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遊ぶ鉄工所

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山本 昌作 、 出版  ダイヤモンド社
いやあ、思わず、ウソでしょ、そんなことありえないでしょ、と叫びたくなる破天荒きわまりない鉄工所の話です。しかも、書いたのはその鉄工所の副社長で、外部のライターではありません。
この鉄工所の、何がすごいのか、というと・・・、実はたくさんあるのです。
まず第一に、トヨタや日立のような超大企業の下請ではない。取引先の1社の占める比重は3割をこえないようにしていて、多品種少量生産ですから、製造原価を叩かれることがない。
第二に、工場内はフラットな空間で間仕切りがなく、大きな食堂ではゆったり美味しく食べられる。ついでにいうと、トイレも大変きれいだそうです。
第三に、残業なしで、モノづくりは24時間、無人加工。
第四に、新卒採用には入社二年目の社員をふくめて総あたりで取り組み、社員のモチベーションを大切にする・・・。
すごいですよね。なにしろ、見学する人が年間2000人といいます。
楽しくなければ、仕事じゃない。
自分たちにしか出来ない仕事で勝負する。
社員食堂こそが、社員を活性化し、会社を大きく変える。
1個の受注が68%、2個の受注が10.7%。両方あわせると、80%が、1個か2個の生産を受注している。これを無人化して、こなしている。ええっ、そんなので会社が成りたつのかしらん・・・。でも、見事に成り立っています。それどころか、年々、取引先は増えているとのことです。
取引先は3000社をこえ、アメリカにも支社がある。その取引先には、ディズニーやNASAもふくまれている。いやはや、すごい会社です。社員も工場内も見事にカラーで、気持ちよく働けそうな雰囲気です。ここで働いている人がうらやましい。
モノづくり、人間育成のポイントをしっかえいおさえた明るい見通しがもて、元気が出る、勇気百倍になる本です。
(2018年7月刊。1500円+税)

コンビニオーナーになってはいけない

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 コンビニ加盟ユニオン・北 健一 、 出版  旬報社
私は原則としてコンビニは利用しないことにしています。もちろん、この原則には例外があります。旅行先ではコンビニを利用するしかありませんので、ためらわずに利用します。でも、ふだんは事務所の隣にコンビニがありますが、どうしても仕方がないときにしか店にははいりません。ですから、コンビニを利用するのは月に1回くらいです。
コンビニのオーナー(店主)は本当に現代の奴隷そのものだと思います。一家だんらんの場と時間が奪われてしまって、何のための人生でしょうか・・・。
そもそも、24時間営業というのが、私には、あまりに非人間的だとしか思えません。
暗くなったら寝て、身体を休めたほうが絶対にいいと思います。そんなぜいたくなこと言うなと反発を感じる人も少なくないと思うのですが、本当に夜寝たらいけないのでしょうか・・・。
病院とか介護施設なら、そうだと思います。でも、三交代勤務というのは本当に必要なのですか。これだけ技術が発達しているのに、人間まで寝ずに働く必要があるのですか。ましてや、単に商品を売るだけなのに、24時間、店を開けておくなんて、私には、その必要性が理解できません。身体をこわしてまで便利さを追求するなんて、本末転倒ではありませんか・・・。
セブン・イレブンに加盟するには、最低250万円が必要。開店すると、一気に300万円の借金を背負う。通常は700万円になる。これは、発注した商品の仕入代金が借金となるため。
本部から、1日に2万円以上の廃棄を出してくれと求められる。これは、「機会ロス」を防ぐためだし、本部にとって有利になる会計上の理由もある。
人気商品ファストフード(おでん、コロッケ、から揚げなど)は、原価50%で一般商品よりも安いのでオーナーはもうかるはずだけど、実は、もうかるのは本部ばかりで、オーナーには利益が出ない。
24時間営業をやめると、店の売上高は3割減ると本部はみている。つまり、本部は、オーナーの健康より、売上が減ることだけを心配している。
オーナーの死亡率・傷病率は異常なほど高い。
そりゃあ、そうだろうと私も思います。強いストレスに毎日さらされていれば、健康をそこなうのは必要ですよね。
店のスタッフ(アルバイト)の人件費は、本部が支払うという仕組みのようですが、おかしなことです。直接の雇い主であるオーナーが支払うのが自然です。
「オーナーや従業員(スタッフ)が死のうとケガしようと、本部には関係ないこと。オーナーが働けなくなったら、ほかから連れてくるから問題ない」
いやはや、なんという言い草でしょうか。オーナーって、独立した自営業者なのではなくて、単なる奴隷のような存在にすぎないと本部はみているのですね、ひどいものです。
コンビニは、売上金の全額を毎日、本部に送金する仕組みです。でも、これっておかしいですよね。売上から経費を差引いて粗利(荒利)のなかからロイヤリティーを送金するのが当然だと思いますが、そうはなっていません。そうすると、本部には、毎日、莫大な現金が集中することになります。セブンの場合、1日に125億円といいますから、絶えず数千億円もの巨額のお金を手にしているわけです。これは本部だけが肥え太る仕組みとしか言いようがありません。
今や、日本中、どこもかしこもコンビニだらけ・・・。
本当にそんな社会であっていいのでしょうか・・・。
コンビニ愛好者の人には、ぜひ読んでほしい本です。
(2018年9月刊。1200円+税)

