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自民党迂回献金システムの闇

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著者:東京新聞取材班、出版社:角川書店
 例の橋本元首相が料亭で1億円の小切手を受けとった事件を東京新聞が連載記事で追跡していったのを本にまとめたものです。歯科医にはぜひ読んでもらいたいと思いました。
まるでデタラメな世界ですね。歯科医師会というのは・・・。あまりの腐臭に鼻をつまみたくなりました。
 歯科医師会の会長選挙は、かつての日弁連会長選挙と同じで、代議員による間接選挙です。会長候補は全国141人の代議員を買収してまわるのです。高級スカーフなどの手みやげと10万円から30万円の現金を配って行脚します。このほか、学閥(有力なのが6つあるそうです)の同窓会長には多額のお金が動きます。このような会長選での代議員の買収は今にはじまったことではなく、長らくの慣例になっていました。逮捕された臼田前会長は、代議員の買収資金だけで8000万円つかったそうです。しかも、それは自腹を切ったのではありません。自分が会長をしていた日大歯学部同窓会の資金を横領していたというのです。ひどいものです。呆れてモノが言えません。歯科医師の意識って、そんなに低いのでしょうか。なんだか信じられません・・・。
 歯科医師会は政治連盟(日歯連)をつくって歯科医師に都合のよい政策を実現するため、自民党議員に多額の政治献金をそそぎこみました。たった1人のペーペーの議員にも、役に立つと思ったら1億円以上も貢いだというのですから、半端じゃありません。
 公明党の坂口厚生大臣(当時)にも2000万円を政治献金しようとして、400万円手渡しましたが、8ヶ月後に戻され、事件にはなりませんでした。同じように、橋本元首相の1億円についても立件されず、村岡元官房長官1人が在宅起訴されて終わりました。おかしなことです。トップはいつも安泰なのです。
 日歯連は年間18億円の予算を動かし、自民党の最大のスポンサーになっています。臼田元会長が3000万円を横領しても発覚しないシステムが確立していたのです。驚くべき伏魔殿としか言いようがありません。
 日歯連は自民党へ3年間に15億円も献金していました。いえ、もちろんストレートではありません。国政協という迂回献金システムがあるのです。国政協とは国民政治協会という自民党の政治資金団体です。総務省に登録されています。政策をカネで買うというのを日歯連は文字どおり実践していたのです。自分の会長選も横領したお金で代議員を買収して勝ちとったくらいですから、他人のお金をつかって政策を買収するのに、何のためらいもなかったのでしょう。
 お金を日歯連からもらっていた議員が実名で何人か登場しています。石原伸晃(慎太郎の息子のひとりです)、鴻池祥肇、そして福岡の古賀誠と山崎拓議員です。でも、みんな団体から政治献金をもらって何が悪いの、と開き直っています。
 やはり、政治献金は個人からに限るべきです。企業も団体も政治献金はできないと立法で定める必要があります。ところが、小泉首相は、自民党に迂回献金はないと絶叫しながら、迂回献金を禁止する法改正に反対して、つぶしてしまいました。
 日歯連が毎年、政界にばらまいてきたお金は7億円にもなるそうです。すごいものです。だから、元首相にポンと1億円を献金したりするわけです。全国の歯科医が会費として拠出したのがこうやって自民党に流れていって裏金になっているのです。それが、どれだけ日本の政治をダメにしているのか、歯科医師のみなさんには大いに反省してほしいものだと心の底から思いました。
 その意味で私は、歯科医師会とその政治連盟を相手に裁判し、自動的に日歯連の会費を徴収するのをやめさせた勇気ある歯科医師の方々には大いなる敬意を表明します。

