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お客さん、お会計すんでませんよね

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著者:井崎弘子、出版社:新風舎
 スーパーでの万引事件を国選弁護人として弁護することがコンスタントにあります。覚せい剤の使用事件と同じくらいに多いのではないでしょうか。
 財布に何万円か入っているのに、主婦が2千円足らずの食料品の万引をくり返すというケースは決して珍しくありません。たいていは妻を無視する無理解な夫へのあてつけのようです。いえ、万引する行為自体がスリルという快感を覚えているのだろうと思われるケースもあります。
 私が腰を抜かすほど驚いてしまったケースは、30代の既婚男性が女性下着のみを万引していたというものです。彼は捕まるまでに、なんと段ボール箱に20箱ほども貯めこんでいました。狭いアパートの室内に積み重ねていたのです。女性下着を見ながらマスターベーションしていたようですが、なぜ終わったらすぐに捨ててしまわなかったのか、不思議でした。警察は、女性下着を庁舎3階の大講堂の床一面に広げ、その写真を証拠として提出しましたが、それは壮観でした。
 万引しようともくろんでいる怪しい人物の目の動きは自然ではない。きょろきょろと周囲をうかがっている。商品をあまり吟味せずにカゴに入れる。カゴの中を見ずに周りを見る。もっているバッグの口は、きっちり閉まっていない。
 万引を見つけたときには、相手の話をよく聞く。説諭にマニュアルはない。もしマニュアルどおりにやると、自分の心からの言葉でないから、相手の心にひびかない。
 説諭には慣れというものはない。大事なのは、相手の話をよく聞くこと。そして、気持ちをこめて話すこと。本人が万引の理由を言いはじめたときには、言葉を止めてしまうような質問をはさまず、最後まで聞く。理由をしっかり話させることによって、相手の気持ちをほぐす効果があるし、心を開いてくれる。
 結構多いのが内部犯行。スーパーの店員の万引、そしてレジ係の横領。店員がペアになって万引することがある。
 レジ係の不正で多いのは、返品の利用。いかにもお客さんが返品に来たかのように自分で返品の操作をする。レジで架空の返品代をうち、たとえば3000円を、自分のポケットに入れてしまう。
 内部犯行だと思うときには、関係者全員に面接する。そのとき、店員の手の動きでかなり分かる。手がよく動く人はやましいところがない。疑われることを怒っている人は、自然と拳を握りしめているし、大げさにかぶりをふるったりする。反対に、怪しいと思う人は手を机の下に隠したままでしゃべる。怪しい人はあまり話さない。
 レジの犯罪は案外多く、ひとつのスーパーで年間10人はいる。
 私も、スーパーのレジ係の横領事件を担当しました。返品を利用したのですが、2年ほどで2000万円もの横領額になっていました。そのお金はパチンコ代に消え、さらに莫大な借金をかかえてしまったのです。弁護士の実務にも役立つ本でした。

