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昆虫こわい

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 丸山 宗和 、 出版  幻冬舎新書
昆虫がこわいというから、地球上にいる凶暴でこわい昆虫の話かと思うと、さにあらず。昆虫を愛しすぎてこわいというのです。いやはや、地の果てまで、寝食を忘れて昆虫さがしの旅へ出かけるのです。まさしく昆虫少年がそのまま大人になったというわけです。
それにしても昆虫って、本当に不思議な形と色をしていますよね。万物の創造主は、なんでこんな妙ちきりんな形と色をした生物(昆虫)をこしらえて地上に置いたのでしょうね・・・。
ところで、「昆虫こわい」は、いい虫に出会うコツだと著者は言うのです。なぜか・・・。昆虫採集は、ほとんど運であり、「あの虫を見つけてやる」と期待するほどダメ。その気迫が虫を追いやってしまう。逆に、「あの虫はこわい」くらいに自分にウソをついて、無心になって初めて見つかるもの。
毎日が「小学生の夏休みの延長」という日々を過ごしている著者の面白くてタメになる新書です。カラー写真がふんだんにあって、まるで採集現場に一緒にいるように思えてくるのが不思議です。
ツノゼミというのは、まさしく信じがたい姿をしています。なんで、こんな格好をしているのか、不思議でなりません。まるでオスプレイのようなヘリコプターです。
アマゾンの森に入りアリを求めてさまよい歩いて遭難しかかってもいます。目印に置いたつもりの白い紙がアリにたちまち食べられ運び去られてしまったのです。
ホタルの光より何倍も明るいヒカリコメツキという昆虫がいるそうです。何匹か集めたら本が読めるレベルだといいます。
サシガメに刺されると、感染して数十年後に心臓や消化器に異状が発生する。しかし、その治療法はない。うひゃあ、こわいですね・・・。
「ムシヤ」の著者が、どれだけ「昆虫こわい」なのかは、最後の「後遺症」を読むと、よく分かります。
昆虫探しを始めると、毎晩3~4時間の仮眠をとるだけ。というのは建前で、実は3時間も寝ていない。灯火採集をしていると、「いつ、すごいツノゼミが来るか」「いつタイタンが来るか」とドキドキしている。すると、その昂りがベッドに入っても冷めず、どうにも寝付けない。
最終日には、ほとんど死にそうになりながら、それでも採集を中断することはできなかった。そして、日本に帰国しても、その状態が続く。いくら疲れて眠っても、3時間ほどで起きてしまい、虫たちを思い出して、目が冴えてしまう。
そこで、著者は思い切って診療内科を受診した。
「南米での調査があまりに楽しくて、そのときの気持ちの昂ぶりがよみがえって、短時間しか眠れないのです・・・」
医師は、あまりに変わった訴えを聞いて、怪しんだ。著者は睡眠薬をもらい、2ヶ月かけてやっと正常に戻った・・・。
いやはや、これこそ典型的な虫屋の絶頂状態なんですね・・・。すばらしいです。人生の生きる目標、ここにあり、ですね。虫が嫌いな人以外には、絶対おすすめの新書です。
(2017年7月刊。1000円+税)

アーバンサバイバル入門

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 服部 文祥 、 出版  デコ
感動しました。著者の山中での過酷なサバイバル生活には人間は離れしていて、驚嘆するばかりでしたが、この本はなんと横浜に住んでいながら、自給自足のような生活を子どもたちと一緒に過ごしている、その知恵と技(ワザ)が写真700枚、イラスト50点で惜し気なく公開されているのです。ここまで詳細に明らかにされると、ついつい自分でもやれるんじゃないかなと「錯覚」してしまいそうです。
横浜北部の斜面に立つ築45年の古い2階建民家を1980万円で購入し、自力でリフォームしていきます。その過程が写真つきで詳しく紹介されています。
ニワトリを飼い、ミツバチを養い、梅や柿の木を育て、野菜を栽培するのです。
ニワトリの一番の好物はムカデ。トカゲや小さなヘビも大好きだとのこと。知りませんでした。私も小学生のころ、ニワトリに与える野草をとりに行っていましたが・・・。
ニワトリのさばき方と、調理の仕方が写真で紹介されています。私も父がニワトリを殺して調理するのをそばでじっと見ていました。卵の生成過程をそれで知ったのです。
野菜や果樹の育て方も写真つきです。タケノコの探し方が図解されています。親竹と穂先の出ているタケノコを結んだ線上でタケノコが一定間隔で地上に出てくるというのです。知りませんでした。とはいっても、親竹がたくさんあったら、どのラインか不明になりませんか・・。
ミドリガメが圧倒的に旨いとあります。本当でしょうか・・・。超高級地鶏の味がする(ようだ)と著者は断言しています。もちろん、調理法が写真つきで解説されています。正式名はミシシッピアカミミガメで、日本原産カメの生息を脅かすカメとして「悪役」視されているカメです。
ザリガニも美味しいとのこと。ぼくも小学生のころは夏休みになると一人ででもザリガニ釣りに遠くの堀まで出かけていました。食べたことはありません。それこそ美味しくないので、ニワトリのエサにされていました。
そして、ヘビやウシガエルのつかまえ方と食べ方が写真と図解で説明されています。我が家の庭にはヘビが棲みついていますが、食べようと思ったことはありません。鳴声のうるさいウシガエルも、下の田圃を隣人が耕作していたころまではいました。
博多の居酒屋でウシガエルのモモ肉は食べたことがあります。鶏のササミのような白身の淡白な味でした。
著者は東京都立大学のフランス文学科卒です。私も相変わらず毎日フランス語を勉強しています。そして、著者はワンダーフォーゲル部です。私は大学生活の3年間、セツルメント活動に没入していました。
著者はアウトドア活動と文字表現がライフワークの二本柱とのこと。いいですね、これって・・・。そして、息子さんが猟に一緒に行くことがあるようです。それも、押しつけないようにしているとのこと。素晴らしいです。親が好きだからといって、子どもが同じように好きになるとは限りませんからね。
奥様はよほど理解ある女性だと思います。イラストは奥様でしょうか、よく描けていて、楽しい雰囲気です。おすすめの一冊です。
(2017年5月刊。3000円+税)