50歳からの旅行医学

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著者:篠塚 規、出版社:講談社α新書
 50代も半ばを過ぎている私たち団塊の世代には大変役に立つ実用書で、旅行にもっていくべき薬の名前が具体的に書かれていたり、参考になるところがたくさんありました。
 著者も団塊世代のお医者さんです。日本旅行医学会の専務理事という肩書きがあります。
 旅は毎年、定期的に行くほうが健康効果が高い。旅への準備期間が長くとれ、健康面でも周到に準備できる。ふだんの生活にも励みとハリが生まれる。
 私は、40歳になってから、少なくとも年に1回は海外旅行に出かけるようにしています。といっても、全世界をまわるつもりはありません。なるべく言葉の通じるところがいいからです。これまで行ったことのある国は、多い順にいうとアメリカ、(日本はアメリカの何年か後を追いかけていっている社会ですから、弁護士会の視察先としては、どうしても多くなります)、中国、フランス、韓国(以上が、複数回、行きました)、マレーシア、タイ、ニューカレドニア、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、オーストリアです。アフリカにも行ってはみたいのですが・・・。
 まず荷物は少なくする。1グラムでも軽くすることが原則。無駄なものは持っていかない。私は大賛成ですし、実践しています。この点、観光立国スイスはたいしたものです。フライ・バゲージという便利なシステムがあります。外国で重いスーツケースをかかえてウロウロする必要がないというのは大変に助かります。
 健康のために梅干しをもっていることはあっても、日本食などは絶対にもっていきません。ミネラルウォーターをスーツケースに何本も入れている人がいたのを見たときには、驚きのあまり言葉を喪ってしまいました。着替えも最小限です。ホテルで洗濯しますし、わが家にある古い下着をもっていって、旅先で捨ててきます。紙製ブリーフなども愛用します。
 今回のフランスに携帯湯わかしを持っていかなかったのは失敗でした。どのホテルにもポットがありませんでした。中国のホテルだと、毎日、お茶の入ったポットを持ってきてくれるのですが・・・。やっぱり、熱い日本茶を飲みたいときがありますから、そんなとき、海外旅行用の携帯湯わかしは必需品だと思います。
 靴はウォーキングシューズを2足もっていきます。この本の著者は1足で足りるとしていますが、やはり2足あった方がいいように私は思います。
 下痢しないためには氷にも気をつける。私はマレーシアでかき氷が出されたので困ってしまったことがあります。日本でも、大人になってからはほとんど食べないので、写真をとるふりをしてカメラをかまえて席を立ってごまかしました。
 下痢したときには、すぐ下痢止めの薬を飲んではいけない。悪い菌を体外に出してしまったあとに薬は飲むべきで、2日ほどがまんした方がよい。知りませんでした。そして、水分と塩分をとる。アルコールや、お茶、コーヒーは下痢を悪化させるので、絶対に避けるべきだ。うーん、なるほど、そうなんですか・・・。
 海外旅行で下痢や便秘を防ぐには、毎朝、ヨーグルトを食べるといい。牛乳だとおなかがゴロゴロするが、それは乳糖のせい。ヨーグルトは、その乳糖を分解し、整腸作用があるから、おすすめ。
 朝食はいつもより軽目にし、ディナー夕食の予定があるときには昼もサラダなどで軽くすませた方がいい。まったくそのとおりだと思います。昼は、2人で1本のサンドイッチを分けてすましたりしました。フランスでは、サラダといっても日本と違ってたっぷりのボリュームがあります。
 ひとつの都市に最低2泊、できれば3泊以上するのが、おすすめ。まったくそのとおりだと思います。3泊すると、あいだの2日間を、ゆっくり過ごすことができます。とても心が落ち着きます。もう50代になっているのですから、あわただしく動きまわすのは似合いません。ゆっくり、じっくり自分の足で動きまわるのがいいように思います。
 ふむ、ふむ、なるほど、かなり既に実践しているところがあるぞ、うん。でも、知らないこともたくさんあって、とても役に立ちました。今度はどこへ行こうかな。やっぱり久しぶりに南フランスに行ってみようかな・・・。

美姫血戦

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著者:富樫倫太郎、出版社:実業之日本社
 幕末の箱館(今の函館)、五稜郭をめぐる維新政府と幕府軍との最後の戦争を舞台とした小説です。といっても、主人公は松前で日本初のパン屋を開業した和菓子職人なのがユニークです。そうなのか、日本で初めてパンをつくるために、職人はパン種(だね)を手に入れるのに苦労したのか・・・、よく分かりました。
 新選組の土方歳三も箱館にまで流れてきていました。ここで、戦死したのです。
 松前藩の内部での勤王派と佐幕派との内紛も背景となっています。維新政府軍は、新式の大砲や小銃ももっていましたが、烏合の衆のために統制がとれず、初戦ではなかなか苦戦したようです。それでも援軍を次々とくり出して幕府軍を追いつめていきました。小説ではありますが、箱館戦争の様子がよく分かりました。
 そして、パンづくりです。最大の問題はパン種をどうするかということでした。当時、箱館にはロシアの領事館があり、パンをつくっていました。でも、パン種は厳重な秘密になっていたのです。大金をつかって教えてもらうか、弟子入りして作り方を盗むしかないという状況でした。それを、日本人の助手から玄米からでもつくれるということを教わり、試行錯誤のうえ、なんとか成功したのです。味噌をつかって味のいいパンをつくることができたということも描かれています。
 主人公が慕う姫君は結核にかかっていました。結核は当時はまったく不治の病でした。父の仇をとろうとして、治療も放棄して銃をとって戦おうとする、いじらしい姫君がいとおしく思われてきます。幕末の函館の姿を知ることのできる小説です。