不思議な数 πの伝記

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著者:アルフレッド・S・ポザマンティエ、出版社:日経BP社
 円周率π(アメリカ式にはパイ。ヨーロッパではピー)の話。2πrとかπr2 というのを思いだしますよね。なつかしく、また嫌な思い出として・・・。
 3.14159 ここまでは私も覚えています。この本には、なんと10万桁まで紹介されています。27頁もつかい、びっしり小さな数字で埋めつくされています。東大の金田康正教授が1兆2411億桁まで計算したのが世界最高だそうです。日立のSR8000というスーパーコンピューターをつかって計算しました。1秒に2兆回の計算ができるスパコンですが、600時間もかかったそうです。
 そんな計算に意味があるのか、という疑問を抱くでしょうが、コンピューター精度と計算手順を検証するために有効だということです。
 πの数字を暗唱した世界最高記録は日本人の原口證氏です。2005年7月に8万3,431桁を13時間かけて暗唱しました。気の遠くなる数字です。いろんな言語によるπの数字の覚え方も紹介されています。
 19世紀ドイツの大数学者ガウスもπの計算をしましたが、このときダーゼという暗算の名手を手伝わせました。まだコンピューターのない時代ですから、コンピューターがわりに人間が暗算したわけです。ダーゼは、頭の中で8桁どうしの掛け算を45秒でできた。40桁どうしを掛けるには40分かかり、100桁どうしの掛け算には8時間45分かかったそうです。映画「レインマン」のダスティン・ホフマンを思い出しました。
 5世紀中国、天文学者で数学者でもあった祖沖之もかなり詳しいπの計算をしています。さすがは中国ですね。西洋文明に負けてはいません。
 不思議な話があります。
 紙を一枚用意して、定規で全体に等間隔で平行な直線を引く。そして針を何度も紙の上に落とす。すると、針が定規で引いた線に触れる確率はπとほとんど同じだ。
 ちょっと信じられませんよね。いったい、この確率とπとにどんな関係があるというのでしょうか。単なる偶然の一致にすぎないのでしょうね・・・。
 アインシュタインは1879年3月14日生まれ。3月14日はπの日。3.141879はπの近似値だ。
 地球の赤道にそってロープを巻きつけたとする。それから、ロープの長さを1メートルだけ延ばす。そして同じく赤道にそってロープを巻きつける。地表面からロープはどれくらい離れるか。答えは16センチ。赤道の上を身長1.8メートルの人間が歩いたとして、頭は足よりどれだけ余計にすすむか。答えは11.3メートル余計にすすむ。
 赤道に巻きつけたロープを1メートルだけ長くして、一点をひっぱると、その一点は地表からどれだけ高くなるか。答えは、122メートル上空になる。ふーん、そうなんだー・・・。ちょっと浮世ばなれした不思議な話題が、いくつも紹介されている本でした。

金大中救出運動小史

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著者:鄭 在俊、出版社:現代人文社
 民団中央本部の団長を歴任した権逸氏について、著者は厳しく指摘しています。
 彼は日帝の傀儡満州国で検事をつとめ、祖国の独立・解放を目ざして活動する人々を捕まえて刑罰を加える、日帝の走狗だった。民族叛逆罪に該当する人物だ。解放後も日本官憲と親しく内通し、朴正煕 政権の忠実な下僕だった。
 民団中央本部のなかでは、外交官の大使よりKCIA(韓国中央情報部)から来た公使が実権をふるっていた。民団組織内では、KCIAから大使館に赴任してきた領事、参事、書記官という肩書きの情報部要員がやたらと権勢を誇り、彼らの言動が絶対的影響力を発揮していた。
 朴正煕 政権は、在日韓国商工人および資産家からさまざまな名目で金品をしぼりあげた。その金額は、韓国政府が民団に支出する10億円の数倍になるだろうと言われた。しかし、在日同胞の金をしぼりあげる役割はKCIA要員だけではなかった。同郷出身の与党国会議員らがさまざまな縁故で芋づる式に人脈をとどり、ときには民団中央本部の幹部が手先となって、在日一世の事大主義的思想と情緒を巧みに利用した。多くの在日資産家は、権力ににらまれたときの恐ろしい「不運」を予防する対策として、あるいはソウルで困ったことが生じたときに逆に利用する打算から支出に応じていた。
 金大中事件が発生したのは1973年(昭和48年)8月8日午後1時すぎ、東京九段のホテル・グランドパレス22階です。このころ、私は横浜で弁護士をしていました。白昼堂々、日本において、国際的にも有名な韓国人政治家を拉致するKCIAには驚き、かつ日本人として怒りを覚えました。
 著者は金大中救出運動を日本において全力をあげて取り組みました。そして、金大中が大統領に就任したとき、就任式にも招待されたのです。ところが、意外なことに金大中は著者をまったく無視し、冷遇します。なぜ、なのか・・・。
 金大中は671頁にも及ぶ長大な自伝を発刊していますが、そこに在日韓国人による救出運動について一言もふれていないとのこと。著者は、そのことに怒っています。私も、その怒りは理解できます。いったい、どういうことなのでしょうか・・・。
 金大中は大統領になって、自分の拉致事件の真相を知ることができたはずです。個人的には、その詳細を知ったことでしょうが、その真相を国民に広くオープンにすることはしませんでした。なぜなのでしょうか・・・。これも韓国現代史の謎のひとつだと私は思います。

