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ヒトは、どのようにしてつくられたか

カテゴリー:未分類

著者:山極寿一、出版社:岩波書店
 チンパンジーは思考能力や認知能力をもっている。動物園や野生のチンパンジーは道具を製作し、使用する。そのうえ、仲間と政治的な取引もしている。類人猿は、「心の理論」すなわち、相手の考えを前提として行動している。類人猿と人間は思考方法がよく似ていて、道徳的な観念すら共通している部分がある。
 果実食のチンパンジーを観察した結果、朝方は果実、日中は昆虫、夕刻は葉というように、時間によって食物を選択する傾向があることが判明した。朝方に果実から糖分を得て活力をつけ、日中にすばしこい虫を追いかけ、夜寝る前に消化に時間のかかる葉を食べるというように、食物の性質にあった食べ方をしている。
 うむむ、そうなんですか・・・。合理的に生きているんですね。
 ゴリラの生息密度は植林帯の違いにかかわらず、一定である。それは、果実が不足するとゴリラは葉や草や樹皮など繊維質の食物を多く食べるから。果実を食べるときより葉を食べるときのほうが遊動距離は短い。また、ゴリラのメスは、単独で遊動せず、群れ同士が出会ったときだけしか移動しない。つまり、群れ同士がテリトリーをもたずに混在するゴリラのコミュニティは、メスの移籍を左右する群れ同士の出会いを適当に保つように維持されている。ゴリラは、鉱物の果実だけでなく、他の食物を多くメニューに加えることによって、群れ内、群れ間の社会関係を壊すことなく、社会的に安定した生活を送るように進化してきた。
 現代のヒトの女性は、類人猿に比べて出産間隔が短い。ゴリラは4年、チンパンジーが5〜6年に対して、ヒトは2〜4年。ヒトのほうが多産の傾向がある。
 現代人の生活史を類人猿と比べてみると、大きな違いが三つある。子ども期がある、青年期がある、閉経後、何年も生きること。
 ヒト以外にも閉経のある哺乳類はいる。シャチやコビレゴンドウである。メスのコビレゴンドウは40歳前後で繁殖を停止し、その後、60歳ころまで生きる。これらのクジラは母系の社会構造にあり、血縁関係のある複数の世代がともに暮らし、オスだけが分散する。
 ボノボに対して餌を与えると、真っ先にオスがとんで出てくる。オスが強いからではない。むしろ、その逆である。オスがすっとんでくるのは、早く行って餌をとらないと、メスご一行様が来たら、もう取れないから。メスたちが餌を取るあいだ、オスたちは一位のオスもふくめて、周囲で待っている。
 そして、オスがメスのご機嫌うかがいをするため、わざと餌の一部を落としたりもする。
 ボノボのメスは、気に入らなければ相手が強いオスであろうが、ともかく断ってしまう。そして、気にいったオスと交尾する。
 チンパンジーのメスは、1ヶ月の排卵期の前後に2週間の発情期がある。このとき、メスは積極的にオスにアタックする。100回以上の交尾をしている。チンパンジーのメスは、たった一回の妊娠の成功のために、数百回から1000回以上もの交尾をしている。ところが、何回と交尾しても、平均して半年かけないと妊娠しない。
 人間とは何かが、この本のテーマです。それを考えるうえで、格好のテキストになります。

清冽の炎(第3巻)

