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大江戸の姫さま

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著者:関口すみ子、出版社:角川選書
 寛永11年(1634年)、大名妻子の江戸在府制が確立した。そこで、大名家ごとに「江戸にいる姫さま」が誕生した。幕末の文久2年(1862年)まで、これは続いた。この間の228年間、江戸で多くの姫さまが暮らしていたわけである。
 姫さまのペットに狆(ちん)がいたというのを初めて知りました。といっても、平たい顔で耳の垂れた小さな犬を、みんな狆と呼んでいたようです。狆を抱いた姫さまの肖像画も初めて見ました。狆のお墓まであったというのです。昔も今も変わりませんね。有名なシーボルトは狆の剥製をオランダに持って帰り、今も残っています。
 姫さまは歌舞伎も好きだったようです。有名な絵島生島(えじまいくしま)事件では御年寄りの絵島も役者の生島も、ともに配流・島流しになっています。紀州家の姫君(豊姫)が行列を組んで芝居を見に行ったことが問題となり、姫君は国元へ押込め、重臣は1人切腹させられ、ほかにも解雇された事件があったそうです。逆にいうと、それほど芝居は昔から人気があったというわけです。
 八代目の市川団十郎は人気絶頂のとき、32歳で自殺してしまいました。すると、女性が大勢泣き叫んで大変だったそうで、その姿を描いた絵が紹介されています。現代のヨン様騒動を思わせる熱狂ぶりです。これまた、昔も今も変わらないのですね。
 綱吉も吉宗も、その娘たちを有力大名に次々に嫁にやり、支配基盤を固めようとしました。吉宗は、島津家になんとか嫁にもらってもらおうと、いろいろ画策したそうです。
 吉宗はよその娘を養女にして身分を格上げしてから、大名の奥方として、壮大な儀式をとりおこなって次々に送り出していきました。これは、妻の地位が夫より高くなることにもなるので、「夫は妻を主君のごとくあしらい」という事態になっていると荻生徂徠が批判したとのことです。つまり、妻の地位は江戸時代に、それほど低いものではなかった、否、むしろ妻の地位の方が夫より高いことは不思議でも何でもなかった、ということです。
 ちなみに、八代将軍家斉は50数人の子どもをもうけたことで有名ですが、その子どもたちを男子は有力大名の養子として、女子は姫君として嫁がせています。ところが、男子の大半は20歳になるまでに亡くなり(50歳をこえたのは1人)、女子は12人のうち6人が若くして亡くなり、残る6人だけ50歳をこえています。やはり、相当なストレスがあったのではないかと考えられます。
 江戸に住んでいたお姫さまたちの生活の一端を知ることができました。

生きて死ぬ智慧

カテゴリー:未分類

著者:柳澤桂子、出版社:小学館
 私の父が死んだのは72歳のときですから、もうかなり前のことです。胃ガンに始まり、いったん全快しましたが、肺に転移して亡くなりました。病院で父が好んで読んでいたもののひとつに般若心経がありました。
 般若心経(はんにゃしんきょう)は、全文わずか14行の短い文章です。でも、漢字ばっかりですから、意味を理解するのはとてもできません。
 この本は、長く病気に苦しめられてきた生命科学者である著者による解説と英訳までついていますので、なるほど、そういう意味だったのかと得心することができます。
 色即是空
 空即是色
 有名な文句です。これを著者は次のように解説しています。
 お聞きなさい。私たちは広大な宇宙のなかに存在します。宇宙では、形という固定したものはありません。実体がないのです。
 宇宙は粒子に満ちています。粒子は自由に動きまわって形を変えて、お互いの関係の安定したところで静止します。
 お聞きなさい。形のあるもの、いいかえれば物質的存在を私たちは現象としてとらえているのですが、現象というものは時々刻々変化するものであって、変化しない実体というものはありません。
 実体がないからこそ形をつくれるのです。実体がなくて、変化するからこそ物質であることができるのです。
 うーむ、なんだか量子力学の解説書のようです。ちょうど量子力学について少し本を読んだばかりでしたので、とっさにそう思いました。極小の世界と宇宙のはての世界とが同じようなものだということに、すごく魅かれてしまいます。
 それはともかくとして、実体はないけど、私はいまここに存在しています。不思議な存在です。100年前にも、100年後にも私は存在しませんが、私を構成する粒子は、どちらにも存在するのです。
 乃至無老死
 亦無老死尽
 こうして、ついに老いもなく、死もなく、老いと死がなくなるということもないという心に至るのです。老いとか死が実際にあっても、それを恐れることがないのです。
 いかにも仏教図のような絵がバックにあり、解説文の雰囲気を伝えてくれます。心が洗われる気のする本です。