分かちあう心の進化

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 松沢 哲郎 、 出版  岩波書店
有名なチンパンジーのアイをパートナーとして40年以上も研究をしている学者の本ですから、面白くないはずがありません。しかも、NHKのラジオ放送をもとにしていますので、分かりやすく語りかけていて、最初から最後まで知的好奇心をすっかり満足させてくれました。2017年10月から12月にかけて、13回にわたって、毎回40分間、1万字ほどの原稿をもとに話したのです。それにさらに手を加えていますので、充実した内容は文句なしです。
研究の狙いは、人間とそれ以外の動物の心を操ることで、「人間とは何か?」という問いを自らに投げかけて考察することにある。
人間とチンパンジーのゲノムは98,8%が共通していて、違いはわずか12%。
チンパンジーには人間とりも優れた記憶能力がある。一瞬に数字を記憶することができる。
チンパンジーには石器を使う文化がある。
チンパンジーは、目の前にない物に思いをはせることは苦手。ことばの学習もむずかしい。
チンパンジーは、人間と同じように色が見えている。視力は両眼で1,5。
逆さま顔写真の認識は、人間は苦手だが、チンパンジーには簡単。
チンパンジーは、人間と目と目を合わせるし、物のやりとりができる。
霊長類学は日本が世界のなかで常に先頭を走ってきた。今も先頭集団にいて、その拠点が京都大学。山極寿一・京都大学総長もゴリラ研究の権威者である。
チンパンジーにも利き手があり、3人に2人(チンパンジーは1頭とは言いません)は右利き。
チンパンジーは、石器をつかうほか、アリを木の枝で釣って食べる。
アフリカの村では、チンパンジーは祖先とあがめる信仰の対象であり、恐ろしい生き物だ。チンパンジーは村のパパイヤの木にのぼって、パパイヤの実をもぎとる。2個を両手にして持ち去ると、うちの1個は必ず女性(チンパンジー)にあげる。相手は母親か、お尻がピンク色に腫れた魅力的な女性(チンパンジー)。
チンパンジーの平均寿命は50年。女性の初潮は8歳で、子どもを産みはじめるのは13歳前後。出産間隔は5年。
野生のチンパンジーは、女性全員が無事に赤ん坊を産んで母親になる。野生だと、日々の暮らしのなかで、出産や子育てを見たり、参加したりしている。
チンパンジーは、235日で赤ん坊が生まれる。そして、赤ん坊が母親にしがみつくので、母親は赤ん坊を抱き、母性が発動する。
チンパンジーには、おばあさんはいない。女性は生涯、現役で子どもを産み続ける。
チンパンジーの赤ん坊は、決して夜泣きをしない。する必要がない。なぜなら、母親はいつもそばにいるから。
サルは真似をしない。「サル真似」というコトバは事実と違う。サルは教え込まれた動作しかしない。
チンパンジーは、鏡にうつった像が自分だと分かる。人間がする動作を見ただけで真似ることも、ある程度はできる。でも、何でもできるというのではない。
チンパンジーでは、互恵的な利他性が成立するのは難しい。つまり、お互いに相手のために働くのは難しい。
チンパンジーは、子どもに教えることはしない。教えない教育、見習う学習がある。
チンパンジーは、うなずくこともしない。子どもをほめることもしない。
チンパンジーも笑う。しかし、身体的な接触がないと、笑い声をたてることはない。
チンパンジーは薬草を利用している。下痢をしたときだけに食べる葉(ボンレー)がある。
チンパンジーになく、人間にあるのが想像するちから、そして希望をもつこと。その想像するちからによって、人間は心に愛を育んできた。
200頁あまりの本ですが、人間にとって大切なことがぎっしり詰まっていると思いました。ご一読を強くおすすめします。
(2018年8月刊。1800円+税)