カテゴリー:社会

著者:神水理一郎、出版社:花伝社
 全国で激しい学園紛争が起きていた1968年。この1年間を5分冊にして刊行する、その第3巻が出ました。朝日新聞の一面下に広告も出ていましたが、実はちっとも売れていないのだそうです。私は、みなさんに応援をお願いしたいと思いまして、ここでは第1巻のあらすじを紹介します。
 1968年4月。猿渡洋介は一浪して東大に入学した。同じクラスには予備校仲間が3人もいる。駒場寮は6人部屋。二年生の沼尾とジョーのほかは一年生が4人だ。机とベッドがあるだけで、間仕切りもない大部屋での楽しい生活が始まった。単なるダベリングではなく、読書会をしよう。サークルノートを回覧しよう。寮生同士の交流が深まっていく。人生を語り、将来を模索する。
 猿渡が暇そうにしていると、ジョーが声をかけて若者サークルのダンスパーティーに参加することになった。生き生きした若者に魅かれ、猿渡は北町セツルメントに入ることになり、そこで佐助というセツラーネームがついた。若者サークルは毎週土曜日に例会を開く。労働現場の様子が語られ、佐助の目が社会に開かれていく。
 子ども会が活動しているのは、電車のガード下のスラム街だ。そこへ尚美は飛びこんでいき、セツラーネームをヒナコと名付けられた。
 ベトナム戦争反対のたたかいが盛り上がるなか、駒場の自治委員長選挙で民主派が破れた。医学部で孤立した学同派が起死回生の一打として安田講堂を占拠し、これに対して安河内東大総長は時計台官僚の突き上げもあって機動隊の導入を決断する。
 学生は猛反撥し、法学部を除く全学部が一日ストをうって安田講堂前広場に6000人が集まり、抗議の大集会を開いた。しかし、安河内総長は旧態依然とした対応に終始し、学生の不満が高まるばかり・・・。
 佐助は、若者サークルの女性に憧れたが、早くも失恋する。しかも、自分のすすむべき専門の経済学について勉強する気も起きない。若者サークルで労働者と話しをするにつれ、将来に対する漠然とした不安は強まるばかりだ。
 第1巻は2005年11月刊、1800円。第3巻は2007年7月刊、1800円。
 ようやく梅雨が明け、遅れを取り戻そうとするかのように、連日、セミの大合唱が奏でられています。日曜日の夕方、庭を少し掘って枯れ葉と生ゴミを埋めこみました。枯れ葉はコンポストに入れています。生ゴミは大きなポリバケツに入れ、EM菌と混ぜあわせておきます。悪臭なく、ウジもわきません。ダンボールに生ゴミを入れてヌカなどを混ぜあわせると、生ゴミが消えてなくなるそうですが、わが家では庭づくりのためには消えてなくなるのは困りますので、EMぼかしをつかっています。
 サボテンが子をたくさん産んでいますので、事務員さんたちに30個ほど引きとってもらいました。大きくなると白いきれいな花を咲かせます。

ジャパニーズ・マフィア

カテゴリー:社会

著者:ピーター・B・E・ヒル、出版社:三交社
 イギリス人の学者による日本ヤクザの研究書です。
 ヤクザが商店やバーから金銭を引き出す方法は「みかじめ料」に限らない。おしぼり、つまみをヤクザが提供する。また、貸し絵画や観葉植物という方法もある。
 神戸周辺のみかじめ料は平均してクラブだと月に10万円、パチンコ店で30〜50万円。東京・銀座の高級クラブだと月100万円。ソープランドで月500万〜700万円。これを必要経費として認めることを裁判で訴えた経営者がいたが、敗訴した。
 佐川急便はビジネス上のトラブルを避けるため、稲川会に年20億円も支払っていた。総額で1000億円が稲川会に流れたと推定されている。
 建設業界もヤクザへ支払っている。その標準額は麹総額の3%。20兆円の公共投資があるとして、少なくともその3分の1にヤクザが関与しているとすると、年間5000億円をヤクザは建設業界から得ている。
 そうなんですね。だから自民党は昔も今も、大型公共事業がやめられないのです。
 自民党の議員はほとんど右翼や暴力団と深いつながりをもっている。ところが、マイクの前に立つと、自民党議員は「暴力団、右翼はけしからん」と大声を上げる。
 現在のヤクザは、日本の政財界にとって不可欠な存在になっている。イトマン事件においては、ヤクザ組織と合法的な企業との関係は完全に略奪的なものだったかもしれないが、いつもそうとは限らない。むしろ、政財界のエリートたちは、ヤクザ組織からの保護サービスを自ら求める消費者にもなっている。さらには、野村證券の例にあるように、大企業がヤクザ組織の疑わしいビジネス慣行の自発的な共謀者ともなっている。
 皇民党の事件から見えてきたことは、自民党の大物政治家と日本の巨大犯罪シンジケートのトップとの深い関係だ。高級料亭で、ヤクザ相手にどちらが上座にすわるかを譲りあっているのが有力政治家の実像だとしたら、ヤクザの撲滅を口にする政治家の言葉をどれほど信用できるだろうか。
 住友銀行の名古屋支店長がピストルで射殺された事件について、次のような解説がなされています。
 住友銀行は犯罪シンジケートをつかって他の犯罪シンジケートに関連する債権回収をすすめた。住友銀行の債権回収の圧力によって会津小鉄の組長が自殺し、さらに東京で別のヤクザの組長も自殺した。そこで、自分が次のターゲットになるかもしれないと考えたヤクザが名古屋支店長を殺害した。この事件のあと、大蔵省は住友銀行に対して、税金対策としてヤクザ関連の5億円の不良債権の償却を認めた。
 ホントに腹の立つようなひどい話ばかりで、嫌になってしまいます。ヤクザが現代日本社会に深く根づいているのは、想像以上です。こればかりは、知らぬが仏、というわけにはいきません。

