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借りまくる人々

カテゴリー:アメリカ

著者:ジェイムズ・D・スカーロック、出版社:朝日新聞社
 アメリカのクレジット依存症社会の実情を紹介した本です。
 かつてのアメリカでは、黒人や移民といったマイノリティが質素に倹約をして生活しているコミュニティが存在し、倹約と勤勉によって強い絆で結ばれた中産階級の地域ネットワークを作りあげていた。ところが、この地域コミュニティやネットワークは、「お手軽な」クレジットが怒濤のように流れこんできたために、わずか数年で崩壊してしまった。それほど豊かでない地域では銀行に代わって、小切手換金所や質屋といった消費者金融と小口の高利貸しが軒を連ねている。
 借金の文化の基本は恐怖の文化である。秘密にせず堂々とさえしていれば恐怖を感じないですむなどとは、現実を知らない単純な考え方である。
 取り立て業は消費者の愚かさを利用する。回収代行業界には100万人もの業者がいる。その数は10年間で2倍に増えた。この業界の転職率は非常に高い。月末にノルマを達成できない場合は即座に解雇される。クレジット会社が年に何度も取り立て業者を代えるのもまれでない。
 最近のテクノロジーは革新的で、債務者が電話に出ると、回収代行業者の手元のスクリーンには、債務者のクレジットの明細が自動的に表示される。これによって業者が債務者の困窮状態を知ることができるし、また債務の完済に利用できる別のクレジットカードも画面に示される。回収業者がまず探すのは、限度額に達していないクレジットカードで、まだ残高があれば、それで借金を支払ってもらうことができる。大部分の人は急病や失業などの不測の事態にそなえて、この残高には手をつけないようにしている。それを回収業者から隠しおおせるものではなく、確実に取り立てられてしまう。回収業はどうやっても債務者を追いつめ、支払わせる。
 取り立て業で成功するには、相手をいかにたくみにだますかにかかっている。電話の相手に対して返済の義務があると思わせることである。経験のある回収代行業者なら、相手に返済の倫理的義務を追及しているものと思いこませることができる。回収代行業者は、自分が実際の債権者であるかのように振る舞う経験を積んでいる。取り立て屋の手取りは回収分の20〜50%だ。
 秘訣は、相手をどこまで追いつめられるかだ。甲板の端まで追いつめれば、彼らは恐怖からパニックに陥る。そこで引き戻してやれば、欲しいものは何でも手に入る。狙いは債務者がひた隠しにしておいた貯え、つまり緊急時に備えて貯えておいた資金である。
 アメリカの連邦破産法の改正は、債務から解放されたいとする人に、一律に資産調査を義務づけている。これによって申請者の半分以上が排除される。また、破産を検討している者は、申立前の6ヶ月間は自費でクレジットの相談を受けなければならなくなった。
 破産は基本的には中産階級のためのセーフティネットのはずだった。
 アメリカ人の2000万人から4000万人が銀行口座を持っていない。
 アメリカでは年間150万人もの中産階級が破産申立をしていました。それを止めようとするのが今回の連邦破産法の改正です。そんなに政府の狙いどおりうまくいくものか、しばらく様子を見守りたいと思います。

こんな僕でも社長になれた

カテゴリー:社会

著者:家入一真、出版社:ワニブックス
 レンタルサーバーという商売があるそうです。50万人が利用して、年商13億円。
 若い女性が自分のホームページをつくるとき、可愛いサブドメインを何種類も用意して選べるようにした。レンタル料はなんと月250円。3000円の初期設定料も女性に限って半額の1500円。うーん、これはなんだか安そうです。
 でも、同業者からねたまれて、2ちゃんねるに中傷が書きこまれたり、そんな苦労もありました。
 それでも、個人のホームページに広告をのせてもらい、そこから新規客がふえたら一回2円のほか50%の報酬を支払うシステムによって、飛躍的に利用者は増えていった。
 なーるほど、ちょっとした工夫で販路が広がったのですね。
 この29歳の社長は実は福岡出身。中学校のときに登校拒否。そして高校は中退。3年間、自宅にひきこもっていました。だけど、ついに大検に受かって、あの東京芸大をめざして新聞配達を続ける。そして、ネットで知りあった女子高生と結婚。
 一気に読ませた本でした。ちなみに、270頁のこの本を私が読むのに要した時間は1時間ほどです。通勤電車の1時間で読み上げました。途中の駅のアナウンスはまったく耳に入らないほど集中して読みます。いわば至福のひとときです。
 子どものころの貧乏生活を生き生きと再現した描写には心あたたまるものがあります。両親から惜しみない愛情をそそいでもらったことが、著者の生きていく強いバネになったような気がします。とても素直な文章で、ストンと胸に落ちます。私はなかなかの筆力だと感心しました。
 前に紹介しました宮本延春先生の「オール1の落ちこぼれ、教師になる」とか、上條さなえ「10歳の放浪記」を読んだときの感動を思い出しました。元気の出る本としておすすめします。