手塚番、神様の伴走者

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 佐藤 敏幸 、 出版  小学館文庫
手塚治虫とは、天才というより神様ですよね。60歳で亡くなったのが、本当に残念でたまりません。
この本は、手塚治虫を担当した編集者たちへのインタビューから成っています。いわば、天才というか神様の実像をあばき出したような本なのですが、本当に憎めない神様の実体の一面を知ることができます。車中で読みふけってしまい、乗り過ごしを警戒しました。
横で見ていると、手塚さん、わがままだし、やきもち焼きだし、原稿遅いし、約束守んないし、「こんな野郎とは、1日でも早く別れたい」と思う。でも、遠く離れてしまうと、富士山ではないけれど、その高さ、姿の美しさが分かる。
手塚さんの記憶力は、直感像という、デジカメと同じで、思い出そうとすると、原稿のどの場面でも、瞬時に、たぶん見開き単位で頭の中に出てくるのだろう。
原稿の催促のために、そばに編集者が山ほどいてくれるというのが、手塚さんのベストコンディションなのだ。
手塚さんは、平気でウソつくところがある。まあ、可愛げのあるウソなんだけど・・・。
手塚さんは、寂しがり屋だね。ずーっと自分のことを思っていて欲しい人なんだよね。
すべて自分の思いどおりに持っていくんだけど、ものすごく心の弱い人なので、担当者に相談する。「これでいいです」というコトバを聞きたいんだ。担当者がいいと言わない限り、できない。必ず聞いてくる。
原稿が遅いと、テヅカオソムシ。それでも着かないと、テヅカウソムシ。これが、デンポーの文言だった。うひゃあ、そ、そうだったんですか・・・。
手塚さんにしてみると、担当編集者がいないと、「何なんだ、ぼくだけ働かしておいて・・・」という気持ちになる。寝ずにやっていると、被害者意識が出てくる。だから手塚番は、手塚さんが起きているときは、絶対に起きている必要がある。
編集者は、描き手に気持ち良く描かせるのが、絶対条件だ。
手塚先生は、宇宙のかなたから地球にきて、使命を終えて帰っていったんだ・・・。
こんな弔電があったそうです。60歳にして、かぐや姫のように月世界か宇宙の果てに帰っていったのでしょうね。残念です・・・。
とても面白い文庫本でした。ありがとうございました。
(2018年6月刊。610円+税)

窒息死に向かう日本経済

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 浜 矩子 、 出版  角川新書
いつ読んでも歯切れがよく、心地よいテンポでたたみかけられる気がします。
日本国債等の発行残高は1092兆円(2017年12月末時点)。このうち半分近い449兆円を日銀が保有している。これは、政府の借金の4割を日銀が面倒みてやっているということ。2017年の日本のGDP(名目)は546.5兆円だった。一国政府への中央銀行の債権が、その国の経済規模と同じだというのは、まともな状況とは言えない。なるほど、心配ですよね。
今の黒田・日銀は国債の大量購入をそもそも本来の目的としているのではないか。政府の借金を政府の言いなりにまかなってあげる。政府のためにおカネを握り出す「打ち出の小槌」の役割を果たす。これを狙っているとしか考えられない。それがいいはずはありません。
安倍首相は、「政府と日銀は親会社と子会社みたいなもの」と言い切った。
コーポレート・ガバナンス(企業統治)元年に大企業のモノづくりの不祥事が次々に発覚した。データ改ざんをしたのは、三菱と日産自動車、スバル、神戸製鋼、東レ、三菱マテリアルなど、次々に日本を代表する大企業の不祥事が表沙汰になった。
モノづくり大企業の不正行為が長く続いていたことの本当の意味を考える必要がある。
安倍首相は、かつて神戸製鋼の社員として働いたことがあった。大々的に日本が武器輸出に乗り出したなか、神戸製鋼は、その重要な役割を担っている。つまり、神戸製鋼のアルミ製品は自衛隊の航空機や誘導兵器、魚雷などにも使用されている。まさに、死の商人ですね。ここに安倍首相のルーツがあるというわけです。恐ろしいことです。
(2018年7月刊。820円+税)

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