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めぐみ園の夏

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 高杉 良 、 出版  新潮社
著者の経済小説は、かなり(全部とは決して言いません)読みました。その丹念な取材による状況再現力(想像力)には、いつも驚嘆してきました。
今度は、自伝的長編小説というのです。どんなものかなと、あまり期待せずに読みはじめたのですが、思わずストーリーの渦中にぐいぐいと引きずり込まれてしまい、裁判の待ち時間も使って、その日の午前中に読了してしまいました。
ときは昭和25年(1950年)夏、両親の別居・離婚に至る過程で4人姉弟が孤児を収容する施設に無理して入れられます。まだ3歳ちょっとの末娘は、まもなく養子にもらわれていくのですが、主人公は兄妹がバラバラにされるのを怒ります。
いま、弁護士として離婚にともない兄弟がバラバラにすることの是非を絶えず問い返しています。幸い、本書では養子縁組は幸せな結果をもたらしたようです。胸をなでおろします。でも、いつもそうとは限りませんよね。「レ・ミゼラブル」のように下女か下男のような扱いを受け、こき使われるばかりというケースも少なくないのではないでしょうか・・・。
主人公は小学生(11歳)の亮平です。スポーツが出来て、成績も良くて、何より人から好かれるという性格なので、施設から学校に通っても、クラスで級長をつとめるようになるのです。
施設生活では、理事長と園長のワンマン経営、そして、そのわがままな暴力息子が孤児たちを脅しまくります。
両親に見捨てられた孤児たちは施設を出てから、まともに仕事をし、家庭生活を送るのに大変な苦労をさせられると聞きます。楽しい家庭生活を体験していないことからくる強い不安があり、これを乗りこえるのに大変な努力を要するのです。
幸い、この施設には、優しい指導員が何人もいて、孤児たちを温かく包容し、励ましてくれるので、主人公はまっすぐに伸びていくことが出来ました。その苦難を乗りこえていく過程がとてもよく紹介されていて、なるほど、それで、次はどんな展開になるのだろうかと、頁をめくるのがもどかしくなります。
結局、主人公は中学生になって母親ではなく、愛人と暮らす父親のもとで生活することを選択するのですが、それに至る葛藤の描写に迫真性があります。
親の離婚が子どもたちにもたらす影響、そして子どもがそれを乗りこえていく力を秘めていること、そのためには周囲の温かい支援が必要なんだということがよく分かる本でした。
読んで、じんわり、ほっこりする小説として、よく冷房のきいたなかで一読されることをおすすめします。
(2017年5月刊。1500円+税)