ナイトフォール

カテゴリー:アメリカ

著者:ネルソン・デミル、出版社:講談社文庫
 ニューヨークのJFK空港を飛びたった民間飛行機がミサイルによって撃墜される。テロリストの仕業か。しかし、そうではないらしい。では、一体誰がした・・・。
 飛行機が墜落していく情景をたまたまビデオ撮影していたカップルがいた。しかし、それは不倫のカップルだったため、名乗り出ることができない。でも、そこをなんとか突きとめないと真相に迫ることができない。ところが、真相究明しようとする一線の捜査官に対してFBI上層部から、なぜか圧力がかかる。一体どうなってるんだ、この国(アメリカ)は・・・。
 上下2巻の文庫本ですが、上巻の出しを読んでしまったら、いったいこのジレンマを乗りこえて、どうやって解決にたどり着くのか。その謎ときはどうなるのか。ついつい最後まで引きずりこまれてしまいます。実は、1996年7月17日に実際に起きたTWA800便墜落事故で乗客、乗員230人が犠牲になった話が、ついにはあの2001年9月11日のWTC崩落事故に行き着いてしまうのです。著者の構想力のすごさに、思わず、うーんと唸ってしまいました。
 暗転する大国アメリカの闇を描く大傑作小説というオビの文句も、あながちウソではありません。
 5月の半ばとなり、雨が降ったあと、蛙の鳴き声を聞きました。下の田圃もそろそろ田植えの準備が始まります。田圃に水をはると、蛙たちが一斉の鳴きはじめます。求愛の歌だそうですので、やかましいけれど我慢するしかありません。わが家の門柱のくぼみに小さなミドリ蛙が棲みついています。インターフォンを押す横にいて、顔だけのぞかせています。まるでわが家の守り蛙みたいです。

タヌキのひとり

カテゴリー:生物

著者:竹田津 実、出版社:新潮社
 面白く、やがて悲しき物語です。森の獣医さんの診療所便りというサブ・タイトルがついています。すさまじいまでの苦労話を読むと、野生動物とつきあうのがいかに大変なことか、ノミに喰われたかゆみ・痛さとともに伝わってきます。でも、写真だけを眺めていると、カッワユーイと、つい叫んでしまいそうです。
 森に帰らなかった一人っ子タヌキの「ひとり」。子どもを連れて里帰りしたキタキツネの娘、集団入院したモモンガ、溺れたカモ・・・。いろんな森の動物たちが登場します。
 今日も森の診療所は大忙し!
 これはオビの文句です。しかも、まだまだ登場するんです。ノネズミは愛娘の布団のなかで圧死してしまいました。キツツキは朝5時なると診療所の窓ガラスを叩きます。エサくれ、とねだっているのです。野ネコ(野良猫とは違います)は、キタキツネとナワバリをめぐって熾烈な戦いをくり広げます。
 獣医師は、助けた患者から感謝されることのない職業。それどころか、助けた患者からありがたいお礼参りで、何度も痛い目にあわされる。ひゃあーっ、損な役回りなんですね。でも、それを承知でこの仕事を続けているのですから、ホント、偉いものです。森の中にリハビリセンター小屋まで建てたというわけで、すごいすごい。
 モモンガは空を飛ぶ。でもその前に、人間はモモンガのノミにやられてしまう。痒さとしつこさはたまらない。読むだけで背筋がゾクゾクしてきました。お風呂に入ると、身体のビミョーな部分ほどたまらなくかきむしってしまうというのですから、おっとっと、近寄りたくありません。それでも、飛べないモモンガをリンゴでつって飛行訓練させているところの写真なんか、つい痒みを忘れて私もしてみたくなります。
 カモのヒナが水に溺れて、本当に死んでしまった。実はカモは水に浮かない。浮くには条件がある。カモのヒナが水に浮くのは、ひとつは体を覆う綿毛といわれる羽毛が静電気を帯びていること、もうひとつは羽毛に油脂がぬられていて、それが水をはじき、結果として水面に浮く。さらに、カモのヒナは親鳥の翼の中に出入りをくり返す。このふれあい、こすりあいの摩擦によって静電気が生じる。では、親鳥がいなかったらどうするか。絹製の風呂敷のなかにカモのヒナを入れて、上下・左右にふりまわす。油脂を体中にぬりこむ作業のほうは、お手本もなく大変だった。それでも、ちゃんと空を飛べるようになって仲間と一緒に渡り鳥になっていくのです。
 うーん、素晴らしい写真ばかりで、たんのうしました。

