法律相談センター検索 弁護士検索

宮廷女性の戦国史

カテゴリー:日本史(戦国)

(霧山昴)
著者 神田 裕理 、 出版 山川出版社
現代の私たちは、天皇がいて、皇后がいるのは当然のこと、夫がいて妻がいるのと同じと考えています。ところが、この本によると、14世紀の南北朝時代から17世紀の江戸時代の初めまでの300年のあいだ、皇后はいなかったというのです。ええっ、では誰が天皇の世継ぎを生んでいたのか…。それは、後宮女房たち。
なぜ皇后がいなかったのか。それは、この300年間、朝廷にはそれだけの財力がなかったから。皇后を立てる(立后)の儀式を挙行する費用がなかったこと、立后したあと必要になる「中宮職(しき)」という家政機関(役所)を設立・維持するだけの財力もなかった。
また、娘を皇后として出せるはずの上流公家にも、それほどの財政状態になかったので、娘を入内(じゅだい)させようという積極的な動きがなかった。
立后が復活したのは江戸時代の三代将軍家光のとき。二代将軍秀忠の五女・和子(まさこ)が入内することになった。
女房職(しき)の相伝については、ある「慣習」があった。すなわち、後宮女房は、出身の「家」によって、就くべき職(ポスト)が決まる傾向にあった。
『お湯殿の上の日記』は、後宮女房によって、かな書き、女房詞(ことば)で書かれた執務日記。なんと室町時代から江戸時代まで350年間も書きつづられている。いやあ、これは知りませんでした。こんな日記があっただなんて…。
日記の書き手は後宮女房で、天皇は何日かおきに日記に目を通していた。ときに、天皇が自ら記すこともあった。贈答(献上・下暘)についても、目的・品目など、こまごまと記されている。食料品は、当時の食生活の一端を知ることができる。たとえば、織田信長から朝廷へ鶴が10羽、献上された。鶴は長寿の薬とされていて、食用として珍重されていた。
女房詞には、現代にも残っているものがある。しゃもじ、おでん、おひや、さゆ、おみおつけ、おこうこ、など…。
朝廷をゆるがす大スキャンダル(密通)事件がたびたび起きていたことも改めて知りました。後宮女房と公家衆の密通事件は、それほど珍しくはない。しかし、慶長14(1609)年のものは、関係者があまりに多数だった。公家衆8人、地下人(じげにん。医師)、後宮女房衆5人。
幕府に仕える女房たちは、将軍権力の一端を担う幕臣でもあった。そして、幕府に訴訟がもち込まれたとき、女房たちも深く関与した。
日本の女性が昔から政治に深く関わっていたことを明らかにしている本でもあります。
(2022年4月刊。税込1980円)