霊長類のこころ

カテゴリー:未分類

著者:ファン・カルロス・ゴメス、出版社:新曜社
 ゴリラは、生後10ヶ月から12ヶ月のあいだは、目的物に身体が到達する延長として棒をつかい、生後24ヶ月から26ヶ月では手が届く範囲を拡張するため道具をつかう。人間の赤ん坊では、その逆がおきる。似てるようで、違うんですね。
 チンパンジーは、好きな飼育係が天井からぶら下がったバナナを取ろうとしてむなしくあがいているビデオを見せられると、その次に、何のためらいもなく、その飼育係が箱によじ登っている写真を選ぶ。逆に、ビデオにうつっている人間が嫌いな人間だったら、問題が解決されたという写真ではなく、箱から転げ落ちるなど、ひどい結果になる写真を選ぶ。えーっ、そうなんだー・・・。驚いてしまいました。
 サルたちのかわしあう声には大きな意味がある。ヒョウに対する警戒音を聞いたときには木に登る。ワシに対する声を聞いたら、草むらに入った空を探す。ヘビに対する警戒音のときには、すぐに二本足で立ち上がって地面を探す。サルは、それぞれの警戒音に適切に反応する。
 自閉症の子どもは他人の手をとって身振りするときに、その人の目を見ないのが普通。しかし、ゴリラは、他人の手をとり、その人の目をのぞきこむ。
 チンパンジーのベルという名前のメスは順位が低かった。ベルが情報源となって仲間を食物のありかに連れていく役まわりのときには、ベルは食物にありつけない。なぜなら、他の高順位のオスなどが先に食物に走っていき、全部食べてしまうから。
 だから、ベルは食物のある方向へ歩いていくのをやめた。しかし、賢いチンパンジーがいて、ベルの行動をよく見て、ベルの視線の方向から食物のある方向を見抜いた。そこで、ベルは最後には、ばれないように目をそちらに向けないようにしたうえで、違う方向に歩いていった。うーん、チンパンジーは本当に賢いんですね。仲間をだます術も身につけているわけです。