思い出すまま

カテゴリー:司法

著者:石川義夫、出版社:れんが書房新社
 著者は、30数年前、私が司法研修所にいたころの民事裁判の教官の一人です。私は直接教えられたことはありませんので、写真を見ても、ああ、こんな教官がいたような気がするな、という感じです。でも、その名前は有名でしたので、覚えがあります。高裁長官の職をけって退官したということですので、それなりに気骨のある裁判官だったようです。
 矢口洪一元最高裁長官を次のように痛烈に批判しています。ちなみに、初稿は矢口元長官が存命中に書かれたものだそうです。
 矢口洪一人事局長は、裁判所の諸悪の根源は、歴代事務総長が最高裁判事に栄進することにあると繰り返し断言した。事務総長に練達の裁判官をさしおいて最高裁判事となることは、裁判に専心している裁判官たちの間に不満を醸成し、事務総局と現場の裁判官との間に抜きがたい不信感を生んでいる。だから、事務総長には総局メンバー以外の者を充てるか、いったん事務総長となった者は、最高裁入りをあきらめるかにすべきである。矢口氏の言葉をきわめて説得力のある正しい考え方であると受けとった。
 ところが、矢口氏は、その舌の根も乾かぬうちに、事務次長、事務総長を経て、最高裁判事となり、ついには最高裁長官の席を冒すに至った。矢口氏の事務総長就任までの裁判所在職37年のうち、裁判実務経験は合計してもわずか6年あまりにすぎない。
 いやあ、そうなんですかー・・・。ひどい話ですよね、これって。
 矢口氏は、常に大げさな表現を口にするのが癖であったが、裁判実務オンリーの裁判官たちのことを、「度し難い愚か者ども」と嘲っていた。
 いやいや、これにはあきれてしまいました。「度し難い愚か者ども」の親玉にすわって、いい気分を味わっていたようです。
 矢口人事局長は青法協つぶしの先頭に立っていました。著者は、裁判所当局が良心的で勤勉な若手裁判官まで含めて青法協会員を目の敵にし、冷遇するのが気に入らず、夜間に矢口人事局長と電話で1時間以上、もっと平和的なやり方もあるのではないか、このようなやり方は将来の裁判所に禍根を残すのではないかと議論を重ねた。それ以来、著者と矢口元長官との緊密な信頼関係は急速に冷えていった。
 矢口人事局長は司法研修所の田宮上席教官に対して、「研修所教官の方で、疑わしい連中の試験の成績を悪くしておいてくれれば、問題は解決するじゃないか。何とか考えてくれ」と言った。要するに、青法協所属の修習生の任官を人事局の責任で拒否することにしたくないので、研修所教官の責任で拒否しようというのである。著者は、この件について、矢口氏の名誉を慮って、今日まで他言しなかったが、目的のためには手段を選ばない矢口氏の手法を思うと、こんなことがあった、ともっと早い時期に公にすべきであったかと後悔している。
 そうですよね。もっと早く言ってほしかったですね。でも、そうすると、任官拒否にあったI修習生が「成績不良」のため任官できなかったのはやむをえないという著者の主張も怪しくなると思うのですが・・・。
 私のころ、少なくともクラスの3分の1ほどが青法協の会員でした。声が大きく、元気のいい修習生が多くて、若くて世間知らずの私も大きな顔をしていました。当時も私はモノカキでしたから、前期修習のときには日刊クラス新聞(「アゴラ」と名づけていました)を発刊していました。独身だったし、暇だったのです。最高裁による青法協つぶしの禍根は今も残っていると私は思います。裁判所内では自由闊達な議論が十分にできていないように思います。もちろん学説・判例の議論はしているのでしょうが・・・。といっても、当の裁判官に言わせると、裁判所ほど自由にモノが言えるところはないと自信をもって断言します。いやあ、本当でしょうか、私には疑問があります。
 現在の最高裁の正面玄関は長官とそのほかの裁判官の出入時以外は常時閉鎖され、ガードマンが厳重に警備していて、一般人には近寄りがたい印象を与えているが、はなはだしい違和感を覚える。問題は建物の設計にあるのではなく、むしろ日常その管理にあたる官僚たちの思想にあるのではないか。最高裁がこの点に早く気がつき、明るく開放的で親しみやすい裁判所の姿が実現する日が来るように期待する。
 私も、この点はまったく同感です。まるで石の棺のように死んだ建物をイメージさせます。単に近寄りがたいというのではありません。近寄るのを峻拒するという感じです。国民の司法参加をモットーとする裁判員裁判を始めようとするとき、そんなことではダメでしょう。
 著者の主張に全面的に賛同するということはできませんが、共感を覚えるところも多々ある本でした。

