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人は、なぜ戦争をするのか

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 アインシュタイン 、 フロイト 、 出版 講談社学術文庫
 アインシュタインは言う。
 人間の心自体に問題がある。人間の心のなかに、平和への努力に抗(あらが)う諸々(もろもろ)の力が働いている。
 権力欲を後押しするグループがいる。金銭的な利益を追求し、その活動を推し進めるために、権力にすり寄るグループだ。戦争のときに武器を売って大きな利益を得ようとする人々がその典型。彼らは、戦争を自分たちに都合のよいチャンスとしか見ない。個人的な利益を増大させ、自分の力を増大させる絶好機としか見ない。
 人間には、本能的な欲求が潜んでいる。増悪に駆られ、相手を絶滅させようとする欲求が。破壊への衝動は、いつもは心の奥深くに眠っていて、特別なことが起きたときだけ表に顔を出す。
 なーるほど、アインシュタインは、人間の心奥底深くに憎悪の念、すべて破壊しようとする衝動が眠っているとしたのですね…。
 さらに驚くべきは、次の指摘です。
 自分(アインシュタイン)の経験に照らせば、「教養のない人」より「知識人」のほうが暗示にかかりやすい。「知識人」こそ、大衆操作による暗示にかかって、致命的な行動に走りやすい。
 ええっ、そ、そうなんでしょうか…。私の常識とは真逆でした。
 なぜか。「知識人」は現実を、生の現実を、自分の目と自分の耳でとらえないからだ。紙の上の文字、それを頼りに複雑に練りあげられた現実を安直にとらえようとするから…。
 実に手厳しい批判です。現実を直視することなく、プロバガンダに流されていく人が多いのは、安倍元首相の国葬の日に一般献花台に献花するため大行列をつくった人々の存在が、悲しいことに、それを証明していますよね(もっとも、統一協会の信者が全国から全力動員かけて集まったという説もありますよね)。
 アルバート・アインシュタインの手紙を受けとった、ジグムント・フロイトは次のように返信を書きました。
 法律は支配者たちによって作りだされ、支配者に都合のよいものになっていく。
 法といっても、つきつめたら、むき出しの暴力にほかならない。「法による支配」を支えていこうとすれば、今日でも暴力が不可欠だ。
 人間から攻撃的な性質を取り除くなど、できそうにもない。破壊兵器がこれほどの発達をみた以上、これからの戦争では、当時者のどちらかが完全に地球上から姿を消すことになる。場合によっては、双方ともこの世から消えてしまうかもしれない。
 アインシュタイン53歳、フロイト76歳。ともにユダヤ人。アインシュタインはナチスに追われてアメリカに亡命。フロイトも同じくイギリスへ亡命。この2人が、国際連盟のすすめで意見交換したのです。
 ロシアのウクライナへの侵略戦争が2月に始まって、もう7ヶ月たちましたが、終わる目途すら立っていません。そして、この戦争も喰い物にしている軍需産業がアメリカにもヨーロッパにもいるという腹立たしい現実があります。わずか100頁ほどの小さな文庫本を手にして、一日も早くロシア軍のウクライナからの撤退、戦争終結を心から願いました。
(2017年12月刊。税込660円)
 北海道に行ってきました。久しぶりです、旭川での会議のあと、小樽郊外の朝里川温泉の温泉旅館に泊まりました。春には桜の名所のようです。露天風呂に浸りながら、まだ紅葉にはほど遠い緑の楓(カエデ)を愛(め)でました。湯加減が絶妙で、うっとり眠り込んでしまいそうな、いい湯でした。
 20年来の友人たちと3年ぶりに再会しました。コロナ禍で死ぬ思いをしたり、経過観察中として執行猶予の身だという告白もあり、みんな年齢(とし)相応に病気もちでした。それでも、日弁連の役職(会長・副会長・事務総長)を終えて、20年たって元気に再会できたことを喜びあいました。私も元気をもらって帰ってくることができました。