更年期

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著者:マーガレット・ロック、出版社:みすず書房
 日本でふつう言われている更年期の症状はアメリカのメノポーズにともなうものとはかなり違っている。アメリカではメノポーズとは閉経のことであり、ホットフラッシュと突然の発汗のみ。頭痛などの身体の痛み、めまい、肩こりは女性も医師もメノポーズに関係があるとは考えない。日本人女性は、ホットフラッシュを訴えず、急な発汗もまれだ。
 更年期をメノポーズと訳してはならない。アメリカの女性の大多数の頭のなかで、メノポーズと閉経(月経の終わり)とが同義語になってきた。
 人間の最長可能寿命は90歳から115歳のあいだと推定されている。これは過去10万年のあいだ、人間は理論上、この高齢まで生きることが可能だったということ。
 日本の平均寿命は1891年から1989年のあいだに44歳から82歳にまで上昇したが、50歳の女性の平均余命は21年から33年に延びただけ。この100年のあいだ、ヨーロッパでも日本でも、女性はひどい搾取や貧困にさらされないかぎり、乳幼児期をのり切って成人し、お産で死ななければ、70歳以上まで生きられる可能性は高かった。
 日本食には大豆と豆腐、味噌など多くの大豆製品が含まれ、植物性エストロゲンに富んでいる。天然のエストロゲンを含む食生活はホットフラッシュの発生にかなり大きな違いをもたらしうる。
 日本の平均寿命は世界一で、男性76歳、女性82歳。100歳以上の人口は3000人をこえている。もし、現在の傾向が続けば、2025年には225万人以上が認知症(老人性痴呆)を患い、その3分の2が女性。200万人以上が寝たきりで、またその3分の2が女性。現在、65歳以上で寝たきりの人は60万人をこえ、その大多数が自宅にいる。
 高齢の1人暮らしの女性は男性の4倍の128万6000人いる。特別養護老人ホームの入居者の70%以上、一般の老人ホームの入居者の93%が女性で占められている。自宅で介護を受けている寝たきり老人の93%も女性。アルツハイマー病の高齢者の80%も女性。
 女性は、いま日本の全就労者の40%を占め、15歳から64歳の女性のうち58%が現役で働いていると推定されている。
 ロマンス小説からも社会の変化が読みとれる。かつては、どの本もシンデレラ物語風のものばかりだった。しかし、近ごろは、ヒロインは結婚しようか、キャリアをもとうかと迷っている。
 多くの日本女性は、それなりに満足のいく人生を送っており、調査に回答した人の90%が現在の生活を幸せだと思うと答えた。しかし、話を聞いてみると、多くの女性が苦労を経験したばかりでなく、いまも不当な扱いを受け、不安定な生活を余儀なくされているという。では、なぜ大部分の女性が自分は幸せだと答えのか。そのひとつの理由に、もっと苦しい目にあった人もいるのだから、自分は今の境遇に感謝すべきだと話をしめくくるのだ。回答者の53%は現在の日本社会は女性を不公平に扱っていると考えている。
 中年女性に訊くと、年齢によって経験が増すので、年をとると、なすがままに少々遊び心でもできるようになる。成熟の結果として新たに手に入れた自由を存分に楽しんでいる。 しかし、多くの女性が平均寿命(82歳)まで生きたいと願っていないのが非常に興味深い。45歳から60歳までの人間の年齢は、成熟期、つまり十分に円熟した時期と呼ばれる。
 アメリカでは、2005年に50歳から64歳の女性が2500万人をこえる。これらの女性のためのホルモン補充両方の薬剤と医師のフォローアップ・ケアのための費用は、全米で年に35億ドルから50億ドルになるだろう。
 メノポーズとその副産物は、現在、大きなビジネスになり、アメリカ国内の1990年のエストロゲンの売上だけでも4億6000万ドルにのぼる。
 この本は2005年9月に出版されたものですが、1980年代に日本人の女性を調査した成果をまとめたものなので、今とは異なっているところがかなりあると思いますが、やはり変わらないところもあると思いながら興味深く読みました。2段組みで400頁以上ある大部の本です。
 実は、私は、この本を人間ドッグ(いつも一泊しています)に持ちこんで読んだのです。男にも更年期があると聞いて久しいのですが、実感はしませんでした。同年代の男性からもあまり聞いたような気はしません。ただ、同世代でも男女を問わず、とてもくたびれた顔つき、身体をしている人が多くて、本当に驚きます。生き生きしている人の方が少ない気がします。それだけ、この社会に生きていくのは厳しいことなんだな、失業せず、定年退職の心配もない私は本当に恵まれているんだと実感をさせられます。
 人間ドッグの結果では、総コレステロールが少し高いので、糖分の取りすぎに注意するように、とか、体重を減らしなさいということでした。減量って、本当に難しいんですよね。鏡を見ると、我ながら中年太りのひどさに目を覆いたくなります。
 身体を動かすのは週1回の水泳(30分間の自己流クロールで1キロ泳ぎます)と日曜ガーデニングくらいです。あとは、毎日、規則正しい生活と7時間の睡眠時間の確保、そして大量の本を読んでの気分転換というのが私の健康法です。

20世紀、日本の歴史学

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著者:永原慶二、出版社:吉川弘文館
 明治維新以来、学問としての歴史学がどのように展開してきたかを系統的にふり返った本です。門外漢ながら、大変勉強になりました。
 明治24年(1891年)、帝国大学(これは、それまでの東京大学を改めた名称です)の久米邦武教授が神道は祭天の古俗という論文を発表しました。神信仰は、どの民族においても共通に見いだされる祭天の古俗だとしたのです。それを、日本だけの宗教であり、国体の基礎であるという説は根本的に誤っているとしたわけです。ところが、神道・国学派から激しく反撃され、ついに久米は帝国大学教授から放逐されてしまいました。
 明治44年、国定教科書が南北両朝併立説に立って記述されていることが国会で問題になりました。ときの桂太郎内閣は、南朝を正統王朝と決めて、教科書を訂正させてしまいました。北朝は吉野の朝廷と表現されたのです。両朝併立問題という長いあいだ学説が対立してきたことが、政治的に決定されてしまうというのは学会にとって屈辱的なことであり、学問が権力によって支配されることを意味します。
 著者は網野善彦氏の中世社会史像について高く評価しつつ、イデオロギーと現実の混同があると厳しく批判もしています。
 網野は、中世を民衆世界に生きつづけた本源的自由が失われていく過程であり、女性の地位が低下していく時代として悲劇的に描いている。網野の歴史認識はペシミスティックで、世の中は悪くなるという見方である。網野の歴史観は一種の空想的浪漫主義的歴史観の傾向をもっている。近現代を否定的にとらえ、本源的自由という幻影や「無縁」的自由を礼賛的に描き出す手法に不安を感じる、としています。
 また、支配−被支配関係抜きの「平民」論からは「統合」の問題について論理上からも展開が難しいと言って批判しています。
 うーむ、なるほど、そのような批判があるのかと思い知らされました。著者は昨年(2004年)に亡くなりましたが、日本の歴史学の第一人者として大きく貢献してきた人物です。

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