解離

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 フランク・W・パトナム 、 出版  みすず書房
年収150万円以下の家庭の児童は、年収300万円以上の家庭の児童に比べて、身体虐待を受けるリスクが18倍、無視放置(ネグレスト)を受けるリスクが56倍。
非道処遇を受けた児童の相当パーセントは、自殺で人生を終える。相当数が他害事件を起こす。その相当数が一生をアルコール乱用者・ドラッグ乱用者として送るだろう。また、相当数が自分の子を虐待するだろう。
あらゆる統計数値からみて、アメリカは工業化社会のなかで、もっとも暴力的な国である。殺人は15~24歳の青年層の死亡原因の第二位を占める。アフリカ系アメリカ人男性が殺人の犠牲者となる率は、同年齢のヨーロッパ系アメリカ人男性の7倍。アメリカの大都市の旧市街中心地にあるスラムにおいては、ほとんど慢性的に市民とその子女が日々、暴力にさらされている。
離人感は、多重人格性障害では、ふつうにある症状。自分が自分の身体の外に出て、他人を眺めるように自分を眺めている体験である。
人間の記憶とは、忠実に事態を記録する単純なテープ録音機やビデオカメラというものでは絶対にない。記憶とは、部分的あるいは全面的に再構築的なものである。記憶とは間違いうるもの。記憶とは、実験的な操作によって変化させうるものである。
レイプはPTSDの恐るべき原因である。被害者の51~80%がPTSDになる。
児童も、良い記憶力をもっている。成人も児童も事件後の暗示の影響をこうむる。偽記憶は、弱点をもった人に生じうる。研究がすすむにつれて、児童の空想は信じられないほど複雑だということが分かってきた。児童は、役割の変更の合図を、ふつう声色の変化で行なう。
児童は、自分にとって大きな意味をもつ疑問に対する説明がなさないのに我慢できない。そこで児童は、自分たちの世界理解と両立する「論理的」な説明をあみ出す。
外傷を負った児童への治療作業の主要目的は、児童が自己の行動状態と感情状態との自己統御を獲得するのを援助することである。
遊びは子どもの人生の中心である。それは世界を理解することを学ぶ手段である。また、傷害的な体験に直面したときに自己統御を取り戻し、意味を発見することを許す競技の場でもある。
アメリカでは、50万人の児童が里親ケアを受けている。児童は、一般に、移送元の場よりも、移送先の里親と一緒にいるほうが幸せである。里親およびその他の保護者は、何にも増して整合的であること、そして安定性を与えることが必要。
非道処遇を受けた児童は、しばしば里親の持ち物や個人の動産を破壊する。
人間とは何かを深く追求した本だと思いました。500頁もある大作です。
(2017年7月刊。8000円+税)