スリープ

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 ショーン・スティーブンソン 、 出版 ダイヤモンド社
最高の脳と身体をつくる睡眠の技術、というのがサブタイトルです。
ぐっすり眠れるのが、私の健康を支えてくれています。車中でも居眠りはしますが、基本的に車中は貴重な読書タイムです。
睡眠は、人生の隠し味だ。睡眠不足は、ガン・アルツハイマー病・うつ病・心臓病にかかる確率を高める。睡眠は量より質。8時間寝ても、毎朝、疲れがとれずにぐったりとした気持ちで起きている人はたくさんいる。健康な身体のもと、幸せで充実した人生を過ごすカギを握るのは、良質な睡眠である。
睡眠を健全にしない限り、健康にはなれない。睡眠を定義するのは人生を定義するようなものだ。完璧に理解している人は誰もいない。眠ることで身体が再生され、若さが保てる。
良質な睡眠をとると、免疫系が強化され、ホルモンバランスが安定し、新陳代謝が促進される。身体のエネルギーが増加し、脳の働きも改善される。
目覚めているときの脳にはたくさんの老廃物が絶えずたまっていくが、そのほとんどは、睡眠のもつ修復の力で除去される。
体内時計がもっとも敏感に反応するのは、早朝の午前6時から午前8時半までの太陽光だ。私は、毎朝、目が覚めたら真っ先に雨戸を開けて太陽光を室内にとり入れます。
夜にパソコンやスマホなどの我慢を見る時間を減らす。これらは睡眠を奪い、睡眠不足をもたらす。眠くなったら、すぐにインターネットから離れる。
身体が必要としている深い睡眠をとるには、少なくとも寝る90分前には、あらゆる画面の電源を切ること。私は、今もガラケーですし、自宅でパソコンを扱うこともありません(扱えないのです)。そのおかげなのでしょう、すぐに入眠できています。
午後10時から午前2時のあいだに睡眠をとるのが、ホルモンの分泌や疲労回復に最大限の効果がある。
健康を一番に考えるなら、夜間シフトで働いてはいけない。睡眠サイクルを頻繁に変えるのもいけない。二交代や三交代、夜勤専門という人はとても多いわけですが、気をつけなければいけないようです。
夜に運動するのは体深部の温度を上げてしまうので、睡眠のためにならない。
この本には、ブラジャーをつけたまま寝る女性は、乳ガンを発症するリスクが60%も高くなると書かれています。うひゃあ・・・、と叫びたくなりました。世の中の女性のみなさん、気をつけましょう。美乳より健康ですよ・・・。
身体を締めつけない、ゆったりしたパジャマで、あれこれ深く悩まずにぐっすり眠りたいものです。明けない夜はない・・・、のです。
(2017年6月刊。1500円+税)

12人で「銀行」をつくってみた

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 岡田 晴彦 、 出版  ダイヤモンド社
私自身は銀行に行ったことは久しくありませんし、ATMを利用したことは一度もありません。ですから、振り込め詐欺の被害者にはなりようがありません。また、コンビニも、出張したとき以外に入ることはありません。ケイタイはもちろんガラケーで、スマホはつかっていませんし、使う気もありません。
この本は、インターネットバンキングの創立過程の「生みの苦しみ」を明らかにしたものです。
2000年(平成12年)10月に開業したジャパネット銀行は日本初のインターネット専業銀行だった。インターネット専業銀行とは、実際の店舗をもたないで、インターネット上で各種サービスを提供する銀行のこと。インターネット銀行は実店舗がないし、預金通帳も発行されない。そのため業務コストが低く抑えられるので、預金金利はいくらか高く、手数料も少し安い。なにしろ24時間、365日、いつでも振込、振替そして残高照会などのサービスが利用できる。
インターネット専業銀行は1999年10月、メンバー12人による準備室の発足から始まった。非対面での本人確認のやり方について、試行錯誤を重ねた。
インターネット専業銀行であるジャパネット銀行は、決済手数料を収益の柱としている。し
たがって、たくさん残高のある人よりも、たくさん利用してくれる客のほうがありがた。
インターネット専業銀行では、取引回数こそが重要になってくる。つまり、インターネット銀
行とは、顧客のターゲットが異なるということ・・・。
ジャパネット銀行では、銀行員のやることをすべてユーザー自身にやってもらう。そのことに
よって、客が取引に自覚するようになる。
ジャパネット銀行では、毎月の月初めに利息をつけるというサービスをしている。
ジャパネット銀行の自己資本比率は、30.1%で、国際基準を大きく上回っている。
いやあ、世の中の進歩についていくのは本当に大変なことです。
(2017年2月刊。1500円+税)

