識るというのは、人間を識り、生物を識るいうことだと思いました。
(2017年3月刊。1900円+税)

凛とした小国

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 伊藤 千尋 、 出版  新日本出版社
コスタリカ、キューバ、ウズベキスタン、ミャンマーの良さは日本も大いに学ぶべきだと思いました。とりわけ世界有数の自然環境保全国でもあるコスタリカの話は感動的です。心が揺さぶられます。
コスタリカは、「世界で一番、幸福な国」で1番にあげられている。日本は、51位でしかない。コスタリカは、1949年、日本に次いで世界で2番目に平和憲法をもった。日本と違うのは、本当に軍隊をなくしてしまったことです。それまで、軍事費が国の予算の3割を占めていたのを、そっくり教育費に充てました。教育も医療も無料。兵舎(参謀本部)は博物館になりました。軍艦も、戦闘機も戦車ももっていない。警察と国境警備隊はある。ただし、いざとなれば、自衛のための軍隊は結成できることになっている。
コスタリカは、周囲の国で内戦が続いたけれど、幸い平和な国であり続けた。「自分たちにとってもっとも良い防衛手段は、防衛手段をもたないこと」
私は、まさしく本当だと思います。決して「平和ボケ」のコトバではありません。
コスタリカでは、大統領選挙があると、小中学校はもちろん、幼稚園児も模擬投票する。
コスタリカでは、小学校に入ると、子どもたちは、「だれもが愛される権利をもっている。この
国に生まれた以上、あなたは政府や社会から愛される」と教えられるそうです。
日本でも道徳教育のときに、これを教えたらいいと私は思います。
そして、コスタリカでは憲法訴訟が1年間に2万件近く提起され、最終的に2割近くが違憲
だと判断されるといいます。これはともかくすごいことです。
 コスタリカは周辺国からの難民もすべて受け入れており、400万人だった人口が500万人になったそうです。信じられない数字です。
 コスタリカの人々は、幸せな社会を自分たちでつくりあげているという意識にみちているようです。すばらしいです。
 先日の国連における非核平和条約を制定する議会でもコスタリカの女性が委員長として大活躍していましたよね。日本も平和憲法、9条をさらに実現する運動が必要だと思います。
 ほかのキューバ、ウズベキスタン、ミャンマーについては、ぜひ、本書を読んでみて下さい。読んで決して損はしない本です。
(2017年5月刊。1600円+税)