生命の大進化40億年史

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 土屋 健 、 出版 講談社ブルーバックス新書
 地球の歴史は46億年。39億5000万年前に生命が誕生した。そして30億年以上かけて生命はゆっくりと進化していった。
 5億7500万年前に、多様な生物群が出現。
 5億3900万年前のカンブリア紀に、動物たちが本格的な生存競争を始める。その後、オルドビス紀、シルル紀、デボン紀、石炭紀、ペルム紀という6つの「紀」があり、2億8700万年間を古生代と呼ぶ。古生代が始まったときには、海域だけだったのが、次第に陸域へ進出した。
 カンブリア紀には爆発的な多様化が誕生した。まさしく奇妙奇天烈な格好の生物が無数にあらわれました。有名なアノマロカリスも、今ではたくさんありすぎて、さらに細かく分類されているようです。
 そして、動物が眼をもったことが進化を加速させたというのが通説になっています。なるほど、見えるのと見えないのとでは、進化の様相が違ってくるでしょうね。
 そして、ついにサカナが登場。すべての脊椎動物はサカナから始まった。初期のサカナたちには歯もアゴもなかった。海底にたまった有機物を吸い込むだけだった。
 カンブリア紀から現在に至るまでに5つの大量絶滅事件があった。ビッグ・ファイブともいう。シルル紀の海で、サカナたちの進化は進んだが、まだ弱者だった。カンブリア紀以来、1億年以上にわたって海のみを生活と進化の舞台としていたサカナたちの中に、陸に上陸することができるものが現れた。
 サカナから四足動物が誕生するにあたって、からだのつくりは、タテ型からヨコ型へと変わり、眼の位置も変わり、胸びれと尻ビれ以外のひれは消失し、胸ビレと尻ビれは骨と筋肉と関節をもつ足へと変化し、あわせて、肩や腰、首などをもつようになった。
 石炭紀の大森林の主力はシダ植物。このころのシダ植物は、日陰ではなく、日向の主役だった。
 150点をこえるカラー画像もあって、生物の進化を視覚的にたどることのできる楽しい新書でした。でも、目の前にある化石をこうやって、いつの時代のものと位置づけられるって、すごいことですよね。
(2022年6月刊。税込1760円)

鷗外追想

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 宗像 和重 、 出版 岩波文庫
 明治の文豪・森鷗外が亡くなったあと、故人を偲んだ文章がまとまっている文庫本です。
 鷗外という人の性格と生活の様子が分かります。
 鷗外は、淡泊な野菜類、ナス、カボチャ、サツマイモを好んだ。
 とりわけサツマイモが好物で、砂糖をつけて食べた。
 晩年には、料理屋のものは一切食べなかった。
 本をたくさん買ったが、値切ることはしなかった。著者の苦労を思えば、そんなことはできないと言った。
 服装は1年中、軍服で通すことが多かった。
 留学してからは風呂に入ることなく、朝夕2回、桶1杯の湯と水を入れたのと穴のあいたバケツを2個そろえて、頭の先から足の先まで拭い清めた。
 タバコをすい、葉巻を愛用したが、晩年にじん肺になってからはやめた。
 酒は飲まなかった。
 日清戦争に従軍したあと、台湾へまわされ、そのあと東京ではなく、小倉師団に転任を命じられた。これは明らかに左遷であり、本人も「隠流」という雅号を名乗って、自分の心境を表明した。
 鷗外は、相撲を好んだ。
 鷗外も妻も、最初の結婚に失敗した同志だった。
 医者でありながら、自らは医者にかかりたくなかったようです。60歳で亡くなったのも、そのせいではないでしょうか…。
(2022年5月刊。税込1100円)

したたかな植物たち

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 多田 多恵子 、 出版 ちくま文庫
 もの静かで、じっと動かない植物。しかし、本当は「戦う」存在だというのです。ええっ、そ、そうなの・・・。そんな驚きを見事に納得させてくれる、写真たっぷりの文庫本です。
 植物たちは、したたかに、そしてけなげに生きている。
ヨーロッパ原産のセイヨウタンポポと日本原産のカントウタンポポの違い。セイヨウタンポポは、総苞(そうほう)片がそり返る。カントウタンポポは、総苞片がそり返らず、先端に角のような小突起がある。
セイヨウタンポポは、明治時代の初めに日本にやってきた。放牧している乳牛に食べさせるために北海道の牧場に導入したのが始まり。葉や茎を切ると、白い乳液が出ることから、西洋では牛に食べさせると乳の出が良くなると信じられていたという。
セイヨウタンポポが爆発的に増えたのは、昭和30~40年代の高度成長時代。
セイヨウタンポポは春だけでなく、夏から冬も開花結実し、多数のタネは、軽く、遠くまで飛ぶ。そして、無融合生殖で増えていく。つまり無性生殖。単独で子をつくってしまう。ドクダミ、ヒガンバナ、シャガそしてニホンスイセンも、みな無融合生殖。 花が咲いても実を結ばず球根や地下茎でクローンを増やしていく。
 在来タンポポは、虫が別の株の花粉を運んできてくれないと結実できない。
 パンジーやビオラは、スミレの仲間。ヨーロッパの野生種からつくられた。なるほど、パンジーとビオラって、ほとんど形の大小のほか違いがありませんよね。
スミレは、アリの好物である脂肪酸を「おまけ」としてアリを呼び集める。アリはせっせとタネを巣へと運ぶ。そうやって、スミレは広がっていく。
カタバミの実は、何かが見に触れると、その振動を感じて、ピュピュッと中からタネが飛び出してくる。そして、袋の中に充満していた透明な液体もタネとともに飛び出す。この液体はいわば「瞬間接着剤」で振動を与えた人の靴や足にタネを貼りつける。こうやって、人の稼動力を利用して生活圏を広げていく。
 植物は常に窒素(ちっそ)分に飢えている。窒素分は不足しやすい資源だ。空気中には窒素ガスが大量にあるが、分子の結合が固いので植物は利用できない。唯一の例外が根粒菌。マメ科植物は根粒菌と「共生」することで「飢え」から解放された。
ネジバナの1個の実には、数万個のものタネ(種子)が入っている。タネは、長さ0.4ミリ、重さはわずか0.0009ミリグラム。
ミズバショウ(白い花)とザゼンソウ(茶色の花)は、どちらもサトイモ科の多年草。ドクダミとは遠縁にあたる。ミズバショウの花はよい香りで、ザゼンソウの花は悪臭。
いま、庭にフジバカマを5本植えています。アサギマダラという「テフテフ」(ちょうちょ)が来るのを待ち構えているのです。いえ、昆虫採集の趣味はありません。単純にフジバカマの花を植えると、アサギマダラがやって来ると聞いたので、フジバカマを4株だけ植えてみたのです。さてさて、うまくいくでしょうか・・・。もちろん、うまくいってほしいのです。
(2019年3月刊。税込1012円)