屋上の円陣

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山村 武彦 、 出版  ぎょうせい
本の表紙にある写真が強烈です。
南三陸町の防災対策庁舎の屋上に人々が集まって円陣をつくっています。地上12メートルの高さにある屋上です。
屋上まで津波が来ることはないと信じていた人たち、しかし、その膝上まで既に冷たい海水が押し寄せている。屋上の円陣は二つある。その一は、防災無線のポールの根元の床面より50センチほど高いコンクリート架台に上がり、ポールを中心に集まった上段の円陣。その二は、その下段に身を寄せあっている円陣。いずれの円陣も、役所のジャンバーや防寒衣を着用した職員が外側を固め、内側に住民、女性、若者を次の大波から守ろうとしている。
この防災庁舎の屋上に避難した人は54人。奇跡的に助かったのは11人。ポールにのぼっていた2人。階段上部の踊り場付近に流され鉄柵に押しつけられて助かった町長など8人の職員、屋上から流されながら、運よく水面に浮き上がり、流れてきた畳に乗って病院に漂着した職員1人。そのほかの43人が亡くなった。
襲った津波の高さは、地上12メートルの防災庁舎を上回る15.5メートルだった。だから、生き残った11人は、奇跡としか言いようがない。「奇跡のイレブン」だ。
この本は、表紙の写真と解説文を読むだけでも意義があります。
防災庁舎2階にあった危機管理課から住民へ避難を呼びかけていた二人は亡くなりました。うち一人の女性は前年に結婚し、秋に結婚式をあげる予定でした。43日目に遺体が発見されました。もう一人の男性の遺体はまだ見つかっていません。
津波は、第一波よりも第二波、第二波よりも第三波のほうが高くなることが多い。
津波、洪水、逃げるが勝ち。想定津波高さの2倍以上の高所に避難すべき。俗説に惑わされず、最悪を想定して早く非難する。悲観的に準備して行動すれば楽観的に生活できる。
奇跡的に生還した11人へのインタビューが紹介されていますが、本当に生死は紙一重の差だったと思いました。貴重な本です。
(2017年8月刊。1800円+税)

アフガン・緑の大地計画

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 中村 哲 、 出版  石風社
著者は福岡県人の誇り、いえ、日本の宝のような存在です。今なお戦火の絶えないアフガニスタンで、砂漠を肥沃な農地へ変えていっている著者の長年にわたる地道な取り組みを知ると、これこそ日本がやるべきことだと痛感します。
残念なことに現地に常駐する日本人は著者ひとりのようですが、一刻も早く日本の若者たちが現地の人々と交流できるようになってほしいものです。
この本を読むと、砂漠地帯に水路を開設することの大変さが写真と図解でよく理解できます。日本から最新式の大型重機を持ち込んだら工事は速く進捗するかもしれませんが、その管理と保全策を考えると、現地にある機材をつかい、現地の人が技能を身につけるのが一番なのです。その点もよく分かります。
それにしても著者の長年の現地でのご苦労には本当に頭が下がるばかりです。すごいです。養毛剤の使用前と使用後の比較ではありませんが、砂漠で防砂材の植樹を開始したころ(2008年)と現在の緑したたる農場の二つを見せられると、涙がついついこぼれてきます。
農場で育つ乳牛でチーズをつくり、サトウキビから黒砂糖をつくる写真を見ると、これこそ平和な生活の基礎をなすものだと思います。アフガニスタンは、今は砂漠の国と化していますが、本来は豊かな農業国なのですね。水さえあれば、なんとかなるのです。
ところが、急流河川が多く、真冬の水位差が著しい。山麓部にある狭い平野で集約的な農業が営まれているというのがアフガニスタンの特徴。干ばつが起き、ときに大洪水が襲う。
重機やダンプカーをつかってコンクリートの突堤を築いても、その場は良いかもしれないが、長期間もつ保証はない。また、コンピュータ制御は、まともに電気がこない地域なので、無理。そこで登場するのが、福岡の取水堰の経験なのです。
この計画の全部が完成したら、耕地面積1万6500ヘクタール、60数万の農民が生活できるうえ、余剰農産物をアフガニスタン各地へ送ることができる。なんとすばらしい計画でしょうか。日本政府も財政的な後押しをすべきだと私は思います。
著者が現地の人々と一緒に苦労して水路を開設して農地をよみがえったおかげで、ジャララバード北部4郡は、抜群に治安が良いとのこと。ケシ栽培も皆無。食べ物を自給できる。ところが、ジャララバード南部は耕作できないため、多くの失業者を生み出した。現金収入を求めて、やむなく兵士、警察官、武装勢力の傭兵になっていく。治安は過去最悪となっている。やはり、生活が安定しないと、暴力抗争も発生してくるのですよね。
アフガニスタンの農村はかつての日本のように、強い自治性をもっているようです。
したがって、国家的な管理・統制はあまり効かないのです。援助するにしても、現地の自主性を尊重しながらすすめるしかありません。そこを、著者たちは長年の行動で強固な依頼関係を築きあげているのです。
この15年間の歩みが豊富な写真と解説によって私のような土木素人にもよく分かるものになっています。著者が、今後とも身体と健康に留意されてご活躍されることを同じ福岡県人として心より願っています。一人でも多くの人に読んでほしい本です。
(2017年6月刊。2300円+税)

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