素数ゼミの謎

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著者:吉村 仁、出版社:文芸春秋
 アメリカには、17年ごとに地上にはい出てきて鳴くセミがいます。地域ごとに、仲間の群れが何十もあって、それぞれの地域で13年あるいは17年ごとに出てくるのです。
 氷河時代を生きのびたセミたちは、温かくなって身体が大きく育つまで、ひたすら天敵の来ない地下で生活します。それも17年という気の遠くなりそうな期間です。すごいものです。偶数だと、地上に出たとき別の種のセミしかいなくて、同種のセミに会えずに終わる危険があります。いろんな種類のセミが混ざりあってしまわないためには、素数しかないのです。大自然の巧まらざる偉大な工夫のひとつです。
 それにしても、13年とか17年に1度だけ、何億匹も大量発生し、あたり一帯では話もできないほどうるさいというのは驚くべきことです。そして、地上に出て鳴くのは、わずか2週間だけなのです。これは日本と同じです。17年セミの大きさは日本のセミより小ぶりだそうです。
 写真と図解によって、この素数ゼミについて解明されています。大変分かりやすい本です。セミが恐竜時代からの生き物であることも、この本で知りました。たかがセミ、されどセミなのです・・・。

全核兵器消滅計画

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著者:中嶋 彰、出版社:講談社
 地球上のすべての核兵器をニュートリノをつかって消すことができる。うーん、すごい・・・。これはSF(サイエンス・フィクション)ではない。本のオビのそう書かれています。
 核軍拡競争の結果、今や地球上には2万発もの核兵器が存在します。それも、次第に小型化していますので、いつアルカイダの自爆テロの武器にならないとも限りません。恐ろしいことです。
 原爆に大爆発を起こさせる条件は、核物質の十分な合体とイニシエーターによる中性子の大量供給。プルトニウム240は、この2つの条件をことごとく台無しにしてしまう。だから、プルトニウム240の割合を減らして、プルトニウム239の比率を大幅に高めないと原爆は完成しない。
 ニュートリノは、身近な存在だ。太陽で発生したニュートリノは、地球にも降りそそいでいる。その数は、1平方センチあたり毎秒600億個にのぼる。ただし、ニュートリノは幽霊のような素粒子で、頭の上にやってきたニュートリノは、気がつかないうちに身体のなかを通過し、地球を貫通してどこかへ去っていく。電気的には中性で、検出するのは非常に難しい。そのニュートリノにも質量があると考えられている。予想によれば、ニュートリノの質量は電子の100万分の1。
 「超高エネルギーのニュートリノビームを利用した核爆弾の破壊」という論文を菅原寛孝が発表した。粒子加速器(ミュー粒子蓄積リング)で超高エネルギーのニュートリノを発生させ、ニュートリノを地球の裏側にある核爆弾に向かって発射する。そして、このニュートリノは、直径が1万3000キロメートルある地球の内部を光に匹敵する速さで通過して核爆弾に達する。すると、核爆弾は未熟爆発を起こし、バラバラに分解されてしまう。
 これに必要なニュートリノを発生させるには、瞬間的とはいえ、原子力発電所50基分が必要となる。つまり日本の発電設備の4分の1を投入しなければならないわけである。
 それでも、地球上の全核兵器を不能兵器に化してしまえるんだったら安いものだ。
 まさに、すごい発想の本です。でも、この本を読んでいると、なるほど、これもありうるんじゃないの、そんな気がしてきました。地道に核兵器の廃絶をめざす運動に取り組むのは、もちろん必要なことです。いずれにせよ、科学者には科学者の責任があるということも改めて考えさせられる本でした。

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