鳥を識る

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 細川 博昭 、 出版  春秋社
鳥だって夢を見るし、寝言をいうというのです。ええっ、ま、まさか・・・と思います。しかし、たしかに人間と話せる鳥がいるのは間違いありません。
あくびだって、人間と同じように移るのです。セキセイインコで確認されています。
インコ科のヨウムという鳥は、うるさい音をたてる人間に対して「あっちへ行け」と叫んだり、用があるときには「ここに来て」とお願いすることができました。鳥と人間とのあいだで、対等に言葉をつかってのコミュニケーションが成り立つことが実証されたのです。アレックスと呼ばれた、このヨウムは31歳で亡くなってしまいましたが、人間との会話が自由にできていました。
人間の場合、遊びをするのは大人になる前の子ども。ところが、鳥だと、遊ぶのは基本的に成鳥(大人)。脳が発達していくにつれて、遊びたがるようになり、その遊びも高度になる傾向がある。つまり、鳥は人間と同じで、遊ぶのです。
そして、鳥のなかには、道具をつくる文化をもつものもいます。ニューカレドニア島のカレドニアガラスは、エサをとるための道具を自分でつくり、それを使いこなします。
鳥のなかには、人間の音楽にあわせて声を出しながら全身で踊ってみせるのもいます。スノーボールと呼ばれるキバタンの動画がユーチューブで確認できます。
現在、世界には3000億羽の鳥がいる。最小のマメハチドリは体長5センチ、体重はわずか1.7グラム。もっとも大きいワタリアホウドリは、翼を広げると、3.7メートル。ダチョウの体重は100キログラムをこえる。
私が小学生のころ、我が家でもジュウシマツを飼っていました。ジュウシマツは江戸時代の日本で品種改良して誕生した小鳥です。わずか200年間で、祖先の鳥(コシジロホンパラ)には認められない複雑なさえずりを展開するようになった。
鳥の祖先は恐竜だというのは、今では確定した定説です。でも、不思議なことですよね。絵本に出てくる超大型恐竜が絶滅したのではなくて、鳥として今も生き残っているというのです。
鳥を識るというのは、人間を識り、生物を識るいうことだと思いました。
(2017年3月刊。1900円+税)

凛とした小国

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 伊藤 千尋 、 出版  新日本出版社
コスタリカ、キューバ、ウズベキスタン、ミャンマーの良さは日本も大いに学ぶべきだと思いました。とりわけ世界有数の自然環境保全国でもあるコスタリカの話は感動的です。心が揺さぶられます。
コスタリカは、「世界で一番、幸福な国」で1番にあげられている。日本は、51位でしかない。コスタリカは、1949年、日本に次いで世界で2番目に平和憲法をもった。日本と違うのは、本当に軍隊をなくしてしまったことです。それまで、軍事費が国の予算の3割を占めていたのを、そっくり教育費に充てました。教育も医療も無料。兵舎(参謀本部)は博物館になりました。軍艦も、戦闘機も戦車ももっていない。警察と国境警備隊はある。ただし、いざとなれば、自衛のための軍隊は結成できることになっている。
コスタリカは、周囲の国で内戦が続いたけれど、幸い平和な国であり続けた。「自分たちにとってもっとも良い防衛手段は、防衛手段をもたないこと」
私は、まさしく本当だと思います。決して「平和ボケ」のコトバではありません。
コスタリカでは、大統領選挙があると、小中学校はもちろん、幼稚園児も模擬投票する。
コスタリカでは、小学校に入ると、子どもたちは、「だれもが愛される権利をもっている。この
国に生まれた以上、あなたは政府や社会から愛される」と教えられるそうです。
日本でも道徳教育のときに、これを教えたらいいと私は思います。
そして、コスタリカでは憲法訴訟が1年間に2万件近く提起され、最終的に2割近くが違憲
だと判断されるといいます。これはともかくすごいことです。
 コスタリカは周辺国からの難民もすべて受け入れており、400万人だった人口が500万人になったそうです。信じられない数字です。
 コスタリカの人々は、幸せな社会を自分たちでつくりあげているという意識にみちているようです。すばらしいです。
 先日の国連における非核平和条約を制定する議会でもコスタリカの女性が委員長として大活躍していましたよね。日本も平和憲法、9条をさらに実現する運動が必要だと思います。
 ほかのキューバ、ウズベキスタン、ミャンマーについては、ぜひ、本書を読んでみて下さい。読んで決して損はしない本です。
(2017年5月刊。1600円+税)

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