私の愛すべき依頼者たち

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 野島 梨恵 、 出版  LABO
若手弁護士の奮闘記。なるほど面白いです。文才があるのでしょう、読ませます。
私の敬愛する中村元弥弁護士(旭川)の推薦文がついています。
クマチン先生こと中村弁護士は読み手の弁護士を挑発します。自分の扱った事件を、この本くらいに面白く伝える工夫と努力をしたか、そんな才能をもってるかと問いかけるのです。
すみません、たしかにそんな文才がないので、相変わらず、しがない田舎弁護士を続けています。
われらがノジマ弁護士は北海道は旭川ではなく、さらに士別市で法律事務所を開業します。旭川には行ったことが何回もあります(旭山動物園にも2回・・・)が、士別市には行ったことがありません。冬は大変のようです。自動車の運転は生命がけなのですね・・・。
そして、ノジマ弁護士も、冬道でスリップして死にかけ、夏にはスピード違反で、危く被疑者、被告人そして免許取消へ・・・(そうはなりませんでした・・・、えかった、えかった)。
私は国選弁護人として、ヤミ金をやっていた若者を弁護したことがあります。暴力団とは関係のない若者がネット情報だけで、ヤミ金をやっていたという調書を読んで驚き、かつ呆れました。
ノジマ弁護士は振り込め詐欺の一味に加わった若者の国選弁護人になるのです。「週休2日で手取り月収30万円。毎日、電話をかけるだけ」。こんなおいしいキャッチフレーズ求人誌にのっているそうです。今どきありえない好条件ですよね。何かウラがあるに決まっています。いったん入ったら、抜けようとすると、リンチされること必至のヤクザな暗黒世界。本当に怖い世の中です。そして、そんな若者の伴侶は、ベターハーフと言えるのか、単なる金の成る木なのか・・・。金の切れ目が縁の切れ目、男は実刑になって刑務所に行き、よよと泣いていた女はすぐに別の男を見つけて・・・。
こんなストーリーを短編で見事に描けるわけですから、文才のあること間違いありません。
刑事弁護人の次は、家事代理人。北海道は、九州と同じく離婚率が高くて有名です。雪に閉じ込められて冬にはすることがなくなるので、離婚が多いというのです。では九州・沖縄で離婚事件が多いのは、どうしたわけでしょうか・・。
北海道では不貞は、すぐにばれる。なぜか・・・。
第一に、人口密度が低いから、目立つ。
第二に、行動が車なので、所在が知られやすい。
第三に、デートする場所が限られている。
ふむふむ、ここでは不倫しようったって、すぐにバレそうなんですが、そこは恋は盲目なので・・・。そして、ノジマ弁護士は断言する。それこそ、まさしくメシの種。弁護士たるもの、正面切って、このどろどろの中に頭から突っ込んでいって、成功報酬を勝ちとらなければならない。
うんうん、そうなんですよ、ノジマ先生・・・。
そして、そうやって、このどろどろとした状況と、どろどろに浸り切った依頼者とに真正面から取り組んでいけば、きっと、それからの弁護士の長い人生の糧(かて)になるのです・・・。
交渉にのぞむときには、ぎりぎりに約束の時間位飛び込むのはまずい。交渉の舞台には先に到着しておくべき。交渉の場所と空気にある程度慣れ、ここに相手が来て、やりとりをする場所を想像して、イメージトレーニングをしておく。これが大切。
いやあ、ノジマ弁護士の言うとおりなんですよ。私も、絶えず、イメージトレーニングをしています。もちろん、すべては想定どおりにはいかないのですが、それでもそれができるくらいの心の余裕があるのがいいのです。
ノジマ弁護士は、今は東京で活動しているとのことですが、田舎弁護士の良さを忘れないでほしいものです。
(2017年6月刊。1500円+税)

スパイの血脈

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ブライアン・デンソン 、 出版 早川書房
信じられない実話です。アメリカ軍の兵士がCIAに入り、アメリカという国を守って活動しているうちに、家族(子ども)を守るためと称して、お金のためにソ連(ロシア)にCIAの機密情報を売り渡し、それが発覚して刑務所に入ったあと、今度は、その息子が父親に頼まれて同じようにロシアに父親からの情報を流して大金をもらっていたというのです。この息子もアメリカ軍の兵士でした。いやはや、スパイが父親相伝することもあるのですね。信じがたい実話です。
父親のジム・ニコルソンは1980年にCIAに入ったあと、マニラ、バンコクそして東京で勤務したあと、ブカレスト支局長に昇進した。そして、1994年、クアラルンプール駐在時にロシアの情報部員に接触し、情報を売り渡すようになった。そのあと、CIAの訓練所の教官になり、監視のためCIA本部につとめていたところを1996年に逮捕され、翌1997年に懲役23年7ヶ月の判決を受けて刑務所に収容された。
ここで物語が終わらないところが本書の目新しさです。父親がスパイとして逮捕されたとき12歳だった息子のネイサンを、受刑して7年後に、父親は獄中からロシアに連絡することが出来たのです。それほど、父子の関係は親密でした。ちなみに妻(母)とは離婚して音信不通、他の姉兄は関わってはいません。
いったい、刑務所に入れられた元スパイのもたらす情報がいかほどの価値があるものなのか、門外漢には理解できないところですが、ロシアのほうは気前よく100万円単位で息子に報酬を支払っていました。つまり、スパイを摘発したときのCIAの人事・役割分担などについて知ることはロシアにとっても有益な情報だったということです。
それにしても、CIAにはロシアに情報を売るスパイがいて、ロシアのKGBにもアメリカへ情報を流すスパイがいたというのに改めて驚かされます。いずれも、イデオロギーより、金銭目当てのことが多いようです。
本書の主人公の父親も妻と離婚し、子育てにお金がかかり、新しい女性との交遊のためにもお金がほしかったようです。
父が、子どもたちを養うためにロシアのスパイになったと高言したとき、それを聞かされた当の息子はどのように受けとめるのでしょうか・・・。
息子のネイサンは実刑判決ではなく、5年間の保護観察と退役軍人省での100時間の社会貢献活動が命じられただけだった。
CIAとFBIの関係、そしてKGBとその後身の関係も興味深いものがあります。
スパイする人、その家族、その監視をする人、その家族、いずれもフツーの平凡な家庭生活は保障されていないのですね。大変な職業であり、仕事だと思いました。だって、対象者の会話を24時間ずっと盗聴して異変をつかむのが仕事だというのって、やり甲斐というか、生き甲斐を感じるのでしょうか・・・。私にはとても我慢できませんね・・・。
人間の本質を知ることのできる貴重な本だと私は思いました。
(2017年5月刊。2000円+税)