八犬伝の世界

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著者:高田 衛、出版社:ちくま学芸文庫
 「八犬伝」は小学生のころ、胸をワクワクさせながら読んでいた記憶があります。最近、「八犬伝」全集を買って読もうとしたら、現代語訳ではなかったので、これはしまったと思って本棚に飾ったままになっています。
 この本は、「八犬伝」について、見事に分析し、評価しています。さすがは学者です。たいしたものだと、ほとほと感心してしまいました。
 「八犬伝」は、本当に息の長い本です。たとえば、八犬士の所在と名前が出そろうのは、初版(文化11年、1814年)が出てから13年目の文政10年(1827年)のことです。八犬士が全員めでたく会同するのは25年目の天保10年(1839年)のことというのです。まったくもって、気の遠くなるような話です。
 江戸城を築いた太田道灌は管領扇谷定正の重臣であった。扇谷定正は、道灌の高い評判をねたんで、自分の館に招き入れて謀殺した。
 「八犬伝」において八犬士は相互に位階的に対等である。これが特徴のひとつ。だから、八犬士がすわるときも、たとえば八畳の座敷に八人の団坐(まとい)の席が円環状に配してある。大八を除く七犬士たちは、それぞれに物語に主役であり、脇役ではない。
 「八犬伝」の読者は、江戸時代すでに北は松前(北海道)から、南は筑前(福岡)、薩摩(鹿児島)に及んでいました。馬琴は読者サービスとして、「八犬伝」の意義を解説する本まで出しているそうです。
 「八犬伝」は中国の「水滸伝」をもとにしています。私も「水滸伝」を読みましたが、同じように胸をドキドキさせながら読んだ記憶があります。それでも、単に日本と中国という、お国柄の違いというだけではない違いを感じました。
 「八犬伝」をぜひ再び完読してみたい。そんな気にさせる分厚い文庫本でした。

狼の帝国

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著者:ジャン・クリストフ・グランジェ、出版社:創元推理文庫
 パリに住むアンナは不可解な記憶障害に苦しんでいた。高級官僚である夫は、アンナに脳の生検をすすめる。そのころ、パリの街で不法滞在のトルコ人女性たちが何人も殺された。その死体の顔はひどい損傷があった。なぜか・・・。
 昨年、久しぶりにパリに行ってきました。英語はまったく話せない私ですが、フランス語の方はなんとか日常会話には不自由しませんので、外国に行くならやっぱりフランスです。12年前にノートルダム寺院すぐ近くのカルチェ・ラタンのプチ・ホテルに1週間泊まったこともあります。ゆっくりパリの良さを味わうことができました。この本は、そのパリの裏側、怖い面を教えてくれます。
 テロリストの力はひとつだけ。それは秘密だ。やつらは気のむくままにどこでも攻撃する。それを止めるにはひとつしか方法がない。ネットワークに入りこむことだ。やつらの脳に入り込むんだ。それをやって初めて、すべてが可能になる。
 トルコ人の起源は中央アジアの草原にさかのぼる。その祖先はアジア人のように切れ長の目をして、モンゴル族と同じ地域に住んでいた。たとえば、フン族はトルコ人だった。こうした遊牧民族は中央アジア全体に広がり、10世紀ころ、キリスト教徒のいたアナトリアに押し寄せた。
 ヘロインを液体にする。麻薬をプラスチック梱包材の気泡に詰める。液体になった最高級のヘロインを梱包材に隠れて送り、空港の貨物区画で受けとるのだ。
 推理小説なので、詳しい内容を紹介できないのが残念です。パリにトルコ人による暗黒街があること、フランス警察の一部がそれにつるんで甘い汁を吸っていること、美容整形が意外なほど発達していることなど、この本を読みすすめていくうちに分かります。
 それにしても、技術の発達が人間の心を野蛮な方向におしすすめるとしたら残念です。でも、ホリエモンやそれをもてはやしているマスコミを見ていると、暗い気持ちになるのも事実です。
 パリの暗黒街の話なんて他人事(ひとごと)だと思うと大きな間違いです。日本でも、そして福岡の中洲でも、裏で支配して甘い汁を吸っているのはヤクザなのです。残念なことに暴力追放のかけ声を唱和するだけでは決してなくならないのがヤクザです。

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