巨大政府機関の変貌

カテゴリー:アメリカ

著者:チャールズ・O・ロソッティ、出版社:財団法人大蔵財務協会
 IRS、アメリカ合衆国内国歳入庁を民間実業界出身者が長官として乗り込んで大改革していったという話です。
 アメリカの税制は、すべての市民が自ら支払うべき税金を計算して納付するという、自発的意志に依存している。市民がそうしないときにはIRSが介入することになる。
 個人の確定申告書の調査において、およそ4分の1は是認される。
 1999年には、本来納付されるべき税額のうち、2770億ドルが納付されなかった。IRSはこれを追跡して、そのうちの17%を徴収することができたが、残り2300億ドルは徴収されずに残った。このような巨額の未納額は年々増加している。
 IRSは、富裕層への調査を減らし、貧乏人を調査する傾向がある。不正行為に対するIRSの警告にもかかわらず、富裕層は税金の調査を回避している。IRSについて、このような評価が定着していました。まるで日本と同じです。日本も巨大企業には大甘の税法と税務調査がまかりとおっています。日本の活力を保全するためという論法です。
 税金を「合法」的に回避するためのタックスシェルターが大企業から裕福な個人にまで広く流行している。
 もっとも富裕な所得階層に属する納税者は、そのほとんどが大企業の全部または一部の所有者である。100万ドルをこえる所得のある個人納税者層は、大企業上位1000社の合計とほぼ同じくらいの額の税金を納めていたが、大企業上位1000社のほうが
100%毎年調査を受けているのに対し、所得100万ドル超の個人納税者については、提出された申告書の2.5%しかIRSは調査していなかった。
 そこで、2002年2月、IRSの優先順位を変更した。10万ドル超の所得のある個人納税者の調査により多くの調査スタッフをふり向け、そのなかでもとくに100万ドル超の所得のある納税者の調査にはさらに手厚くふり向けることにした。
 日本でも、このようにしてほしいものです。ところが、現実に日本の税法改正は超富裕層を温存する方向ですすめられています。重い税負担感から金持ちが日本を逃げ出さないようにするため、という口実です。
 いま、私の周囲では市県民税が2倍いや3倍になった、給料が1万円以上もダウンしたという悲鳴ばかりです。与党である公明党が提唱して実現した定率減税廃止のための増税です。空前の好景気が続いているというのに、その大企業のための法人税減税のほうは廃止されずに続いています。おかしな話です。富める者がますます富める社会、貧乏人は野垂れ死にしてかまわない。それが安倍首相のうたう「美しい国」の内実です。ホント、許せません。
 消費税にしても、導入するときも、税率をアップするときも、選挙で争点にしたわけではありませんでした。別のことが争点となっていて、勝った自民党が信を受けたと称して実施したものです。今また、参院選の争点とせず、秋に消費税を7%へアップする方針をうち出すというのです。こんな国民を馬鹿にしたやり方をいつまでも続けさせてはいけません。納税者はもっと怒りを声に出しましょう。私たちが主権者であるのは選挙での投票行動をすることのみであらわすしかないからです。マスコミの予想によると、民主党の一人勝ちのようですけど、それでいいのでしょうか。「2大」政党はまやかしではありませんか。とても大切な憲法改正問題について、この「2大」政党は、どちらも基本的に同じ考えですし・・・。

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