シリアからの叫び

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ジャニーン・ディ・ジョヴァンニ 、 出版  亜紀書房
シリアで内戦が始まって、もう何年にもなります。
「戦争は、いつ終わるの?」 この子どもの素朴な質問に対して、「もうじき終わるのよ」と答えるとき、胸が痛むと書かれていますが、まったくそのとおりです。シリア内戦が始まってからの5年間で、シリア国民の平均寿命が79.5歳から55.7歳にまで20年以上も縮まったとのこと。哀れです。
推定死者は47万人。負傷者は190万人。殺害されたジャーナリストは94人。
イスラム教徒は、死者を死んだ当日の日没前に埋葬しようとする。死者の名誉を称えるた
めに。湯灌(ゆかん)させ、白い死装束を着せる。葬儀の祈りを唱える。頭がメッカの方向を向くように埋葬する。
普通の人々にとって、戦争は何の前触れもなく始まる。娘たちのために歯医者の予約を
し、バレエのレッスンを手配していたのに、突然、カーテンが下りる。ATMは機能し、携帯電話もつながり、日々の習慣は続いていたのに、突然、何もかもが停止する。
バリケードが築かれる。徴兵がおこなわれ、近隣では自衛団ができる。政府高官が暗殺
され、国は混沌に向かっていく。父親が消える。銀行は閉鎖され、富も文化も生活も一気に消滅する。
戦争とは、破壊。骸骨、そして人の生命の抜け殻。
昔の世界は、すっかり消えている。煙草の煙のように・・・。
戦争とは、延々と待つこと。
 終わりのない退屈。ここには電気もテレビもない。
本は読めず、友だちにも会えない。絶望が深まるが、それを燃やす方法はない。
ここには、ほとんど何も残ってない。パンを焼くための動力がなかった。料理をするガスがな
かった。ここでの生活は欠乏だらけだった。
ここで生きていくために重要な二つのルールがある。一つは、政府軍の摘発を受けずに身
を守ること。もう一つは、食料を見つけること。
戦時下の人々の生活はすさんだものだった。だれも停戦など気にかけない。戦時下では、
もっともなことだけど、犯罪と不信と悲嘆しかない。
シリアの人々の苦難な状況がなんとなく分かった気になりました。
著者は、シリアの現状を現地まで出かけて取材したのというのですから、その迫力は並み
たいていではありません。いったい全体、誰がこんな戦争するのか当たり前の状況になったのでしょうか・・・。シリアの近況を写真とともに見ることの出来る本です。
(2017年3月刊。2300円+税)

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