真説・阿部一族

カテゴリー:日本史(江戸)

著者:升本喜年、出版社:新人物往来社
 森鴎外の『阿部一族』は読みましたが、もう何十年も前のことですので、『五重塔』は最近再読しましたから記憶に新しいのですが、ちっとも覚えていません。ただ、同じ肥後藩士の阿部一族に襲いかかった苛酷な運命を描いたというので読んでみました。武士の世界も大変なんだとつくづく思いました。山田洋次監督の武士三部作映画「たそがれ清兵衛」「隠し剣・鬼の爪」「武士の一分」を思い出します。ああ無情という感じです。
 時代は江戸時代初期。寛永14年(1637年)、島原の乱が始まった。肥後熊本藩の細川軍は攻撃軍のなかで最大の損失を蒙った。戦死者270人あまり、戦傷者1800人。
 阿部一族の当主、阿部弥一右衛門は、豊前国宇佐に土着し、勢力をはる豪族だった。細川忠利の父・細川忠興が慶長5年、豊前の領主に封じられた。領内の土豪たちの強大な存在をみて、逆利用することにした。
 その後、細川忠利は肥後に封じられ、阿部も一緒に豊前から移った。このとき知行100石(すぐ300石)の武士となった。肥後は、秀吉でさえ「難治の国」といったほどの大国である。幕府は忠利の肥後入国にあたり、小倉城から武具や玉薬の一切を持ち出すことを許しただけでなく、大阪城から石火矢3、大筒10、小筒1000、玉薬2万を出した。肥後は「一揆どころ」といわれるほど一揆の多い国として知られた。惣庄屋だけでも100人以上いる。土豪あがりのほか、大友、小西、加藤の遺臣もいる。細川氏に反発し、簡単に心を評するとは思われない。そこを忠利は治めた。阿部も力を尽くした。
 その殿様・忠利が病死した。その直前、殉死を禁ずると言い渡していた。だから、阿部も殉死する気はなかった。それに忠利の子・光尚は殉死を禁じた。
 忠利亡きあと、阿部のように忠利に眼をかけられて取立られていた者と細川藩譜代の者たちの対立が目立ってきた。ところが、忠利は実力第一主義で、実力のある者なら、家柄や血統などに関係なく眼をかけ、思い切って仕事をやらせ、大胆な抜擢も断行するし、十分の待遇も惜しまない。多少、性格に欠陥があったり、悪い前歴が多少あったりす者でも、能力があり、ひたむきに働く者であれば、その者を認め、眼をかけた。反面、肩書きだけで実力のない者や積極性のない者は極端に無視し、冷遇した。だから、無視された方には、嫉妬と怨念が蓄積する。反動が来るのも当然だ。
 阿部弥一右衛門が忠利の遺訓を守って切腹しないことに対して、怨みをもつ者たちが嘲笑しはじめた。「卑怯者」「臆病者」「あれは百姓だ」と・・・。さすがの弥一右衛門も耐えきれない。
 光尚は熊本城に初登城したその日に、弥一右衛門が殉死したとの報告を受けた。なんたること、言語道断。家臣としてあるまじきこと。怒りを抑えきれない。
 殉死者19人の相続人全員が登城して、相続を許された御礼を光尚に言上した。跡式相続が内定してから、もう二ヶ月目に入っているが、このお目見えがあって、はじめて相続の正式決定となる慣わしだ。阿部権兵衛は、このとき、相続人代表として言わずもがなのことを光尚に申し立てた。
 光尚の下で権勢を誇る林外記にとって、今や阿部一族は邪魔者としかうつらない。これをたたきつぶせば、他の者への見せしめになる。ついに阿部一族みな殺しが決まった。討手総数17人が選ばれた。
 夜明け前からの討ち入りが終わったのは午後3時過ぎ。阿部一族全員が殺された。その討ち入りの凄惨な情景が活写されています。映画でも見ているような感じです。
 ところが、まもなく光利が31歳の若さで倒れた。阿部一族が誅伐されて6年目のこと。林外記は無用の邪魔者となった。そして、早朝、四人組に襲われて、林外記は討ち果たされてしまった。
 阿部一族の忠実をふまえた小説です。なかなか迫力がありました。因果はめぐるという話になっています。森鴎外の小説は忠実と違うところがあるという指摘もあります。

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