私たちはどこから来て、どこへ行くのか

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 森 達也ほか 、 出版 ちくま文庫
映画監督であり、作家である著者が、各界の理系知識人と対話した本です。
人間の身体は非常によく出来ているように見えるが、実は不合理なものもたくさんある。
クジャクのオスのきらびやかな飾り羽がモテるオスのカギだ。そう思って、その裏付けをとろうとして研究をすすめていった。ところが、鳴き声のほうが正確な指標だということが判明した。うひゃあ、意外でした…。
神経細胞は、増えないまま、少しずつ少なくなっている。少しずつ死んでいって、数が一定数以下になると、神経細胞としての統制が保てなくなる。
深海底にすむチューブワームは3000から4000メートルの海底に生息している。一本のチューブのような身体で海底に根を張っている。でも植物ではない。虫でもない。分類上は動物。ところが、動物なのに口がない。ものを食べない。
チューブワームは、植物のように独立栄養で、デンプンなどをつくる。海底火山から出る硫化水素を使う。酸素と硫化水素からデンプンをつくり、自分たちのエネルギー源としている。
チューブワームの大きさは、最長3メートルもある。硫化水素と酸素の供給が多いところでは、1年で1メートルも大きくなる。極端に少ないところだと、1メートル育つのに1000年かかると推測されている。なので、チューブワームの寿命は数千年という可能性がある。
宇宙の真空とは、文字どおり空っぽで何もないということなのだが、実は、ふつふつとエネルギーが湧いているところでもある。エネルギーがあるというなら、質量もあることになる。この真空のエネルギーが、暗黒エネルギーにつながっていく。暗黒物質(ダーク・マター)は、光学的に観測できる量の400倍もの質量が存在することが判明した。つまり、目には見えないけれど、引っぱっているものがあるはずだ、ということ。
スーパーカミオカンデが1998年に発見したニュートリノ振動現像によって、ニュートリノにも、ごくわずかな重さがあることも判明した。このニュートリノは左巻きに回っていて、反ニュートリノは、右巻きに回っている。
「動画」なんて存在しない。フィルムなら1秒24コマ、ビデオなら1秒30コマの静止画が連続して動くので、これを見た人は「画が動いている」と直感で感知する。
人は自分で思うほど自由に自分の意識をコントロールしていない。人の自由意思は、実のところ、とても脆弱だ。
正解がはっきりしているときには、コンピューターは強い。ところが、囲碁のように、選択肢が無限に近いほど多いので、大きな限界がある。
脳の機能はつぎはぎだらけ。
私たちヒト(人間)が宇宙で宇宙人を見つけたとき、その相手を生物とすら認識できないだろう。宇宙人は、自分たちなりの宇宙の法則をもっていてもおかしくない。
ぐんぐん、私たちの視野を広げていってくれる文庫本でした。
(2020年12月刊。税込1045円)

ツバメのひみつ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 長谷川 克 、 出版 緑書房
ツバメは地球規模で減少している。日本でも、10年前に比べて10分の1になっている気がする。
いやあ、本当にそうですね。ただ、私のところでは、今日も巣立ったばかりの子ツバメが飛行の練習中のようでした。というのも、畑の上を少し飛んでは、地上におりてくるからです。
昔、ツバメが多いときには、ツバメ釣りをしていたとのこと。ええっ、何のため…。もちろん、食べるためです。ツバメって、肉があまりついていない気がしますし、カラスと同じで、あまり美味しくはなさそうですが…。東南アジアの国(どこでしょう…)では、毎年10万羽のツバメが食べれているとのこと。ええっ、ウッソーと叫びたくなります。
ツバメは、赤ちゃんのとき、巣のなかで殺しあいのケンカをすることはない。兄弟間で本気で突くこともない。
ツバメの親は、子ツバメが巣立ったあとも、子の世話をしばらくは続ける。巣立ち後の子育ては大事で、巣立ち後、長くエサをやっていると、巣立ちビナの生存率が高まる。
日本のツバメは東南アジアからはるばる飛行してやってくる。ツバメは、昼間に、数羽で「渡り」をする。春の渡りは、一気に渡る。そのスピードは、7日で3000キロメートル。
ツバメのメスは、オスが「ジージー」と鳴くと、ヒナの声と混同して、間違って近づく。
ツバメのメスは、夫以外のオスと浮気して、子をなしている。また、自分の夫が魅力に欠けるときほど、浮気をして子をつくる。
ヨーロッパのツバメでは婚外子は3割もいるのに、日本では、わずかに3%のみ。
ツバメは日本に帰ってくるのは50%。前年に連れ添った相手との婚姻再開は、なかなかむずかしく、65%は離婚している。
ツバメについて、さらにいろんなことを知ることができました。それにしても、ツバメが空を飛んでいるのをじっと眺めていると、気が休まりますよね…。
(2020年8月刊。税込1980円)