満映秘史

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

(霧山昴)
著者 石井 妙子 ・ 岸 富美子 、 出版 角川新書
 このところ、ずっと満洲のことを調べています。応召して中国・満州に渡った叔父が日本敗戦後、8年間も八路軍に技術員として協力していた事実を裏付けようとしているのです。なので、満州で日本と日本軍が何をしたのか、大いに関心があります。
 満映は、かの悪名高い甘粕正彦が理事長をつとめていたことで有名です。「満州国」の首都の長春(新京)郊外に東洋一の大撮影所を構えていました。 岸富美子は、この満映で兄たちとともに映画製作の現場で働いたのです。
 甘粕理事長は、社員に出社時刻を守らせようとした。そして、ルーズだった金銭面をきちんと管理し、給与も大きく改められた。 社員の交流のため、春の運動会が大々的に行われ、社員同士のクラブ活動が奨励された。 甘粕理事長は満映社員の知的レベルを上げ、団結力を強めて、組織力を高めることを狙ったのだろう。
 満映の設立は、1937(昭和12)年8月のこと。盧溝橋事件の直後である。満映の資本金は500万円で、満州国と満鉄が半額ずつ出資した。つまり、日本軍部の影響を強く受けた国策会社だった。満映のつくる映画は、抗日ではなく、親日を訴えるもの、それによって中国人を宣撫(せんぶ)、感化しようとした。
 甘粕正彦は、元陸軍憲兵大尉。1923(大正12)年に関東大震災が起きたとき、混乱に乗じて、無政府主義者(アナーキスト)の大杉栄と、その妻・伊藤野枝そして、大杉の甥(おい)の3人が憲兵隊によって虐殺されたときの首謀者。懲役10年の判決を受けたが、3年後には恩赦で出獄してフランスに渡り、満州にやってきた。
 1939(昭和14)年に満映理事長となり、日本敗戦直後に青酸カリで服毒自殺した。
新京駅前のヤマトホテルで暮らした。この同じホテルに、日本人でありながら中国人女優として売り出した李香蘭も生活していた。甘粕は家族を大連に置いて、新京には単身赴任していた。そして、宴席では、異様な乱れぶりで、周囲を困惑させた。
 満映の社員は千人ほどで、日本人と中国人の割合は6対4。ただし、子会社まで入れると社員総数は2千人にもなった。
満映のつくる映画は満州で暮らす現地の人々に見せるものなので、俳優は李香蘭を除いて、全員が中国人。しかし、監督やカメラマンなどは全員が内地からやってきた日本人。しかし、それでは中国人の心に響く映画にならないので、中国人の監督・脚本家・技術者の養成も満映は積極的にすすめていた。
満映には、大塚有章のような元共産主義者や左翼的傾向をもつ人間が多数いた。
日本敗戦前から、ソ連軍が進攻してきた。そして、満映もソ連軍が支配するようになった。
満映の社員には日本敗戦の時点で、全員に会社から5千円の退職金が支給されていた。いやあ、さすが国策会社ですね。これは、現地の貨幣ではなく、内地の日本円でしょう。
ソ連軍が1946年4月に撤退すると、すぐに八路軍がやってきた。このとき、撮影機械(アイモ)が30台近くも残っていて、延安から来た中国共産党の幹部は心底から驚き、快哉を叫んだ。満映にあったアイモは50台。ソ連軍が20台を持ち去ったが、日本人技術者が隠したので、30台近く残っていた。
このあと、八路軍とともに映画製作で苦労する話が続きます。そして、中国共産党が中国全土を支配したあとにつくられた映画『白毛女』の編集に従事した。当時は中国人の名前で、そして、その後は日本人の名前(岸富美子)で、記されている。それは知りませんでした。すごいことですね。なにしろ、『白毛女』は国民的映画として、10年間で1億5千万人以上の中国人がみたのです。
岸富美子は、2019年5月、98歳で亡くなっています。
(2022年7月刊。税込1320円)

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