人類の起源

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 篠田 謙一 、 出版 中公新書
DNA研究がすすみ、今までの通説がひっくり返ってしまったことも珍しくありません。たとえば、ネアンデルタール人は、ホモ・サピエンスと交雑しなかったとされていたのが、今では交雑を繰り返していたことが判明しています(これはDNA研究の成果です。どうして、そう言えるのか門外漢の私には、とんと不明です)。
現生人類(ホモ・サピエンス)がネアンデルタール人の祖先と分岐したのは60万年前のこと。そして、その後も、ネアンデルタールや他の絶滅人類とも交雑していたというのです。DNAを調べたら交雑していることが判明するというのは素人の私にも何となく想像できます。でも、それが何万年前のこと、と時期まで特定できるというのが不思議でなりません。
人類の起源は200万年前。5万年前、ホモ・サピエンス(現代人類)は、いくつかの集団に分かれていた。その一つがネアンデルタール人と交雑し、世界に広がっていった。ところが、現代ヨーロッパ人を形成する集団はネアンデルタール人とほとんど交雑していない。なので、現代ヨーロッパ人は、ネアンデルタール人のもつDNAをわずかしかもっていない。
ネアンデルタール人は、女性が生まれた集団を離れて、異なる集団の中に入っていくという婚姻形態をとっている。これはチンパンジーと同じでしたっけね。ホモ・サピエンスが種として確立したのは、アフリカ。アフリカのどこなのかは、まだ決着ついていない。今のところ、中央アフリカがもっとも可能性が高い。ネアンデルタール人とかクロマニヨン人とか、中学校そして高校でよく学ばされましたよね…。
人類の進化がどんなものだったのか、それを学校でどう子どもたちに教えるのか、教師としての悩みはきっと尽きませんよね。でも、ワクワクする面白さがあります。だって、知らないことを知ることができますからね…。
(2022年3月刊。税込1056円)

13枚のピンぼけ写真

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 キアラ・カルミナ―ティ 、 出版 岩波書店
ところは北イタリア、ときは第一次世界大戦のころ。平和な村に戦争が急に押し寄せてきた。オーストリア・ハンガリー帝国がセルビアに対して宣戦布告した。1914年7月のこと。
オーストリアに出稼ぎに来ていたイタリア人一家は急に帰国を迫られた。最初に一家が失ったのは仕事だった。男だろうが、女だろうが、おかまいなしに…。
出稼ぎに行っていた大勢の村人がいっぺんに帰郷したから、北イタリアの村は、お祭りさわぎになった。みんなと再会できて、毎日が村祭りのようだった。
だけど男たちには仕事がなかった。何週間かたつと、戦争が恐ろしいかぎ爪をむき出しで、家々の戸を引っかき、村から男たちを連れ去った。
そして、教会の司祭は人々に説教した。
「祖国は今、人民の忠誠心と勇気を必要としていて、誇りとともに祖国を守り抜く必要がある。戦争は、それほど長くは続かないだろう。祖国のために死ぬことを恐れてはならない。それにより、永遠の英雄になれるのだから…」
しかし、こんなことを言う司祭の声は、どこか変だった。いつもなら、自分の言葉でしっかり伝えようとするのに、今日の言葉は、なんだか自分でも心の底では信じていないみたいだ…。主人公の女の子は、おかしいと思った。
主人公の母親はオーストリアに味方するんだろ、とわざわざ文句を言いにくる者がいた。まず長男が軍隊にとられ、次に父親も軍隊にとられた。こちらは戦士ではなく、工兵として働かされる。村には、女性と子ども、そして老人だけが遺された。すぐに終わるはずの戦争は、長く続いた。
主人公は13歳の少女イオランダ。イタリアの村に戻りますが、やがて父も兄たちも軍隊にとられ、少女に恋する少年まで軍隊に入ります。そして村はオーストリア軍が占領して、逃げ出し、母と絶縁した祖母のもとへ…。
戦争は、男の人たちがはじめるものなのに、それによって多くを失うのは女の人たちなの…。
ロシアがウクライナへ軍事侵攻して4ヶ月になります。大勢の市民が殺され、傷ついています。そして、双方とも何万人もの若い兵士たちが死んでいったようです。戦争は、本当はむごいものです。
ドローンが上空から撮った動画によって戦車が爆撃され、焼失していく映像を見るたびに、この戦車には4人か5人の若者たちが乗っていたんだよね…、と悲しみを抑えられません。
戦争の不合理さを少女の眼からじんわりと伝えてくれる小説です。
タイトルからは、とても内容が想像できません…。いいのでしょうか…。
(2022年3月刊。税込1870円)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.